デクさんの強化イベント入りまーす。
面白いと思っていただけましたら、高評価・お気に入り・感想等よろしくお願いします_:(´ཀ`」 ∠):
緑谷 side
「デクさんデクさん」
放課後、他の科の人達が帰って行った後、僕も帰ろうとすると、保健室から戻ってきた氷叢さんが話しかけてきた。
「な、何? 氷叢さん」
「あの……デクさん、うまく“個性”を使えないんですよね。体育祭どうするんですか?」
「えっと、どうしよう……」
氷叢さんに言われて、我に返る。
体育祭まで、あと二週間しかない。
それなのに、僕はろくに“個性”を使いこなせていない。
きっと皆は、今よりもっと強くなっているはずだ。
オールマイトの期待に応える為にも、本番でどう戦うか考えておかないと……
「えっと……もし良かったら、一緒に特訓しませんか?」
氷叢さんが、思いがけない提案をしてきた。
「えっ?」
「だってデクさん、どうせまた怪我しちゃうじゃないですか。だったら、応急処置してあげられる私が一緒に訓練した方が良くないですか? 一緒に訓練しましょう」
「え、いや…そりゃあ、ありがたいけど、その……迷惑じゃないの?」
「むしろ私、あたま良くないので、あたま良い人のアドバイスもらいたいです。そういうわけなので、よろしくです」
そう言って氷叢さんが、ぐっと握り拳を作る。
次の日から、僕は氷叢さんと一緒に体育祭に向けて特訓する事になった。
氷叢さんがお母さんに相談したら無事に許可が取れたそうで、日曜には僕がアメリカンドリームプランでゴミ掃除をしていた多古場海浜公園に来てくれるそうだ。
◇◇◇
そして、日曜当日。
僕は5時ちょうどに多古場海浜公園に来て、先にトレーニングを始めていた。
それから1時間過ぎ、約束の6時から15分遅れて、Tシャツとジャージを身につけた氷叢さんが公園に来た。
寝起きなのか、目は半分しか開いていなくて、髪も寝癖がついてところどころ跳ねている。
「ふわぁぁ……ごめんなさい、デクさん。待ちました?」
「う、ううん! 待ってないよ!」
氷叢さんの準備運動が終わってから、約束していた特訓に入る。
効率的に鍛える為にも、まずは弱点を確認するところから始めよう。
「えっと、それじゃあまず…“個性”の確認からだね」
「……おっす、よろしくおねがいします」
僕が特訓の為に持ってきた分析ノートを広げながら言うと、氷叢さんは両手で握り拳を作って胸の辺りで構える。
「氷叢さんの“個性”『氷冷』は、体を氷に変化させる変形型と、氷や冷気を操る発動型の複合型……だよね」
「えっと……はい。なんか直したほうがいいところとかないです?」
「……うん。正直言って、これといった弱点が思い浮かばないんだ。氷叢さんはもう既に、攻撃や防御だけじゃなくて、移動や索敵、味方のサポートにも“個性”を応用してるよね。ひとつの“個性”でこれだけ強くて多彩な応用ができるなんて、アメリカNo.1の『スターアンドストライプ』くらいじゃないかな。強いて言うなら炎熱に弱いことだろうけど、氷叢さんの出力なら、そもそも炎が届く前に冷やせるから弱点にならないだろうし……あ、でも一個思ったのは、氷結や冷却が強すぎるから、それに頼りすぎないようにしなきゃいけないってことで……それで思ったんだけど、せっかく体を氷に変えられるんだから、それを活かした格闘術を編み出せば戦いの幅が「ながいです。30文字くらいがいいです」あっ、ご、ごめんなさい!」
僕が分析していると、氷叢さんにバッサリと遮られ、反射的に謝ってしまった。
しまった、いつもの癖が……
「えっとつまり、僕が言いたいのは、近接格闘も戦闘スタイルに組み込んだ方がいいんじゃないかってことで……」
僕は、氷叢さんの反応を窺いながらアドバイスをした。
すると氷叢さんは、口元に人差し指を当てて、僅かに目を見開いて口を開く。
「……あぁ、確かに……直接戦うのは考えてなかったです。今までは、凍らせたらどうにかなっちゃってたので……確かに、直接戦えるようにしておいた方がいいですね。勉強になりました。ありがとうございます」
氷叢さんは、納得した様子で僕に感謝を伝えた。
こんな時の為に、クラス皆の“個性”を分析しておいて良かった……
なんて考えていると、氷叢さんが首を傾げながら話しかけてくる。
「それで、デクさんは何か困ってないですか?」
「えっと、これってお願いしてもいいのかな……」
「何ですか?」
「実は、トレーニングでちょっと困ってて……えっと、体育祭に向けた特訓に、負荷をかけるトレーニングを取り入れようと思ってるんだけど、自重トレーニングじゃ、それ以上の負荷をかけることはできないし……だからトレーニングの回数を増やすくらいしか、今できることがなくて……」
僕は、今困っている事を氷叢さんに話した。
以前は『ワン・フォー・オール』を受け継ぐ体づくりの為に海浜公園のゴミ掃除をしていたけど、粗大ゴミを全て撤去してしまった今、同じようなトレーニングはもうできない。
最近はひたすら筋トレの回数を増やす事しかできていないせいか、あまり筋力がついている実感が湧かない。
正直、今のやり方でトレーニングを続けるのに限界を感じている。
できればもっと負荷をかけるトレーニングをやりたいんだけど……
「えっと、よくわからなかったんですけど……とにかく重いものがあればいいんですか?」
「う、うん」
「あぁ、なんだ、そんなことですか。だったら……」
そう言って氷叢さんは、海に右手を向ける。
するとザパァ、と音を立てて、巨大な氷柱が空中に浮かび上がる。
氷叢さんはそのまま右手を動かして、海水で作ったであろう巨大な氷柱を砂浜の上へと移動させた。
そして、ドンッと音を立てて氷柱を勢いよく砂浜の上に落とした。
「うわあああ!!?」
「おもりです。まだまだ作れますよ」
目の前に、高さ5m、厚さ1mを超える巨大な氷柱が聳え立つ。
氷叢さんは、氷柱の一部を削って、ちょうど人1人分くらいの大きさの氷柱を作って僕に渡してきた。
た、確かにこれなら、トレーニングができそうだけど……
「それじゃ、始めましょ」
「あ、うん…!」
こうして、体育祭に向けたトレーニングが始まった。
ジョギングをしたり、氷叢さんが作ってくれた氷の錘を使って筋トレをしたりした後は、5分の休憩を挟んでから、氷叢さんが生やした氷の柱を避ける訓練をした。
大きさもタイミングも完全にランダムな氷柱のおかげで、不規則な攻撃に慣れる訓練ができた。
氷叢さんも、“個性”の練習だけじゃなくて、僕と同じメニューで筋トレをした。
細身なのに、全く同じメニューをこなしても全然息切れしていない。
それどころか、さらに負荷を増やす余力すらある。
やっぱり僕、他の皆よりずっと遅れてるんだな……
「おつかれです」
「あ、ありがとう……」
午前中の訓練が終わると、氷叢さんは僕の熱った体を冷やしてくれた。
ただ熱が冷えていくだけじゃない。
体に触れた氷が融けるのと同時に、疲れが取れて、力が湧いてくる感じがする。
治癒や疲労回復効果だけじゃなくて、肉体強化の効果すらあるらしい。
これなら、無理なくトレーニングを続けられそうだ。
なんて考えていると。
「六花〜、お昼持ってきたわよ〜!」
「ママ!」
麦わら帽子を目深に被った女の人が、氷叢さんに声をかける。
氷叢さんによく似た、綺麗な人だ。
あの人が、氷叢さんのお母さん……?
そう考えていると、その人が僕に歩み寄って話しかけてくる。
「初めまして。六花の母の雪代です。えっと……緑谷出久くん、よね?」
「えっ、なんで名前……」
「娘に教えてもらったの。あ、そうそう。出久くんは、お昼持ってきてる?」
「いえ、どこかで食べるつもりだったので持ってきてなくて…」
「そう、ちょうど良かったわ。お弁当作ってきたから、よかったら食べて」
「いいんですか!?」
「どのみち女2人じゃ食べきれない量だから、食べてくれた方が嬉しいわ」
「デクさん、ママのお料理おいしいですよ」
雪代さんが、砂浜の上にレジャーシートを敷いてお弁当を広げる。
中身は、美味しそうなカツ丼弁当だった。
「カツ丼弁当よ。本番にカツ! なんてね」
「ありがとうございます、いただきます!」
雪代さんに断りを入れてから、カツ丼弁当を口にする。
これ、すっごく美味しい…!!
しっかり出汁を使ってるのに衣はサクサクで、卵は半熟で、ご飯もランチラッシュに負けない粒立ちだ…!
これご飯どうやって炊いてるんだろう?
「ふふふ、お口に合ったみたいで嬉しいわ……ところで、出久くんはどんな“個性”なの?」
「えっ!?」
「ああいや、別に変な意味はないのよ? ただ、何か手助けしてあげられないかなって」
「ママ、私知ってるよ! あのね、すっごいパワーだよ! オールマイトみたいなの!」
「六花、今は出久くんに聞いてるのよ」
「むぅ」
氷叢さんが口を挟むと、雪代さんが氷叢さんの唇に指を置く。
「えっと、僕のは確かに増強系なんですけど、その、えー、オールマイトのとは違くて……」
「腕壊しちゃうんですよね」
「う、うん……」
「あら、それは大変ね。体育祭まで時間が無いんでしょう? 私にお手伝いできることがあったら、力を貸しましょうか?」
「それがいいですよ。私に“個性”の使い方を教えてくれたのは、ママなんですよ」
氷叢さんは、雪代さんに“個性”の使い方を習ったのか……
だとしたら、すごい事だぞ…!?
でも、『ワン・フォー・オール』の秘密がバレるのはまずい!!
「せ、せっかくですけど、大丈夫です! 自分でなんとかするので!」
「……そう。頑張ってね」
僕が断ると、雪代さんはスッと目を細める。
感じ悪かったかな……?
なんて考えていると、雪代さんが荷物をまとめて立ち上がる。
「それじゃあ、引き続き頑張ってね。何かあったらすぐ連絡するのよ。何もなくても、18時には迎えに来るけど」
「うん!」
「出久くんも頑張って」
「は、はい!」
氷叢さんのサポートと雪代さんのカツ丼弁当のおかげで、僕も元気が湧いてきた。
オールマイトの期待に応えられるように、頑張らないと…!
◆◆◆
麗日 side
週末明け、最初のヒーロー基礎学の授業。
今日は、USJ襲撃事件で延期になっちゃった救助訓練があるらしい。
あんな事があったけど、13号先生は大丈夫なんかな…?
なんて考えながら、コスチュームに着替えていると。
「ねぇねぇ、六花!」
「ん、なんですかミナさん」
「六花はさぁ〜、気になってる人とかいないの?」
三奈ちゃんが、にんまりと笑顔を浮かべながら六花ちゃんに話しかける。
すると六花ちゃんは、きょとんとした顔で首を傾げながら逆に聞き返す。
「……え? なんでですか?」
「またまたぁ、ネタは上がってるんだよ! あんたと緑谷が、デキてるんじゃないかって話!」
「え、デキ……? なんですかそれ」
「付き合ってるんじゃないかってことだよ!」
三奈ちゃんに乗っかる形で、透ちゃんも六花ちゃんを問い詰める。
二人が言っているのは、六花ちゃんとデクくんが付き合ってるんじゃないかっていう噂だ。
なんでも昨日、デートスポットの海辺で二人が一緒に歩いてるところを見たって人がいるらしい。
透ちゃんは、「デートスポットで男女2人きりって言ったら絶対それだよ〜!」なんて言っている。
いや、でも、見間違いかもしれへんし……
デートスポットで一緒にいたとしても、まだ付き合ってると決まったわけやあらへんし?
たまたま用事が重なったとかかもしれへんやん。
……あれ?
私、なんで今ざわっとしたんやろ。
そんな私の心配とは裏腹に、六花ちゃんはいつもの無表情で説明する。
「……いや、違いますよ? デクさん、“個性”がうまく使えなくて困ってたから……一緒に特訓してるだけです。私なら、腕壊しちゃっても治してあげられるので…」
「え、じゃあデートスポットで一緒に歩いてたって話は!?」
「普段からデクさんが特訓してた場所がたまたまデートスポットだっただけです」
「そんなこと言って、本当は気になってるんでしょ? そこから恋に発展したりするんだよ!」
「いやでもさ、六花ちゃんカマかけにも引っ掛からなかったし、これ本当に何もないパターンじゃない?」
「え〜、じゃあ脈無し? ちぇ〜!」
六花ちゃんの方はデクくんに気がないと知って、三奈ちゃんと透ちゃんが残念がる。
なんだ、一緒に特訓してただけか。
六花ちゃんとデクくんが付き合ってるわけやなかったんや。
……あれ?
私、なんで今ほっとしたんやろ……
「「ははぁ〜ん?」」
私がほっとしていると、三奈ちゃんと透ちゃんが私を見てニヤリと笑う。
……あかん、墓穴掘ったかもしれへん。
デクさんの強化イベント入りました。
オリ主ちゃん自身がデクさんの“個性”をあまり把握できていないので、その代わり素の力にバフをかける方面で強化しました。
体育祭までにフルカウルを使うのは間に合わなさそうですが、その分素の力が強化されてるので、多分フルカウル使えるように立った時の出力が原作より上がると思います。
なお、内通者に『ワン・フォー・オール』継承者である事を勘付かれてる上に好物まで把握されているデクさんw
パワーアップした事を喜ぶべきなのか、無自覚のうちに内通者に情報を渡してしまった事を憂うべきなのか……
雪代さん、強くてお上品で面倒見良くて料理上手で、内通者だって事を除けば理想のママさんなんですけどね…
ちなみにこのオリ主ちゃん、ヒーローになる為の筋トレは入試の10ヶ月前からしかやっていないのですが、小さい頃から家の畑の手伝いをしてるので素の筋力も結構強いです。
流石に男子には少し劣りますが、女子の中ではトップクラスのフィジカル強者です。