シスターさんのお秘め事   作:とろみ

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前話に2000文字程度の加筆を行いました。


14.『生』の望み

 五日前、一発の弾道ミサイルから始まったエデン条約の騒乱は、その規模に反してその日の内に終結した。

 

 結果はアリウス分校の作戦失敗。

 アリウス分校が企てた、トリニティ、ゲヘナ両校の殲滅という目的は達成されなかった。

 

 アリウス分校の作戦阻止に大きく貢献したのは正義実現委員会と風紀委員会、両校の治安維持部隊に加え、連邦捜査部『シャーレ』の三つの組織だった。

 

 現場を知らない者には、アリウス分校という無名の学園がキヴォトスでもトップクラスの二校を無謀にも同時に相手取ろうとして、順当に敗北したように聞こえるかもしれない。

 

 しかし実情で言えば、アリウス分校は両校を自治区ごと滅ぼせるだけの用意をしていたし、トリニティ、ゲヘナ両校がそれを阻止できたのは、応援要請で来ていた連邦捜査部シャーレの顧問である『先生』と呼ばれる大人の力によるところが大きかった。

 

 先生はキヴォトスの住人と違い銃弾一つが致命傷になるのにもかかわらず果敢に立ち向かい、腹部に発砲されても立ち上がり騒乱の解決に尽力した。

 

 具体的には内輪もめで瓦解しかけていた臨時トリニティ上層部を取り成してまとめ上げ、類まれな戦闘指揮の腕前で戦いを有利を進めた。

 そしてそれらを凌ぐほど大きな活躍である、ユスティナ聖徒会の討伐という快挙を成し遂げた。

 

 戒命を依代にして無限に復活するユスティナ聖徒会に対して、先生は戒律に矛盾を作ることで対処したのだ。ユスティナ聖徒会はいわば胎児で、戒命という母体に依存していた。

 故にその母体である戒命、今回であれば一部を改ざんしたエデン条約条項に異常があれば、そこに依存しているユスティナ聖徒会もまた異常が起こり、動作しなくなる。

 先生は上手くその脆弱性を突いたわけだ。

 

 そして無限に復活するユスティナ聖徒会を失ったアリウス分校の主な戦力はアリウス一の先鋭部隊『アリウススクアッド』、人工天使『アンブロジウス』だけとなり、それらは先生の指揮で動くトリニティ、ゲヘナの混合部隊によって制圧された。

 

 とんでもない戦果である。

 先生がその場にいるだけで、まるで世界が塗り替えられるように暗い悲劇は明るい青春の物語へと変容する。

 

 ブルーアーカイブをプレイしていた頃はそのようなものだから、と納得していたが、今の私からすると周辺の環境、法則すら塗り替える様はまるでグッドネイバー最大の宿敵『終末因子』と似通って見える。

 

……流石に考えが飛躍しすぎか。

 

 時計を見るともう夜10時を越えるところだった。大分長いこと考えこんでいたらしい。

 お茶でも淹れて一息つこう。街の復旧作業のお礼にちょっと良い茶葉を貰ったし、それを試してみようかな。

 

 ピンポーン。

 

 ちょうど立ち上がったタイミングでインターホンが鳴らされた。

 

 おや、こんな時間に来客か。

 といってもこの時間に来るのなんて一人しかいないが。

 

 

 

 

 

✚ ✚ ✚

 

 

 

 

 

「サクラコ。なんだか久しぶりですね」

 

「ええ。最近はモモトークでしか連絡が取れていませんでしたからね」

 

 机についたサクラコは少しやつれていて、不調を周囲に気付かれない様にか普段より濃いメイクが施されていた。

 

「体調は大丈夫ですか?少し前まで重症で寝込んでいたわけですし、働き過ぎていませんか?」

 

「心配いりません。救護騎士団にも完治したとお墨付きを得ています」

 

 後半の質問をはぐらかしたな。

 話したくないなら別にいいけども。

 

「そうですか、なら良かった。まだ食事の用意はしていないので、リクエストがあるなら聞きますよ。何がいいですか?」

 

「いえ、今日は夕飯を共にしようと来た訳ではなく、仕事のお願いに来たんです」

 

「仕事?」

 

「はい。五日前の事件にて再びアリウス生たちを捕縛したので、前回と同じように彼女たちの更生プログラムを組んで欲しいのです」

 

「なるほど、構いませんよ。以前よりもプログラムは最適化されていますし、既にプログラムを受けているアリウス生からの補助も期待できます。追加される負担は軽微なものでしょう。あなたから正義実現委員会の方へ話を通してくれれば、細かいところはこちらで調整しておきますよ」

 

「ありがとうございます。明日にでも連絡は済ませておきますね。……それと、えー、その……」

 

 サクラコはいつものようにお礼を言うと、今度は歯切れ悪く唸りながらテーブルに視線を落とした。

 

 何か業務を私に伝えたい?違うか。

 サクラコは伝えるべき事柄とそうでないものを事前にきちんと分けるので、このような迷い方はしない。

 であれば……個人的な相談?

 なんにせよサクラコが話すのを待つか。

 

 そうしてサクラコの心の準備ができるまでしばらく待っていると、ついにサクラコが顔を上げた。

 

「……いえ、なんでもありませんでした。それでは予定があるので、今日は失礼します。おやすみなさい、アルマ」

 

 サクラコはそう言うなり立ち上がり、足早に玄関へ向かう。

 

 ……こ、こいつ、ここまで待たせといてなんでもないで通すつもりか。

 露骨に何かありますよーって雰囲気出しといてこの野郎。

 

 はー……、しょうがない。聞きだすか。

 

「もう行くんですか?お茶ぐらい飲んでいったらどうです?」

 

「申し訳ないのですが、一刻も早く解決すべき案件がいくつかあるのです」

 

 こちらに振り向きもせずそう答えるサクラコ。

 その声音は普段外で振る舞っているふうな、内心を悟らせないものであった。

 

 ……よーし、幼なじみの私にもそういう態度を取るならこっちにも考えがあるぞ。

 

 心を読ませてもらおう。

 といっても私が読めるのは、死ぬまで声に出すつもりが無い言葉に限定される。

 なのでもし読めないなら読めないで、これから私以外の誰かに相談するということであるので、これ以上この件を私が気にする必要は無いことが分かるからいい。

 

 右の耳に軽く手を当てる。

 そうすると耳の穴を塞いでいる不可視の膜を鼓膜ごと氷柱で破ったような感覚の後、声が聞こえてきた。

 

 ふむふむ、……へえ?

 

「『五日前の事件で、自分はシスターフッドの長であるのに何もできずただ倒れていただけだったから。』だからそう余裕無さげに焦っているのですか?」

 

 サクラコの動きがピタリと止まる。

 そして壊れた機械のようにぎこちない動きでこちらを向いた。

 

 留めていたはずの内心を暴かれ戸惑っている。

 

「なっ、なぜ……!?」

 

「あれは誰が見てもしょうがないことでしたよ。トリニティもゲヘナも、ミレニアムの機材ですらあの弾道ミサイルを捉えられなかったと聞きます。それがあなたを含めた首脳陣に当たるよう放たれていたのですから、重傷になり動けなかったのは当然のことです」

 

 困惑するサクラコへ吐息が当たる距離にまで近づいて話を続ける。

 この距離だと驚愕か恐怖か、興奮で瞳孔が開くのが見えるな。

 心の内、声に出されることのない悲鳴もよく聞こえる。

 

「……ああ、なるほど。気にしているのはミサイルに撃たれ無様に気を失っていたことだけではない。騒乱の最中、あなたのせいでトリニティに更なる疑心の種を芽吹かせてしまったことを気に病んでいるのですね」

 

 

 

 

 

✚ ✚ ✚

 

 

 

 

 

 言うつもりの無かった内心を完璧に言い当てられたサクラコは、肯定も否定もせず弱弱しく体を震わすだけだった。

 

 ……?なんだこの反応。

 

 私の知る歌住サクラコという人間は異様に頑固で精神が強く、辛いことや失敗があっても次に活かす人間だ。

 心を読んでおいて突飛な発想だが、今のこれは演技を疑うレベルである。

 

 ……少し揺さぶってみるか。

 

「現れたユスティナ聖徒会とシスターフッドの関係性、そしてミサイルが発射された場所がシスターフッドが管理していた聖堂の遺跡だったこと、なにより秘密の多いシスターフッドという組織とそれを体現するあなた。これらからパテル派はシスターフッドとアリウスの共謀を疑い、結果騒乱は更に加速し、お互いに助け合うべき時だというのに味方同士での衝突が起こりました。もし先生がいなければトリニティは断裂していたでしょう」

 

「……ッ!」

 

 ドンッと振動が走る。

 私の胸倉を掴んだサクラコが、そのまま力任せに私を壁に押し付けたのだ。

 しかしすぐに我に返ったサクラコは手を放した。

 

「……わ、わかっています。私に力が足りなかったことは……。ですので、もう、やめてください」

 

 やっぱりだ。心が弱っている。

 体を支える足は震え、手は祈るのではなく懇願するように組まれていた。

 

 ……ほお。たかだか知性と品性が少なめな連中の暴走がここまでサクラコに影響を与えてくれるとは。

 私からすればあの騒乱は全てただの既定路線であったが、よくよく考えてみると、サクラコからすれば今回の件はただひたすらに運が良かっただけで、一歩間違えれば自分のせいでトリニティが崩壊していたという認識になるのか。

 

 気付かなかったが、これはつまり……()()

 

「目を背けてはいけませんよ、サクラコ。あなたは敵を過小評価してしまい、反対に同胞を過大評価してしまいました。実に甘く楽観的なあなたの予測は最悪の形で覆され、多くの者が憎しみと嘆きを心に宿しました」

 

 私の言葉を受けたサクラコはぎゅっと目を閉じて何も言わず俯くだけ。

 

 ───懺悔もできない、迷える子羊。

 ……愛おしい。いつもより小さい、等身大の少女に戻ったサクラコ。

 下らない民衆の愚かさという罪すら抱え込んで、自分のせいだと心を痛めている!

 嗚呼!私の光、ワタシの救世主はこんなにも美シい!

 

「ごめんなさいサクラコ。あなたを傷つけたかったわけじゃなかったんです」

 

 優しくサクラコを抱き寄せ、耳元に口を寄せる。

 

「───私はただ、もういいんじゃないか、と言いたいんです」

 

「あなたは十分働きました。あなたは全力で備え、努力しました。あなたは誠実で、正しくあろうとし、世界を良くしようとしました。それでも理想には届かなかった」

 

「───ですがそれは悲観することではないのです。あなたは自分の限界を知れたんです。差し出したその手がどれほど伸ばせられるか、どれほど掬い上げることができるか。それを判断できるようになっただけです」

 

 腕の中のサクラコは世界の冷たさが現実のものとなったかのように感じているのか、小さく体を震えさせていた。

 

「心配することはありません。この世界はあなたが思っているより優しく、愛が溢れています。あなたが動けなくとも正義実現委員会が、風紀委員会が、シャーレの先生が。今回のように、あなたよりも上手く、あなたより広く救いの手を差し伸べます」

 

 サクラコがこれ以上は聞きたく無いと言わんばかりに私から離れようとしたので、回した腕に力をこめて、強く抱きしめる。

 

「『高ぶりは破滅に先立ち、傲慢な心は倒れに先立つ。』……あなたも知る一節でしょう?自らの身の丈を知り、慎ましやかに生きる。それでいいじゃないですか。あなたにシスターフッドの首長、ましてや世界平和の実現など大それた願いだったのです。それは分をわきまえない傲慢な望みで、あなた自身を蝕む呪い。あなたは賢いのですから、心の内ではもう理解できているのでしょう?」

 

 サクラコの震えは止まり、ついに抵抗は無くなった。

 もう少し。もう一押しで私の願いが叶う。

 

「……大丈夫です。私がついていますよ。誰にもあなたを責めさせません。私はいつだってあなたの味方です。ですから……、───ひゃんっ!?」

 

 突然耳たぶに感じた湿気を帯びる柔らかな圧迫で思考が乱れる。

 動揺して動きが止まった数秒で、足をかけられて廊下へ後ろ向きに倒れ込む。

 抱きかかえていたせいで一緒に倒れたサクラコの重みが私の体にかかる。

 

「なっ、なにが……?」

 

 いまだ混乱も冷めない中、ごろんと体勢をうつ伏せに変えさせられ、そのまま腰を押さえられた。

 とっさに後ろを見ようとその状態から上半身を反らした瞬間、脇腹に違和感。

 

「へっ……?なにを……」

 

 馬乗りになったサクラコの細い指先が、的確に脇腹の敏感なポイントをくすぐってきた。

 

「んふっ、あっ、やめっ」

 

 背筋をのけ反らせるむず痒さが体に走る。

 その手を止めようと闇雲に手を伸ばしてもうつ伏せで背後が見えない上、すぐにくすぐる位置を変えるので中々捕まえられない。

 腰を触ったかと思えば、肋骨の間をなぞるように指を滑らされる。

 

「んっひ!?あッ!ひぃ、んふっ」

 

 触られる度上がっていく感度が、更に敏感に脳へ指の動きを伝えてきて呼吸が難しくなる。

 情けない声が出るのを耐えようと脇を締めれば、サクラコの蠢く指先を捕まえられなくなって、捕まえようと腕を動かせば、開いた脇を狙われる。

 

「ちょっ、ちょっとやめなさっ、んふっ!?さっサクラコ!ッふ……!んあっ、ひっ、あははっ!あはっ、ひゅっふ、っ~んぅ!?あっ、あっ!ふぁはっ、あははははっ!」

 

 いよいよびくびくと跳ねる背中が制御できなくなり、体をよじらせて逃げようとしても腰に乗ったサクラコがそれを許さない。

 

「んぅっ~~~~!???!??」

 

 

 

 

 

✚ ✚ ✚

 

 

 

 

 

「はーーーっ、はーーーっ」

 

 どのくらい経ったのか分からないが、胸が圧迫されるうつ伏せの体勢から解放され、しばらくぶりに仰向けで深く呼吸する。

 サクラコはそんな私に馬乗りになって一緒に呼吸を整えていた。

 

 謝っても降参してもくすぐりは続けられた。

 気を失ったフリをして、サクラコが心配して手を止めた隙をついて捕まえなければ永遠に続いてた可能性すらあった。

 くすぐられ過ぎてまだ触られているような感じが残っている。

 

「……アルマ、神の子について、昔シスターさまに聞いたことを覚えていますか?」

 

「はい?」

 

 唐突にそう問いかけてきたサクラコの顔は、まぶたが赤く腫れて涙の跡はあれど、打ちひしがれためそめそとした表情ではなく、言語化するのは難しいが、あえて言うなら前に進む者の顔になっていた。

 ……悔恨と悲観を乗り越え、心は折れず、むしろ強くなって立ち直った。

 

 こうなれば私にはもうどうしようもない。

 残念なことにまたもや私の企みは失敗したわけだ。

 

「神の子がすべての人々のすべての罪を永遠に渡って贖うことを知った時、私はあなたの手を引いて急いでシスターさまの元へ走りました。何も知らなかった私は、罪の重荷が神の子を圧し潰してしまうんじゃないかと思って。できるならばその重荷が少しでも軽くなるよう、共に背負いたいと」

 

「……ありましたね、そんなことも」

 

 その日の朝のことは私も覚えている。

 自室で寝ているのになぜかサクラコの声が聞こえたので、目を開けるとちょうど今みたいに馬乗りしたサクラコが私を呼んでいたのだ。

 夢かと思った私は再び目を閉じて寝ようとしたが、結局着替える間もなくパジャマのまま連行された。

 

「そんな私に対してシスターさまは丁寧に教えてくれましたよね。神の恵みと無限の愛で支えられた神の子は、罪の重さに膝を屈することは永久に無い。神の子の贖罪は一度で、そして完全に人の罪を背負い、解決したと。それを聞いて心底安心したのを覚えています」

 

 目を伏せて懐かしい昔の記憶に浸るサクラコは、でも、と言葉を続ける。

 

「それでも私は、それを聞いてなお、私の心はシスターさまに話を聞く前と同じままでした。その重荷を共に背負いたい、いや、いつでも背負う覚悟をしていたい。そう思いました」

 

「……」

 

「あの日のシスターさまの言葉を今日まで疑ったことはありません。神の恵みと無限の愛に支えられた神の子に助力など不要で、むしろ私などが共に罪を背負おうなど思うことすら、かの契約に対して無礼だというのは理解しています。ですが、この思いが傲慢で分不相応でも、私はこの思いを捨てられませんでした。私の心はずっとその形で、変わることはないのです」

 

 サクラコは馬乗りの体勢のまま、上半身を倒して私に体を預ける形で寝そべった。

 そして私がしたように耳元で話を続ける。

 

 ……顔に当たるサラサラした髪と耳に当たる吐息がくすぐったい。

 

「アルマ、私は今より……もっと強く、もっと賢くなります。私よりすごい人たちがいて、私なんかの力が必要なくても、共にいる努力をしたい。だって、私の思う平和は、みんな……手を繋いでいるんです……。それで……きっと……」

 

 サクラコの言葉はだんだんと途切れ途切れになっていき、やがて穏やかなリズムの呼吸へと変わった。

 

「サクラコ?」

 

 軽く体を揺すってみても反応が無い。寝ている。

 緊張の糸が切れて本来の疲労が今まとめて来たのだろう。

 重症の体から復帰した直後から五日間ろくに休みもせず働けたのだから当然か。

 

……はあ、ひとまずベッドに運ぼう。

 

 

 

 

 

✚ ✚ ✚

 

 

 

 

 

 壁や床にサクラコの体をぶつけないよう、注意しながらベッドまで運ぶ。

 シワになってはいけないので、制服を脱がしてサクラコ用の寝間着を着せる。

 起こしてもいいかと結構雑に着替えさせたが、サクラコはのん気に寝息を立てていた。

 あとは布団をかけて、これでよし。

 

 ……ああ、そういえば案件があるとか言ってたし、行政官にサクラコのことを連絡しないと。

 

「もしもし、行政官様ですか?来栖アルマです。……ええ、はい。シスターサクラコは私の家で眠らせました。はい、はい。寛大なご配慮に感謝いたします。……はい。朝のお祈りまでには間に合うかと。ええ、では失礼します。」

 

 ……ふう。

 行政官も復帰してからのサクラコの鬼気迫る働き方を心配していたようで、すんなり話は通った。

 

 連絡も終え、ベッドに寝るサクラコを見る。安らかな寝顔だ。

 涙の跡をぬぐうついでに頬をつついてみると、くすぐったそうに顔をしかめる。つつくのを止めて頭を撫でると、今度はあどけない笑顔を見せた。

 幼いころから変わらない無防備な眠り。

 

「ごめんなさい、サクラコ。あなたを追いつめるようなことを言って」

 

 ───でも、仕方ないですよね?だって、心はずっとその形で、もう、変わることがないんですから。

 

 月明りも入らない夜の影の中、悔悛無き懺悔だけが空しく響いた。

 

 

 

 

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