地獄の氷叢さん家   作:M.T.

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オリ主無双入りまーす。
この世界線の死柄木達は哀れ(笑)
USJ編が終わったら、一旦プロフ出します。


第13話 氷叢さんのUSJ襲撃事件(2)

No side

 

 火災ゾーンにいる(ヴィラン)達を全員凍らせた六花は、雪で作ったシマエナガでUSJ全体を索敵していた。

 蛙吹は、六花から借りた頭巾を羽織って寒さを凌ぎつつ、クラスメイトや教師達を心配する。

 

「他の皆は大丈夫かしら……?」

「うーん……他の皆は大丈夫そうです」

 

 索敵を終えた六花は、広場で戦っている相澤に目を向ける。

 相澤は、死柄木と戦っている真っ最中だった。

 だが、周りの(ヴィラン)達の援護もあってか、死柄木が若干相澤を押していた。

 

「……ちょっと、広場の方見てきます」

「ケロ、六花ちゃん?」

 

 六花は、背中から氷の翼を生やし、蛙吹を置いて中央広場へと飛んでいった。

 

 

「無理をするなよ、イレイザーヘッド」

「──っ!!」

 

 六花が飛び出す直前、相澤は死柄木に右肘を掴まれ表皮を崩されていた。

 死柄木の“個性”は『崩壊』、五指で触れたものを塵に変える事ができる。

 相澤は、痛みに顔を歪めつつも、左の拳で死柄木を殴り倒す。

 その隙をついて二人の(ヴィラン)が相澤に襲いかかるが、捕縛武器を使った体術で瞬殺する。

 

「その“個性”じゃ…集団との()()決戦は向いてなくないか? 普段の仕事と勝手が違うんじゃないか? 君が得意なのはあくまで『奇襲からの短期決戦』じゃないか? それでも真正面から飛び込んできたのは、生徒に安心を与える為か?」

 

 死柄木がニヤリと笑いながら話している間にも、相澤は、広場にいたチンピラ達を全員倒した。

 だが死柄木の指摘通り相澤は、“個性”の持続時間が短くなり、息が上がっていた。

 

「かっこいいなあ、かっこいいなあ。ところでヒーロー、本命は俺じゃない」

 

 死柄木がそう言った次の瞬間、相澤の背後から、脳が剥き出しの巨漢“脳無”が、相澤の頭目掛けて右手を伸ばす。

 だがその手が、相澤に襲いかかる事は無かった。

 

 一瞬で広場に飛んできた六花が、脳無の顔面に蹴りを入れていたからだ。

 脳無は、蹴りを入れられた直後こそよろけたものの、全くダメージは入っておらず、蹴りを入れた六花の右脚を逆に掴んできた。

 

「!!」

 

 脳無は、六花にギョロリと目を向けると、掴んだ右脚を握り潰してくる。

 そしてそのまま、六花の体を右腕で振り上げ、力任せに地面に叩きつけた。

 六花が叩きつけられた地面は大きくひび割れ、六花の体からはベキボキと嫌な音がする。

 

「氷叢!!!」

 

 六花が地面に叩きつけられると、相澤が叫ぶ。

 脳無に叩きつけられた六花の腕と脚は変な方向に折れ、頭は砕けている。

 どう見ても即死だ。

 

「ッハハ……おい、見たか? 今、お前の目の前で一人死んだぞ。大事な生徒を失った気分はどうだ? なぁ、イレイザーヘッド!?」

 

 六花の無残な姿を見た死柄木が、急に上機嫌になって笑う。

 だが、その時だった。

 

 

()()()、きき腕です?」

 

 頭が砕けた六花が、鼻から上がなくなった状態のまま喋る。

 よく見ると六花は、頭が砕けたにもかかわらず血は一滴も出ておらず、ちょうど頭の位置に崩れた雪が落ちているだけだった。

 その直後、脳無の右半身が一瞬にして凍りつく。

 そして、凍った腕が跡形もなく砕け散った。

 

「脚もくだきます。うごかれるとヤなので」

 

 六花がそう言うと、今度は脳無の凍った右脚が砕け散った。

 

「$*>$〜〜〜!?」

「…………は?」

 

 右腕と右脚を失った脳無が喚くと、死柄木が呆気に取られる。

 それもそのはず、生徒に致命傷を与えたはずの脳無が片腕片脚を失う重傷を負い、殺されたはずの被害生徒が何事もなかったかのように完全復活して立ち上がっているのだから。

 六花は、起き上がってコキコキと首の関節を鳴らすと、死柄木に話しかける。

 

「えっと……あなたがリーダーですか?」

「……あ?」

「わたし、おともだちやせんせいがきずつくのはヤです。あと、人をきずつけるのも、あんまり好きじゃないです。お仲間さんの腕と脚くだいたのは、あやまります。ごめんなさい。……ので、かえってください。じゃないとわたし、本気でおこります」

「氷叢、お前……」

 

 六花は、負傷している相澤を庇うようにして、死柄木の前に立ちはだかる。

 だが死柄木は、怯むどころか、六花を馬鹿にしたように笑っていた。

 

「は……? 怒る? ッハハハ! 怒ったらなんだ? 脳無を倒すつもりでいるのか? 無理だね。何せこいつは、オールマイトを殺す為に造られた改人なんだから」

 

 死柄木がそう言うと、脳無が起き上がる。

 六花が砕いた腕と脚の断面からは、新たな腕と脚が生え始めた。

 そして10秒も経たないうちに、脳無は完全復活した。

 

「……うわ、なおった」

「こいつはな、『ショック吸収』と『超再生』を持ってるんだよ。つまり、どんなに攻撃しても無駄ってわけ。おまけにオールマイト並みのパワーに改造してある。わかるか? お前は、どうやっても脳無には勝てないんだよ。クソゲーってやつさ」

 

 次の攻撃を警戒して身構える六花に対して、死柄木が脳無の“個性”を得意げに喋る。

 すると相澤が、六花に向かって叫ぶ。

 

「ダメだ、逃げろ氷叢!!」

 

 相澤は、六花に退避を促す。

 いくら六花が物理攻撃を無効化できるとはいえ、オールマイトにも対抗しうる化け物と戦うのは危険すぎる。

 そうでなくとも、生徒だけに体を張らせて黙って見ている事などできるはずがない。

 

「俺が視ておくから、その間に──

「あいざわせんせい。わたし、だいじょうぶです」

 

 そう言って六花は、ニッコリと微笑む。

 六花は、相澤に魔の手が及ばないように、自分の背後にいる相澤の前に氷の結界を張った。

 

「脳無、そのガキ殺せ」

 

 死柄木が命令すると、脳無が拳を振りかぶりながら六花に突進する。

 脳無が大口を開けて吶喊したその瞬間、六花は両掌を脳無に向け、霧状の冷気を脳無目掛けて噴射した。

 すると、強烈な冷気によって眼球と肺胞が凍りついて壊死し、視力を失い呼吸ができなくなった脳無はその場でもがき苦しむ。

 

「っ〜〜〜〜〜!!?」

 

 肺を潰されて声にならない叫び声を上げる脳無に、今度は六花が飛びかかる。

 そして、『超再生』が追いつかないうちに、脳無の口に手を突っ込み、体の内側に冷気を送り込む。

 

「おやすみ」

 

 そう言って六花は、容赦なく脳無から体温を奪っていく。

 六花が放つ冷気は、数秒の間に零下200℃にまで達する。

 脳無の『ショック吸収』と『超再生』は厄介だが、それはあくまで“個性”を十全に使えればの話だ。

 冷凍されてしまえば、生命活動そのものが停止する。

 全ての生命活動と“個性”が休眠し、仮死状態に陥った脳無は、氷像のようにその場で立ち尽くしたまま動かなくなった。

 

「…………は?」

 

 凍って動かなくなった脳無を見て、死柄木が呆気に取られる。

 その次の瞬間。

 六花が、今度は死柄木目掛けて拳大の氷の弾丸を放つ。

 

「げぼぁ!!」

 

 放たれた五発の弾丸のうち、四発が死柄木の両肩と両脛に、残り一発が鳩尾に直撃する。

 急所に攻撃を喰らった死柄木は、数メートル吹っ飛ばされ空中で一回転する。

 さらに六花は、猛スピードで死柄木の背後に現れると、両腕を背中の後ろに捻り上げてへし折り、そのまま頭を踏みつけ地面に叩きつけた。

 

「がぁっ!!」

 

 そして、足で頭を地面に押さえつけ両腕を捻り上げた体勢のまま、死柄木の体を凍らせていく。

 そのまま脳無同様氷像にしてしまおうとした、その時だった。

 

「死柄木弔!!」

 

 突如出現した黒霧が、死柄木の前にワープゲートを出現させた。

 そのまま黒霧が死柄木を連れて帰ろうとするが、六花がそうはさせまいと冷気を放つ。

 

「くっ……!」

 

 六花が放った冷気が黒霧を覆うと、黒霧の体は死柄木同様凍てついていく。

 黒霧は、六花とは違って物理攻撃を完全無効化できるわけではない。

 切島や爆豪が奇襲を仕掛けた時に僅かに焦っていたのも、実体がある証拠だ。

 六花はそのまま黒霧を氷漬けにしようとしたが、黒霧がその前にワープゲートを展開し、自分ごと死柄木をワープさせた。

 

「ありゃ」

 

 黒霧を捕らえ損ねた六花は、ぱちくりと瞬きをする。

 両腕両脚を折られ体の9割を凍らされる重傷を負った死柄木は、ワープゲートの中に消えながらも、六花に対して捨て台詞を吐く。

 

「今回は失敗だったけど………今度は殺すぞ。オールマイトも、お前も……」

 

 その言葉を最後に、死柄木と黒霧が姿を消した。

 その数秒後、バァン、と正面ゲートが吹っ飛ぶ。

 

「もう大丈夫、私が来t…………あれ? もう終わってる……?」

 

 生徒達のピンチに颯爽と駆けつけたオールマイトだったが、既に敵は全滅していた。

 襲撃開始からわずか10分で、敵は完全に制圧されてしまっていた。

 校長の話を振り切り、全速力で駆けつけてきたものの、あと1分遅かった。

 

 

「先生!!」

 

 死柄木と黒霧が去っていった後、六花は相澤のもとへ飛んでいった。

 相澤は、先程の死柄木との戦闘で右肘を負傷している。

 六花は、早速相澤の右肘を氷の膜で覆い、応急処置をした。

 

「怪我、大丈夫ですか」

「……俺は問題ない。それより、13号を……」

 

 相澤がそう言うと、六花は13号のもとへと飛んでいく。

 

「先生!! 13号先生!!」

「13号くん!!」

 

 13号の周りには、青ざめた顔をしながら呼びかけている麗日達とオールマイトがいた。

 13号は、生徒達を守るために黒霧を捕獲しようとして、返り討ちに遭い逆に自分の背中を『ブラックホール』で吸ってしまったのだ。

 六花は、13号のもとへ飛んでいくと、13号の背中を氷で冷やした。

 氷の花が六花の手からひらひらと舞い落ち、13号の周りに集まる。

 すると背中からの出血が止まり、炎症や痛みが引いていく。

 

「先生……大丈夫ですか」

 

 六花は、13号に応急処置を施しながら声をかける。

 火災ゾーンや広場にいる(ヴィラン)を凍らせ、無表情で13号に応急処置を施している六花に対して、オールマイトは得体の知れないものを感じていた。

 

「氷叢少女、君は一体……」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 その後、六花から信号を受け取った教師陣が、USJに駆けつけてきた。

 

「なんてこった…」

「これだけ派手に侵入されて、逃げられちゃうなんて…」

「完全に虚を突かれたね…それより今は生徒らの安否さ」

 

 スナイプ、ミッドナイトがUSJ全体を見渡しながら言う中、ブラドキングに担がれていた根津校長が肩から降ろされながら口を開く。

 相澤と13号以外は全員無傷で生還したものの、主犯格の死柄木と黒霧には逃げられてしまった。

 

 

「16…17…18…19…20…うん、全員無事だね」

 

 主犯格二人を除く(ヴィラン)連合の構成員を、駆けつけた警官隊が連行していく中、六花達は警官隊の責任者である塚内警部のもとへ集められ、安否確認が行われた。

 A組はそれぞれ、クラスメイトの無事を喜んでいた。

 

「尾白くん、飛ばされてなかったんだね。無事で良かったよ…」

「先生がいてくれて助かったよ…葉隠さんはどこいたんだ?」

「大雨のとこ! 爆豪くんクソ強くてビックリしちゃった」

「ケッ」

 

 尾白と無事を喜び合っていた葉隠が、爆豪を指差す。

 葉隠と爆豪は、自分達に不利な場所に飛ばされていたが、爆豪は自分に不利な雨のフィールドをものともせず、一緒に飛ばされた切島と協力して(ヴィラン)達を全滅させていた。

 その場に葉隠もいたが、切島と爆豪が二人で(ヴィラン)を全滅させたため、全く出る幕がなかった。

 

「轟さんはお一人でしたのね…よくご無事で」

「……おう」

 

 一方で八百万は、一人で土砂ゾーンに飛ばされた轟を心配していたが、轟はたった一人で(ヴィラン)を全員凍らせ、涼しい顔をしていた。

 散り散りになった六花と蛙吹以外の18人のうち、15人は自力で(ヴィラン)を退け窮地を脱していた。

 唯一、山岳ゾーンに飛ばされた上鳴、耳郎、八百万の三人だけは、(ヴィラン)に上鳴を人質に取られてしまい窮地に陥っていたが、六花が索敵用に飛ばしたシマエナガが(ヴィラン)を凍らせたおかげで窮地を脱したのだ。

 

「そうか、やはり皆の所もチンピラ同然だったか」

「ガキだと舐められてんだ」

「六花〜、梅雨ちゃん、無事でよかったよ〜!」

「みにゃ」

 

 常闇や切島、口田、そして上鳴が集まって情報交換を行い、その近くでは芦戸が六花と蛙吹に抱きついて二人の無事を喜んでいた。

 そんな中、塚内警部が六花達に声をかける。

 

「とりあえず、生徒らは教室へ戻ってもらおう。すぐ事情聴取ってわけにもいかんだろ」

「刑事さん、相澤先生と13号先生は…」

 

 蛙吹が、心配そうに相澤と13号の様子を塚内警部に尋ねる。

 相澤は軽傷だったため保健室に運ばれたが、13号は裂傷が酷かったため救急車で病院に搬送されていたのだ。

 塚内警部は、携帯のスピーカーをオンにして、病院にいる部下に二人の容態を確認させた。

 

『まず13号の方ですが、背中から上腕にかけて裂傷がありますが、命に別状はありません。迅速な応急処置のおかげで回復に向かっており、明日には退院できます。そしてイレイザーヘッドの方は、右肘に裂傷がみられるだけで、こちらはリカバリーガールの処置で充分間に合うとのことで保健室へ』

「だそうだ」

「ケロ……」

 

 警察からの報告を聞いた蛙吹は、安心したようにため息を漏らす。

 

「三茶! あと頼んだぞ」

「了解」

 

 塚内警部が部下の三茶にその場を任せると、三茶が敬礼しながら返事をする。

 人の体に猫の顔がついた彼を見て、麗日や芦戸が「イヌじゃないんだ…」と呟く。

 そんな中教師陣は、今後の方針を話し合っていた。

 

「セキュリティの大幅強化が必要だね」

「ワープなんて“個性”、ただでさえものすごく希少なのに、よりにもよって(ヴィラン)側にいるなんてね…」

「あのょ……そのことなんですけど……リーダーの人とワープの人は、私が凍らせたので大丈夫です」

 

 校長とミッドナイトが話している中、六花が手を挙げて言った。

 すると塚内警部が、六花の証言に反応する。

 

「それ、本当か!?」

「はい……ワープの時に凍らせました。今頃完全に凍ってると思います。簡単にはとけません」

「でも、そうは言ったって居場所がわからないんじゃ……」

「大丈夫です。ぇっと……私の氷、場所がわかるので……」

 

 そう言って六花は、凍らせた死柄木達の場所を探知しようとする。

 だが、その時。

 

「…………!?」

 

 六花が、僅かに目を見開く。

 明らかに異変を感じ取ったような六花の様子に、塚内警部が疑問を抱く。

 

「どうしたんだ?」

「えっと、氷がとけちゃいました……私、何もしてないのに……なんでだろう……?」

 

 六花は、少し驚いたような様子で報告した。

 氷が融けてしまった事で、六花は死柄木と黒霧を見失ってしまった。

 それだけではない。

 『死柄木弔』と『黒霧』という脅威が、完全復活してしまったのだ。

 教師陣の中に、少しずつ不安が募り始める。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 数分前。

 都内某所のバーに、一人の人物が入店する。

 黒いコートを羽織ってファー付きのフードを深く被り、両手足に雪用のグローブとブーツを身につけ、能面を顔に装着した不気味な人物だ。

 その人物は、入店してすぐにコートを脱ぎもせずにカウンター席に腰を下ろした。

 するとその直後、カウンターテーブルに設置されたモニターがひとりでに「ブゥン」、と音を立てて起動する。

 モニターには、『SOUND ONLY』の文字が表示されている。

 

『やあ、ノウメン。雄英のカリキュラムと生徒の個人情報の提供、感謝するよ。約束通り、()()の分の報酬は口座に振り込んでおいたよ』

「ありがとうございます。先生」

 

 モニター越しに語りかけてくる『先生』という人物に対して、ノウメンと呼ばれる仮面の人物が頭を下げる。

 ボイスチェンジャーで声を変えているせいか、男か女かもわからない声をしている。

 

『今日は弔の門出の日だ。君も遠慮せず飲みなさい』

「えぇ……では、いただきます」

 

 モニターの向こうの何者かに語りかけられたノウメンは、最高級の純米大吟醸を用意し、冷酒用のグラスに注ぐ。

 仮面を外し、冷酒に口をつけた。

 そして、酒を交えつつ、今回の襲撃事件に向かった死柄木弔の事を思い出す。

 

「……それにしても、先生もドクターも、お人が悪いですね。後継者の彼に、あんな()()()()だけ寄越してUSJの襲撃に向かわせるなんて」

『……何の話だい?』

「オールマイト並みのパワーにしたのか知りませんが、()()一匹で()()()やオールマイトに対抗できるはずがありません。最初からわかっていたんでしょう? 今回の襲撃が失敗するってこと」

『うむ、そうじゃろうな。誰も今回の策でオールマイトを殺せるとは思っちゃおらん。奴との戦闘データが取れれば充分じゃわい』

「やはり、お人が悪い」

 

 先生とドクターと呼ばれる二人がモニター越しに語ると、ノウメンが呆れたようにクスクスと笑う。

 彼等は、『オールマイトを殺せる策がある』『オールマイトは弱っているから必ず殺すチャンスが来る』と言葉巧みに死柄木を焚きつけ、USJ襲撃に向かわせた。

 だが彼等は、死柄木達にオールマイトを殺せるとは毛ほども考えてはいなかった。

 オールマイト並みのパワーに改造した脳無を襲撃に向かわせたのは、あくまでオールマイトの戦闘データを手に入れるためだった。

 

「……しかし、でしたら何故彼をUSJへ向かわせたんです?」

『弔はね、今は大事な時期なんだよ。彼はまだ、僕の後継者として未完成だ。今回の挫折と経験を次に活かすことで、後継者の器に育てる必要があるのさ。だがもし、万が一にでも捕まるようなら……』

「心得ております。その時は、私が彼のフォローに向かいます」

 

 『先生』とノウメンが会話をしていた、その時だった。

 

「……あら?」

 

 突然バーの空間が歪み、黒い渦が現れる。

 渦の中からは、氷漬けにされた死柄木と黒霧が姿を現した。

 二人はワープする間に完全に凍結し、物言わぬ氷像と化していた。

 

『その様子だと、弔は惨敗したようだね』

『襲撃から10分足らずで帰ってくるとは……そんなので先生の後継者を名乗るつもりか』

「だから油断するなと言ったのに……仕方ないですね。多少の凍傷は覚悟しておいてくださいね」

 

 そう言ってノウメンは、両手のグローブを外し、氷像と化した死柄木と黒霧に手を触れる。

 すると白い煙を上げながら氷が融けていき、解凍された二人が地面に倒れ込む。

 特に死柄木は、両腕両脚が折れ、凍傷を起こした肌が赤く腫れ水疱ができている。

 

「ウッ……!」

「……ッハァッ、クソッ……!! 痛え……!! 両手脚折られて、わけわかんねぇまま凍らされた…完敗だ…脳無もやられた…手下共は瞬殺だ…子供も強かった…平和の象徴は、姿すら見せなかった…話が違うぞ先生……」

『違わないよ。ただ見通しが甘かったね』

『うむ…舐めすぎたな。(ヴィラン)連合なんちうチープな団体名で良かったわい』

 

 死柄木が芋虫のように地面に這いつくばったまま恨み言を言うと、モニターの向こうにいる二人が言い放つ。

 

『ところで、ワシと先生の共作“脳無”は? 回収していないのかい?』

「申し訳ございません。死柄木弔を連れて撤退するのが精一杯で…回収する余裕はありませんでした」

『せっかくオールマイト並のパワーにしたのに…』

『まぁ、仕方ないか…残念』

 

 黒霧の報告に対し、二人は「残念」と口にしつつも、本当にそうは思っていない冷静な口調で返答をする。

 

「何なんだ、あの氷を操るガキ…! あのガキが、脳無をあっさり凍らせやがった…!!」

『……………へぇ』

「あいつさえいなきゃ、オールマイトを殺せたかもしれない…ガキがっ…ガキ…!」

 

 死柄木が忌々しげにつぶやく中、『先生』は死柄木の言う生徒に興味を持つ。

 するとその時、ノウメンが死柄木に向かって言い放つ。

 

「だから言ったでしょう? ()()()は特別だと」

「お前……っ!」

 

 ノウメンが「油断したお前が悪い」と言わんばかりに死柄木を見下ろすと、死柄木がノウメンを睨みつける。

 年季の差故か、ノウメンは不気味なほどに落ち着いている。

 

『今回のことを悔やんでも仕方ない! 今回だって無駄ではなかったはずだ。精鋭を集めよう! じっくり時間をかけて! 我々は自由に動けない! だから君のような『シンボル』が必要なんだ。死柄木弔!! 次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』

 

 『先生』の激励に、死柄木が頷く。

 

『君にも期待しているよ、ノウメン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………いや、()()()()

 

 

 

 

 




はい、地獄要素ようやく出せました。
よりによって一番信頼してるママが実は内通者なの地獄スギィ…
委員長決めの時の冒頭の雪代さんが「社長さんと院長さんには感謝してる」と言っていたのが、何気に内通者の伏線でした。
気付いてくださった方、ありがとうございます。
知らないところでとばっちり喰らう轟くん家ェ…

もう少し引っ張ろうかとも思ったのですが、引っ張りすぎて賞味期限切れになっても嫌なので思い切って今ぶち込みました。
更なる地獄要素はまだありますし。
ちなみにそちらも既に伏線を張ってあります。
察しの良い方なら、3話あたりからよく読めば気づいていただけるかと思います。
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