Guns & Garlands — 銃と花輪 作:たこ焼き 龍月
イエロー・フラッグは、夜のロアナプラで最も不幸な店の一つだった。酒は安く、料理はそこそこで、客層は悪く、壁は修理されてもすぐ穴が開く。だが、それでも店は潰れない。ロアナプラという街では、壊れたものがすぐに直る必要はない。壊れたまま使えれば、それはまだ現役だ。イエロー・フラッグはまさにそういう店だった。看板は歪み、テーブルには傷が残り、カウンターの奥にはバオの怒声が常に用意されている。今夜、その店には、ロアナプラでも特に面倒な人間たちが集まろうとしていた。
ラグーン商会が戻った時、店の空気はすでに張りつめていた。キャスパーはカウンター近くの席で、まるで自分の店のようにくつろいでいる。チェキータは彼の少し後ろで椅子に座り、足を組んでいた。エドガーは壁際、アランはベニーの端末を覗き込める位置、ポーは入口近くの柱のそばに立っている。バオは全員を見て、すでに半分泣きそうな顔をしていた。
「おい、ラグーン」
バオが言った。
「お前ら、何を拾ってきた」
レヴィは店へ入るなり、肩をすくめた。
「封筒三つと、泣きそうな港の小物と、面倒な予告編だ」
「それが店に必要なものか!?」
「ロアナプラじゃだいたい必要だろ」
「いらねえよ!」
ベニーが端末を抱えながら言った。
「バオ、あとで説明する。できれば安全な場所で」
「ここは安全じゃねえのか!?」
チェキータが笑った。
「いい店だけど、安全ではないわね」
「初対面の女に店の安全性を否定された!」
キャスパーが穏やかに言う。
「安心して。できるだけ穏便に済ませる」
バオは両手で頭を抱えた。
「また“できるだけ”って言った! こいつら全員、できるだけって言いやがる!」
ロックは店の奥を見た。張はまだ来ていない。ホテル・モスクワもまだだ。だが、時間の問題だった。店内の客は半分ほど残っているが、明らかに普通の客ではない者が増えている。三合会の者、ホテル・モスクワの偵察、どこかの情報屋、そしてただ危険なものを見たいだけの愚か者。ロアナプラでは、火事を見るために集まる人間も多い。自分が燃える側になるまで、それを娯楽だと思っている。
ダッチはキャスパーの向かいに座った。
「現場は見た」
「どうだった?」
「綺麗すぎる」
キャスパーは頷いた。
「やはり」
ベニーが端末をテーブルに置き、ブルー・カイト・トレーディングのロゴを表示した。
「ロッカーにこれが残っていた。三合会、ホテル・モスクワ、ラグーン商会の三枚の偽書類と一緒に」
キャスパーはロゴを見る。笑みは消えない。ただ、目が少しだけ冷たくなった。
「青い凧か」
アランが言う。
「表向きは海運仲介と中古機械の輸出入。実体は薄い。登録は複数国に分散。典型的な殻です」
ベニーが横から補足する。
「殻だけど、殻の作り方がうまい。見つけてほしい名前としてはちょうどいい」
レヴィが言う。
「つまり、ここを追ったら空っぽか」
「たぶんね」
チェキータが指でテーブルを軽く叩いた。
「でも、空っぽの殻でも、誰かが作った。作った人間の癖は残るわ」
ベニーは少し驚いたように彼女を見た。
「意外とまともなことを言うんだね」
「失礼ね。私はいつもまともよ」
レヴィが即座に言った。
「どこがだよ」
「あなたよりは」
「基準が低すぎんだろ」
「自覚はあるのね」
「撃つぞ」
「また吠えた」
レヴィが立ち上がりかけた瞬間、店のドアが開いた。
最初に入ってきたのは張だった。派手な護衛は連れていない。だが、彼の後ろには数人の部下が静かに続いている。張は店内を見渡し、キャスパーを見て、ラグーン商会を見て、最後にバオへ軽く会釈した。
「こんばんは。店を借りるよ」
バオは乾いた笑いを漏らした。
「貸した覚えはねえんですがね」
「では、居合わせたことにしよう」
「もっと悪いです」
張は薄く笑い、ロックへ視線を向けた。
「ロック、無事そうで何よりだ」
「今のところは」
「いい言い方だ」
レヴィが小声で言った。
「また便利な言葉が増えたぞ」
張はキャスパーへ向き直る。
「キャスパー・ヘクマティアル」
「張さん。直接会うのは久しぶりかな」
「ロアナプラで白い商人を見ると、港の色が悪くなる」
「僕は港を明るくするつもりだったんだけどね」
「火事の明るさなら、間に合っているよ」
キャスパーは楽しそうに笑った。
「手厳しい」
張が席についたすぐ後、店の外の空気がもう一度変わった。今回は、客のざわめきがさらに薄くなる。ドアが開き、ボリスが入ってくる。続いて、バラライカが姿を現した。彼女が店に入るだけで、イエロー・フラッグの空気が冷える。ロアナプラの熱気さえ、彼女の周囲だけ一歩下がるようだった。
バオは声を出さなかった。出せなかったのかもしれない。
バラライカは店内を見渡し、張、キャスパー、ラグーン商会を確認した。最後にバオへ言う。
「場所を借りる」
バオは力なく答えた。
「……もう好きにしてください」
レヴィが小声で言う。
「諦めやがった」
ベニーがさらに小声で言った。
「人は限界を越えると静かになるんだね」
バラライカは張の向かいに座った。キャスパーは少し横。ラグーン商会はその斜め位置に座る形になる。チェキータたちはキャスパーの周囲に散り、ホテル・モスクワの兵と三合会の部下も、それぞれ距離を取って立った。店内は、酒場ではなく交渉の戦場になった。
張が最初に口を開いた。
「大尉、あなたの名を使った者がいる」
バラライカは静かに答える。
「あなたの港を使った者もいる」
「つまり、我々は同じ泥を踏まされた」
「泥の中で先に撃つ者は、足跡を残す」
キャスパーが微笑んだ。
「素晴らしい。商談より詩的だ」
バラライカは彼を見た。
「黙れ、白い商人」
「怖いな」
張が穏やかに言う。
「怖がっている顔ではないね」
「商人の顔は便利でね」
レヴィが腕を組んで言った。
「その顔、殴ったらどうなるんだ」
チェキータが楽しそうに言う。
「たぶん、請求書が来るわ」
「殴った方に?」
「殴られた方にも」
ベニーが呟く。
「嫌な経済圏だな」
ロックは軽く咳払いした。
「本題に入りましょう」
張がロックを見る。
「頼むよ、ロック」
バラライカも視線を向ける。
「説明しろ」
キャスパーは微笑む。
「聞こう」
ロックは一瞬だけ、帰りたくなった。三合会、ホテル・モスクワ、キャスパー。その三者が同じ卓につき、自分が説明役になっている。どう考えても運び屋の仕事ではない。だが、誰も代わってはくれない。レヴィは楽しそうだし、ダッチは無言で「やれ」と目で言っている。ベニーは端末の前で青ざめている。
ロックは端末をテーブルに置いた。
「倉庫街の外れにあったロッカーから、三枚の封筒が出ました。三合会名義の港湾許可証、ホテル・モスクワ名義の偽命令書、ラグーン商会名義の搬入登録。それぞれの写しです。そして、その下にブルー・カイト・トレーディングという会社のカードが置かれていました」
ベニーが画面にロゴを出す。
張は目を細める。
バラライカは表情を変えない。
キャスパーは少しだけ楽しそうにした。
「青い凧」
張が言う。
「聞き覚えは?」
ロックが聞く。
張は首を振る。
「表の名前としてはない」
バラライカも短く答えた。
「知らん」
キャスパーは言った。
「僕も直接の取引はない。ただし、こういう殻会社は、知らないところで取引に混じる。名前を知らないことは、関係がないことの証明にはならない」
バラライカが冷たく言う。
「便利な言い訳だな」
「商売では、便利な言葉ほど長生きする」
張が言う。
「では、その会社が犯人か」
ベニーは首を振った。
「たぶん違います。少なくとも、直接の本体ではない。見つけさせるために置かれた名前です。追えば何かは出るでしょうが、おそらく殻です」
バラライカが聞く。
「殻を置いた目的は」
「三つあります」
ベニーは画面を切り替えた。
「一つ目、三合会、ホテル・モスクワ、ラグーン商会の三つを同じ箱に入れて、互いに疑わせる。二つ目、ブルー・カイトを追わせて時間を稼ぐ。三つ目、会談の場へ全員の注意を向ける」
ダッチが続けた。
「その裏で、旧冷凍倉庫で別の受け渡しがある」
店内の空気が変わった。
張の部下の一人がわずかに動き、ボリスの視線も鋭くなる。キャスパーの私兵たちは、それぞれ表情を変えずに周囲を確認した。
張が静かに聞く。
「旧冷凍倉庫?」
ロックは頷いた。
「倉庫で捕まえた男たちが言いました。今夜、そこで残りの支払いと、別の受け渡しがあると」
バラライカの声は低かった。
「我々をここに集め、その間に別の場所で動くつもりか」
キャスパーは楽しそうではなくなった。
「なかなかいい度胸だ」
レヴィが言う。
「おい白い兄貴。自分の荷物盗まれて、少し嬉しそうにするのやめろ」
「嬉しくはないよ。感心しているだけだ」
「もっとムカつくわ」
チェキータがレヴィの横で言う。
「同感。ボスのそういうところは私も少し嫌い」
キャスパーが彼女を見る。
「少し?」
「半分くらい」
レヴィが机を叩いた。
「お前まで言うな!」
張はそのやり取りを聞き流し、ロックへ視線を戻した。
「捕まえた男たちは?」
ダッチが答える。
「今は別の場所で見張らせている。三合会に渡せばホテル・モスクワが疑う。ホテル・モスクワに渡せば三合会が疑う。キャスパーに渡せば全員が疑う」
バラライカは薄く笑った。
「賢明だ」
キャスパーは肩をすくめる。
「信用がないな」
張が言う。
「信用とは、積み上げるものだ。あなたは積み上げた端から値札を貼る」
「それは商人として正しい」
「街としては少し迷惑だ」
ロックは話を戻した。
「問題は、旧冷凍倉庫へどう動くかです。全員が動けば、相手は逃げる。誰か一勢力だけが動けば、残りが疑う。放っておけば、受け渡しは成功する」
バラライカは即答した。
「潰す」
張は微笑む。
「潰すにしても、誰の手で潰すかが問題だね」
キャスパーが言う。
「僕の荷物の話だ。僕の私兵が行くのが自然だ」
バラライカの目が冷える。
「ロアナプラで、あなたの私兵だけを自由に動かす理由はない」
張も穏やかに続ける。
「同感だ。港は三合会の庭でもある」
キャスパーは笑った。
「庭にしては、ずいぶん物騒だ」
「物騒な庭だから、勝手に踏む者には気をつけてもらう」
レヴィがぼそりと言う。
「おいロック。もう撃ち合いでよくねえか?」
「よくない」
「話が長すぎる」
「だから長くしているんだ。話が続く間は撃たれない」
チェキータがレヴィへ言った。
「あなた、本当に待つのが苦手ね」
「待ってる間に相手が逃げるだろ」
「焦って走ると、罠を踏む」
「罠ごと蹴り飛ばせばいい」
「いいわね。単純で」
「馬鹿にしてんのか」
「半分くらい」
「殺す」
バオがカウンターの中から叫んだ。
「店内で殺すな!」
張は軽く手を上げた。
「では、折衷案だ」
全員の視線が張へ向く。
「旧冷凍倉庫へは、混成の少人数で行く。三合会、ホテル・モスクワ、キャスパー、ラグーン商会。それぞれ一部ずつ。大きな部隊は動かさない。店には私たちが残る」
バラライカが言う。
「自分たちは残るのか」
「我々が同時に席を立てば、相手に知らせるようなものだ。大物が動く時、街は揺れる」
キャスパーが頷いた。
「理にかなっている」
バラライカは不快そうだったが、反論はしなかった。
「誰を出す」
張が答える。
「三合会からは二人」
バラライカが言う。
「こちらも二人」
キャスパーはチェキータを見る。
「チェキータ、エドガー」
チェキータは笑った。
「やっと外ね」
エドガーは短く頷く。
「了解」
レヴィが即座に立ち上がった。
「俺も行く」
ダッチが言う。
「行くだろうな」
「止めねえのか」
「止めるだけ無駄だ」
ロックはダッチを見た。
「俺も行きます」
レヴィが顔をしかめる。
「お前はここで胃を痛めてろ」
「旧冷凍倉庫で何を受け渡すのか確認する必要がある。情報の扱いを判断するなら、俺も見た方がいい」
張が微笑む。
「ロックが行くなら、こちらも安心だ」
バラライカが言う。
「安心ではない。だが、銃声は少し遅れる」
キャスパーが楽しそうに付け加える。
「そして、面倒な判断を押しつけられる」
ロックは深く息を吐いた。
「全員、俺を何だと思っているんですか」
レヴィが笑う。
「面倒を押しつけやすい男」
ベニーが小声で言う。
「定着したね」
「嬉しくない」
アランが手を上げた。
「僕は?」
キャスパーは首を振った。
「君はベニーとここでデータを見る。旧冷凍倉庫から通信があれば拾って」
アランは不満そうにしたが、ベニーの端末を見て少しだけ納得した。
「まあ、こっちも面白そうだし」
ベニーは言った。
「僕は面白くない」
「でも見るんでしょ?」
「見るしかない」
ポーが柱のそばから言った。
「俺も行く」
キャスパーは少し考えた。
「ポー、君はここに残って」
ポーはキャスパーを見る。
「なぜ」
「こっちにも何か来るかもしれない」
ポーは少し沈黙し、頷いた。
「わかった」
レヴィが言う。
「でかいのが残るなら、バオも安心だな」
バオはポーを見上げ、さらに不安そうになった。
「安心の形が怖えよ」
*
会談は一時中断という形になった。張とバラライカとキャスパーは店に残り、ラグーン商会からはレヴィとロック、キャスパー側からチェキータとエドガー、ホテル・モスクワからボリス配下の兵二人、三合会から張の部下二人が旧冷凍倉庫へ向かうことになった。ダッチは店に残る。大物同士の会談が続く以上、誰かがラグーン商会側の目として残らなければならない。ベニーとアランも端末の前に残った。
出発前、ダッチはロックへ言った。
「無理をするな」
「努力します」
「その返事は信用できん」
「では、レヴィを見張ります」
「もっと信用できん」
レヴィが横から言う。
「俺は見張られる側じゃねえ」
チェキータが近づいてきた。
「あなたは見張らないと、すぐ走りそう」
「お前に言われたくねえよ」
「じゃあ、お互いに見張り合いましょうか」
「気持ち悪い提案すんな」
「照れてる?」
「殺す」
「バオが見てるわ」
バオはカウンターから叫んだ。
「俺の名前を抑止力に使うな!」
ロックはチェキータを見た。
「現場では、できれば静かにお願いします」
チェキータは笑った。
「私は静かよ。うるさいのは彼女」
レヴィが睨む。
「お前の香水の匂いの方がうるせえ」
「あなたの火薬臭よりは上品よ」
「火薬に失礼だろ」
エドガーが短く言った。
「時間だ」
その一言で、二人の言い合いは一旦止まった。エドガーには妙な説得力がある。声を荒げるわけでもない。ただ必要なことだけを言う。その短さが、逆に場を動かす。
ロックは店を出る前に、張、バラライカ、キャスパーを見た。
三人は同じ卓に残っている。
張は穏やかに茶を飲み、バラライカは煙草を吸い、キャスパーは酒のグラスを回していた。全員が違う顔で、同じ火種を見ている。
張がロックへ言った。
「気をつけて、ロック」
「はい」
バラライカが続ける。
「必要なら撃て」
ロックは少し困った顔をした。
「できれば、撃たずに済ませたいです」
「できれば、か」
キャスパーが笑った。
「便利な言葉だね」
レヴィが入口から怒鳴った。
「全員まとめて禁止だ!」
店内に小さな笑いが起きた。だが、その笑いは長く続かなかった。
旧冷凍倉庫へ向かう扉が開いた瞬間、外の夜が流れ込んだ。
港の奥で、別の取引が始まろうとしている。
*
ロックたちが出ていった後、イエロー・フラッグには奇妙な静けさが残った。張、バラライカ、キャスパー。三人の大物が同じ卓にいる。ダッチ、ベニー、アラン、ポー、ボリス、三合会の部下たち。バオはカウンターの奥で、現実から少し距離を取ろうとしていたが、距離を取るには店が狭すぎた。
張が口を開いた。
「さて、大尉。白い商人が港に持ち込んだ荷について、どこまで知っていた?」
バラライカは煙草を灰皿に置いた。
「知らされてはいない」
キャスパーが言う。
「知らせる理由がなかったからね」
「今は理由ができた」
バラライカの声は冷たい。
キャスパーは頷いた。
「そうだね。僕の失敗だ」
ダッチが少しだけ眉を動かした。
「認めるのか」
「商人は損失を認めないと、次の値段をつけられない」
張が言う。
「あなたの商売は、ロアナプラに火を持ち込む」
「ロアナプラは最初から燃えている」
「油を足す者を、街は歓迎しない」
「でも、油を買う者はいる」
バラライカが低く言った。
「火遊びの話なら、外でやれ」
キャスパーはグラスを置いた。
「では、仕事の話をしよう。僕の取引先リストが外へ出れば、あなたたちにも不利益が出る。三合会の港湾網を利用した買い手の名前、ホテル・モスクワが黙認したと誤解される動き、ラグーン商会の登録。どれも使い方次第で、街を揺らせる」
張は静かに言う。
「だから、そのリストはあなた一人に返すわけにはいかない」
「僕のものだよ」
バラライカが返す。
「盗まれる場所に置いた時点で、あなた一人の問題ではなくなった」
キャスパーは笑った。
「厳しいね」
「兵站を失った将校は、まず叱責される」
「僕は将校ではない」
「だから撃たれていない」
ダッチが小さく笑った。
キャスパーはバラライカを見つめ、少しだけ肩をすくめた。
「ロアナプラは本当に高い街だ」
張は茶を飲みながら言った。
「買うには向かない」
「でも、商売するには最高だ」
ダッチが煙草をくわえた。
「代金は金だけじゃ済まんぞ」
キャスパーはダッチを見た。
「それを学びに来た」
「授業料は高い」
「だろうね」
その時、ベニーの端末が短く鳴った。
彼は画面を見て、表情を変えた。
「……旧冷凍倉庫方面で通信反応。暗号化されてる。受け渡し、始まるかもしれない」
アランが隣から画面を覗く。
「もう一つ反応がある。別方向から接近中」
ダッチが聞く。
「誰だ」
ベニーは首を振った。
「わからない。でも、ロックたち以外の誰かが旧冷凍倉庫へ向かってる」
張の目が細くなる。
バラライカの指が止まる。
キャスパーは静かに言った。
「やはり、会談だけでは終わらせてくれないか」
ポーが低く言った。
「ここにも来る」
全員がポーを見た。
バオが悲鳴に近い声を出した。
「何が!?」
ポーは入口の方を見る。
「別の嘘」
その言葉と同時に、店の外で車のブレーキ音が響いた。
イエロー・フラッグの夜は、まだ終わらない。