ホラー世界の狂言回しになったので、怪異どもをボコして回ることにした 作:暁刀魚
「何やってんですかサルマさん!?」
「いやその、なんていうか……」
話を聞いていた牧駒ミウが、両手でフォークを手にして怒りを顕にしていた。
こんこんとテーブルを叩き、なんとなく悪魔っぽいポーズである。
とはいえ、俺としても色々と事情はあるのだ。
まず、俺はデスゲームを察知して参加するためには、人殺しが発生すると直感的に察知しないと行けない。
しかし今回は、人の死なない「笑ってはいけないデスゲーム丑三つ時」なのだ。
「……まさか人を殺さないデスゲームを向こうが考案してくるとは思わず……対応が遅れてな……」
「そ、それで参加者に紛れ込めず、どこか別のタイミングで介入するしか無かったんですね」
「向こうがかなり上手だったんだ。他にもサプライズで俺を登場させられるポイントが無くてな。ステージ2のお馬鹿な殿様ステージが俺より面白かったせいで……」
「それはしょうがないですよ……」
俺がサプライズで登場できるのは、俺がサプライズで登場した場合にそっちのほうが面白くなる場合だけだ。
サプライズ猿回しである。
しかし本物の”あの人”を研究し再現されたあのステージに、俺が登場してもより面白くなる要素はなかった。
「とはいえ、そんな人の死なないデスゲームに、わざわざ介入する必要ってあったんですか? というか、なんならちゃんと猿回しさんのことを考えて、刺激しないようにデスゲームを作った怪異がちょっとかわいそうじゃないです?」
「いやぁ、確かに人は死なないけど、確かにそのゲームはデスゲームだったんだよ。まずステージが6つもあってクソ長くて疲弊する。特にデスゲームの記憶を忘れない特異体質の地獄ヶ原死神子にとってはかなり負担が大きいんだ」
実際、3ステージやっただけでもかなり疲れてたからな。
そしてなんだかんだ言って、怪異は怪異なのだ。
「加えて怪異は、とにかくゲームに参加した人間を疲れさせることが目的だった。そうすれば夢を見せた相手に精神的ダメージが入るからな」
「うわ、性格悪いですね……」
「加えて言うと、今回のデスゲーム怪異は生霊だ。怪異を潰しても本体が死ぬわけじゃないから、遠慮はいらん」
デスゲームを巻き起こす怪異って、生きた人間の悪意であることもあるんだよ。
前にゲームのルールがクソだった奴とか、確かそうだったな。
そういう場合は多少情状酌量の余地がある怪異でも、倒すのに遠慮がいらなくて助かる。
「というか――俺の本命はそっちじゃない」
「え?」
「あの場には――もう一体怪異がいたんだよ」
そう、もう一体。
デスゲーム怪異を隠れ蓑に、あの場で暗躍する怪異がいた。
俺が本当に倒したかったのは、そっちの方だ。
◇
『そ、それでは、早速パフォーマンスをお願いいたします』
死神子は思う。
――この黒幕、なかなかできる。
いきなり想定とは違う米……みたいな人が現れても、それが猿回しでも動揺を極力隠して対応しているのだ。
よっぽど猿回しに対して警戒を強めていたのだろう。
なお、突然現れたムキムキモジャ髪に耐えられなかったのは男Aと花畑子であった。
スパァン、スパァン。
そして件の猿回しはというと――
「一発ギャグ、ゴリラとドラミング会話」
スパァン。
死神子はケツにハリセンを受けながら猿回しを睨んだ。
こいつ、このタイミングでそれをやろうとするのは絶対自分への嫌がらせだろ……!
死神子が、このギャグを特に苦手としているのをわかった上でやっている。
いや、一応理屈としてはわかる。
サプライズ猿回しは、猿回しの行動が面白くないと行けないのだ。
現在の笑ってはいけないデスゲームはかなり白熱しており、ちょっとやそっとの行動じゃ面白さが埋もれてしまう。
多少は吹っ飛んだ行動を取らないと、このままサプライズゲストとして退場させられてしまうのだから仕方があるまい。
それはそれとして、だからといってこれを選択するのは死神子への嫌がらせだ。
「ウホホ――――!」
よりムキムキになって、ゴリラ体型と化した猿回しがドラミングを始める。
するとドラミングをする腕が光を帯び始め――やがて猿回しが二人になった。
「ウホホ――――!」
「ウホホ――――!」
スパァン、スパァン、スパァン。
左から男A、死神子、花畑子である。
この野郎……何一つ容赦がない……!
歯噛みしながらも、そこからの猿回しを死神子はケツハリセンで受けていく。
受けきれてないじゃないですか!(牧駒ミウ心の叫び)
「続きまして、スーパーサイクロンデリシャス皿回し」
続けざまに、猿回しはパフォーマンスを披露していく。
超本格的な皿回しパフォーマンスを分身を交えながらやったり。
――その最後に腕を巨大化させて皿を握りつぶして死神子を笑わせたり。
「続きまして、戸○呂弟のモノマネ」
お前それやったら反則だろ、みたいなネタをぶっこんで男Aと死神子を笑わせたり。
なお男Bと花畑子にはそもそも通じなかった。
とにかく、様々なパフォーマンスを叩き込んで一頻り4人にダメージを与えた後、猿回しは一礼する。
「ご観覧いただき、ありがとうございました」
お、終わった……休憩のハズが休憩する前よりずっと疲れていることに死神子はため息をつきつつ、しかし同時におや? とも思う。
もしこれで猿回しの出番が終わりなら、一体猿回しは何をしに来たのだろう。
いや、もしかしてデスゲーム怪異が作り出した面白に猿回しの面白が敵わなかったのだろうか。
それはすごいぞ? マジですごい。
頑張ったじゃないかデスゲーム怪異……死神子は内心感動していた。
が、しかし話はまだ終わらない。
「では最後に、皆様と握手をしたく思います」
そう言って猿回しがこちらに近づいてくる。
ひぇっ、来たぁ……
死神子は一瞬舌を噛むか本気で悩んだ。
が、猿回しが最初に握手を求めてきたことで、仕方なくそれに応じる。
最初に握手を求めるということは、死神子がオチ要員ではないということだ。
「ふんっ!」
そして握手をすると、猿回しは腕をムキぃと巨大化させた。
スパァン。
「……明日、覚えておいてくださいまし」
「HAHAHA」
他のモノに聞こえない声音で、互いに言葉を交わす。
それから猿回しは男Aとも握手をする。
――今度は両足がムキィとなった。
スパァン、スパァン。
そして次は、花畑子だ。
おや? と死神子は思う。
黒幕側のジョーカーがいるとしたら花畑子だと思っていたが、違うのだろうか。
――ムキった猿回しと花畑子は、互いにパァン! というすごい音をさせながら握手をした。
スパァン、スパァン。
とにかく、これで残るのは男Bだけだ。
ゆっくりと猿回しが近づくと、男Bが一歩のけぞる。
そういえば猿回しが現れてから男Bは一度も笑っていない。
ずるいぞ、やってしまえ猿回し。
死神子がそう思いながら猿回しをみていると――
猿回しが、男Bにタイキックをかました。
えぇ――
そこからは一方的だ。
ネクストニューチャレンジャー! からの「滅」コンボである。
瞬獄……じゃない、瞬殺された男Bは地面に倒れ伏し――その姿が変化していく。
どうやら男Bは怪異だったらしい。
そこに現れたのは、一匹の狐だった。
『ごん、お前だったのか……笑ってはいけないデスゲーム丑三つ時に紛れ込んでいた怪異は……』
スパァン、スパァン、スパァン。
黒幕がぶっこんできた。
怪異はぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
そのまましゅわぁ……と消滅していく狐。
なんだこれ……
残された参加者三名の心はこの時、一つになっているのだった。
◇
――どうやら、今回の笑ってはいけないデスゲーム丑三つ時には、古くからデスゲームを主催するデスゲーム狐が紛れ込んでいたらしい。
デスゲーム狐は人が死ぬところを見るのが好きだ。
もし今回みたいに猿回し対策で、人が死なないデスゲームがはやったら狐としてはとても困る。
そこで、ゲームにこっそり参加して参加者を殺してゲームを乗っ取るつもりだったらしい。
俺が、それを未然に防いだというわけだ。
今回の主催者としてはこのデスゲーム狐を排除したかったらしい。
途中で釘バットを地獄ヶ原死神子に渡したのも、その作戦の一つだったそうだ。
とはいえ、結果的には失敗。
俺が対処する事態となった。
「――んで、そうしてデスゲーム狐を排除した俺が主催者と交渉し、今回の笑ってはいけないデスゲームはそこで中断と相成ったわけ」
「ははぁ……そんなことがあったんですねぇ」
話が終わると、牧駒ミウは巻き巻きしていたナポリタンを一口で飲み込んだ。
え、それどうやって飲み込んだの?
ともかく。
そんな時である。
俺のスマホに連絡が入る。
連絡してきた相手は――『地獄ヶ原死神子』。
内容はこうだ。
『
このタイミング……まさかデスゲームの話をしたのがバレたわけじゃないよな?
なんてことを考えつつ、俺は返事を返すためにスマホを操作するのだった。
タイキックノルマ達成です。
お読みいただきありがとうございます。
感想、お気に入り、高評価いただけると大変励みになります。
特に9点以上の高評価はとてもありがたいです。
応援本当にありがとうございます。
今後とも、よろしくお願いします。