ホラー世界の狂言回しになったので、怪異どもをボコして回ることにした 作:いつもより多く回っております
デスゲームとは、特定の舞台で明確なルールをもって参加者同士が殺し合いをするゲームだ。
あるいは、一つの強大な敵から協力して逃げ切ることも、デスゲームの要件に入るだろう。
そう考えると、確かにこれもデスゲームと言えなくはない……のかもしれない。
いややっぱり無理あるんじゃない?
これをデスゲームと言ったら、デスゲーム好きに怒られそうじゃない?
少女はそんなことを考えながら、機械音声の怪異に視線を向ける。
すると、言外の圧がびびびっと少女に向けて飛んできた。
――でもね、しょうがないんですよ。
――真面目にデスゲームしようとすると怪異もじゃもじゃにボコボコにされるので、ちょっと変な方向にズラさないといけないんですよ……
じゃあしょうがねぇな……少女は諦めた。
『では、早速ですがまずは皆様に自己紹介をしていただきます』
なお、他の参加者たちも「それデスゲームじゃなくない?」みたいな雰囲気だったが、そこら辺を乗り越えてゲームに参加するマインドセットは済ませている。
先程から男性陣二人が、チラチラと少女ではないもう一人の女性の方に視線を向けているが。
それはともかく。
『ではまず――』
機械音声の男が呼びかけてくる。
『
「ぶふぉ!」
とんでもない名前が飛び出して、男二人が吹き出した。
スパァン。
まったく、人の名前で笑うなんてなんて失礼な奴らなんだ。
『では改めて、地獄ヶ原死神子さん』
「……はい」
「ぶふぉ!」
スパァン、スパァン。
そう、この少女――名を地獄ヶ原死神子という。
スパァン(話を聞いていた牧駒ミウが吹き出してどこからともなくハリセンで叩かれた音)。
「人の名前を笑った奴は一生恨みますわ。よろしくおねがいいたします」
『こわ……』
おいこら黒幕が怖がってるんじゃない。
男性陣は顔を引き攣らせていた。
そして次の自己紹介は、死神子と並ぶもう一人の女性だ。
その姿は一言で言うと――ムキムキでゴツい顔立ちの女性である。
もっと端的に言えば、地獄ヶ原死神子って感じの女性だった。
『で、では次に――蝶々崎
「はい」
「ふぐっ」
――が、大変お清楚な名前をしておられた。
笑ったのは死神子である。
スパァン。
「ひ、卑怯ですわ……!」
「アンタにだけは言われたくねぇよ!」
ケツを抑えながら叫ぶと、男性陣からヤジが飛んだ。
何はともあれ、笑ってはいけないデスゲーム丑三つ時、スタートである。
◇
『最初のゲームは、ぬるぬる紙風船叩きでございます』
『ヌルヌルゥカミフウセンハタキィ』(流暢な英語っぽい発音)
スパァン。
男二人の片割れ――この話をしてくれた死神子が名前を覚えてないのでここでは男Aと男Bと呼称する――の男Aが英語っぽい発音にやられつつ。
ゲームが開始される。
どうやら一応デスゲームっぽい体裁は保つようで、参加者は幾つかのデスゲームっぽいゲームに参加することとなるようだ。
最初はローションでぬるぬるになった床の上で頭に取り憑けた紙風船をぺしゃっとするゲームらしい。
早速4人の前に道具が容易されたのだが――
「――なぜ私の武器だけ本物の釘バットなのでしょう?」
「ふっぐ」
スパァン。
死神子が物騒な武器を手にしたことで、男が死神子の名前を思い出してしまったらしい。
あいつはいの一番に叩く、死神子は決意した。
「あ、見てください私の紙風船。猫ちゃんみたいですよぉ。にゃあにゃあ」
「ぶふっ」
スパァン、スパァン、スパァン。
そして花畑子の愛らしい反応に三人は全滅した。
まぁ男らしい低音ボイスだからしょうがないとおもう。
それはそれとして、この場で一番不憫なのは間違いなく死神子ではなく花畑子の方だと牧駒ミウは他人事のように思うのだった。
――で、実際のゲーム。
「では、失礼させていただきます」
「いやまてまてまて、普通にそれではたいたら死ぬって!」
「覚悟! ……ふぎゃっ!」
「ふふっ」
スパァン。
ガチで男Bを殺しにかかった結果滑ってころんだ死神子に、花畑子がシュールすぎて耐えられなかったらしい。
「うおおお! ア○ンストラッシュ!」
「えっとすみません……ア○ンストラッシュってなんですか?」
「俺も聞いたことねぇぞ」
「えっ」
「ふっ!」
スパァン。
男Aの必殺技の掛け声に、男Bと花畑子が首をかしげたところ、何故か死神子が吹き出した。
こいつ元ネタを知っているのでは……? 訝しむ視線を向ける男A、死神子は視線をそらす。
「くらえ!」
「きゃっ!」
『ウォォォオオオオオオオアアアアアア!』(花畑子の猫紙風船が潰れたことによって発生した断末魔)
スパァン、スパァン、スパァン、スパァン。
断末魔ののぶとさに、花畑子含めた全員が耐えられなかった――
そうしてゲームは進み、花畑子、男Aと脱落していき――
「いやマジで叩かれたら死ぬから! 降参だ降参!」
「なんだか……一人だけゲームに参加できませんでしたわ」
男Bが自分から紙風船を潰して、死神子がゲームの勝者となった。
――なお、自分から風船を潰した男Bは罰ゲームとして服が弾け飛んだ。
スパァン、スパァン、スパァン。
◇
それからも、幾つかのデスゲームを死神子たちはプレイしていく。
どうやらゲームは6つ存在するようで、これはワンナイトデスゲームとしてはかなり長丁場だ。
本来、デスゲームはそこまで長時間に及ぶことは少ない。
死人が出れば自ずとプレイ時間は短くなる。
結果として長時間の笑っては行けないデスゲームに、参加者たちは少しずつ疲弊の色を見せ始めていた。
黒幕もそれはわかっているようで、現在はステージ3を終えたタイミングでの休憩時間である。
ステージ2ではお馬鹿な殿様のいる城に放り込まれ、ステージ3では借り物競争でとんでもないお題を出されながらもクリアに奔走した。
ここまで3ステージ、どれも濃密で死神子は何度ハリセンでスパァンされたか、正直覚えていない。
「ステージ2はやばかったな……」
「俺はステージ3がトラウマだよ……」
男性陣が、互いにぐったりとした様子で言葉を交わしている。
気楽なものだ。
やっていることは笑ってはいけないデスゲーム丑三つ時だが、死神子に言わせてもらうとこれは普通のデスゲームと実態はそう変わらない。
というのも、精神的な疲弊と参加者間での疑心暗鬼はじんわりと広がっているからだ。
男たちはまだ普通に話ができているものの、いつどこで誰が自分を笑わせにくるかわからない状況である。
特に花畑子はその見た目も相まって、ほか三名のスパァン回数を稼ぎまくっていた。
本人としては不憫だろうが、もし仮にこの場に
そうであれば、とんでもないやつである。
「え、えとえと……こ、この先も頑張りましょうね!」
本人は至って真面目なのだが……それが却って悲劇を巻き起こしていた。
今も男性陣二人が、花畑子の発言で吹き出しそうになっている。
何とか堪えることに成功したものの、これ以上疲弊すればどうなるか。
油断はできない、と死神子は気を引き締め直す。
そんな時――
『さて、では休憩中ではございますが、ここで特別ゲストにお越しいただきました』
――来た。
4人の顔が緊張に染まる。
このタイミングでやってくるゲストなんて、どう考えても刺客以外の何者でもない。
そして死神子は、特に嫌な予感を覚えていた。
この状況で脈絡もなく現れる特別ゲストに、とてつもなく身に覚えがあったのである。
どうか、どうか”彼”ではありませんように――
いや、彼が現れるということは、おそらくここでゲームは終わる、むしろその方がいいのか……?
流石にそろそろ疲れてきたから、ゆっくり寝させてほしい気持ちも死神子にはある。
だがそれ以上に、この状況で彼が出現することの方が死神子にとっては問題で――
――そして、部屋の中央にて煙と共に、マッスルポーズを取りながらせり上がって来た猿回しを見て、死神子は気が遠くなるのだった。
パワーーーーーーー。
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