「変質者もラビッツは受け入れるのか⋯⋯?」
「あァ、いやあれはアンタと同じくオヤジが会いたいって言った奴だ。あの鳥の人にはリュカオーンの呪いが刻まれてるはずだ」
「あの変質者が⋯⋯?」
「アンタのその札も人のこと言えないと思うけどなァ」
「いやいや⋯⋯」
そんな失礼な会話をイーヴェルと俺で繰り広げていると、会話が聞こえたのか変質者(仮)が
「やぁやぁ初めまして!俺はサンラクっていうんだけど、どうやってここに来たか聞かせてくれないかな?」
「サン⋯⋯ラク⋯⋯だって?」
「ん?俺どこか出会ったことあったりする?」
「⋯⋯知り合いがこんな変質者としてやってるなんて知りたくなかったなぁ」
「あぁ、?知り合い⋯⋯俺だってこんなキョンシーみたいなやつ知り合いに⋯⋯は⋯⋯」
いないが、と言おうとしたのだろう、札をめくって見えた俺の顔に言葉を失うサンラク。確かに俺は顔のパーツほぼいじってないから顔見りゃ分かるよ。⋯⋯でも俺の傷跡指でなぞるのはやめない?ムズムズするからさ。
「ごめん、かゆいんだけど」
「おぉ悪い、というかお前幕末でもそうだけど顔変えないのな⋯⋯」
「だって一から顔作んのめんどいんだもんさぁ」
「なんだあんたら知り合いだったのかァ?」
「知り合いだったんですわ?」
状況のよく飲み込めていないであろう兎二匹。おいイーヴェル、もう一匹も変人の知り合いは変人みたいな顔やめろ。サンラクは知らないけど俺は傷隠すために仕方なくこれつけてるのよ、鳥面半裸短パンとかいう変態といっしょにしないで欲しい。夜の帝王と同格のやつから傷もらってる時点でおかしいって?それはそうかもしれない。
「っと、そろそろオヤジのとこ行くぞ。オヤジを待たせるわけにはいかねェ」
「あ、分かった。じゃあサンラクまた後で」
「おー⋯⋯あ、あー⋯⋯ウメツキなら大丈夫か」
「?何かあるのか?」
「いや、まぁ第一印象が大事とだけ言っておくわ」
「了解⋯⋯?」
そのままサンラクと分かれて先導してくれているイーヴェルについて行く。西洋風の街を抜けて、大きな和風の城の謁見の間に通される。そこで座をして待っていたのはハーレムとばかりに雌兎を侍らせた、リュカオーンやオルケストラに並びそうな力を感じさせる大きな兎。
人間と同じくらいの大きさで円らな瞳、立派な全身を覆う白い毛並み。それにミスマッチな感じな片目を潰すように刻まれた傷跡などが違和感のないように共存していて威圧感と愛嬌を同時に与える。
「オヤジ、例のヴォーパル魂のある人間を連れてきた」
「おうイーヴェル、ありがとなあ」
「
物腰は柔らかいがドスが効いており圧のある声。顔の傷も相まってちょっと可愛げのある極道にしか見えない。なんだろう、兎のはずなのに下手したら俺喰い殺されるんじゃないの?サンラクの第一印象ってこの兎に失礼のないようにとかそういう話だったか⋯⋯。
「聞いたぜ、あのワンコロと殺り合ったあげくあのオルゴールに
⋯⋯ヴォーパル魂ってなんですかって聞いちゃだめかなぁ。だめそうだよなぁ。
「おめぇらはすぐ強くなってヴォーパル魂を無くしちまうのが気に食わなかったんだがよう、こうも将来有望な奴がいるなら俺直々に鍛えるのも一興と思ってな……っつーわけでどうだい?
ん?んー……これあれか?修行クエスト的な奴なのかな?ってことは強くなれるフラグのはず……。早速と言いたいけどこんな良クエストを受けさせてもらえるってことはそれ相応の態度で答えたほうが良さそうだよな……?
「断る理由もありません。これからご指導のほどよろしくお願いします、お師匠」
真剣さが少しでも伝わるようにと、三指をついて頭を下げる。暫く畳を見つめていても反応がなく、不安になって少し顔を上げるとヴァイスアッシュは一本取られたような顔をして、次の瞬間侍らせていた雌兎が驚くほどの大笑いを始めた。
「うははははははは!そうか!こいつぁ一本取られた!兄貴の次は師匠とはなぁ!あくまで俺等が上でおめぇさんが弟子か!うはははははははは!」
⋯⋯セリフから察するにサンラクがヴァイスアッシュを兄貴呼びして笑われたんだろうなあ。それで次は師匠呼びされて笑ってるのか。
ヴァイスアッシュは大笑いしてはいるが嘲笑のような悪意のある笑いではなく、俺の台詞に対する敬意が込められたような笑いだ。
「礼儀がなってんだなぁ、気に入ったぜ!俺等のこたぁヴァッシュと呼びな!俺等が認めたやつにゃあそう呼ばせてんだ」
「あ、はい⋯⋯わかりました」
第一印象は良かったっぽいな⋯⋯。やっぱり物事を頼むときって礼儀大切にしたほうがいいんだな。唯一幕末から学んだことかもしれん。あんなのでも一応礼儀いる場面とかあったんだよな。城落とすときとかさ。
「イーヴェル!色々案内してやんなぁ」
「分かった。行くぞウメツキ」
「あいよー」
ヴァイスアッシュに俺を任されることを予想していたのか、なんの不都合もないかのように俺を先導してくれるイーヴェルに着いて行きつつ考える。このクエストが発生する条件って多分自分より強くて一定のライン以上の強さのモンスターに対してなにかしらを達成することなんだろうな。この時点でハイレベルプレイヤーとプレイヤースキルのないプレイヤーは弾かれるのね。⋯⋯じゃあ俺割とプレイヤースキルある方だったのか。良かった良かった。
「置いて行くけどいいのかァ?ウメツキ」
「あ、ごめん、考え事してたわ」
「案内するからちゃんとついてきなァ」
「んで、ここがヴォーパル力を鍛える闘技場だァ」
「うぉぉ⋯⋯全体的に殺意高くないか⋯⋯?」
様々な武器を持った大量の兎が案山子相手にクリティカルを叩き込む練習をしている光景はなかなかに恐怖を感じた。包丁や探検を筆頭にスレッジハンマーだのバールだので案山子の首を叩き折る兎も居て流れる冷や汗がひどい。
鋸、釘バットみたいなトゲ付きメイス、メリケンサックetc⋯⋯。使う武器はヤンキー系なのにやってることが暗殺者だからギャップが酷い。これやられたら当分トラウマになるんじゃないかな⋯⋯。プレイヤーの心の安寧のためにもフィールドには出てこないで欲しいわ。
「一回あいつらと戦ってみるかァ?」
「謹んで遠慮しますわ」
「じゃあ俺とやるかウメツキ」
「
いつの間にか合流して肩を組んできたサンラクの頭をついでに叩く。後ろから
「ウメツキお前こっからどうする?」
「きり良いし寝るわぁ」
情報量多すぎるし、整理も兼ねて一旦寝ましょうかね。
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