地獄の氷叢さん家   作:M.T.

11 / 12
一部不快に思われる表現があったようなので修正しました。
ご了承ください。


第11話 氷叢さんの委員決め

雪代 side

 

 入学3日目、私は六花の手を繋いで一緒に雄英の校舎に向かっていた。

 六花は、私と一緒に歩きつつも、不思議そうに話しかけてくる。

 

「ママー、今日はなんで一緒に学校行くの?」

「オールマイトが雄英の先生になったってニュースが新聞に載ってたからよ」

「なんでニュースが載ってたらママと一緒に学校行くの?」

「あのね、六花。ニュースを見てるのは、いい人達だけじゃないのよ。もしかしたらニュースを見た悪い人が、オールマイトに悪いことをしようと思って、雄英にきてるかもしれないでしょ? そういう人達が、オールマイトの情報を手に入れるために、六花に近づいてくるかもしれないわ。だから悪い人が六花に近づかないように、今日からはママが一緒に学校に行くの。わかった?」

「うん、わかった!」

 

 疑問を投げかけてくる六花に対して、私は理由を説明した。

 すると六花は、納得したのか笑顔で頷く。

 今日私が六花と一緒に歩いているのは、オールマイトが雄英の教師になったというニュースが主な理由だ。

 

 ニュースを見ているのは、必ずしもモラルのある人間だけとは限らない。

 オールマイトの存在によって、六花達雄英生が何かしらの事件に巻き込まれるリスクが出てきてしまったのだ。

 例えば、オールマイトの過激なファンが、オールマイト目当てで雄英に押し寄せて雄英生に迷惑行為を働いたり。

 或いは、オールマイトに対して恨みを持つ(ヴィラン)が、彼への嫌がらせの為に、雄英生に対して通り魔的な犯行に及んだり。

 

 中でも、一番容易に想像できる害悪は──

 

 

「オールマイトの授業はどんな感じです!?」

「“平和の象徴”が教壇に立っているということで、様子など聞かせて!」

「教師オールマイトについてどう思ってます!?」

 

 そう、マスゴミだ。

 オールマイトが雄英の教師になったんだから、そりゃあ来るわよね、わかってたわよ。

 奴等は、六花の父親が事件を起こした時も、私達の家に無遠慮に押し寄せてきた。

 ネタになりそうな事件や人物を見つけると、まるで餌を見つけたゴキブリのように寄ってくるのが奴等の習性だ。

 一匹見つけたら百匹はいるってところも、まさにそれね。

 ……あらやだ、つい舌打ちしちゃったわ。

 

「わぁ、人がいっぱい」

「……そうねぇ」

 

 雄英の正門の前に群がって雄英生に質問責めするマスゴミに、殺意が湧いてくる。

 あれ、絶対取材許可取ってないわよね。

 学校の敷地内に入らずに正門の前で待ち伏せしてる時点でお察しだわ。

 

「六花、しっかり手を繋いでて」

「……? ママ?」

 

 私は六花の手をしっかり握ると、マスゴミの群れに近づいていく。

 そして、マスゴミに対して毅然とした態度で話しかける。

 

「すみません。そこに立たれると迷惑ですので、ご退去願えますか?」

 

 私は、マスゴミに対して()()()()()()()()をした。

 でも案の定、マスゴミは私の最後の情けも無視して私と六花をターゲットにする。

 

「あっ、そこの君! オールマイトについて話聞かせてもらえる!?」

「オールマイトが教鞭を執っていることについて、どうお考えですか!?」

「オールマイトが赴任してからの学校の雰囲気はどうですか!?」

「授業中のオールマイトってどんな感じです!?」

「オールマイトについて何か一言!!」

「わ……ぁ…………」

「てかお姉さん美人ですね! 向こうでお話ししませんか?」

 

 マスゴミは、六花に対して次々と質問してきた。

 六花が美人だからか知らないけど、心なしか他の生徒よりも多くのマスゴミが群がっている。

 幸い、この子の父親の事件について蒸し返してくる奴はいなかったけれど。

 不相応にも、どさくさに紛れて私を口説こうとしてくる奴もいた。

 

 ……やっぱり、こんな奴等に情けなんかかけるべきじゃないって事がよくわかったわ。

 スマホを取り出して画面をタップすると、スマホを耳元に当てて、この場にいる全員にハッキリと聴こえる声で話す。

 

「もしもし、警察の方ですか? たった今、娘が報道陣の方々に通学を邪魔されておりまして。ええ、場所は──」

「「「「「!!!?」」」」」

 

 私が大袈裟に言うと、マスゴミがギョッとする。

 馬鹿ね……これだけの騒ぎを起こして、通報される可能性くらい考えなかったのかしら。

 警察が来たら、問答無用で強制退去させられるでしょうね。

 許可無しに取材に来てるんだから。

 

「そんなに話が聞きたいなら、付き合いますよ? ()()()()()()でね」

 

 ニッコリと笑みを浮かべて、()()殺気を込めて言い放つと、マスゴミどもはモーゼの海割りのようにさぁっと道を空けた。

 こっちはあんたらみたいな礼儀知らずに1年半も追われ続けたのよ。

 こういう輩への対処法なんて、いやでも身につくわ。

 

「行こっか、六花」

「うん、ママ!」

 

 私は、六花の手を引いて一緒に正門へと歩いていく。

 雄英には『雄英バリアー』なるセキュリティがある。

 学生証や教職員証なんかの通行許可IDを持っていない部外者が入ろうとすると、自動でセキュリティが働いてシャットアウトしてくれるというものらしい。

 本来は保護者でも来訪の度に通行許可証を借りる必要があるんだけど、私の場合は、六花の()()の事を根津校長に伝えたら、特例で通行許可証を貰えた。

 六花と一緒に正門を潜った私は、六花の手を離し、六花に手を振る。

 

「それじゃあ、授業が終わったら迎えに来るから。先生の言うことをよく聞いて、お友達と仲良くするのよ」

「うん!」

 

 私が言うと、六花は元気よく頷いてから、ツッテケテーと足音を立てて校舎へと走っていく。

 さて……私も仕事に行きますか。

 

 私は、雄英の最寄駅からの通勤圏内の病院で医療事務の仕事をしている。

 きっかけは、ある不動産会社の社長さんだった。

 その社長さんとは、六花が生まれる前に一度会っていて、たまたまその会社の営業担当者の人が私の地元に来ていたから、社長さんの知り合いの私に声をかけてくれたのだ。

 六花が雄英を志望している事を話したら、「娘さんが雄英に合格したら言い値で土地を買い取ってもいい」と言ってくれた。

 その人は、前の家を買い取ってくれたばかりか、社長さんの知り合いが経営している病院のひとつを紹介してくれた。

 社長さんの伝手で、その病院で働かせてもらえる事になった。

 新しい住処と仕事を与えてくれた社長さんと、その知り合いの院長さんには、感謝してもしきれない。

 

 新しい職場は居心地が良いし、前の職場での経験を活かす事ができるから、私にとっては理想の職場だった。

 何より、院長さんがとても良い人で、六花の事を話したら、「娘さんの送迎や家のことで大変だろうから」と勤務時間に融通を利かせてくれたのだ。

 おかげで私は、毎日六花の送り迎えができている。

 

 ……閑話休題。

 無事に六花を学校に送り届けた私は、職場に向かおうとした。

 するとだ。

 

「あの、ありがとうございます!」

「えっ?」

「あの人達を追い払ってくれて、ありがとうございます!」

「『そこに立たれると迷惑ですので』ってセリフ、スゲーカッコよかったっす!」

「ビシッと言ってくれて、メッチャシビれました!」

「お姉様♡」

 

 無事に正門を潜れた子達が、私にお礼を言ってきた。

 中には、女の子なのに私にハートマークを飛ばしてくる子もいる。

 まいったなぁ……

 そんなつもりで言ったんじゃなかったんだけどな……

 ……悪い気はしないけどさ。

 

 なんて思っていると、迂闊にも雄英の敷地内に入ろうとしたマスゴミが、雄英バリアーによって閉め出された。

 「一言くらいくれてもいいのに!」「我々にも知る権利ガー」とか言ってるけど、知るか。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

No side

 

 朝のホームルーム。

 相澤が、教卓にプリントを置きながら話し始める。

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見せてもらった。爆豪、お前もうガキみてぇなマネするな。能力あるんだから」

「………わかってる」

 

 相澤が注意すると、爆豪は俯いたまま返事をする。

 昨日の事を、彼なりに反省しているらしい。

 そして相澤は、六花の後ろの席の緑谷に目を向ける。

 

「で、緑谷はまた腕ブッ壊して一件落着か」

 

 相澤がそう言うと、初日のように怒られると思ったのか、緑谷はビクッと肩を跳ね上がらせる。

 

「“個性”の制御…いつまでも『出来ないから仕方ない』じゃ通させねぇぞ。俺は同じ事言うのが嫌いだ。()()さえクリアすればやれる事は多い。焦れよ緑谷」 

「っはい!」

 

 相澤が言うと、緑谷が元気よく頷く。

 二人に説教をした後、相澤が話を続ける。

 

「さてHRの本題だ…急で悪いが今日は君らに…」

 

(((何だ…!? また臨時テスト!?)))

 

 相澤の発言に、生徒達は身構え、一瞬で教室の空気が緊張する。

 

 

「学級委員長を決めてもらう」

「「「「「学校っぽいの来たーー!!!」」」」」

 

 相澤の発表に、クラスのボルテージが一瞬にして最高潮に達する。

 

「委員長!! やりたいですソレ俺!!」

「ウチもやりたいス」 

「オイラのマニュフェストは女子全員膝上30cm!!」

「リーダー!! やるやるー!!」

「わ……わ、私も……やりたいです……!」

 

 A組の生徒達は、我こそはと名乗りを上げた。

 中学までは学級委員長は体のいい雑用係というイメージだったが、雄英ではトップヒーローに必要な素地を鍛えるのにうってつけの役職だった。

 普段は自己主張が少なめの口田甲司や障子目蔵といった生徒までもが、手を挙げている。

 そして六花も、そのうちの一人だ。

 手を挙げていないのは、マイペースな轟焦凍くらいだ。

 

「静粛にしたまえ!!」

 

 いきなり飯田が声を上げた。

 すると全員が飯田に注目する。

 

「“多”を牽引する責任重大な仕事だぞ…! 『やりたい者』がやれるものではないだろう!! 周囲からの信頼あってこそ務まる聖務…! 民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら… これは投票で決めるべき議案!!!」

「聳え立ってんじゃねーか!! 何故発案した!!!」

 

 もっともらしい事を言いつつもしっかり右手が聳え立っている飯田に対して、上鳴がツッコミを入れた。

 蛙吹と切島も、飯田の提案に対して反論する。

 

「日も浅いのに信頼もクソも無いわ飯田ちゃん」

「そんなん皆自分に入れらぁ!」

「だからこそここで複数票を獲った者こそが、真に相応しい人間ということにならないか!? どうでしょうか先生!!!」

「時間内に決めりゃ何でもいいよ」

 

 飯田が提案すると、相澤は寝袋に入って寝始めた。

 かくして始まった委員長決めの無記名投票。

 全員が1票ずつ持ち、相応しいと思う者に投票する事になった。

 不正が無いようにとの事で、発案者の飯田がA4のコピー用紙で即席の投票用紙を作って全員に回し、全員がお互いの票を見ないようにして投票が行われた。

 全員が投票し終えると、飯田が全員の票を集計した。

 その結果は……

 

 

 緑谷出久  3票

 爆豪勝己  2票

 氷叢六花  2票

 八百万百  2票

 切島鋭児郎 1票

 峰田実   1票

 (以下略)

 

 

「僕三票ーー!!!?」

「なんでデクに…!! 誰が…!!」

「まーおめぇに入るよかわかるけどな! つーか誰だよ、爆豪に入れた奴」

 

 驚愕する爆豪に対して、瀬呂が茶化すように言う。

 爆豪がギッと睨みつけた先には、驚きのあまり目を丸くして震えている緑谷がいる。

 一方で、発案者の飯田はというと。

 

「0票…分かってはいた!! さすがに聖職といったところか…!!」

「他に入れたのね………」

「お前もやりたがってたのに……何がしたいんだ飯田…」

 

 床に手と膝をつき、歯軋りをしながら悔しがる飯田に対して、八百万と砂藤が呆れながらツッコミを入れる。

 そして六花はというと。

 

「わ……ぁ……私……2票……?」

 

 自分に2票も入った事に対して、口をぽかんと開けて困惑していた。

 委員長をやりたいとは思っていたが、まさか自分に票が入るとは思わなかったので、リアクションに困っていた。

 ちょうどその時、相澤が起き上がる。

 

「よし…緑谷が委員長、副委員長は……爆豪、氷叢、八百万。お前らジャンケンか話し合いでもして決めろ」

「俺、パス」

 

 ジャンケンをするまでもなく、爆豪は迷わず辞退した。

 

「えっ、かっちゃんなんで!?」

「うっせぇ、“副”じゃ意味ねぇからやらねーっつってんだよ!! 大体、クソデクとセットなんざこっちから願い下げだ!!」

「……やっぱり私もいいです」

 

 驚いて理由を尋ねる緑谷に対して、爆豪が怒鳴る。

 すると、そのやり取りを見ていた六花も辞退した。

 そのまま席に戻ろうとすると爆豪が、聴こえるか聴こえないかくらいの声で「礼は言わねぇぞ」と言ってくる。

 結局爆豪と六花が辞退したため、残った八百万が副委員長に決まった。

 

「じゃあ委員長緑谷、副委員長八百万だ」

「うーん悔しい…」

「ママママジで、マジでか…!!」

 

 一票の差で副委員長になった八百万は悔しがり、委員長に選ばれた緑谷はガチガチに緊張して震え上がる。

 だが、委員長になった緑谷は、意外にもクラスメイト達には好印象だった。

 

「緑谷なんだかんだアツいしな!」

「八百万は講評の時のがカッコ良かったし!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 昼休み。

 4限の授業が終わってすぐ、葉隠が六花の席の前まで来て声をかけてきた。

 

「六花ちゃ〜ん、一緒に食堂行こ!」

「あ……はい……」

 

 葉隠に誘われ、そのまま二人で食堂に行こうとした、その時だった。

 

「あの、俺もご一緒していい?」

 

 少し遠慮がちに声をかけてきたのは、尾白猿夫。

 優秀だが、どこか普通さが拭えない男子生徒だ。

 

「ぁ……え、と……」

「尾白猿夫」

「あ……はい、オジロさん……私は大丈夫です」

「もちろんいいよ〜!」

 

 尾白も一緒に食堂に行く事に六花と葉隠が賛成し、三人で食堂に向かった。

 

 

 

 〜少年少女移動中〜

 

 

 

「はぐっ、はぐっ……!」

 

 大食堂『LUNCH RUSHのメシ処』にて。

 六花は昨日同様盛り蕎麦の大盛りを注文し、無我夢中で頬張った。

 そんな中、日替わり定食を注文した尾白と葉隠が会話をする。

 

「そういえば葉隠さん、投票の時、票が入ってなかったよね。誰に入れたの?」

「六花ちゃん! 昨日の訓練で助けてもらったので!」

「実は俺も氷叢さんに入れたんだ。あんなの見せられたら、いやでも圧倒されるよ」

「わ〜、一緒だね!」

「う、うん……」

 

(ち、近い……)

 

 葉隠が尾白にずいっと近づいて共感すると、尾白が照れて頬を赤らめる。

 姿は見えないが、息や髪がかかるくらい顔が近い事はわかる。

 

「わぁ……ぁ……あ、ありがとうございます……」

 

 二人が票を入れた事を知った六花は、蕎麦を頬張る手を止めて、二人に礼を言った。

 すると尾白が、葉隠に近づかれて赤くなりつつ話題を変える。

 

「ところで、爆豪に票入れたのって誰だったんだろうね? 緑谷ならまだわかるけど……」

「ね〜!」

 

 尾白と葉隠が、何故か2票入っていた爆豪の話をする。

 そのうち1票は自分だとしても、もう1票入れた人間がクラスの中にいたという事だ。

 爆豪は、実力はともかく、性格がヒーローのそれとはかけ離れている。

 昨日の戦闘訓練での凶行を見れば、一目瞭然だ。

 票を入れるとしたら、脅されたか、正気じゃないかのどちらかとしか思えない。

 だがそんな考えを打ち破るかのように、六花が手を挙げる。

 

「…………あのょ……それ、私です」

 

 意外な人物が、カミングアウトした。

 

「えっ、意外! なんで!?」

「……昨日、バクゴーさんとお話ししました。最初は怖い人だと思ってたけど、昨日の訓練の後、落ち込んでるように見えて、思ってたような人じゃないと思ったから……そしたらバクゴーさん、『オールマイトを超えるヒーローになる』って言いました。だから私、あの人に投票しました」

 

 葉隠が理由を尋ねると、六花は拙くも、ハッキリと、自分の言葉で説明した。

 六花が爆豪に投票した理由は、昨日の戦闘訓練の後に聞いた、『オールマイトも超えるヒーローになってやる』という彼の言葉だった。

 『オールマイトみたいなヒーローになりたい』、『オールマイトの助けになりたい』、『オールマイトに認められたい』、このクラスのほとんどの生徒がそんな思いを抱いているが、オールマイトを本気で越えるつもりでいるのは、少なくともこのクラスの中では彼だけだった。

 性格はともかく、そういう気概のある人間が人の上に立つべきだと思ったからこそ、六花は爆豪に投票した。

 その事を二人に話した、ちょうどその時。

 

 

 

 ウゥーーーーーー!!!

 

 

 

「「「!?」」」

 

 突如として、食堂中にサイレンの音が鳴り響く。

 その直後、《セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難して下さい》と避難を促すアナウンスが鳴った。

 

「え、な、何!?」

「セキュリティ3…!?」

「わ……ぁ……」

 

 聞き慣れないアナウンスに、三人は困惑する。

 どうすればいいかと考える暇もなく、食堂にいた他の生徒達が出口に殺到した。

 『セキュリティ3』とは、校舎に入るまでの間に3段階ある雄英バリアーの最奥にあるバリアーの事だ。

 それが破られたという事は、校内に部外者が侵入してきたという事だ。

 

「え、ねえ、これなんかヤバいんじゃない!?」

「俺達も早く避難しないと……って、まだ食べてる!?」

らっへおほばまらのほっれ(だってお蕎麦まだ残って)──

 

 葉隠と尾白が他の生徒同様避難しようとする中、六花はこの大パニックの中でも蕎麦を頬張っていた。

 一応急がないとと思っているのか、急ピッチで蕎麦を口の中にかき込んではいるが、危機感が足りていない事には変わりない。

 だがちょうどその時。

 

「わーーー!! 助けてーーー!!」

「葉隠さん!!」

「わっ、と、トールさん……!」

 

 葉隠が、押し寄せる人の波に流されてしまった。

 『透明化』の“個性”が仇となり、尾白と六花はあっという間に葉隠を見失ってしまう。

 人混みに流される生徒の中には、切島や上鳴、緑谷や麗日の姿もあった。

 だが、その時だった。

 

 

   「皆さん…大丈ー夫!!」

 

 どこからか、飯田の声が聴こえてくる。

 見ると飯田が、非常口の誘導灯の上で、非常口のピクトグラムのようなポーズをとりながら叫んでいた。

 

「ただのマスコミです! なにもパニックになることはありません! 大丈ー夫!! ここは雄英!! 最高峰に相応しい行動をとりましょう!!」

 

 飯田の声によって、食堂にいた生徒達は足を止め、落ち着きを取り戻した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 その後、警察が到着してマスゴミは撤収。

 今は、午後のホームルームの真っ最中だ。

 委員長の緑谷と、副委員長の八百万が仕切って他の委員決めを進める。

 

「ホラ委員長始めて」

「でっでは、他の委員決めを執り行って参ります! …………けどその前に、いいですか! 委員長は、やっぱり飯田くんが良いと…思います!」

「!」

「あんな風にカッコ良く人をまとめられるんだ、僕は…飯田くんがやるのが()()()と思うよ」

 

 飯田が目を見開いて驚く中、緑谷が自分の意見を伝える。

 すると、切島、上鳴、葉隠も賛成した。

 

「あ! 良いんじゃね!! 飯田、食堂で超活躍してたし!! 緑谷でも別にいいけどさ!」

「非常口の標識みてぇになってたよな」

「うん、私も飯田くんいいと思う!」

 

 緑谷と三人の意見をきっかけに、クラス内は飯田が委員長に相応しいという空気になる。

 だがその時、相澤が寝袋に入ってゼリー飲料を啜りながらギロリと緑谷を睨みつける。

 

「何でも良いから早く進めろ…時間がもったいない」

「ひっ!!!」

 

 相澤がドスのきいた声で脅すと、緑谷が悲鳴を上げて震え上がる。

 緑谷に新委員長に任命された飯田は、席を立って全員に向かって頭を下げる。

 

「委員長の指名ならば仕方あるまい!!」

「任せたぜ非常口!!」

「非常口飯田!! しっかりやれよー!!」

「い……イーダさん……頑張ってください……」

 

 こうして、飯田が委員長になった。

 クラスメイト達は、委員長になった飯田に声援を送り、暖かく受け入れた。

 唯一、「私の立場は…!?」と不服そうな表情を浮かべている八百万を除いて。

 

 

 

 

 




予告していた尾白くんと葉隠さんの絡みです。
ちょっと無理矢理感がありますが、戦闘訓練で離れ離れにしちゃった分、マスコミパニックでくっつけました。
やったね尾白くん、君の努力は報われた。


どうでもいいメモ

投票結果

 1位 緑谷出久  3票(投票者:自分、飯田、麗日)クラス委員長(辞退)
 2位 八百万百  2票(投票者:自分、轟)    クラス副委員長
 2位 爆豪勝己  2票(投票者:自分、氷叢)
 2位 氷叢六花  2票(投票者:尾白、葉隠)
 5位 芦戸三奈  1票(投票者:自分)
 5位 蛙吹梅雨  1票(投票者:自分)
 5位 上鳴電気  1票(投票者:自分)
 5位 切島鋭児郎 1票(投票者:自分)
 5位 口田甲司  1票(投票者:自分)
 5位 砂藤力道  1票(投票者:自分)
 5位 障子目蔵  1票(投票者:自分)
 5位 耳郎響香  1票(投票者:自分)
 5位 瀬呂範太  1票(投票者:自分)
 5位 常闇踏陰  1票(投票者:自分)
 5位 峰田実   1票(投票者:自分)
16位 飯田天哉  0票              クラス委員長
16位 麗日お茶子 0票
16位 尾白猿夫  0票
16位 轟焦凍   0票
16位 葉隠透   0票
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。