ホラー世界の狂言回しになったので、怪異どもをボコして回ることにした   作:いつもより多く回っております

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11 ミステリの序盤みたいな展開(だったらよかったのになぁ)

 それから俺達は、三奈頃島へと上陸。

 金満富蔵氏が寄越したスタッフに案内されて、屋敷へと向かう。

 牧駒ミウからはスタッフじゃなくて執事さんと呼べと詰め寄られた。

 しかし聞いたら普通に会社のスタッフが執事役として駆り出されているだけだったので、スタッフで合ってると思う。

 なお、道中おかっぱ髪の少女が意味深なことを言ってきたが、こんな場所におかっぱ髪の少女がいるはずもなく。

 あからさまに怪異だったため、ビンタで除霊したらその場にいた連中からドン引きされた。

 いや怪異なんだから本性が見た目通りなわけないだろ……

 

「こ、こちらが富蔵社長のお屋敷でございます」

「わ、わぁー、素敵な屋敷ですね」

「まださっきの空気を引きずられている……」

 

 なんてやり取りをしつつ新築一年目の屋敷に入ると、中はLEDの証明によって照らされていた。

 風情がないと嘆く牧駒ミウと共に、他の参加者が待つ部屋へと向かう。

 今回の依頼、俺以外にも何人かの”専門家”を雇っているのだ。

 具体的に誰が集められたのかは、俺も知らない。

 で、部屋に入ると――

 

 

 ――部屋の中央で居心地の悪そうにしているコスプレ巫女葛木クスハと、そんなクスハを遠巻きに見ながらヒソヒソ話しているスーツ姿の男女の姿があった。

 

 

 明らかに場違いである。

 他の男女は全員三十代くらいで、俺と牧駒ミウですら少し若くて違和感があるくらいだ。

 そんな中に、コスプレ巫女。

 露出は結構激しいし、腰には謎の穴が空いている。

 背が小さくて子どもに見えるのも相まって、中には同情的な視線を葛木クスハに向けるモノもいた。

 

 ――クスハの視線が向けられる。

 助けて、という声なき声が聞こえてくるかのようだ。

 俺と牧駒ミウは互いに視線を合わせると――葛木クスハから視線を反らし、そっと隅の方でヒソヒソしている男女の方に歩み寄った。

 

「こ、この裏切り者――――ッ!」

 

 響き渡る葛木クスハの絶叫はさておき、葛木クスハ以外の男女はだいたいが民俗学者とか、探偵とかそういった職業らしい。

 オカルト界隈からの招集は俺と葛木クスハだけ、他にももう一人除霊師を呼んだらしいが、先日急にドタキャンされたとかなんとか。

 ……多分、俺が来ると知って逃げたんだろうな。

 

 葛木クスハを遠巻きにしつつ他の参加者と自己紹介をしていると、金満富蔵氏がやってきた。

 名は体を表す金満富蔵氏の、孤島系ミステリで百回くらいは聞いたことのある挨拶を聞いてから、それぞれの部屋に通される。

 俺と牧駒ミウの部屋は隣同士で、どちらも孤島の屋敷っぽい雰囲気の部屋だ。

 でもUSBの充電ケーブルを差し込む場所があるんだよな……

 

「さて、早速だけど俺はこれから島の調査に行ってくる」

「これが普通の孤島なら、色々と情報も入ってくるんでしょうけど、ここってエセ孤島なのであんまりそれっぽいスポットとかないですよね……」

「移設されたエンカンの社くらいだろうな。けど、ここに来るまででもすでに四体も怪異に遭遇してる。他にも紛れ込んでるやつはいるだろうから――それを()()

「狩るて……」

 

 他の参加者は、怪異について調査するためにここへ来たのだろう。

 しかし俺は違う、怪異を滅ぼすためにここへ来たのだ。

 であればこそ、変に怪異が被害を出す前に怪異を鏖殺し、殲滅しなくてはならない。

 

「なんか他の人は大人向けのドラマに出てきそうな雰囲気なのに、一人だけ劇画の世界に生きてそうな雰囲気になってますよサルマさん!」

「もう一人、男性向けコミックの世界の住人もいるし、今更だろ」

「そうですね……」

 

 というわけで、早速俺は調査に外へと赴くのだった。

 なお、夕飯までに帰ってこれないかもしれないので、もしそうなった場合のことを牧駒ミウに頼んでおくのも忘れない。

 さて、早速調査(ぶちころ)しに行くぞぉ。

 

 

 ◇

 

 

「というわけで、私はサルマさんの助手として今回の調査に同行することになったわけです!」

「ふぅむ、それでフレリリではなくお主がここにいるわけか」

「え、フレリリ?」

「ん、知らぬのか。ならば忘れるが良い、今はどうでも良いことじゃ」

 

 ――サルマが外へ出かけてから、牧駒ミウは葛木クスハと話をしていた。

 さっきは雰囲気がアレだったのでちょっと話しかけられなかったが、流石に今は落ち着いているので問題ない。

 しかし今、なんか滅茶苦茶気になる単語が出たけれど、え、フレリリ?

 まさかフレンド・もふもふ・リリシュテインちゃんのことじゃないよね? と考えるミウ。

 フレンド・もふもふ・リリシュテインといえば清楚にして無垢な激カワ配信者だ。

 なんでソエンちゃんの盟友なのかわからないおせいそっぷりで、牧駒ミウはすっかり虜になっている。

 まさかそんなフレリリとサルマさんが知り合い?

 どころか、自分と同じように助手としてフレリリと旅をしたことがある?

 は? 死ぬか? ショックで横になってそのまま一生起き上がれなくなるか?

 いや、考えるのはよそう。

 ミウは心に蓋をして、話を続けることを選んだ。

 

「…………それで、クスハちゃんは調査とか行かないんですか?」

「おおう、五分くらい悩んどったのう、まぁええけど……んで、調査じゃったの。まぁ別に明日からでもええじゃろ。今回は4日間もこの孤島に滞在するわけじゃからの」

「というか、クスハちゃんは不安じゃないんですか? もしかしたらここで殺人事件が起きるかもしれないんですよ?」

「起きても妾なら自衛できる。それに、どうせ猿回しが顔を出した時点で大した問題なぞ起きんじゃろう。あやつが事件を解決するまで調査と称して島を見て回り、終わったら適当に過ごして帰るのじゃ」

 

 どうやらクスハは、仕事を理由に学校をサボるためにこの依頼を受けたらしい。

 何日か丸ごと講義を自主休講することになったミウからすると、少し羨ましい話だ。

 ともあれそんな話をしていると、夕食の時間がやってくる。

 来る前に食べすぎたせいで夕飯が入らない、と言って夕食を辞退したクスハと、未だ帰らない猿回し以外の全員が食卓で一同に介する。

 年上ばかりの席で、ミウは少し不安を覚えていた。

 とはいえ向こうも気を使ってか、あるいは助手という立場にそこまで期待していないのか、声をかけてくる者はいない。

 あるいは――

 

「すいません、おかわりお願いします」

「は、はい」

「あ、こっちもお願いします。後コレとコレとコレとコレとコレとコレとコレとコレとコレとコレとコレとコレとコレとコレとコレとコレとコレとコレもおかわりを」

「ハヒ」

 

 爆速で食べまくるミウを、この場にいる者たちがクスハと同じフォルダに移動させたか。

 何にせよ、ミウはひたすら食事にありついていた。

 金満富蔵氏が好きなだけ食べていい、と言ったからである。

 もっと言えば、向こうが「好きなだけ食べていい」といい出したら猿回しが「文字通り好きなだけ、食べれるだけ食べろ」という指示を出したから。

 いくらなんでも、ミウにだって遠慮というものはある。

 おかわりどうぞと言われても、大盛りおかわり三杯で遠慮するし、食べ放題で出禁になるほど食べたことはこれまで三回しかない。

 それでも、金満富蔵氏と猿回しが「食べていい」というのだから今回は食べていいのだ。

 そんな気概で、ミウはひたすら料理を食べまくっていた。

 

 ――――さて、エンカンは生と死を司る神である。

 この国で死者の国と料理といえば、ヨモツヘグイが有名だろう。

 死者の国の料理を食べると、生者の国に帰れなくなるというアレだ。

 実は今回出された料理は、ヨモツヘグイの一種である。

 正確に言うと、料理を口にしたものを支配下に置くという類の代物だ。

 故に、本物の除霊師であるクスハはこの罠を察知して、食事を避けた。

 猿回しもそれを見越して、食事を取らない構えである。

 であれば、ミウにこれほど食事を食べさせてしまっていいのか。

 答えは()()()()()()

 というのも、確かにこれはヨモツヘグイだが、世の中には何事も限度というものがある。

 要するに食べすぎると――

 

 

 ――効果が反転し、ミウはエンカンの支配から脱することができるのだ。

 

 

 しかも、ミウがあまりにも食事を食べすぎるせいで、他の参加者を支配するのに必要な食事量を供給できなくなり始めている。

 猿回しは手下の怪異をボコボコにして回っているし、助手のミウもこれだ。

 この集まりを催したエンカンは、その事実に発狂しそうなほど怒り狂っているのだが、そのことを知る者は、今のところいない。




あの探偵にしてこの助手。

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