ホラー世界の狂言回しになったので、怪異どもをボコして回ることにした 作:いつもより多く回っております
「いざ、怪異探偵猿回しとその助手牧駒ミウが、絶海の孤島”三奈頃島”へ!」
「ああここにいたのか、牧駒ミウ」
「んっひゃう!!」
船の甲板で、なにやらビシッと指を指していた牧駒ミウに声をかける。
すると、顔を真っ赤にして飛び上がり、それからバランスを崩しかけて慌てて俺がそれを支えた。
ここ船の上だぞ、普通に危ないからな?
「ととと、突然現れないでくださいよ!」
「いや普通に歩いてここまできたんだが……」
何にしても、俺達は現在依頼を受けて今回の目的地、三奈頃島を目指していた。
牧駒ミウに話を持ちかけたら、二つ返事で了承された。
日当に関しては別にそこまで興味がなさそうだ。
実家が……実家が太い!
他にもバイトはしてないけど、結構でかい収入源があるらしい。
何してるんだろうな……?
「というか、なんていうか……アレですよね、三奈頃島。名前が……」
「言ってやるな、そのせいで売値がつかないわネット上でおもちゃにされるわで大変だったんだからこの島……」
「なんでその島が惨劇の舞台になるんです?」
「今回俺達を招待した依頼人が譲り受けて、館まで立てて俺達を呼び出したらしい」
「……これ推理する必要あります?」
ないけど……
さっきの怪異探偵の発言といい、牧駒ミウは今回の一件をミステリーか何かと勘違いしているらしい。
「別に俺は、事件の推理なんてするつもりはないぞ?」
「ええー、でも折角こんな完璧なシチュエーションなんですから、頑張って推理しましょうよ……」
「そうはいっても、今回の事件中に転移が発生したらその時点で情報全部わかっちゃうからなぁ」
「ネタバレ探偵!? い、いやでもその場合でも、動機を推理したりするパターンもありますし……ホワイダニットですよ、ホワイダニット!」
「動機も全部筒抜けだが……」
「こ、このストーカー!」
なんで俺が怒られなきゃ行けないんだ。
いやまぁ冗談なのはわかってるんだけど、牧駒ミウってたまに脳みそから直接言葉を出力するよな。
「そもそもの話、今回は
「と、いいますと?」
「俺に推理をさせること自体が、怪異の発生につながるからだ」
ここで、軽く今回の依頼について振り返ってみよう。
正確にはこれも推理の一種だからやっちゃダメなんだけど、それを言ったら牧駒ミウに情報共有できなくなるので、流石に説明くらいは許容範囲だ。
「今回、俺達を三奈頃島に招待したのは、
「こういう如何にもなお金持ちの説明でSNSでレスバって説明が入ることあるんですね……」
「まぁ、偏屈な人ってことだ。金満富蔵氏は俺達にある怪異の詳細を調査するよう依頼してきた。怪異の名前はエンカン」
俺がそう言うと、牧駒ミウは左手で宙にぐるぐると円を描き始めた。
そう、その円環。
「エンカンは生と死を司る神とされていて、金満富蔵氏が生まれ育った村で古くから信仰されていたそうだ」
「い、因習村……」
「実際、戦前には災厄が起こると人柱を立ててエンカンにそれが収まるよう祈ったそうだ」
「ひえー」
「で、この時に使われた人柱は基本他所からきた旅人でな、戦後にも村人が災厄を鎮めるために観光客を人柱にしようとしたのがバレて、実行犯と村の長連中が逮捕。以降エンカンに対する信仰は薄れていったとされる」
んで、これが起きたのが金満氏の子供時代。
金満氏は、エンカンに対する信仰がギリギリ残っていた時代の子どもだったわけだ。
「んで、それ以降は金満氏が金満商事を立ち上げ、発展させていく中で村にも色々と富を還元し、エンカンとは無関係なまちづくりが行われ、村は発展してきた」
「確か今は、普通の地方都市になってるんですよね」
「人口も一万人くらいいるな。そう考えると、エンカンっていうのは村の発展を束縛する害のある怪異だったってことになるわけだ」
少なくとも、金満氏はそう考えていた。
あんな前時代的な物があるから、村のバカどもはとっ捕まるのだ……と。
「けどここ最近、金満氏の周囲で立て続けに不幸があった。孫が交通事故にあって骨を折ったり、事業が上手く行かなかったり、何より金満氏に大きな病気が見つかった」
「最後は単にお年が原因なんじゃ……」
「まぁそうなんだが、それだけが原因じゃない。ともかく、そういう不幸に見舞われた金満氏は原因がエンカンにあるんじゃないかと考えて調査を依頼したわけ」
んで、なんで俺達が三奈頃島に招待されたかと言えば、金満氏がエンカンの社をここに移設したからだ。
今回怪異を調査するにあたって、エンカンを元の場所にそのままにした結果、町に被害が出ても困るとのこと。
金満氏は偏屈な人だが、郷土愛だけは本物なのだ。
「というわけで俺達はこれから、三奈頃島を舞台に怪異”エンカン”を追い詰めることになる」
「ははぁー、怪異探偵絶海の孤島編、はじまりですね!」
「残念ながら始まらない。ここからやるのは――」
俺は拳を振り上げて、
「怪異の
甲板に向けて、振り下ろした。
すると、船に取り憑いていた怪異がふにゃあああああああ! という断末魔と共に消滅した。
「うわああああいきなり何するんですか!?」
「船に取り憑いていた怪異、カプヘリを退治した」
「カ、カプヘリ? どんな怪異なんです? 名前からは想像もつかないんですが」
「こいつは取り憑いた乗り物をCAPC◯M製にする」
「そんな名は体を表すやつあります!? っていうか沈没不可避じゃないですか!」
いや、退治したからもう沈没はしないぞ。
それに今回沈没するタイミングは三奈頃島から脱出しようとしたタイミングだろう。
サスペンスがやりたいなら一度島に誘い込まないといけないからな。
「っていうかそれだと、この船を操縦してる船長さんも危険じゃないですか!?」
「ああ、だからさっきなんとかしておいた」
「手が早い!?」
そんな人をチャラ男みたいに。
見た目だけなら否定はできんか……
「怪異が取り憑いてるのがみてわかったから、肩をギュッと掴んだら怪異が消し飛んだぞ」
「昔は怪異に取り憑かれた怪しい船の船長は助からない運命でした。ですが今は違います! ギュッ!」
「それなんか違う奴だろ」
なんというか、牧駒ミウのテンションが高い。
普段から高いけど、今日は非日常に自分から身を投じるためか、完全にキャッキャとはしゃぐ子供である。
最悪人の命に関わるんだけど、多分俺がなんとかしてくれると思ってるよな。
まあそうなんだけどさあ。
「それにしても、空は曇り空で波も高いですねえ。これはやっぱり嵐が来て、クローズドサークルになっちゃうんじゃないですか?」
「ああそうだった、それもなんとかしておかないと」
「へ?」
んで、そんな牧駒ミウのおかげで、他にもこの場で吹っ飛ばしておくべき怪異がいることに気がついた。
俺は海の方へと視線を向けると、
「ちょっと行ってくる」
「えっ?」
否、それは正確な表現ではない。
俺は海の上に立っているんだ。
グラグラ揺れる波の上、俺は自分が海の上に立てるという意識を強く持つことにより水上歩行を可能にする。
船は構わず島を目指すし、牧駒ミウが甲板から俺の名を呼ぶが問題ない。
「せえええええりゃあああああああ!」
先ほどは甲板に叩き込んだ拳を、今度は海に叩き込む!
すると、海からパァン! という乾いた破裂音がして、
「これでよし」
荒れた天気が、ぱああっと俺を起点に晴れていく。
この荒れた天気も、クローズドサークルを作る怪異によって生み出されたものだ。
ちょっとつつくと、怪異は立ち所に消し飛んでしまう。
よし、戻ろう。
「うわあああ! 本格ミステリの舞台がムキムキサルマさんに蹂躙されていきます! これどうなっちゃうんですかああ!」
「おーい、そっちは大丈夫かー?」
「しかも海の上を走りながら迫るサルマさんが怖いです! うわー!」
そんな俺をみて、牧駒ミウは失礼なことを宣うのだった。
だから俺は別にミステリをやるために島を目指してるんじゃないんだって!
この始末。
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