Guns & Garlands — 銃と花輪   作:たこ焼き 龍月

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第六章 海上の花輪

 

 船というものは、陸の上で作られた常識を簡単に裏切る。壁の向こうに海があり、床の下に暗い水がある。そこにいる者たちは建物の中にいるつもりで歩き、会議室で商談し、廊下で命令を出し、ドアの向こうへ逃げれば別の場所に行けると思い込む。だが実際には、すべては一枚の船体の上に乗っている。沈めば全員が同じ水へ落ちる。勝者も敗者も、買い手も売り手も、契約書を持つ者も銃を持つ者も、海は区別しない。だからこそ、キャスパー・ヘクマティアルがこの場所に市場を作った理由を、ロックはようやく理解し始めていた。ここは逃げ場のある会議場ではない。逃げ場のない市場だ。

 

 制御区画の外で、最初の銃声が響いた。金属の壁に弾が当たり、乾いた火花が散る。通路の照明が揺れ、警報の赤い光が壁を不規則に染めた。ロックは制御室の入口付近に身を寄せ、向こうから近づいてくる足音を聞いていた。隣ではバルメが無言で構え、ワイリは工具箱のようなものを抱えている。彼が何かを取り出すたびにベニーが嫌な顔をするので、ロックはなるべく見ないようにした。

 

「ベニー、まだか」

 

 ロックが聞く。

 

「その質問、すごく嫌いになりそうだ」

 

 ベニーは端末の前で指を止めずに答えた。画面にはいくつもの窓が開き、海図、認証ログ、通信経路、花輪の不完全な輪が重なっている。ロックには細かい意味はわからない。ただ、赤く点滅する部分が増えていることだけはわかった。

 

「状況は?」

 

「ロックの断片データで、ラブレス権限の認証経路は一度歪ませた。でも花輪側が別の経路を探してる。船内の通信、外部ノード、偽の音声承認、全部を拾おうとしてる。鍵穴を塞いだら、壁ごと削ろうとしてる感じ」

 

 ワイリが明るく言った。

 

「壁ごと壊すのはわかりやすいね」

 

「君のわかりやすさは危険すぎる」

 

「褒めてる?」

 

「本気で違う」

 

 ココは画面を見ていた。いつもの笑みは薄い。花輪の輪は、海図の上でゆっくり形を変えている。完全な円ではない。だが、線が伸び、途切れ、別の線と結び直されるたびに、船内放送の声が乱れ、廊下の警備員たちの動きが変わる。花輪はただの機械ではない。人間の判断の隙間に入り込む、見えない手だった。

 

「兄さんの市場を、花輪が食べ始めている」

 

 ココが言った。

 

 ロックは彼女を見る。

 

「想定外ですか」

 

「半分」

 

「その言い方、今は聞きたくありません」

 

「そうね。今は全部と言うべきかも」

 

 ココは笑ったが、その笑みには余裕がなかった。

 

「兄さんは、市場を作った。花輪を欲しがる人間を集めた。でも花輪から見れば、ここにいる人間は買い手じゃない。材料よ」

 

「材料?」

 

「誰がどの命令に従うか。誰が誰を信用するか。誰がどの声に反応するか。誰が恐怖で動くか。花輪はそれを食べてる」

 

 ベニーが青ざめたまま頷いた。

 

「そう。船内のカメラ、通信、端末、参加者の識別情報、全部が混ざってる。花輪は完成していないけど、学習してるみたいに動いてる」

 

 ロックの背筋が冷えた。

 

「学習?」

 

「たとえ話だよ。実際にどうこうじゃなくて、反応を拾って次の偽命令を作ってる。ガルシアの声を使ったのも、それだと思う」

 

 ココの表情がさらに険しくなる。

 

「ヨナの声も?」

 

 ベニーは少し言葉を詰まらせた。

 

「わからない。本物の通信も混じってる。でも、花輪がその声を真似し始めたら、区別はもっと難しくなる」

 

 その時、船内放送がまた鳴った。

 

『制御区画の異常を確認。技術班は退避してください』

 

 声は落ち着いていた。正規の船内放送に聞こえる。だが次の瞬間、同じ声が少しだけ歪んだ。

 

『ココ・ヘクマティアルは、制御区画を離れてください』

 

 バルメの目が鋭くなった。

 

『ヨナは、船外にいます。救助には時間がありません』

 

 ココの肩がわずかに動いた。

 

 ロックはその一瞬を見逃さなかった。

 

「ココ」

 

「わかってる」

 

 彼女は低く言った。

 

「偽物よ」

 

『ヨナは、あなたを呼んでいます』

 

 放送は続いた。

 

 バルメがココの前に立つ。

 

「聞かないでください」

 

「聞いてない」

 

「あなたは、聞いています」

 

 ココは何も言わなかった。

 

 放送はまた歪む。

 

『ココ。来るな』

 

 今度は、若い声だった。

 

 ココの顔が止まった。

 

 ロックにもわかった。

 

 それは先ほどの警告と似ていた。ヨナの声かもしれない。だが、どこかが違う。少しだけ滑らかすぎる。少しだけ感情の位置がおかしい。花輪が拾った声を、真似ているのかもしれない。

 

 ココは笑った。

 

 とても小さく、冷たい笑みだった。

 

「下手ね」

 

 放送が止まる。

 

 ベニーが端末を叩いた。

 

「今のは船内生成の偽音声だ。外部からじゃない。少なくとも最後の二つは偽物」

 

 バルメが息を吐く。

 

「よかった」

 

 ココは答えなかった。

 

 よかった、という言葉は正しくなかった。本物のヨナがどこかにいるかもしれないから偽物が作られる。つまり、花輪はもう彼の声を材料として扱い始めている。その事実は、ココの中で静かに火をつけていた。

 

 扉の向こうで、また足音が増えた。

 

 レームの声が通信機から聞こえる。

 

『そちらへ向かう連中、さらに増えた。市場の警備だけじゃない。買い手側の護衛も混じっている』

 

 ダッチの声も割り込む。

 

『ガルシア側も誘導を受けている。偽の避難命令が多すぎる。制御区画を止められるか』

 

 ベニーが叫ぶように答える。

 

「止めたいから今やってる!」

 

 ダッチは短く言った。

 

『頼む』

 

 ベニーは一瞬だけ黙り、それから小さく呟いた。

 

「そう言われると弱いんだよな」

 

 ワイリが笑う。

 

「じゃあ頑張ろう」

 

「君は何もしないで」

 

「何もしないのは難しいね」

 

「君にとってはね」

 

 ロックは通路を見た。バルメが外へ出る。向こうから来る影が三つ。いや、四つ。彼女は一言も発しない。動きだけで通路を塞ぐ。ココの護衛としてだけではなく、今は制御室そのものを守る壁になっていた。ロックは自分の無力さを感じた。銃を持つ者たちの間で、彼にできることは少ない。だが、今回は完全に何もできないわけではない。ポケットにあった記憶媒体は、もうベニーの手元にある。彼は選んだ。全部を渡さず、必要な部分だけ使う道を選んだ。その選択が正しかったのかは、まだわからない。

 

 ココがロックの横に来た。

 

「あなた、少し変わったわね」

 

「今その話ですか」

 

「今だから」

 

 ロックは目を細めた。

 

「どこが」

 

「前なら、私を止めるために言葉を探していた。今は、止めるために材料を選んでる」

 

「悪くなったという意味ですか」

 

「少し」

 

「嬉しそうですね」

 

「半分」

 

「本当にやめてください」

 

 ココは小さく笑った。

 

「でも、あなたが全部を渡さなかったのは正しい。私にとっては少し残念だけど」

 

「正直ですね」

 

「嘘をつく余裕がないの」

 

 その言葉に、ロックは彼女を見た。

 

 ココ・ヘクマティアルが「余裕がない」と言う。冗談にも聞こえる。だが、今の彼女は本気だった。花輪、キャスパー、ヨナ、ロック、ガルシア。すべてが同時に彼女の前で動いている。普段ならそれを楽しむ。危険の向きを変えるために笑う。だが、ヨナの名だけは、彼女の計算に個人的な痛みを混ぜていた。

 

「ココ」

 

「何?」

 

「ヨナを追う時は、一人で行かないでください」

 

 ココは少し驚いたように見た。

 

「私に命令?」

 

「お願いです」

 

「お願いの方が厄介ね」

 

「ガルシアにも同じことを言われました。一人で判断するなと」

 

「いい子ね」

 

「あなたにも必要な言葉です」

 

 ココは少し黙った。

 

 そして、短く言った。

 

「努力する」

 

「信用できません」

 

「じゃあ、見張って」

 

 ロックは何も言えなかった。

 

 それが冗談なのか、本気なのか。たぶん両方だった。

 

     *

 

 ガルシアたちは、船内の右舷側を移動していた。避難区画へ向かうはずだったが、花輪の偽命令が通路のあちこちを混乱させている。非常灯は不規則に点滅し、スピーカーからは正規の放送と偽の声が交互に流れる。時には同じ声で逆の命令が出る。左へ行け。右へ行け。待機せよ。移動せよ。ラブレスを保護せよ。ラブレスを隔離せよ。船内は見えない糸で引っ張られる人形劇のようになっていた。

 

 ダッチは迷わなかった。放送ではなく、自分の目とベニーからの短い通信だけを信じて進路を選ぶ。レヴィはその隣で苛立っていた。

 

「うるせえ船だな。スピーカー全部撃ち抜きてえ」

 

 ファビオラが言う。

 

「それで静かになるなら、少しだけ賛成したいです」

 

 レヴィは彼女を見た。

 

「お前がそういうこと言うと、なんか悪い教育してる気になるな」

 

「自覚があるなら直してください」

 

「無理だな」

 

 ガルシアは黙っていた。彼の耳には、何度も自分の声が聞こえていた。偽の自分。ロベルタを呼ぶ声。ファビオラに助けを求める声。署名すると告げる声まで流れた。そのたびに、彼は自分の声が自分のものでなくなる恐怖を味わった。銃口を向けられるよりも、ある意味で怖い。自分の名前、自分の声、自分の家の権限が、誰かの道具になる。その感覚は、体の内側から何かを奪われるようだった。

 

 ロベルタはずっと彼のそばにいた。

 

 だが、彼女もまた苦しんでいた。偽のガルシアの声が流れるたびに、ほんの一瞬、反応してしまう。その一瞬を、彼女自身が許せない。守る者として、偽物に揺さぶられることが耐えがたかった。

 

『ロベルタ。僕はこっちです』

 

 また放送が鳴った。

 

 今度は、幼いころのガルシアに似た声だった。

 

 ロベルタの足が止まりかける。

 

 レヴィが即座に言った。

 

「猟犬」

 

 ロベルタは歯を食いしばる。

 

「わかっています」

 

『ロベルタ。助けて』

 

 ガルシアがロベルタの手を握った。

 

「ここにいます」

 

 ロベルタは彼を見る。

 

 ガルシアは震えていた。それでも、彼女の目をまっすぐ見ている。

 

「僕はここにいます。あの声じゃありません」

 

 ロベルタは深く息を吸った。

 

「はい」

 

 ファビオラは怒りを隠さずスピーカーを睨んだ。

 

「最低です。本当に最低です」

 

 レヴィが言う。

 

「怒っとけ。こういうのは、怒れるうちはまだ大丈夫だ」

 

「あなたに励まされる日が来るとは思いませんでした」

 

「俺もだよ。だから気味が悪い」

 

 ダッチが前方を見た。

 

「止まれ」

 

 通路の先に、人影があった。三人。スーツ姿だが、足運びが護衛のものだった。中央の男だけが手を上げ、穏やかな声で話しかけてくる。

 

「ガルシア・ラブレス様。こちらは危険です。安全な区画へご案内します」

 

 ダッチは答えない。

 

 男は続ける。

 

「ヘクマティアル氏の許可も得ています」

 

 レヴィが笑った。

 

「どっちのヘクマティアルだよ」

 

 男は一瞬だけ詰まった。

 

 それで十分だった。

 

 ダッチが低く言う。

 

「偽物だ」

 

 男たちが動く。

 

 ロベルタとレヴィも同時に動いた。通路は狭い。派手な銃撃になればガルシアたちが危ない。だから二人は距離を詰め、相手の動きを止めることを優先した。壁に背中がぶつかる音。床を滑る靴音。短い怒号。レヴィは相手の腕を弾き、ロベルタは別の男の進路を封じる。ダッチはガルシアを後ろへ下げ、ファビオラが彼を支えた。

 

 戦いは短かった。

 

 男たちは床に伏せ、通信端末だけが廊下を滑った。

 

 レヴィは息を吐いた。

 

「こういう時、船ってのは狭すぎるな」

 

 ロベルタは静かに言った。

 

「狭い方が守りやすいこともあります」

 

「お前は守ることしか考えてねえな」

 

「あなたは壊すことばかり考えている」

 

「生き残ることだ」

 

「同じではありません」

 

「時々同じだ」

 

 ロベルタは返事をしなかった。

 

 ガルシアが二人を見て言う。

 

「二人とも、ありがとうございます」

 

 レヴィは顔をしかめる。

 

「礼言うな。調子狂う」

 

 ロベルタは頭を下げた。

 

「当然のことです」

 

「だからそれが重いんだよ、猟犬」

 

 その時、ベニーから通信が入った。

 

『ダッチ、聞こえる? ガルシアの本人認証を狙ってる。音声偽装だけじゃ足りないらしくて、本人の近くで何かを拾おうとしてる可能性がある。端末、カメラ、船内センサー、とにかく近づかせないで』

 

 ダッチが答える。

 

「了解」

 

 ガルシアが聞く。

 

「僕の近くで何を?」

 

 ベニーの声が一瞬詰まる。

 

『君が承認したように見せる材料。声、顔、反応、何でも。詳しくは考えない方がいい』

 

 ガルシアは顔を青くした。

 

「僕が何も言わなくても、使われるんですか」

 

 ロックの声が別回線から入った。

 

『だから、一人で動かないで。誰かの呼びかけにも答えないで。君の声を録られる可能性がある』

 

 ガルシアは口を閉じた。

 

 自分の声すら、もう不用意に出せない。そんな状況で、彼はようやく理解した。花輪が閉じるということは、海が閉じるだけではない。人間の声が閉じ込められることだ。誰かの命令が誰かのものではなくなる。救いを求める声が罠になる。信頼が道具になる。

 

 ファビオラがガルシアの手を握った。

 

「坊ちゃま」

 

 ガルシアは小さく頷いた。

 

 声は出さなかった。

 

 ロベルタはそれを見て、表情を硬くした。

 

 レヴィが低く言う。

 

「胸糞悪いにもほどがあるな」

 

 ダッチは周囲を確認した。

 

「制御区画へ合流する。ここにいても狩られるだけだ」

 

 レヴィが笑う。

 

「ようやく攻めるか」

 

「守りながらだ」

 

「一番面倒なやつだな」

 

「仕事だ」

 

「はいはい」

 

     *

 

 制御室では、ベニーが花輪の認証経路を狂わせる作業を続けていた。ロックの断片データは一部だけ使われ、ココの持つもう一つの断片はまだ完全には開かれていない。ココはそれをベニーに渡していなかった。渡せば止めやすくなるかもしれない。だが同時に、花輪の輪郭がよりはっきり見えてしまう。壊すために見るのか、見るために近づくのか。その境目は危険だった。

 

 ロックはそれに気づいていた。

 

「ココ」

 

「何?」

 

「あなたのデータを使わないんですか」

 

「使うべきだと思う?」

 

「止めるためなら」

 

「でも、私が中身を見たがっているのを、あなたは知っている」

 

「知っています」

 

「なら、私に渡させるのは危険よ」

 

 ロックは黙った。

 

 ココは自分の危険を理解している。だからこそ、余計に厄介だった。彼女は自分を疑う。だが、自分を疑いながら、それでも進むことができる。ブレーキの位置を知っていて、踏むかどうかを最後まで選び続ける人間。ロックが怖いと思ったのは、そこだった。

 

「じゃあ、誰が決めるんです」

 

「あなた」

 

 ココはあっさり言った。

 

 ロックは目を見開く。

 

「俺?」

 

「あなたが止めると言ったでしょう」

 

「俺は、あなたの判断を代わりにするとは言っていません」

 

「似たようなものよ」

 

「違います」

 

「違う?」

 

「あなたを止めることと、あなたの代わりに選ぶことは違う」

 

 ココは少し黙った。

 

 それから、楽しそうではなく、真面目に言った。

 

「それ、いい言葉ね」

 

「今は褒めないでください」

 

「じゃあ、覚えておく」

 

 ベニーが叫ぶ。

 

「二人とも、哲学は後! 今、ココの断片を使わずに止める方法を探してるけど、かなり厳しい。完全に閉じる直前で止めるには、ラブレス権限そのものを無効化する必要があるかもしれない」

 

 ロックが言う。

 

「無効化?」

 

「簡単に言うと、鍵を捨てる。ラブレス家の旧通信権限を権利として使えない状態にする。そうすれば花輪はその鍵を使えない」

 

「それはガルシアが決めることですね」

 

「そう。しかも、かなり大きな損失になる。地域通信の再整備にも使えなくなるかもしれないし、ラブレス家の資産価値にも影響する」

 

 ココが静かに言った。

 

「損を選べる当主は高くつく」

 

 キャスパーの言葉だった。

 

 ロックは顔をしかめた。

 

「嫌な言葉ですね」

 

「ええ。でも、兄さんはそういう嫌な真実を売るのが上手い」

 

 その時、制御室の大型画面が勝手に切り替わった。

 

 キャスパーの顔が映る。

 

 ロックとココが同時に身構えた。

 

『やあ。そちらも忙しそうだね』

 

 ココが冷たく言う。

 

「兄さん。今は遊んでいる場合じゃない」

 

『遊びではないよ。市場の管理は大変なんだ』

 

「管理できてないわ」

 

『その通り。花輪が思ったより早く市場を食べ始めた』

 

「予想していたの?」

 

『可能性はね』

 

 ロックが言った。

 

「あなたは、この事態を見越していたんですか」

 

『見越していた、というほど綺麗な話じゃない。怪物を檻に入れて客に見せようとしたら、檻の鍵が少し緩かった。そういう話だ』

 

「そのせいで、ガルシアが狙われています」

 

『彼は最初から狙われていた。僕が呼んだからではない』

 

「呼んだことで早まった」

 

『それは認める』

 

 ロックは拳を握った。

 

 キャスパーは画面越しに続ける。

 

『ベニー。君ならもう気づいているだろう。花輪を止めるには、ラブレス家の鍵を折る必要がある』

 

 ベニーは嫌そうに言った。

 

「言い方が嫌いだけど、たぶんそうだ」

 

『ガルシアに伝えるといい。売る、守る、壊す。選択肢は三つだ。だが時間が経つほど、売る以外の選択肢は高くなる』

 

 ココが言う。

 

「兄さんは何を望むの?」

 

『選択だよ』

 

「嘘」

 

『半分は本当』

 

「残り半分は?」

 

『ガルシアが何を選ぶか見たい。そして、その選択を見た者たちがどう動くか見たい』

 

「最低」

 

『市場には観察が必要だ』

 

 その時、画面の端に別の通信が割り込んだ。ノイズ。海の音。若い声。

 

『キャスパー・ヘクマティアル』

 

 キャスパーの笑みがわずかに止まった。

 

『聞こえてるか』

 

 ココが息を呑む。

 

「ヨナ」

 

 声は荒れていた。通信状態が悪い。だが、その感情は偽物ではなかった。短く、硬く、怒りを押し殺している。

 

『お前の市場じゃない。花輪はもう、お前の客を見てる』

 

 キャスパーは静かに言った。

 

『久しぶりだね、ヨナ』

 

 ココの顔が固まる。

 

 ヨナは答えない。

 

『ラブレスの鍵を折れ。海を閉じるな』

 

 ロックが画面へ近づく。

 

「ヨナ。君はどこにいる」

 

 しばらく沈黙。

 

 そして、声が返った。

 

『ロック』

 

「そうだ」

 

『ココを止めろ』

 

 ココの表情が変わる。

 

 ヨナは続けた。

 

『花輪を見るな。見れば、欲しくなる』

 

 通信が乱れる。

 

『あれは、戦争を終わらせる道具じゃない。戦争を、声にする道具だ』

 

 ノイズが激しくなる。

 

 ベニーが必死に位置を追おうとする。

 

「待って、もう少し喋って」

 

 ヨナの声は途切れかけていた。

 

『ラブレスを……選ばせろ。奪うな』

 

 通信は切れた。

 

 制御室に沈黙が落ちる。

 

 ココは画面を見つめていた。

 

 バルメがそばに立つ。

 

「ココ」

 

「聞いたわ」

 

「追いますか」

 

 ココは目を閉じた。

 

 長い一秒。

 

 そして、言った。

 

「追わない。今は」

 

 ロックは彼女を見た。

 

 ココは続ける。

 

「ヨナが言った。ラブレスに選ばせろって」

 

 その声には、いつもの軽さがなかった。

 

 キャスパーの映像はまだ画面に残っている。彼は珍しく、しばらく何も言わなかった。

 

 ココは兄を睨む。

 

「兄さん。市場は終わりよ」

 

『君が決めることではない』

 

「いいえ。終わらせる」

 

『商品も客も残っている』

 

「だから終わらせるの」

 

 キャスパーは少しだけ笑った。

 

『その顔、久しぶりに見たな』

 

「兄さんのせいよ」

 

『半分は?』

 

「全部」

 

 キャスパーは声を出して笑った。

 

『怖い妹だ』

 

「よく言われる」

 

 画面が切れた。

 

 ベニーが息を吐く。

 

「今の通信、本物だったと思う」

 

 ココは小さく頷いた。

 

「ええ」

 

「位置は完全には取れなかった。でも、未確認船はもうかなり近い。市場船の外周へ接近してる」

 

 ワイリが言う。

 

「追ってた光点は?」

 

「一つは消えた。もう一つはまだいる。つまり、ヨナだけじゃない」

 

 ロックは言った。

 

「ヨナを追っている者が、この船にも外にもいる」

 

 ココは画面を見た。

 

「なら、早く終わらせる」

 

 ベニーが言った。

 

「ガルシアに選ばせる必要がある。ラブレス権限を維持するのか、移譲するのか、無効化するのか」

 

「無効化すれば、花輪は止まる?」

 

「完全にはわからない。でも、少なくともこの船で輪は閉じない」

 

 ロックは通信機を握った。

 

「ダッチ。聞こえますか」

 

 少しノイズが入り、ダッチの声が返る。

 

『聞こえる』

 

「ガルシアに伝えてください。花輪を止めるには、ラブレス家の旧通信権限を無効化する必要があるかもしれません」

 

 沈黙。

 

 その向こうで、船内の警報音が聞こえる。

 

『損失は』

 

 ダッチが聞く。

 

 ベニーが答えた。

 

「大きいです。資産としても、地域インフラとしても、今後使えなくなる可能性が高い」

 

 また沈黙。

 

 今度は、ガルシアの声が聞こえた。

 

『ロック』

 

「ガルシア」

 

『それを決めるのは、僕ですね』

 

 ロックは目を閉じた。

 

「そうだ」

 

『売るか、守るか、壊すか』

 

「そう」

 

『僕が選ばなければ、誰かが選ぶ』

 

「たぶん」

 

『なら、僕が選びます』

 

 ロベルタの声が入る。

 

『坊ちゃま』

 

 ガルシアは続けた。

 

『まだ決めたわけではありません。でも、逃げません』

 

 ロックは小さく息を吐いた。

 

「わかった。制御区画へ来られるか」

 

 ダッチが答える。

 

『向かっている。邪魔が多い』

 

 レヴィの声が遠くで聞こえる。

 

『邪魔は減らしてる!』

 

 ファビオラの声。

 

『増やさないでください!』

 

 緊張の中で、ロックは思わず笑いそうになった。だが、すぐに表情を戻す。

 

「こちらも持ちこたえます」

 

 通信が切れた。

 

 ココはロックを見る。

 

「ガルシアは来るのね」

 

「はい」

 

「若い当主に、ずいぶん重い選択をさせる」

 

「選ばせろと言ったのはヨナです」

 

「ええ」

 

「そして、たぶん正しい」

 

 ココは黙った。

 

 外ではまた銃声が響いた。制御室の扉の向こうに、人影が増える。バルメが構え直す。ワイリがベニーの端末をちらりと見てから、通路へ視線を移す。

 

「五分、稼ぐんだよね」

 

 ベニーが言う。

 

「もう五分じゃない。ガルシアが来るまで」

 

「それ、もっと長そうだね」

 

「だから頼む」

 

 ワイリはにっこり笑った。

 

「任せて。できるだけ船を壊さないようにする」

 

 ベニーは即座に顔を上げた。

 

「できるだけじゃなくて、壊さないで」

 

「努力する」

 

「その返事、信用できない」

 

 通路の向こうで、バルメが最初の敵を押し戻した。レームとマオ、ルツも別方向から合流し始めている。市場船の腹の中で、複数の勢力が制御区画を目指していた。花輪を止めるため、奪うため、起動するため、証拠を消すため。理由は違う。だが目的地は同じだった。

 

 船が大きく揺れた。

 

 海が荒れ始めたのではない。未確認船が近づき、市場船の外周で何かが起きている。衝撃は小さかったが、全員がそれを感じた。

 

 ベニーが画面を見る。

 

「未確認船、接舷距離まで来てる」

 

 ココの顔が変わる。

 

「ヨナ……」

 

 ロックが言う。

 

「今は花輪です」

 

 ココは目を閉じ、頷いた。

 

「ええ。今は花輪」

 

 その声は震えていなかった。

 

 だが、震えを押し殺していることはわかった。

 

     *

 

 ガルシアたちは制御区画へ向かっていた。通路はさらに混乱している。誰かが偽命令で逆方向へ走り、別の護衛が味方を敵と誤認しかけ、船内放送は何度も声を変える。その中で、ダッチは短い言葉だけで進路を切り開いた。レヴィとロベルタは前方を押さえ、ファビオラはガルシアから離れない。

 

『ガルシア・ラブレスは承認区画へ』

 

 放送が鳴る。

 

『承認区画へ』

 

 次の瞬間、ガルシアの声に変わる。

 

『僕は署名します』

 

 ガルシアは立ち止まらなかった。

 

 ファビオラが悔しそうに言う。

 

「坊ちゃまの声を、勝手に」

 

 ガルシアは唇を噛んだ。

 

「僕の声ではありません」

 

 ロベルタが言う。

 

「はい」

 

「ロベルタ」

 

「はい」

 

「僕が何を選んでも、そばにいてくれますか」

 

 ロベルタの表情が揺れた。

 

「もちろんです」

 

「たとえ、ラブレス家が損をしても」

 

「はい」

 

「僕が、家の財産を捨てることになっても」

 

 ロベルタは一瞬だけ黙った。

 

 それは財産のためではない。ガルシアが何かを失う選択をする、その重さを思ったからだ。

 

「私は、坊ちゃまの選択を守ります」

 

 ガルシアは頷いた。

 

「ありがとう」

 

 レヴィが横から言った。

 

「坊ちゃん、いちいち重いな」

 

 ガルシアは少しだけ笑う。

 

「すみません」

 

「謝んな。重い方が浮かされにくい」

 

「どういう意味ですか」

 

「軽い奴ほど、こういう船じゃすぐ流されるってことだ」

 

 ファビオラが言う。

 

「あなたにしては、まともなことを言いますね」

 

「俺はいつもまともだ」

 

「それは偽音声ですか」

 

 レヴィは一瞬黙り、それから笑った。

 

「言うようになったな、小……ファビオラ」

 

 ファビオラは少しだけ得意げにした。

 

 その時、前方の角から男が飛び出した。手には端末。銃ではない。彼はガルシアに向けて端末を掲げ、叫んだ。

 

「ラブレス様、こちらへ! 承認のために一言だけ!」

 

 ロベルタが動くより早く、レヴィが男の腕を弾いた。端末が床を滑り、壁にぶつかって割れる。

 

「一言だけ、が一番危ねえんだよ」

 

 男が倒れ込み、ロベルタが動きを封じる。ダッチは端末の破片を見て、低く言った。

 

「声を録るつもりだったか」

 

 ガルシアは青ざめた。

 

「僕は、話すことも危険なんですね」

 

 レヴィが言う。

 

「今はな」

 

 ガルシアは深く息を吸った。

 

「なら、必要な時だけ話します」

 

「いい判断だ」

 

 レヴィはそう言って、少しだけ口元を歪めた。

 

 制御区画へ向かう最後の通路に入った時、船がまた揺れた。今度は大きい。壁の非常灯が揺れ、天井から埃が落ちる。外で何かが接触したのだ。

 

 ベニーの声が通信に入る。

 

『未確認船が市場船に接近。たぶん接舷した!』

 

 ココの声も聞こえた。

 

『ガルシア、急いで。でも焦らないで』

 

 レヴィが叫ぶ。

 

「どっちだよ!」

 

 ココは即答した。

 

『両方』

 

「撃つぞ!」

 

 ガルシアはそのやり取りを聞き、ほんの少しだけ笑った。

 

 恐怖は消えない。

 

 だが、完全に飲まれてはいなかった。

 

 通路の先に制御室の扉が見えた。

 

 その前では、バルメとレームが敵を押しとどめている。マオとルツが別角度を警戒し、ワイリが何かを抱えてにこにこしている。ベニーが扉から顔を出し、ガルシアを見つけて叫んだ。

 

「こっち!」

 

 ガルシアは走った。

 

 ロベルタとファビオラが左右を守る。

 

 レヴィが後ろで足止めする。

 

 ダッチが最後に通路を確認する。

 

 制御室へ入った瞬間、ガルシアは壁の画面を見た。

 

 そこには、巨大な花輪が映っていた。

 

 不完全な輪。

 

 だが、その一部にラブレス家の名前が光っている。

 

 いや、名前ではない。コードだ。権限だ。だが、ガルシアにはわかった。それは自分の家だった。祖父の善意。地域を守るための通信網。災害時に人をつなぐための線。それが、今は海を閉じる輪の一部になろうとしている。

 

 ガルシアは足を止めた。

 

 ロックがそばに来る。

 

「ガルシア」

 

「これが」

 

「そうだ」

 

「これが、僕の家の鍵で動くものなんですね」

 

 ベニーが静かに言う。

 

「完全に動かすには、君の権限が必要になる。正確には、その権限が本物だと認められることが必要になる」

 

 ガルシアは画面から目を離さない。

 

「止めるには」

 

 ベニーは苦しそうに答えた。

 

「ラブレス家の旧通信権限を無効化する。少なくとも、この花輪が使えない形にする」

 

「それは、元に戻せますか」

 

 ベニーは黙った。

 

 その沈黙が答えだった。

 

 ガルシアは小さく頷いた。

 

「そうですか」

 

 ロベルタが前へ出る。

 

「坊ちゃま、急いで決める必要は」

 

 ベニーが言う。

 

「時間はあまりない。花輪が別の偽装経路を作ってる。ガルシア本人の声や映像を取られたら、強引に承認扱いされる可能性がある」

 

 ファビオラが怒りをこらえた声で言う。

 

「そんなもの、承認ではありません」

 

 ココが静かに答えた。

 

「でも、後から承認だったと言い張る人間はいる」

 

 キャスパーの声が、部屋のスピーカーから響いた。

 

『その通り』

 

 画面の端に、また彼の顔が映る。

 

『市場とは、事実を売る場所ではない。事実として扱えるものを売る場所だ』

 

 レヴィが即座に銃を向けた。

 

「スピーカー撃っていいか」

 

 ベニーが叫ぶ。

 

「だめ! 今そこ壊すと画面も落ちる!」

 

「ちっ」

 

 ガルシアはキャスパーの映像を見た。

 

「あなたは、僕に何を選ばせたいんですか」

 

 キャスパーは微笑んだ。

 

『それは君が決めることだ』

 

「嘘です」

 

 ガルシアの声は震えていた。

 

 だが、はっきりしていた。

 

「あなたは僕が何を選んでも、それに値段をつける」

 

 キャスパーは少しだけ目を細めた。

 

『その通り』

 

「なら、僕はあなたの市場で選びません」

 

『ここ以外に、どこで選ぶ?』

 

 ガルシアは画面から視線を外し、ロックを見た。ロベルタを見た。ファビオラを見た。ダッチ、レヴィ、ベニー、ココ、バルメ、そしてこの場にいる全員を見た。

 

「ここは、あなたの市場かもしれません」

 

 ガルシアは言った。

 

「でも、これは僕の家の名前です」

 

 キャスパーは黙った。

 

 ココも黙っている。

 

 ガルシアは深く息を吸った。

 

「僕はまだ、決めきれていません」

 

 ロベルタが小さく息を呑む。

 

 ガルシアは続けた。

 

「失うのが怖いです。祖父の残したものを、僕の代で壊すのが怖い。ラブレス家の財産が減ることも、地域の人たちに影響が出ることも怖い。ここで決めたことを、後悔するかもしれない」

 

 誰も口を挟まなかった。

 

「でも」

 

 ガルシアの声が少し強くなる。

 

「僕の家の名前が、誰かを傷つけるための鍵になることは、もっと怖い」

 

 花輪の輪が画面の上で揺れた。

 

 海上ノードが反応している。

 

 ベニーが叫ぶ。

 

「時間がない。ガルシア、最終判断が必要だ。まだ完全な無効化ではないけど、その前段階に入るかどうか」

 

 ガルシアは目を閉じた。

 

 長い沈黙。

 

 その沈黙を破ったのは、外からの衝撃だった。

 

 市場船が大きく揺れた。誰かが叫ぶ。制御室の照明が一瞬落ち、非常灯だけになる。壁の画面に、外部カメラの映像が表示された。市場船の側面に、小型船が接舷している。荒れた海面。金属の接触音。白い波しぶき。

 

 そして、その船の甲板に、一人の少年の影が見えた。

 

 遠い。画面も乱れている。だが、ココにはわかった。

 

「ヨナ」

 

 少年はこちらを見ていた。

 

 いや、カメラを見ているのかもしれない。

 

 その顔ははっきり映らない。

 

 だが、声が入った。

 

『選べ』

 

 短い言葉。

 

『奪わせるな』

 

 通信が途切れる。

 

 ココは画面へ一歩近づきかけた。

 

 バルメが彼女の腕を掴む。

 

「ココ」

 

 ココは止まった。

 

 今度は、自分で止まった。

 

 ガルシアはその声を聞いていた。

 

 彼は画面の少年を見た。

 

 自分より少し年上か、同じくらいかもしれない。だが、その声は自分よりずっと乾いていた。戦場を見た声。人の声が奪われる恐ろしさを知っている声。

 

 ガルシアは顔を上げた。

 

「ベニーさん」

 

「何?」

 

「僕が前段階に入ると言えば、まだ引き返せますか」

 

 ベニーは正直に答えた。

 

「少しだけ。でも、もう安全な選択肢はない」

 

 ガルシアは頷いた。

 

「わかりました」

 

 ロベルタが言う。

 

「坊ちゃま」

 

 ガルシアは彼女を見る。

 

「ロベルタ。僕はまだ怖いです」

 

「はい」

 

「だから、そばにいてください」

 

「もちろんです」

 

「ファビオラ」

 

「はい」

 

「僕が間違えそうなら、言ってください」

 

 ファビオラは泣きそうな顔で頷いた。

 

「言います。絶対に」

 

 ガルシアはロックを見る。

 

「ロック」

 

「うん」

 

「僕が選びます」

 

 ロックは頷いた。

 

「見ています」

 

 ガルシアはベニーへ向き直った。

 

「ラブレス家の旧通信権限を、花輪から切り離す準備をしてください」

 

 ベニーは一瞬だけ目を閉じ、頷いた。

 

「わかった」

 

 キャスパーの映像が静かに笑った。

 

『損を選ぶか、ガルシア』

 

 ガルシアは画面を見る。

 

「まだ選び終わっていません」

 

『では?』

 

「あなたの市場から、僕の名前を取り戻します」

 

 その瞬間、花輪の輪が大きく歪んだ。

 

 市場船のあちこちで警報が鳴る。

 

 買い手たちの端末が一斉に乱れ、偽命令が途切れ、船内放送が悲鳴のようなノイズを上げた。完全に止まったわけではない。むしろ、花輪は抵抗している。ラブレス家の鍵を失うまいと、別の線を探し始めている。

 

 ベニーが叫ぶ。

 

「来るぞ。ここから先は、花輪も向こうも本気でガルシアを取りに来る!」

 

 レヴィが銃を構え直す。

 

「やっとわかりやすくなってきたじゃねえか」

 

 ロベルタがガルシアの前に立つ。

 

「坊ちゃまには近づけさせません」

 

 ファビオラもその横に立つ。

 

「私もです」

 

 ダッチは通路を見た。

 

「守り切るぞ」

 

 ココは画面のヨナの影を見つめ、それから花輪の輪へ視線を戻した。

 

「ええ」

 

 彼女は静かに言った。

 

「ここで、海の花を折る」

 

 外では、未確認船が市場船に食いつくように揺れていた。

 

 中では、花輪が閉じようとしていた。

 

 そしてその中心で、若き当主は初めて、自分の家の名前を自分の手に取り戻そうとしていた。

 

 

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