Guns & Garlands — 銃と花輪   作:たこ焼き 龍月

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第七章 ポーが見たもの

 

 ロアナプラの夜は、騒音に慣れている。銃声、クラクション、酔っぱらいの怒鳴り声、遠くの爆竹、割れる瓶、泣く女、笑う男。たいていの音は、街の皮膚に染みついている。だが、その夜、イエロー・フラッグの前に近づいてくる車の音は、いつもの騒音とは少し違っていた。焦っている。追われている。追っている。複数のエンジン音が、濡れた路面を削るように迫ってくる。店内の全員が、その音を聞いた。

 

 バオはカウンターの奥で固まった。

 

「……来るなよ」

 

 誰も答えなかった。

 

「おい、誰か来るなって言えよ!」

 

 ポーは入口の方を見たまま、低く言った。

 

「来る」

 

 バオは天井を仰いだ。

 

「神様、聞いてるか。俺は今、店を畳むべきだった」

 

 張は席から立たない。茶器の横に置いた手だけが静かに止まっている。バラライカも動かない。煙草の煙が細く上がる。キャスパーはグラスを置き、笑みを少しだけ薄くした。ダッチは入口の方へ視線を向け、ベニーは端末を抱えたまま青ざめている。アランは横で画面を見ながら、妙に明るい声で言った。

 

「追手、二台。レヴィたちの車が先に来ますね」

 

 ベニーは声を震わせた。

 

「それを明るく言う場面じゃないよ」

 

「暗く言っても来るものは来るから」

 

「嫌な合理性だな」

 

 店の外でブレーキ音が鳴った。続いて、レヴィの怒鳴り声。

 

「どけ、バオ! 店の前、借りるぞ!」

 

 バオが叫ぶ。

 

「貸さねえよ! 勝手に使うな!」

 

 次の瞬間、ドアが開き、ロックが転がるように入ってきた。続いてエドガー、ケースを抱えたチェキータ、証人の男たち、最後にレヴィが入る。レヴィは振り向きざまに外を睨み、笑った。

 

「いいタイミングだな。客が増えるぜ」

 

 チェキータが肩で息をしながら言う。

 

「あなたの運転、最悪」

 

「生きてるだろ」

 

「生きてることと、快適なことは違うわ」

 

「ロアナプラに快適さを求めんな」

 

 ロックはダッチの方へケースを示した。

 

「確保しました。取引データの一部と思われます。証人も二人」

 

 証人の一人が慌てて言う。

 

「俺たちは使われただけだ!」

 

 レヴィが横から言った。

 

「それ、今日何回聞いたかな」

 

 もう一人の証人が震える。

 

「本当だ! 俺たちはミスター・グレイ本人なんか知らない!」

 

 その名を聞いた瞬間、張とバラライカの視線が少しだけ動いた。キャスパーは口元に微かな笑みを戻す。

 

「やはり、その名前か」

 

 ロックが聞く。

 

「知っているんですね」

 

「噂だけならね」

 

 キャスパーは言った。

 

「ミスター・グレイ。商売の境目を食う男だ。武器そのものを売るより、武器が動く時に必要な信用、保証、港、護衛、書類、紹介状を横取りする。自分の看板は立てない。いつも誰かの名前の影にいる」

 

 バラライカが低く言う。

 

「他人の命令を偽る鼠か」

 

 張が穏やかに続ける。

 

「他人の港を使う狐でもある」

 

 レヴィが外へ視線を向けた。

 

「で、その鼠だか狐だかの犬が来てるぞ」

 

 店の外に、追手の車が止まった。ライトが消える。ドアが開く音。足音。数は多くない。だが、動きは早い。店内の客たちは、ようやく本当にまずいと悟った者から順に床へ伏せたり、奥へ逃げたりし始めた。バオはカウンターの下から顔だけ出し、涙目で叫んだ。

 

「頼むから外でやれ!」

 

 レヴィは笑った。

 

「努力する」

 

「努力じゃ足りねえんだよ!」

 

 チェキータがケースをアランへ投げるように渡した。

 

「中身、見て。開けたら爆発とか、通知とか、そういう面倒なのは困るわ」

 

 アランは受け取りながら顔をしかめた。

 

「投げないでくださいよ。高そうなんだから」

 

 ベニーが隣で言う。

 

「高いだけならまだいい。面倒も高い」

 

 アランはケースをテーブルに置き、ベニーと並んで確認を始めた。二人の指が画面とケースの縁を行き来する。張の部下とホテル・モスクワの兵が店内の左右に散り、キャスパーの私兵たちも自然に位置を取る。誰も命令しない。だが、全員が自分の場所を知っていた。

 

 外から男の声がした。

 

「中の者へ。ケースを渡せば、これ以上の衝突は避けられる」

 

 レヴィが叫び返した。

 

「嘘つけ! 避ける気ある奴は、追いかけてこねえよ!」

 

 チェキータが横から言う。

 

「言葉は乱暴だけど正しいわ」

 

「お前に採点されたくねえ」

 

「七十点」

 

「低いな!」

 

 ロックが入口近くに立った。ダッチが彼を止めようとする前に、ロックは声を上げた。

 

「あなたたちは、ミスター・グレイの部下ですか」

 

 外の声が少し沈黙した。

 

「その名をどこで聞いた」

 

「使い捨てにした人たちが、よく喋ってくれました」

 

 証人の男たちが震えた。

 

「おい、俺たちのことかよ!」

 

 レヴィが振り返る。

 

「黙ってろ。今は役に立ってる」

 

 ロックは続けた。

 

「三合会の名前、ホテル・モスクワの名前、ラグーン商会の名前。全部を使った。キャスパーの荷を盗んだ。ブルー・カイトという殻会社を置いた。ここまでやって、ただケースを返せと言われても、誰も納得しません」

 

 外の男が答えた。

 

「そのケースは、お前たちのものではない」

 

 キャスパーが店の奥から穏やかに言った。

 

「僕のものではあるよ。少なくとも、かなりの部分はね」

 

 男は沈黙した。

 

 張が続ける。

 

「この港で動いたものでもある」

 

 バラライカも言った。

 

「私の名を使ったものでもある」

 

 ダッチが煙草をくわえながら言う。

 

「うちの名前まで残した。だったら、全員の問題だな」

 

 レヴィがにやりと笑った。

 

「おめでとう。返す相手が多すぎて、誰にも返せねえ」

 

 外の気配が変わった。

 

 チェキータが低く言う。

 

「来るわね」

 

 エドガーが短く答える。

 

「来る」

 

 ポーが一歩前へ出た。

 

「入口は俺が見る」

 

 バオが震えた。

 

「その大きさで入口に立つと、店が狭く見えるんだよ」

 

 ポーは答えない。

 

 外の男たちが動いた。だが、真正面から飛び込むほど愚かではなかった。窓側へ一人、裏口側へ二人。正面にいるのは囮。店内の配置を見て、相手も正面から潰すのは無理だと判断したのだろう。ロアナプラに不慣れでも、完全な素人ではない。

 

 張の部下が裏口へ向かう。ホテル・モスクワの兵が窓側を押さえる。レヴィは正面へ出ようとしたが、チェキータが腕を伸ばして止めた。

 

「待って」

 

「あ?」

 

「正面は囮」

 

「わかってるよ」

 

「わかってて行くの?」

 

「囮は噛みつくためにあるだろ」

 

「それ、犬の発想よ」

 

「うるせえ」

 

 次の瞬間、窓の外で短い衝突が起きた。銃声ではなく、金属音と低い呻き声。ホテル・モスクワの兵が相手を押さえたのだろう。裏口側でも三合会の部下が動いた。店内はまだ大きく崩れていない。だが、正面の男がその隙を狙って動いた。

 

 ポーが立ちはだかった。

 

 男が何かを構えようとする前に、ポーは一歩前へ出た。その動きは速いというより、距離の感覚がおかしかった。大きな影が近づいたと思った時には、男の手首は押さえられ、身体は壁際に追い込まれていた。派手な音はない。必要な分だけ動き、必要な分だけ止める。男は息を呑み、床に膝をついた。

 

 ポーは低く言った。

 

「座れ」

 

 男は座った。

 

 レヴィが呆れたように言う。

 

「ほんと便利だな、その一言」

 

 チェキータが笑う。

 

「あなたも覚えたら?」

 

「俺が言ったら撃たれる」

 

「自覚あるのね」

 

「うるせえ」

 

 バオはカウンターの下で呟いた。

 

「店がまだ壊れてない……奇跡か?」

 

 ベニーが端末を見ながら言う。

 

「まだ安心しない方がいい」

 

「お前はそういうこと言うな!」

 

 アランがケースを開けずに外部確認を終えた。

 

「ケースは通知型。でも開けなくても一部読める。中身は本物っぽい。キャスパーの取引関連データ、保証書の写し、護衛契約、あと……」

 

 アランの声が止まる。

 

 ベニーも画面を見る。

 

「これ、三合会とホテル・モスクワの名前だけじゃない」

 

 ロックが聞く。

 

「何が入っている?」

 

 ベニーは顔を上げた。

 

「ロアナプラ内の小規模ブローカー、港湾業者、密輸グループ、情報屋の名前がまとめられてる。しかも、どこが三合会寄りで、どこがホテル・モスクワを恐れているか、どこがキャスパーの商売に接触できそうか、分類されてる」

 

 張の表情が初めて少し変わった。

 

 バラライカの目が冷たく細くなる。

 

 キャスパーは低く言った。

 

「なるほど。僕の荷だけではないね」

 

 ダッチが煙草に火をつけた。

 

「ロアナプラの小物地図か」

 

 アランが続ける。

 

「それだけじゃありません。旧冷凍倉庫の受け渡しは、このデータの一部を回収するためだったみたいです。ミスター・グレイは、キャスパーの取引データに、ロアナプラ内部の勢力関係を組み合わせようとしていた」

 

 ロックは息を呑んだ。

 

「つまり、ロアナプラで商売するための地図を作っていた」

 

 キャスパーが微笑む。

 

「僕が欲しいくらいだ」

 

 バラライカが即座に言った。

 

「冗談でも欲しがるな」

 

「半分くらい本気だった」

 

 レヴィが叫ぶ。

 

「この状況でそれ言うな!」

 

 張は静かに言った。

 

「このデータは、誰か一人が持つには危険すぎるね」

 

 バラライカが答える。

 

「同意する」

 

 キャスパーは肩をすくめた。

 

「僕のデータも含まれているんだけどね」

 

「盗まれた時点で、あなただけの問題ではない」

 

 バラライカが冷たく言うと、キャスパーは苦笑した。

 

「その理屈、二回目だ」

 

「必要なら三回言う」

 

 張はポーに押さえられた男へ視線を向けた。

 

「君たちは、このデータを誰へ渡すつもりだった」

 

 男は黙っている。

 

 ポーが少しだけ近づく。

 

 男はすぐに答えた。

 

「知らない。旧冷凍倉庫で受け取った後、指定された場所へ運ぶだけだった」

 

「指定された場所は?」

 

「港の古い税関保管庫だ」

 

 ベニーが端末で地図を表示する。

 

「古い税関保管庫……今はほとんど使われてないけど、港湾倉庫群の中心に近い」

 

 エドガーが言う。

 

「次の受け渡し場所か」

 

 アランが画面を見ながら言った。

 

「時間は?」

 

 男は震えながら答える。

 

「日付が変わる前。そこに、買い手が来る」

 

 レヴィが笑った。

 

「買い手だあ?」

 

 チェキータの目が鋭くなる。

 

「ミスター・グレイ本人?」

 

「わからない。だが、仲介人は来る。データを持っていけば、残りの金が出る」

 

 キャスパーは静かに言った。

 

「ロアナプラの地図を売る気か」

 

 張が薄く笑った。

 

「外の人間にしては、大きく出たね」

 

 バラライカの声はさらに冷たくなった。

 

「なら、買い手ごと捕まえる」

 

 ダッチが低く言った。

 

「全員が同じことを考えている顔だな」

 

 レヴィが言う。

 

「今度こそ撃ち合いか」

 

 ロックはすぐに言った。

 

「まず、誰が行くか決めましょう」

 

 チェキータが笑う。

 

「また仕切るのね、交渉係」

 

「仕切らないと、全員が同時に動きます」

 

「それはそれで面白いわ」

 

「面白くありません」

 

 張は穏やかに言った。

 

「ロックの言う通りだ。全員が動けば、買い手は逃げる」

 

 バラライカが言う。

 

「だが、動かないわけにはいかん」

 

 キャスパーが続ける。

 

「僕も行きたいところだけど、今行くと目立ちすぎるかな」

 

 レヴィが鼻で笑う。

 

「自覚あんのか」

 

「僕はわりと目立つ」

 

「その白い服やめろ」

 

「似合うだろう?」

 

「ムカつくほどな」

 

 ポーが低く言った。

 

「税関保管庫は罠だ」

 

 全員の視線がポーに集まった。

 

 ロックが聞く。

 

「なぜそう思うんですか」

 

 ポーは押さえていた男から手を離し、男を張の部下へ引き渡した。男は逃げなかった。逃げられないことを理解していた。

 

 ポーはテーブルに置かれたケースを見た。

 

「ケースは本物。でも全部じゃない」

 

 アランが頷く。

 

「たしかに、一部だけです」

 

「一部だけをわざと取らせた」

 

 ベニーが眉をひそめる。

 

「わざと?」

 

 ポーは続けた。

 

「追わせるためだ。倉庫、ロッカー、冷凍倉庫、ケース。全部、次を指している。きれいすぎる」

 

 ロックは息を呑んだ。

 

「税関保管庫も、見つけさせるための場所」

 

「たぶん」

 

 張は静かに頷いた。

 

「面白いね。ロアナプラの嘘なら、もっと余計なものが混じる。酒、金、女、借金、個人的な恨み。だが、これは線がまっすぐすぎる」

 

 バラライカが言う。

 

「軍の作戦でも、ここまでまっすぐなら疑う」

 

 キャスパーはポーを見た。

 

「では、ポー。君ならどこを見る?」

 

 ポーは少し沈黙した。

 

 それから言った。

 

「保管庫の外」

 

 ロックが聞く。

 

「中ではなく?」

 

「買い手を見る場所。逃げる道。見張る場所。嘘を置く場所じゃなく、嘘を見る場所」

 

 ダッチは煙を吐いた。

 

「いいな」

 

 エドガーも頷く。

 

「同意する」

 

 レヴィが言う。

 

「で、結局どこだよ」

 

 ポーはベニーの地図に近づき、指で一か所を示した。古い税関保管庫の裏手。今は使われていない貨物監視塔と、その下に広がる小さな駐車区画。そこからなら、保管庫の正面、裏口、海側の搬入口が見える。

 

「ここ」

 

 ベニーが画面を拡大する。

 

「古い監視塔……たしかに視界が広い。通信設備は死んでるけど、高さがある。見張りにはいい」

 

 アランが言う。

 

「しかも、古い保管庫へ向かう全員を観察できる」

 

 キャスパーが微笑む。

 

「ポー、君は本当にいい目をしている」

 

 ポーは答えない。

 

 レヴィが横から言った。

 

「でかいだけじゃねえんだな」

 

 ポーは短く返した。

 

「お前はうるさいだけじゃない」

 

 レヴィは一瞬黙り、それから笑った。

 

「気に入ったぜ、でかいの」

 

 チェキータが呆れたように言う。

 

「今ので?」

 

「褒め方がわかってる」

 

「変な人たち」

 

 ロックはポーへ言った。

 

「ポー、少し話せますか」

 

 ポーはロックを見た。

 

「今?」

 

「今です」

 

 ポーは頷いた。

 

     *

 

 店の外、イエロー・フラッグの脇の路地に、二人は立った。店内ではまだ議論が続いている。張、バラライカ、キャスパー、ダッチ。あの四人が同じ場所で話しているだけで、店の壁が少し緊張しているように感じる。路地には湿った風が通り、遠くで港の音が聞こえた。

 

 ロックはポーを見上げる形になった。近くで見ると、彼はやはり大きい。だが、威圧感だけの男ではない。目が静かだった。何かを見ている。人の動きだけではなく、場の歪みを見ているような目だ。

 

「あなたは、ずっと“この街の嘘じゃない”と言っていますね」

 

 ポーは頷く。

 

「なぜ、そんなにわかるんですか」

 

「見てきた」

 

「どこで」

 

 ポーは少し黙った。

 

「いろいろ」

 

 ロックはそれ以上深く聞かなかった。聞かれたくない過去は、この街には多い。ロアナプラにいる者ならなおさらだ。

 

 ポーはゆっくり話し始めた。

 

「ロアナプラの嘘は、汚い」

 

「それは前にも聞きました」

 

「汚い嘘は、生きている」

 

 ロックは黙って聞いた。

 

「借金を隠す嘘。仲間を逃がす嘘。裏切りを隠す嘘。怖くないふりをする嘘。全部、匂いがある。余計なものが混じる」

 

「今回の嘘には、それがない」

 

「ない。まっすぐすぎる。人を動かすためだけの嘘だ」

 

 ロックは少しだけ目を伏せた。

 

「街を道具にしている」

 

 ポーは頷いた。

 

「外の人間は、街を地図で見る。誰がどこにいて、どこと繋がっているか。線で見る」

 

「ロアナプラの人間は?」

 

「線の下にある泥を見る」

 

 ロックは小さく息を吐いた。

 

「それが見えない人間が、今回の線を引いた」

 

「そう」

 

「ミスター・グレイ」

 

「名前はどうでもいい」

 

 ロックはポーを見る。

 

「どうでもいい?」

 

「名前は変えられる。匂いは変えにくい」

 

 ロックは少しだけ笑った。

 

「犬みたいなことを言いますね」

 

 ポーは真顔で答えた。

 

「チェキータに言うな」

 

 ロックは思わず笑った。

 

「言いません」

 

 少しだけ空気が緩んだ。

 

 ポーは港の方を見た。

 

「ロック」

 

「はい」

 

「お前は、この街の嘘を覚えてきた」

 

「褒めていますか」

 

「半分」

 

 ロックは苦笑した。

 

「その言い方、レヴィが嫌がります」

 

「知ってる」

 

「わざとですか」

 

「少し」

 

 ポーの口元は動かなかったが、ほんの少しだけ笑っているように見えた。

 

 ロックは路地の奥を見た。

 

「税関保管庫には行くことになりますね」

 

「行く」

 

「罠でも」

 

「罠を見るために行く」

 

「誰が、嘘を見ている場所を押さえるか」

 

「そこが本当」

 

 ロックは頷いた。

 

「わかりました。みんなに伝えます」

 

 ポーは短く言った。

 

「急げ」

 

 その時、店内からバオの怒鳴り声が聞こえた。

 

「だから俺の店で作戦会議するなあ!」

 

 レヴィの声も続く。

 

「うるせえな、もう壊れてねえんだからいいだろ!」

 

 チェキータの声。

 

「まだ、ね」

 

 バオの悲鳴。

 

「まだって言うなあ!」

 

 ロックは少し笑い、それからすぐに真顔に戻った。

 

 次の場所は、古い税関保管庫。

 

 だが、本当に見るべきなのは中ではない。

 

 その外で、誰がロアナプラを地図のように眺めているのか。

 

 ポーが見たものは、証拠ではない。

 

 嘘の形だった。

 

 そして、その嘘はロアナプラのものではなかった。

 

 

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