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USJ編までは頑張って毎日投稿していくつもりなので、応援よろしくお願いします。
葉隠 side
第二試合。
第一試合の時とほとんど同じ構造のビルだ。
核の隠し場所として割り振られたのは、4階の北側の広間。
そこで待機しながら、私は六花ちゃんと作戦会議をする事にした。
「ねえ六花ちゃん、轟くんと障子くんの“個性”知ってたりしないよね?」
「ん〜……ごめんなさい、わかんないです」
「だよね〜!」
う〜ん、やっぱり知らないかぁ。
轟くんは“個性”把握テストの時に氷を出してたし、障子くんは握力ですごい記録出してたけど、それだけしか情報が無いんだよな〜。
しょうがない、今やれる事やろ!
「作戦とかある?」
「ん〜っと……まず、この子に相手のチームを探してもらいます」
六花ちゃんは、そう言って両掌を上に向けて、何かを手に受けるような仕草をした。
すると掌の中からモコモコと雪みたいなものが湧き出して、白い小鳥の姿になった。
「チピィ!」
白くて丸い小鳥が、六花ちゃんの手の中で鳴いた。
メッチャカワイイ、お餅みたい!
「カワイイ〜!!」
「シマエナガですよ……? 本当は北海道にしかいないんです。白くてふわふわなのは冬の間だけなんですよ」
「そうなんだぁ。それはそうと、この子は六花ちゃんの使い魔的なやつ?」
「……えっと……そんな感じです」
そう言って六花ちゃんが小さな体を撫でると、シマエナガが「ジュリリッ」と小さく鳴いて六花ちゃんの手から飛び立つ。
最初に作った子がビルの外へ飛んでいくと、六花ちゃんは次々と掌からシマエナガを出して同じように飛ばした。
「えっと……この子達が相手のチームを見つけたら……私が凍らせるので……トールさんが確保してください……」
「わかった!」
二人の居場所がわかったら、六花ちゃんが動きを止めてから、私が確保する。
確かにそれが一番強そうだね!
だけどその時、六花ちゃんが自信なさげに口を開く。
「あの……えっと……確認なんですけど……これって、どうやったら勝ちなんでしたっけ……?」
「えっ、わかってなかったの!?」
「え……あ……ごめんなさい……」
「15分間核を守り切るか、相手チームの二人にテープを巻いたら勝ち、だよ!」
「……はい、核を守るか、二人テープを巻いたら勝ち……ですね……もう大丈夫です、覚えました」
ほんとに大丈夫かなぁ……
少し不安を覚えながらも、作戦が煮詰まってきたその時、作戦タイムが終わった。
『ではヒーローチーム障子目蔵、轟焦凍vs
オールマイトの声と共に、試合開始のブザーが鳴る。
よーし、やったるぞー!!
「六花ちゃん私ちょっと本気出すわ! 手袋もブーツも脱ぐわ!」
「えっと……ブーツは脱がない方がいいと思います……」
「えっ、何で?」
「多分……寒くなるから……」
◆◆◆
障子 side
開始のブザーと同時に、俺は“個性”で感覚器を増やし、ビルの中を索敵した。
俺の“個性”、『複製腕』は、肩から生えた二対の触手から自身の体の一部を複製できる。
複製した器官は本来のものより機能が強化され、目や耳などの感覚器を複製すれば索敵に使う事ができる。
「四階北側の広間に一人。同階の階段前に一人。透明の奴が伏兵として捕える係か……ん?」
「どうした?」
「何か動いてるな……鳥か……? 20……いや、30匹いる」
「外出てろ、危ねぇから」
そう言って轟は、一人でビルの奥へと進んでいく。
俺がビルの外に退避した、その直後。
「向こうは防衛戦のつもりだろうが…俺には関係ない」
一瞬にして、ビル全体が丸ごと氷で包まれる。
なんて威力だ……!?
外に避難してなかったら、確実に俺も巻き込まれていただろうな……
…………ん?
まだ何か動いている!?
「待て轟!! 敵は凍っていない!!」
俺が小型無線機で轟に忠告した、その時だった。
「チュリリッ」
ビルの中にいたのと同じ種類の白い小鳥が、俺の方へ飛んでくる。
小鳥は、そのまま俺の足元に留まった。
「ピ?」
小鳥が、俺の顔を見上げて首を傾げる。
こいつまさか、俺の居場所を……!?
「しまっ……!!」
気づいた時には、既に遅かった。
小鳥を中心に地面が凍りつき、氷結が急速に広がっていく。
「ぐわぁぁぁぁ!!!」
回避も間に合わず、俺は一瞬にして首から下を氷漬けにされた。
動こうにも、氷で体を固められていて、指一本動かせない。
くそっ、やられた……!!
◆◆◆
No side
六花がシマエナガの使い魔で障子の居場所を特定し、障子を氷漬けにしたのと同時刻。
当然だが、自身もまた氷の“個性”を持つ六花は、轟の大規模な氷結にも平然としていた。
六花は、核のある部屋で氷に触れ、ビル内の氷を操っていた。
部屋の外で待機している葉隠の周りの氷を融かす。
「トールさん、大丈夫ですか……?」
「さむーーーい!!」
無線越しに、葉隠の悲鳴が聴こえてくる。
葉隠は、六花の外套を兼ねた頭巾を被り、極寒に耐えていた。
するとその時、轟が階段を登り始めたのを六花が察知する。
「えっ……と……あの……ショートさんが来てるので……見つからないように抜け出して、ショージさんを確保してきてもらえますか……?」
「六花ちゃん一人で核を守るってこと!? 大丈夫なのそれ!?」
「多分……大丈夫、だと思います……」
いくら六花が首席合格者だからといって、相手は推薦入学者で、しかもたった今ビルを一瞬で丸ごと一棟凍らせた相手だ。
一筋縄ではいかないと考えた葉隠は六花を心配するが、逆に六花にはどこか余裕すら見られた。
「……わかった! 行ってくる!」
六花の余裕を汲み取った葉隠は、頭巾を脱ぎ捨て、障子の確保に向かう。
葉隠が3階に降りたのと同時刻、轟が2階まで上がってきた。
そのまま3階で轟をやり過ごしてから、1階まで降りた。
そしてそれとほぼ同時刻、轟が核のある部屋の前に到着した。
◆◆◆
轟 side
数分前。
ビルを凍らせ、上への階段に差し掛かかった瞬間だった。
小型無線機から、俄かには信じがたい報告と悲鳴が聴こえた。
慌てて戻ってみるとそこには、首から下を氷漬けにされた障子がいた。
「すまない、轟……やられた……!」
「待ってろ、今融かす」
そう言って俺は、障子を覆う氷を左の熱で融かそうとした。
だが、融かしたそばから氷が生え、氷が融けるどころか逆に分厚くなる一方だった。
くそっ、キリがねえ…
こりゃあ、先に凍らせた奴を倒さないと解けそうにねえな…
「なぁ、お前を凍らせた奴は今、核の部屋か?」
「あ、ああ……」
「わかった。悪いが少し我慢してろ」
俺は再びビルの中に戻り、上への階段を駆け上った。
障子を凍らせたのは多分、氷叢とかいう、お母さんに似た見た目の女だ。
あいつは見た目どころか、お母さんと同じ氷を操る“個性”を持っている。
だが、あいつが何者であろうと、俺には関係ない。
この試合、勝つのは俺だ。
覚悟を決めて、核の部屋の扉を開ける。
だが……
「いない……!?」
そこには、誰もいなかった。
氷叢だけじゃない。
透明の奴もいない。
……おかしい。
障子は確かに、氷叢がこの部屋にいると言っていた。
現に氷叢とは、ここに来るまでに、一度もすれ違わなかった。
1階から4階に上がる階段は1つだけだ。
作戦を変えて待ち伏せしていたんだとしたら、ここに来るまでの間に鉢合ってるはずだ。
俺をやり過ごして、障子の確保を優先した……?
いや、そんな事をするメリットが無え。
あいつが俺と同じように氷を操れるんだとしたら、ここで核を守るのが一番安全に勝てるからだ。
おそらくあいつは、この階から動いていない。
だったら、罠か……?
俺をここに誘き寄せて、背後から奇襲を仕掛けるつもりか?
……いや、罠だろうと何だろうと、核に触れさえすれば勝ちなんだ。
そっちが核を守る気が無いんなら、さっさと勝たせてもらう。
「ダメですよー」
「なっ!!?」
核に手を触れようとしたその時、突然背後から体を掴まれた。
体が二回り以上デカくなった氷叢が俺を抱き竦め、核の確保を阻止してくる。
なんだこいつ、どこから湧いてきた…!?
◆◆◆
No side
一方、モニタールームでは。
「なんだなんだ、何が起こった!?」
「急に氷叢が出てきたぞ!? どこから出てきたんだ!?」
「つーか、なんかデカくなってねぇか…!?」
残りのクラスメイト達が、モニターに映る光景を見て困惑していた。
2mを超える巨体になった六花が、背後から轟を抱き竦めていた。
目を疑う現象にほとんど全員が戸惑う中、この場に相応しくない発言をする者が一人いた。
「チクショウ!! 轟のヤロー、女子からのバックハグなんてご褒美じゃねーかコンチクショウがぁ!! 羨ましい!! そこ代われ!!」
性欲の権化・峰田実が、血涙を流しながらモニターに貼りつき、轟に対して私怨の言葉をぶつけていた。
そしてその頃、六花はというと。
「えっと……あのですね、私、核を守らないといけないみたいなんです。じゃないとですね、私達負けちゃうんです。それは良くないです。嫌です。だからこうしますね」
「っ……離せ……!!」
「燃やしますか? いいですよー、その前に冷やしますけど」
六花は、巨大化した体で轟を抱き竦めながら、容赦なく体温を奪う。
轟は当然六花の腕を掴んで抵抗しようとしたが、雪の中に手を突っ込んだように手が六花の腕の中に埋まるだけで、六花はびくともしない。
轟も、氷を使う“個性”の特性上、ある程度は低温に対して耐性がある。
だがそれはあくまで、自分の力が扱える範囲までの話だ。
自分の力を上回る冷気で冷やされてしまえば、当然常人と同じように凍らされてしまう。
それを回避するには左の炎を使うしかないが、轟にはそれができない理由があった。
「っざけんな……っ、クソ親父の力は……っ」
「知ってます? 人って、寒いと眠くなるんですよー……雪山で遭難してそのまま凍っちゃったって話、聞いたことないです?」
六花が、轟の耳元で物騒な事を囁きながら体温を下げていく。
轟は、抵抗も虚しく急速に体温を奪われ、しまいには体に霜が降り始める。
そして、ついに──
「く…………そ…………」
轟は、六花に抱かれたまま意識を手放した。
六花が轟を完封した直後、葉隠が小型無線機越しに話しかけてくる。
『六花ちゃん、障子くん捕まえた!!』
「あ……あのょ……ど、どうも……こっちも……ショートさん、倒しました……」
『えっ、嘘でしょ!?』
六花の報告に対して、葉隠が驚愕する。
だが、二人を倒してヒーローチームに勝ち目が無くなっても、試合が終わる気配が無い。
「…………あれ? 試合が終わらない?」
『六花ちゃん!! テープ、テープ!!』
「…………はっ」
葉隠に言われて確保テープの存在を思い出した六花は、慌てて懐からテープを取り出すと、それを轟の右腕に巻きつけた。
すると、その瞬間。
『
オールマイトが決着を言い渡し、試合が終了した。
「すげぇ……」
「嘘だろ、開始から3分も経ってねえぞ…!?」
「轟もやべぇと思ったけどよ、氷叢が強すぎんだろ……」
「才能マンだ才能マン、ヤダヤダ……」
モニタールームで観戦していたクラスメイトは、六花の無双ぶりに圧倒されていた。
その後、六花が轟と障子を解凍し、4人でモニタールームに戻った。
氷漬けにされた二人だったが、凍傷などは負っていないようで、そのまま一緒に講評を受ける事になった。
「さて! 今回のベストは氷叢少女だ! 何故だかわかる人!?」
「はい、オールマイト先生。私が説明しますわ」
今回もオールマイトの代わりに、八百万が説明をした。
六花がベストに選ばれた理由は、雪のシマエナガを使って的確に索敵を行い、初手で索敵役の障子を完封してその後の戦いを有利に進めた事だった。
相手側に索敵役がいる場合は、相手の戦闘能力に関係なく、まず初手で索敵役を潰すのが定石だ。
初手で索敵役を退場させれば、相手の情報源を断つ事ができる上に、「コソコソ何かを企んでも無駄だ」という心理的プレッシャーを与える事ができるからだ。
尤も、六花が最初に障子を封じたのは轟と結託させないためで、彼が索敵している事には気づいていなかったのだが。
「ただ……氷叢さんの行動に関して、ひとつだけわからない点がありますわ。最初に障子さんの居場所を割り出して凍らせることができたのであれば、核の部屋への侵入を許すまでもなく、轟さんも同様に凍らせてしまえばよろしかったのでは? 何かできない理由でもあったのですか?」
八百万が尋ねると、六花は無言で斜め上を見る。
そしてしばらく考えてから、思いついたように口を開く。
「…………あっ、そっか……気づかなかったです」
((((天然なんだね))))
不意に天然を発動する六花に対して、クラスメイト達がホッコシする。
その後も、戦闘訓練は続く。
第三試合は、ヒーローチームがHコンビ、
一方でヒーローチームは、常闇が
作戦負けした切島は、「もう一戦やらせてくれぇ!!」と悔しがっていた。
第四試合は、ヒーローチームがGコンビ、
一方でヒーローチームは、耳郎が索敵を行い、上鳴が放電で攻撃を試みたものの、攻め手に欠ける二人では
第五試合は、ヒーローチームがEコンビ、
最初にヒーローチームの居場所を特定した口田が、鳥やネズミを大量に操ってヒーローチームを足止めし、時間を大幅にロスさせた。
だが何とか動物達を撒いたヒーローチームが核のある部屋に辿り着き、機動力の高い二人がギリギリで核に辿り着き、ヒーローチームの勝利。
「お疲れさん!! 緑谷少年以外は大きな怪我もなし! しかし真摯に取り組んだ!! 初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」
A組が地下のモニタールームから出て出口の前に整列すると、オールマイトが仁王立ちして俺達を褒める。
爆豪は、自分の試合が終わってからずっと何も言わずに俯いている。
「相澤先生の後でこんな真っ当な授業…何か拍子抜けと言うか…」
「真っ当な授業もまた私達の自由さ! それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば! 着替えて教室にお戻り!!」
そう言ってオールマイトは、猛ダッシュで保健室へと向かった。
「? 急いでるなオールマイト…かっけえ」
猛スピードで走り去っていくオールマイトを見て、峰田がポツリと呟く。
オールマイトが去って行った後、A組は喋りながら更衣室へ向かう。
「なあ、放課後に今日の訓練の反省会しようぜ!」
「いいね〜!」
切島の提案で、教室で反省会をする事になった。
六花も蛙吹や葉隠といった仲のいい女子と一緒に更衣室に行こうとした、その時だった。
「氷叢。ちょっといいか」
「……はい?」
不意に轟が、六花に声をかけてきた。
◇◇◇
着替え終わった後、六花は、轟に呼び出されて人通りの少ない廊下に立っていた。
何故呼び出されたのかわからない六花だったが、一つだけ心当たりがあった。
それは、先程の戦闘訓練で彼女が轟に対してした仕打ちだ。
怒られるのだろうと思っている六花は、落ち着かない様子で指先を忙しなく動かしながら貧乏ゆすりをする。
六花は幼い頃から、人に怒られるという事が苦手だった。
そもそも人の話を黙って聞く事が苦手な上に、怒鳴られたり自分の非を詰られたりすると、相手と同じ空間にいる事自体が苦痛になってしまう事すらある。
だが、それでは駄目だと思い直し、勇気を出して用件を尋ねる。
「あのょ……話って……もしかして、さっき凍らそうとしたことですか……? その節はすみませ「違う」
六花が戦闘訓練で轟を冷やして気絶させた事を謝ろうとすると、すぐさま轟が否定した。
怒られる覚悟をしていたにもかかわらずすぐに否定され、六花は逆に呆気に取られてしまう。
六花が口を開けてぽかんとしていると、轟が本題に入る。
「……お前、何か嫌なこととかあったりしないのか?」
「嫌なことって……例えば?」
「例えば…そうだな…家族のこととか」
轟は、六花の悩みを聞き出そうとした。
彼の母親は、夫のDV紛いの言動によって精神を病み、末男の彼に衝動的に手を上げてしまった事で、精神病棟に入れられてしまった。
自分の母親に似ている六花に母親を重ね、何かに苦しんでいないかと無性に心配になったのだ。
「…………? 別に? なんでそんなこと聞くんですか?」
「いや、何も無いならいいんだ。時間取らせて悪かった」
そう言って轟は、六花に背を向けて教室に戻ろうとする。
するとその時、六花が口を開く。
「あ……そういえば……」
六花が思い出したように言うと、轟が足を止めて六花の方を振り向く。
「あの……えっと……あなた、ずっと私のこと見てましたよね……? あれ、何だったんですか……?」
「ああ、それは…こんなこと言ったら、変に思うかもしれねぇけど……お前の顔が、俺のお母さんにそっくりだったから…それで、“個性”もお母さんと同じ氷の“個性”だから、つい気になって目で追ってた。それだけだ。不快だったんなら悪い」
「…………ああ、そういうことでしたか」
轟が理由を話すと、六花は納得したように頷く。
自分が何かやらかしてしまったのかと思っていた六花は、轟が自分を見ていた理由を聞いて安心していた。
「ところでショートさん」
「何だ?」
「えっと……その……ずっと気になってたんですけど……なんで顔のとこ、火傷してるんですか?」
「っ……!?」
六花が自分の顔の左側を指差しながら言うと、轟が言葉を詰まらせる。
触れられたくない過去に触れられ、轟は渋い顔をする。
「……言いたくねぇ」
「あ……そうですか……」
轟が口を噤むと、六花も流石に聞いちゃいけない事だと気付いたのか、それ以上は踏み込まなかった。
これ以上二人きりで話す事もなくなったので、六花は教室に戻っていった。
「あ、六花ちゃ〜ん!」
「今ちょうどあんたの話してたんだよ!」
「ふぎゃ」
教室に戻ると、葉隠と芦戸が六花を捕まえて揉みくちゃにした。
クラスメイト達は、既に反省会を始めていた。
反省会に六花も加わろうとしたその時、爆豪がいない事に気がつく。
先程まで一緒に話していた轟と保健室で治療を受けている緑谷が教室にいないのは当然として、爆豪まで教室にいないのが気がかりだった。
「……あれ? バクゴーさんは……?」
「ああ、爆豪なら、もう帰ったよ。俺らも引き留めようとしたんだけど、聞かずに行っちまった」
「…………」
六花が尋ねると、瀬呂が教室の前のドアを親指で指しながら答える。
すると六花は、脇目も振らずに廊下を走り出した。
「あ、ちょっと、六花!?」
クラスメイトの声も耳に入らず、無我夢中で廊下を走り、階段を降りる。
そして、靴を履き替え下駄箱から立ち去ろうとしている爆豪を見つけた。
「バクゴーさん」
六花が声をかけると、爆豪が立ち止まって振り向く。
「ごめんなさい!!」
六花は、爆豪に向かって頭を下げて謝った。
突然の謝罪に、爆豪はぽかんとした表情を浮かべる。
「……あ?」
「昨日、コーラ浴びせてごめんなさい! あと、えっと、えっと……色々ごめんなさい!!」
六花はまず、今まで爆豪にした非礼の数々を詫びた。
初日に顔面にコーラをぶち撒けた事。
同日に凍らせようとした事。
それから、今日の午前中の授業でのちょっとした迷惑の数々。
六花に心当たりがあるのはコーラの件だけだったが、他にも色々迷惑をかけてしまっていたかもしれない。
まずは自分の非を詫びて、それから思っている事を打ち明けた。
「私、あなたのこと、ずっと怖い人だと思ってました。なんで怒ってるのか、わからなかったから……でも戦闘訓練の時、あなたがずっと落ち込んでるように見えたから、思ってるより怖い人じゃないのかもって思って……でも私、バカだから人の気持ちとかわかんなくて……だから、ちゃんとお話ししなきゃって思ったんです。あの時なんで落ち込んでたのか、なんでずっと怒ってたのか、ちゃんと聞かなきゃって……」
六花は、時々詰まりながらも、自分の言葉で自分の気持ちを伝えた。
すると爆豪は、六花に背を向けたまま尋ねる。
「んなこと知ってどうすんだ? 同情でもすんのか?」
「えっと……えっと……」
「だからバカなんだよてめえは!!」
爆豪の質問にうまく答えられずに六花が吃ると、爆豪が怒鳴る。
「俺が落ち込んでるように見えただぁ…? バカも休み休み言いやがれ!! 俺は今日、デクに負けた!! てめえを見て、勝てねえって思っちまった!! クソッ!!」
「……バクゴーさん」
「なぁ
爆豪が叫ぶと、六花は僅かに目を見開く。
このクラスで、爆豪がきちんと人の名前を呼んだのは、六花が初めてだった。
「こっからだ!! 俺は!! デクも、てめえも超えて、ここで一番になってやる!! 全部超えて、オールマイトも超えるヒーローになってやる!! ……だから、てめえなんざすぐ追い抜いてやる!! 覚えとけ!!」
爆豪は、親指で涙を拭いながら、自分に誓うようにそう叫ぶ。
そして、そのまま大股でズカズカと校舎を出て行った。
六花も教室に戻ろうとしたその時。
「あっ、氷叢さん!」
ちょうど、緑谷が正面から走ってきた。
ボロボロのコスチューム姿のままで、右腕にはギプスをして左腕にも夥しい数の包帯が巻かれている。
リカバリーガールの“個性”の制約のため、傷を治癒してもらえなかったのだ。
「あのさ、かっちゃんに会わなかった!?」
「カッチャン……?」
「爆豪勝己! ほら、君の前の席の!」
「あぁ……バクゴーさんなら、さっき話してきました」
「えっ、ほんと!? 何話したの!?」
六花が爆豪と話してきた事を報告すると、緑谷が詰め寄ってくる。
すると六花は、少し困った様子で、話の内容を少しずつ思い出しながら報告する。
「えっと……えっと…………デクさん、でしたっけ」
「あっうん!」
「確か、あなたのこと超えるって言ってました。一番になって、オールマイトを超えるって……」
「かっちゃん……」
六花が報告すると、緑谷は肩の荷が降りたような表情を浮かべた。
訓練中に突っかかってきた爆豪に対して、自分の“個性”の秘密を打ち明け、そしてその力を自分のものにして今度こそ勝つと宣言しに行くつもりだったのだ。
だが、爆豪が既にそのつもりだった事を知って、言いに行く必要は無いと思い直した。
「……あれ? バクゴーさんに用があったんじゃないですか?」
「……うん。でも、もう済んだ」
そう言って緑谷は、夕焼けの中に消えていく爆豪の背中を目で追った。
まずは“個性”を自分のものにして、彼に追いつけるまで強くならなければ。
その時改めて宣戦布告しよう、そう心に決めた。
その頃、六花同様爆豪の事を心配していたオールマイトは、大急ぎでフォローをしに行ったが、爆豪が既に立ち直っていたため杞憂に終わったのだった。
ごめんなさい、デクが爆豪に自分の“個性”の秘密をカミングアウトする機会をオリ主ちゃんが奪っちゃいました。
『ワン・フォー・オール』の事を爆豪が知るのはもうちょい先です。
というかあんな堂々と校舎の前でCOしちゃったら、誰かが偶然聞いちゃってもおかしくないのでは……?
参考までに、試合結果でございます。
ヒーローチーム ヴィランチーム
第1試合 ◯ Aコンビ(麗日&緑谷)vs Dコンビ(飯田&爆豪) ●
第2試合 ● Bコンビ(障子&轟) vs Iコンビ(葉隠&氷叢) ◯
第3試合 ◯ Hコンビ(蛙吹&常闇)vs Jコンビ(切島&瀬呂) ●
第4試合 ● Gコンビ(上鳴&耳郎)vs Cコンビ(峰田&八百万)◯
第5試合 ◯ Eコンビ(芦戸&尾白)vs Fコンビ(口田&砂藤) ●