ホラー世界の狂言回しになったので、怪異どもをボコして回ることにした   作:暁刀魚

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20 牧駒ミウのルーツを追え

 アレから、書庫に置かれていた書物から意外なことが判明した。

 なんと地獄ヶ原家と牧駒家は遠い親戚関係にあったのだ。

 地獄ヶ原家の宴席とかに呼ばれるほど近くはないけれど、確かに血の繋がりはある。

 これがどういうことかと言うと、牧駒家そのものはかつて怪異と関わりがあった可能性があるということ。

 少なくとも、今の牧駒家が怪異と何の関わりもないことは、生前の牧駒ミウが言っていたが。

 そこから更に深堀りしようにも、肝心の牧駒ミウがフレリリが俺に抱きついたことで深い眠りについてしまったので、聞き出せない。

 ただ、書物から牧駒家が昔住んでいた屋敷というのが廃墟となって残っていることが判明。

 今は心霊スポットとなっているそうだが、調査してみる価値はあるだろう。

 

「というわけで、そこまで車を出してもらって申し訳ないな、紫子さん」

「お嬢様の言いつけですので」

 

 というわけで、連れて行くとまた牧駒ミウが死にそうなため、フレリリを地獄ヶ原邸において、俺と紫子さんは旧牧駒邸を目指すこととなった。

 牧駒ミウは後部座席で横になっている。

 ところでなんだけど……

 

「後部座席の牧駒ミウが荒巻スカルチノフにしか見えないんだが」

「あら……なんですか……?」

「じぇ、ジェネレーションギャップ!」

 

 そこはこう、後で調べてみてください、ということで。

 俺達は一路旧牧駒邸へ。

 フレリリが出発前に「専門家を手配しておきました」と宣っていた。

 多分葛木クスハのことなんだろうけど、フレリリのことだからまた何かやらかすかわからん。

 怖い。

 やがて、現地に近づいてくると二つ変化があった。

 

「雨が降りそうですね……」

「怪異が近いということだ。不穏な雰囲気は奴らにとってのバフになるからな」

 

 一つは雨。

 もう一つは、牧駒ミウが起きたこと。

 

「むああ、よく寝ました。何故か紫子さんの車に乗ってから記憶がないんですが、もう終わったんですか?」

「ミウ様……記憶が……」

 

 さもありなん。

 防衛本能というやつだろう。

 

「なんだか、素敵な夢を見てた気がするんです。そこで私はフレリリちゃんが出してくれたお菓子を山のように食べて……お腹いっぱいで……何か悲鳴のようなものも聞こえてましたけど……」

「大丈夫か……? おちつけ? ここにフレリリはいないからな?」

「うっ、頭が……」

 

 悲鳴って……牧駒ミウの心の悲鳴的な……

 何にしても、そっとしておこう。

 

「とりあえず、書庫の探索は終わって、今は昔の牧駒邸を目指しているところだ」

「昔の……って、それ確かもう百年以上前に放棄された場所ですよ? そこと私につながりがあるんですか?」

「ありそうなんだよ。カクカクシカジカでな」

「ははぁ」

 

 どうやら、一応旧牧駒邸の存在は知っていたそうだが、思い当たっていなかったらしい。

 まぁ無理もないな。

 俺も地獄ヶ原家とのつながりがなければ、ここに関係があると判断はしないだろう。

 

「んで、見えてきたわけだが……」

「あ、一台車が止まってます!」

「おいおい、あの車――」

 

 止まっている車は、一台のオープンカーだ。

 今は雨が降りそうだからか、ソフトトップが展開されている。

 俺はあの車の持ち主に、心当たりがあった。

 おいおい、フレリリの奴、またやりやがったな!

 

「うわー、オープンカーいいですねぇ、おしゃれです」

「ううむ……中身はおしゃれとは程遠いんだが……」

「えー、こんなおしゃれな車の持ち主がハイソじゃないわけないじゃないですかー」

 

 いやでも、”奴”だぞ?

 とかやり取りしながら、隣に停める。

 すると、向こうの車の扉が開く。

 そこから――

 

 

 ――見たこともない美女が現れた。

 

 

 うお、なんだこの美女。

 雪吊ソエンが出てくると思ったら、マジで知らん美女が出てきた。

 こんな顔のいい女、俺の知り合いにいたか?

 いや結構いるな。

 ともかく――

 

「は、はじめまして。牧駒ミウと申します。えっと、専門家の方……なんですよね?」

「ええ、よろしくミウさん。あたしは……そうね、動画投稿者Sとでもしておきましょうか」

「Sさん! 動画投稿で怪異に詳しいってことは……怪異系のチャンネルを?」

「まぁ、そんなところね」

 

 動画投稿者Sというのかぁ、いやぁなんて雰囲気バッチリな美女なんだぁ。

 これならきっと、旧牧駒邸に関する解説も完璧に違いない。

 と思っていたらなにやら紫子さんに、服を引っ張られる。

 

「あの……」

「さて、頑張ろう。紫子さんはここで待機してもらっていいか?」

「今回は屋敷の案内ではないため、それは構いませんが……その……」

「…………ほら、牧駒ミウ達も家に入っていくみたいだし」

「あの!」

 

 そして紫子さんは――

 

 

「――あれ、ソエン様ですよね?」

「やめてくれぇ!」

 

 

 指摘してほしくない真実を、俺に指摘してきた。

 やめろぉ、やめてくれぇ!

 雪吊ソエンがあんな人間みたいな格好できるわけないだろ!

 

「ほら、お嬢様の一件で、ミウ様を慮ってくださっているのかもしれませんし……」

「そんな奴に見えるか?」

「見えません」

 

 即答した。

 まぁ、紫子さんは雪吊ソエンとは大学時代の同期で腐れ縁だそうだから、致し方あるまい。

 というか、声もだいぶ配信の時とは変えやがって、リスナーの牧駒ミウが初見で判別できないくらい別人だ。

 しばらく聞いていれば、理解してしまうかもしれないが。

 

「とにかく、今は行くしかないわけですから、ほら!」

「くそお……紫子さんは一度ここを離れてくれよな、危ないから」

「かしこまりました。ご武運を」

 

 ――というわけで、俺達は旧牧駒邸へと足を運ぶことになるのだった。

 

 

 ◇

 

 

「Sさんって、怪異に関してお詳しいんですか?」

「ん? まぁねぇ、これでも昔からホラー系の動画投稿者をしてきたから」

「へえー、すごいです」

 

 なんて、朗らかな会話をする牧駒ミウと雪吊ソエン。

 今のところは、特におかしな点はない。

 雪吊ソエンの会話にも嘘はないし、平穏だ。

 何しろ、今だって世界の怪異解説チャンネルの脚本はあいつだし、昔はホラー系の動画投稿者だったのも本当だ。

 雪吊ソエンになる以前、こいつは廃墟に突撃するタイプの配信者だったのである。

 そこで怪異を怒らせて、結果出会ったのが俺だった……というわけ。

 

「それでえっと……ここにはどういった怪異がいらっしゃるのでしょうか」

「真面目な話をすると、私がわかるのは怪異の民俗学的な視点とかそういう話」

 

 俺の知り合いは、それぞれ除霊師としての知見を持つ葛木クスハ。

 実家に調査用の書庫があるフレリリ。

 そして、怪異に関する学術研究に関する知識を持つ雪吊ソエン……という構成になっている。

 雪吊ソエンは大学で民俗学を専攻していて、俺と怪異解説チャンネルを運営する傍らで知識を収集し続けているのだ。

 

「今のあなたは、クスハちゃんが除霊に失敗したことからもわかるように、人の手には負えなくなっている。そういう怪異を対処する場合、人間はどうすると思う?」

「ええと……祀る……とかでしょうか」

「正解」

 

 寂れた廃墟。

 心霊スポットになっているからか、時折人が出入りしたような形跡はあるが、手入れはほとんどされていない。

 どことなく家の作りが地獄ヶ原邸に似ている気がするのは、気のせいだろうか。

 地獄ヶ原邸は、怪異から身を守るための作りをしている。

 それと同じ雰囲気という、俺の感覚が確かなら――

 

「ここにはかつて、ある怪異が祀られていた」

 

 その奥で、俺達は見た。

 朽ち果てた屋敷の中にあって、その場所だけはどこか時間から取り残されたように原型を保っている。

 神棚と表現するのが正しいか、社と表現するのが正しいか。

 

「今はもう、ここに怪異はいない。忘れられて久しく、祈られなくなって永い」

 

 ――そして、雪吊ソエンは牧駒ミウの耳元で囁く。

 

「けど、今から少し前、ここで怪異を生み出すほどの強い祈りを捧げた者がいた」

「……え?」

「ねえ、牧駒さん。――貴方が今みたいな食事を取るようになったのは、いつから?」

「う……」

 

 雰囲気たっぷりに、雪吊ソエンは問いかける。

 きっと、すでにこの場所の情報は把握しているのだろう。

 これまでの葛木クスハや、フレリリとのあれこれで集まった情報から、結論までたどり着いているのだ。

 故に、思うことは一つ。

 

 

 ――いや、俺には先に共有しといてくれねぇかな……

 

 

 牧駒ミウに語るのは、いろいろな影響とか考えられるから、雪吊ソエンが決めればいいだろう。

 でも、普通に俺には話してもよくない?

 かっこつけたいからって理由で、情報をもったいぶるのはよくないぞ!

 

「んん!」

 

 咳払いする雪吊ソエン。

 俺がシリアスな思考をしてないからって怒ってやがる。

 

「とにかく。あなたはここで、あなたが今のように生活できている”理由”を知らないと行けない」

「え、S……さん?」

「というわけで行ってらっしゃい」

「あっ――」

「あ、おい」

 

 そして雪吊ソエンは、()()()()()()()()()()()()()()()

 すると、牧駒ミウは社を通り抜けて、奥の異界へと消えていく。

 雪吊ソエンは、俺にも視線を向けて「いってらっしゃい」と告げる。

 まったく!

 

「じゃあね、牧駒さん。お付き合いいただきありがとう。――袖すり合うも他生の縁、行きずり関係は基本ソエン。雪吊ソエンでした」

「えっ、えっ、えええええええ!?」

 

 そうして俺と牧駒ミウは、社の奥へある異界へと突入するのだった。




二連角折怪人!?

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