地獄の氷叢さん家   作:M.T.

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今回のネタバレ

オリ主「一体いつから────私が追われる側だと錯覚していた?」

面白いと思っていただけましたら、高評価・お気に入り・感想等よろしくお願いします( ˊ̱˂˃ˋ̱ )
作者は単純ですので、高評価・お気に入り・感想をいただけましたらモチベーションになります。


第19話 氷叢さんの騎馬戦

No side

 

『START!!』

 

 プレゼント・マイクの声が響くと同時に、他の騎馬が一斉に六花のチームに猛然と突っ込んでくる。

 最初に突っ込んできたのは、鉄哲チームと葉隠チームの2騎だ。

 

「実質それ(1000万)の争奪戦だ!!」

「はっはっは!! 六花ちゃんいっただくよー!!」

 

 鉄哲チームの騎手の鉄哲が全身を金属化し、葉隠チームの騎手の葉隠が上半身裸で突っ込んでくる。

 

「ハツメさん……迎撃準備……」

「フフフ、お任せください…!」

 

 六花は、馬の手綱を握って迎撃態勢を取った。

 だがその時。

 

「けっ…!!」

 

 骨抜が不敵な笑みを浮かべると同時に、地面が柔らかくなり、馬が地面に沈み込む。

 すると六花は、氷の手綱を引き、馬に向かって叫んだ。

 

「ハイヨー、シルバー!」

 

 六花が叫ぶと、馬はその場から飛び上がり、鉄哲チームへと飛びついた。

 六花と発目が乗っている氷の馬のサイズは、競走馬基準ではやや小柄だ。

 だが競走馬の体重は、小型馬でおおよそ350〜450kgといわれている。

 氷の密度は0.9168g/㎤と、動物の体の密度より小さいため、実際の重量はそれより少し軽くなるが、それでも人二人を乗せた時の総重量は500kgを優に超える。

 それだけの重さの塊が降ってきたら、どうなるか。

 

「ぬぉあっ!?」

「チッ……!」

 

 鉄哲が両腕で馬の体を支え、骨抜が自分達の周りの地面を柔らかくして緩衝した。

 その結果、鉄哲チームの騎馬が地面の中へと沈み込み、その拍子にバランスが崩れ鉄哲が落馬しそうになる。

 だがその時、塩崎が蔓で鉄哲やチームメイトの体を支え、これ以上深く沈み込まないように蔓で引っ張り上げた事で事なきを得た。

 鉄哲チームに反撃の一手を喰らわせ、空中に避難した六花のチームだったが、追ってくる騎馬はひとつではない。

 

「耳郎ちゃん!!」

「わってる」

 

 今度は、葉隠チームから耳郎のイヤホンジャックが飛んでくる。

 六花は、氷のバリアで耳郎の攻撃を防ぐと、発目に合図を送る。

 すると発目は、光線銃を使って反撃に出た。

 

「レーザー発射!!」

 

 発目が光線銃を撃つと、発目の放ったレーザーが六花の氷に乱反射し、予測不能な角度で葉隠チームに降り注ぐ。

 発目は、さらにレーザーを撃って葉隠チームを追い詰める。

 

「わっ、たっ!」

 

 発目の反撃によって葉隠チームはじたばたしてしまい、そこで足止めを喰らった。

 その隙に、六花は葉隠チームから離れた。

 

「ハツメさん、すごいです」

「でしょー!? 私のベイビー達は可愛いでしょう!? 可愛いは作れるんですよ!!」

「それじゃ……もうそろそろ10秒なので……着地します……」

 

 六花は、他のチームから離れたところに着地し、態勢を立て直した。

 

「私達も追うよ! さァ耳郎ちゃんリベンジ…」

「つーかおい! 葉隠! ハチマキねえぞ!!」

「はっ!!? いつの間に〜!?」

 

 六花達を再び追おうとする葉隠チームだったが、発目に反撃されてじたばたしている間に、漁夫の利狙いの物間チームにハチマキを掠め取られていた。

 その頃、他の騎馬も、各所でハチマキの奪い合いをしていた。

 

『さ〜〜〜〜まだ2分も経ってねぇが早くも混戦混戦!! 各所でハチマキ奪い合い!! 1000万を狙わず2位〜4位狙いってのも悪くねぇ!!』

 

 プレゼント・マイクは、六花達以外の騎馬を煽った。

 それだと、暗に1000万を狙えと言っているようなものだ。

 

「アハハハ! 奪い合い…? 違うぜこれは…一方的な略奪よお!!」

 

 言っているそばから、障子が突っ込んできた。

 ふと、六花が足元を見ると、峰田の『もぎもぎ』が落ちている。

 

「ミネタさんの……どこから……」

「ここからだよ氷叢ぁ…」

 

 障子の複製腕の中には、峰田が隠れていた。

 否、隠れていたのは峰田だけではなかった。

 六花が『もぎもぎ』を避けようとすると、今度はピンク色の鞭のようなものが飛んでくる。

 鞭のようなものを避け、飛んできた方向を見ると、峰田の隣に蛙吹がいた。

 

「わっ……つ、ツユちゃんさん……?」

「流石ね六花ちゃん…!」

 

 障子の複製腕の中に隠れた峰田が『もぎもぎ』を投げ、蛙吹が舌を伸ばして攻撃してくる。

 ハチマキを取られる心配がない上に一方的に攻撃ができる、ノーリスクハイリターン戦法だ。

 だが、その作戦も六花には通用しない。

 六花は、『もぎもぎ』の表面を凍らせると、凍って粘着力を失った『もぎもぎ』の上に飛び乗り、その反動で障子達の頭上へ逃げた。

 

「……おかえしです」

 

 六花は、頬を膨らませると、小さな氷の粒を操って峰田のジャージの中に忍ばせた。

 すると、障子の腕の中から汚い高音の悲鳴が聴こえる。

 

「ぎゃああああ!!! 冷てえええ!!!」

「峰田ちゃんうるさいわ」

 

 さらに、峰田の服の中に氷を入れた事で障子達がじたばたした隙に、発目のサポートアイテムのランチャーから下にいる騎馬目掛けてネットを放つ。

 峰田達に仕返しをした六花は、そのまま空中を氷の馬で走って逃げおおせる。

 だが……

 

「調子乗ってんじゃねえぞクソが!」

「っ…! バクゴーさん…!」

 

 爆破で浮き上がった爆豪が、背後から襲いかかってきた。

 爆豪が顔面狙いで爆破を仕掛けてくると、六花は体から冷気を出して爆破を相殺した。

 そして、逆に冷気で爆豪を押し返して遠ざけた。

 

「チッ……!」

 

 六花の冷気のせいでいつもの喧嘩殺法が通用しない爆豪は、苛立ちを露わにする。

 するとその時、瀬呂のテープが爆豪を捉え、重力によって落ち始めていた爆豪を回収した。

 

『おおおおおお!!? 騎馬から離れたぞ!? 良いのかアレ!!?』

「テクニカルなのでオッケー!! 地面に足ついてたらダメだったけど」

「……私たちが言うのもアレですけど、もうなんでもアリですね、コレ」

 

 ミッドナイトのガバガバ判定に、六花は氷の馬で逃げながらツッコミを入れる。

 

『やはり狙われまくる1位と、猛追を仕掛けるA組の面々共に実力者揃い! 現在の保持(ポイント)はどうなってるのか…7分経過した現在のランクを見てみよう!』

 

 プレゼント・マイクの実況と共に、観客達が途中経過に目を向ける。

 だがその反応は、あまり芳しくなかった。

 

『………あら!!? ちょっと待てよコレ…! A組、氷叢以外パッとしてねえ…ってか爆豪アレ!?』

 

 表示された結果に、プレゼント・マイクと相澤が驚きを露わにする。

 途中経過は、以下のようになっていた。

 

 

 1Ⓐ氷叢チーム 10000005P   7Ⓑ鱗チーム       230P

 2Ⓑ物間チーム     1300P   8Ⓐ爆豪チーム        0P

 3Ⓑ拳藤チーム      825P   9Ⓑ小大チーム        0P

 4Ⓑ鉄哲チーム      685P  10Ⓐ峰田チーム        0P

 5Ⓐ緑谷チーム      665P  11Ⓑ心操チーム        0P

 6Ⓐ轟チーム       595P  12Ⓐ葉隠チーム        0P

 

 

 爆豪は、いつの間にか物間にハチマキを奪われていた。

 物間達B組は、わざと予選を低い順位で走り、A組の“個性”や戦闘スタイルを把握して、第二種目でA組を出し抜く計画を立てていたのだ。

 物間が散々爆豪を煽ってから去っていくと、爆豪が殺意を剥き出しにして物間を睨みつける。

 

「今のうちに離れましょう!!」

「はい……!」

 

 六花達は、爆豪が物間に気を取られている隙に、爆豪の騎馬から離れた。

 だが六花の目の前に、轟の騎馬が立ちはだかる。

 

「そろそろ獲るぞ」

「……ですよねぇ」

 

 轟が立ち塞がると、六花は呆れたようにため息をつく。

 

『さァ残り時間半分を切ったぞ!! B組隆盛の中、果たして1000万ポイントは誰に頭を垂れるのか!!!』

 

 プレゼント・マイクの実況の中、轟と六花は互いに静かに睨み合い、火花を散らす。

 

「飯田、前進!」

「ああ!」

「八百万、ガードと()()を準備」

「ええ!」

「上鳴は…」

「いいよわかってる!! しっかり防げよ…無差別放電130万V!!!」

 

 轟が指示を出すと、八百万は伝導と絶縁シートを創造し、上鳴はありったけの電流を放つ。

 すると、轟チームの後ろにいた他のチームが電流で痺れる。

 

「残り6分弱。後は引かねぇ。悪いが我慢しろ」

 

 そう言って轟は、伝導を伝って地面を凍らせていき、他のチームの足を凍らせる。

 

『何だ何した!? 群がる騎馬を轟一蹴!』

『上鳴の放電で確実に動きを止めてから凍らせた…流石というか…障害物競走で結構な数に避けられたのを省みてるな』

『ナイス解説!!』

 

 相澤のわかりやすい解説に、プレゼント・マイクがサムズアップをする。

 その間にも、凍らされた拳藤チームから、轟がハチマキを奪う。

 

「あーーハチマキ! くっそぉお!」

「一応貰っとく」

 

 拳藤からハチマキを一本奪い取った轟チームは、そのまま六花達へ突っ込んでいく。

 

「……ハツメさん、ベイビーはだいじょうぶですか」

「ギリギリセーフです!」

「ありがとね、シルバー」

 

 六花は、発目にサポートアイテムの無事を確認してから、愛馬の頬を撫でた。

 轟チームの攻撃を警戒していた六花達は、上鳴の電撃が来る直前に空中に回避していたのだ。

 六花達が逃げようとすると、轟が氷結で壁を作り、逃げ道を塞ぐ。

 

 逃げ場がなくなった六花達を、轟の右側の氷結と左翼の上鳴の電撃で挟み撃ちにする。

 だが六花は、轟や上鳴の攻撃を、氷のバリアで完璧に防いだ。

 氷だけとはいえ完全上位互換の“個性”を持つ六花に轟の攻撃が通用しないのはもちろんの事、純水でできた氷は電気をほとんど通さない。

 完璧に思われた轟の布陣も、六花の前ではまるで意味を成さない。

 六花は、涼しい顔をして轟や上鳴の攻撃をガードしつつ、轟に口撃を始める。

 

「ちょっと思ったんですけど……ショートさん、今まで炎を使ったことないですよね。なんでですか?」

「っ…………!!」

「いや、ムリに使えとはゆってないですよ? そっちの方が、こっちとしてはやりやすいですし。でもそれで負けたら、あとでイーダさんたちに申し訳なくならないですか? わたしなら、負けるのがわかってて手抜きする人なんかとチームくみたくないですけどね」

 

 六花は、轟の攻撃を防ぎつつ、容赦ない口撃を浴びせる。

 炎を使わないとチームに迷惑がかかるという事実を突きつける事で、轟の心を揺さぶる。

 だがそれでも、轟は炎を使わなかった。

 

「……まぁいいです。ハチマキとられたくないので、ちょっと本気出します。あとでズルいとかゆわないでくださいね」

 

 そう言って六花は、自分の周りにある氷を操り、新たに氷像を創る。

 氷の甲冑と髭を蓄えた翁の面具に身を包み、大太刀を右手に持った武士の像だ。

 

「“冬将軍”」

 

 六花が振り上げた右手を降ろすと、氷でできた武士の冬将軍が刀を振りかぶって轟チームに突っ込む。

 冬将軍が轟チームを足止めしている間に、六花は発目と愛馬のシルバーと共に氷の壁を飛び越えて安全圏へと逃げる。

 

「じゃ、そういうわけで……えっと……アディオス、です」

「ふざけんな、逃げんのか…!!」

「私に勝つんじゃなかったですか? それくらい自分でなんとかしたらどうですか」

 

 背を向けて逃げる六花達を轟が悔し紛れに煽るが、六花は轟の挑発に乗らず、逆に煽り返して去っていく。

 そうしている間にも、冬将軍が大太刀を振りかぶって襲いかかる。

 

「飯田!!」

 

 轟は飯田に指示を出し、冬将軍を振り切ろうとした。

 だが冬将軍は、飯田のスピードにもついてきて、轟チームから離れなかった。

 

「ダメだ、振り切れない!!」

 

 冬将軍が斬りかかってくると、飯田が方向転換をして間一髪で避ける。

 するとその直後、冬将軍が斬ったところが凍りつく。

 

「こいつ、斬ったところから……!」

「俺に任せとけ!」

 

 上鳴は、冬将軍にありったけの電撃を浴びせた。

 だが冬将軍は、上鳴の電撃にも怯まず、ニヤリと不敵な笑みを浮かべるだけだった。

 

「ウぇい!? 効かない!?」

 

 冬将軍は、上鳴の電撃をあっさり無効化すると、周りの氷を吸収してさらに一回り大きくなる。

 そして今度は氷の吐息で吹雪を起こし、容赦なく轟チームを凍えさせる。

 

「轟くん、このままではまずいぞ!! 炎は使えないのか!?」

「っ……っざけんな、あいつの力は…!!」

 

 飯田が炎を使って反撃するよう轟に言うが、轟は顔を歪めて歯噛みし、炎を使おうとはしなかった。

 するとその時、轟の右側から飛んできた炎が冬将軍の顔を焼く。

 冬将軍は、飛んできた炎に怯み、先ほどまでの勢いが嘘のように大人しくなった。

 轟の後ろでは、右翼の八百万が、創造した火炎放射器を右手に構えていた。

 

「今ですわ飯田さん!!」

「ふっ!!」

 

 八百万が合図をすると、飯田が蹴りで冬将軍の体をバラバラに砕く。

 

「轟さん、一旦立て直しましょう!」

「……ああ」

 

 窮地を脱し、態勢を立て直した轟チームは、再び六花達を追いかけた。

 一方で、轟チームに冬将軍をけしかけて逃げおおせた六花達だったが、逃げた先で黒影(ダークシャドウ)が襲いかかった。

 黒影(ダークシャドウ)の攻撃を氷でガードした六花は、黒影(ダークシャドウ)が飛んできた方向に目を向ける。

 そこには、緑谷、麗日、常闇、尾白の四人で構成された緑谷チームがいた。

 

「……デクさん」

「ごめん、氷叢さん!!」

「行け、黒影(ダークシャドウ)!」

「アイヨ!」

 

 常闇が指示を出すと、黒影(ダークシャドウ)が六花達に襲いかかる。

 六花は、先程と同じように氷でガードしようとした。

 だが黒影(ダークシャドウ)は、攻撃の直前で軌道を変えてきた。

 

「オナジテハクラウカヨ!」

 

 黒影(ダークシャドウ)は、六花の目の前で軌道修正し、そのままハチマキを掠め取ろうとする。

 だがその時だった。

 

「ヒィッ!」

 

 何故か、突然黒影(ダークシャドウ)が怯んだ。

 六花は、自分で出した氷のバリアが、太陽光を浴びてキラキラと光っている事に気がつく。

 それを見てある仮説を立てた六花は、それを立証する為に、発目に指示を出す。

 

「ハツメさんっ……レーザー……!」

「お任せを!」

 

 六花の意図を汲んだ発目は、光線銃のレーザーを氷のバリアに当てる。

 すると氷のバリアがレンズの役割を果たし、発目の放ったレーザーを集光し、激しく光り出す。

 レーザーの光を浴びた黒影(ダークシャドウ)は、弱体化して悲鳴を上げながら撤退した。

 常闇の“個性”である黒影(ダークシャドウ)は、闇を力の糧とする影のモンスターだ。

 闇を力に変える性質上、闇と対になる光には弱いという弱点がある。

 

「ヒャアアア!!」

「常闇!!」

「氷叢め、()()に気づいたか…!」

「あかん、まるで歯が立たへん…!」

 

 緑谷チームで一番強い黒影(ダークシャドウ)の弱点を見破られてしまい、緑谷チームは六花達に対して攻められずにいた。

 するとそこへ、冬将軍を倒した轟チームが割り込んでくる。

 

「緑谷、1000万(そいつ)は渡さねぇ」

「轟くん…!!」

 

 轟チームと緑谷チームは、六花の1000万を巡って互いに足の引っ張り合いを始めた。

 六花は、二チームが足を引っ張り合っている間に逃げる。

 だが逃げた先には、物間チームからハチマキを奪還した爆豪がいた。

 

1000万(それ)寄越せやァ!!!」

「かっちゃん!?」

「ワァ……」

 

 爆豪の爆破を、六花は上半身を逸らして躱す。

 残り時間が1分を切ったところで、ハチマキ争奪戦に爆豪チームも参戦し、三つ巴、もとい四つ巴の戦いになる。

 そして他のチームも、六花の1000万を狙って集まってくる。

 すると六花は、愛馬のシルバーから降り、他の騎馬へと飛び移る。

 まるで因幡の白兎のように、騎手の頭を足蹴にして騎馬から騎馬へと飛び移り、自分を狙う騎馬を翻弄した。

 

「おーにさんこちら、手の鳴る方へ♪」

「わっ!?」

「クソ、待て!」

「てめぇ踏んづけてんじゃねぇ!!」

 

 六花は、ハチマキを持っている騎手の頭を片っ端から踏んづけていく。

 他のチームは、六花からハチマキを奪おうと躍起になるが、六花はのらりくらりと他のチームの攻撃を躱し続ける。

 

「……さて」

「氷叢さん、今です!」

 

 発目が、サポートアイテムのワイヤーで六花を巻き取って回収する。

 六花は、発目に回収されつつ、右手の人差し指をクイっと曲げる仕草をした。

 するとその瞬間、他のチームのハチマキが、六花の元へと吸い寄せられていく。

 

「な…!?」

「ハチマキが…!!」

「返せてめぇ殺すぞ!!」

「ヤです。返しません。ハチマキとられたくないので、こうします」

 

 そう言って六花は、フィールド全体を覆う冷気の煙を放つ。

 煙が晴れる頃には、他のチームは全員足元が凍りつき、深部体温を下げられて動けなくなっていた。

 

「クソッ……!! 動けねぇ……!!」

「氷叢……!!」

 

 体を冷やされて戦闘不能になった他のチームは、恨めしそうに一点を睨みつける。

 彼らの視線の先には、依然1000万のハチマキを頭に巻いたまま、自分のチーム以外の11本のハチマキを首に巻いた六花がいた。

 

『なあああーーーー!!? 氷叢チーム、やりやがったーーー!!! ハチマキを全部奪っただけにとどまらず、他の騎馬を残らず凍らせやがった!! てかどうやって奪った!!?』

『あいつの“個性”は、氷を操れる。さっき他の騎馬に飛び移って騎手を足蹴にした時、さりげなくハチマキを凍らせておいたんだよ』

『おいおいイレイザー! ハチマキを凍らされたら、流石に他の奴等も気づくダロォ!?』

『だから他の奴等を足蹴にしたんだ。そんなことされたら、そいつを捕まえようと躍起になって、自分のハチマキに細工されてることになんか頭が回らねぇからな』

『なるほどなぁ! 考えるタイプには見えねぇけど、意外とクレバーだな!』

「…………意外と、はよけいです」

『ご、ごめん!! さて、残り時間はあと10秒!! このまま氷叢チームが勝ち抜けちまうのかぁ!?』

 

 制限時間を10秒残した今、ハチマキは全て六花のもとにあり、他のチームは全て“個性”を発動すらままならない程に深部体温を下げられ、戦闘不能に追いやられている。

 六花は、冷やされて動けない他のチームに向かって言い放つ。

 

「……さっきのチーム決めのとき、みんなわたしを避けて、チームを組んでくれなかったですよね。わたしと組もうってゆってくれたのは、ハツメさんだけでした。だからハツメさん以外みんな、ここでしね……です」

 

 そう言って六花がサムズダウンした、その瞬間。

 

『TIME UP!!』

 

 プレゼント・マイクの声と共に、タイムアップのブザーがフィールド全体に鳴り響く。

 

「あー、たのしかった♪」

 

 競技が終わると、六花は愛馬のシルバーから降り、氷を解凍して他のチームの体温を元に戻した。

 第二種目通過者、氷叢六花、発目明の2名のみ。

 誰も予想だにしなかった結末に、会場は騒然としていた。

 

『おいおい、どーすんだこれ!? まさかの通過者2人だけ!? こんなの前代未聞だぞ!?』

「私に言われても困るわよ! とりあえず、氷叢さんと発目さんを除いた11チームで2位以下を決め直すしか……」

『時間の無駄だ。あいつがハチマキを全部奪う直前の順位でいいだろ』

 

 困惑するプレゼント・マイクとミッドナイトに対して、相澤が最も現実的な提案をする。

 公平性を考えれば本来ならもうひと勝負するべきなのだろうが、時間や生徒達の体力の関係上、2位以下を決める為に再戦するのは難しい。

 ここにいるプロヒーロー達は、一分一秒も惜しい時間を削って観戦や警備に来ているのだ。

 それに、体力を消耗してまで再戦したところで、残りの種目がグダグダになるのは目に見えている。

 それらの理由から、相澤の案が採用される事になった。

 

「えー、協議の結果、氷叢さんのチームと、直前の上位3チームを最終種目進出とする運びとなりました」

 

 ミッドナイトは、教師陣で話し合って出た結論を生徒達の前で発表した。

 そんな中一人、教師陣の決定に納得しない者がいた。

 

「いやいやいや!! それっておかしくないですかァ!? 氷叢チームの邪魔さえなきゃ、僕らB組がA組からハチマキを奪い返すチャンスもあったはずでしょう!? ここは泣きの一回──」

『予定が押してるんだよ。文句があるなら来年リベンジしろ』

 

 物間がミッドナイトの決定に異議を唱えようとするが、相澤にバッサリ切り捨てられた。

 

『つーわけで!! 最終種目に進出したチームを見てみよう! 1位はもちろん氷叢チーム!!』

「わぁい、勝てた」

『2位、爆豪チーム!!』

「だああああ!! くそがああああ!!」

『3位、轟チーム!!』

「…………くそっ」

『そして4位、緑谷チーム!!』

「わああああああああ!!!」

「わっ、デクくん泣きすぎ…」

 

 プレゼント・マイクの発表に、六花は発目とハイタッチをして喜び、爆豪と轟は悔しがり、緑谷は間欠泉のように大量の涙を流して喜ぶ。

 その一方で、最終種目進出者が一人も出なかったB組は、暗い顔をしていた。

 だが、最終種目進出者の発表は、そこで終わりではなかった。

 

『そしてここで、惜しくも落ちちまったB組のリスナー諸君に朗報だァ!! 決勝進出は16人、そして最終種目にコマを進めた4チームは14人……つまり残る枠はあと2つ!! つーわけで!! 5位のチームから2人、最終種目にコマを進めることができるぜ!!』

「まじかぁ!!?」

 

 プレゼント・マイクの発表に、鉄哲がバッと顔を上げる。

 1位の六花達のチームが2人騎馬なので、4チーム進出だと最終種目の枠が2つ余ってしまうのだ。

 そこで人数調整の為に、残り2枠が、惜しくも敗れてしまったB組に回ってきた。

 

『5位は鉄哲チーム!! つーわけで、鉄哲チームの4人には、今から残り2枠をかけたデスマッチを──』

「いや、その必要はないですよ。俺らの中では、もう結論は出てるんで」

 

 プレゼント・マイクの声を遮って、骨抜が手を挙げる。

 骨抜は、泡瀬と顔を見合わせて頷くと、鉄哲と塩崎に告げる。

 

「鉄哲、塩崎。お前ら絶対勝てよ」

「今回一番頑張ってたの、お前らだもんな」

「骨抜……泡瀬……おめぇら……!!」

 

 骨抜と泡瀬は、チームに貢献した二人に、自分達の思いを託した。

 他のB組の生徒達も、骨抜や泡瀬と同じ気持ちだった。

 鉄哲は、チームメイトの優しさに涙を流す。

 

「ありがとう!! 俺、絶対優勝するぜ!!」

「お二人のお気持ち、決して無駄には致しません」

「青くっさ!! いいわぁこういうの超好み!!」

 

 鉄哲と塩崎が骨抜と泡瀬に感謝していると、一連のやり取りを聞いていたミッドナイトが興奮する。

 最終種目への進出枠を譲った二人だったが、プロ達からは、そのヒーロー精神をきちんと評価されていた。

 

『つーわけで、残る2枠を勝ち取ったのは、鉄哲と塩崎!! 以上16名が、最終種目へ…進出だああーーーーーーーーーーーー!!』

 

 

 

 

 




心操チームはここで敗退です。
心操くん推しの方は非常にごめんなさい。
以下、言い訳タイム

別に心操くんの事が気に入らないとか、オリ主SUGEEEの踏み台とかではありません。
ただ、有能内通者の雪代さんがいるこの世界線で最終種目に進出してしまうと、即“個性”バレして梅干しが光の速さで飛んで来よるので、大変心苦しいですがここで脱落してもらいました。
全部雪代さんが有能すぎるのが悪いんや…
その代わり2学期で活躍させるからゆるちて…

途中経過ですが、拳藤チームが取蔭さんの“個性”で峰田チームからハチマキを奪取、その後峰田のハチマキを轟チームに奪われてます。
原作では鉄哲チームが峰田からハチマキを奪っていますが、そこは塩崎さんがごねてる間に拳藤チームに先越されたって事で(笑)
一方デクチームは、突っかかってきた鱗チームを返り討ちにしてハチマキを2本奪取してます。


騎馬戦の最終成績

1位 氷叢チーム 10004305P
2位 爆豪チーム        0P(直前ポイント:1300P)
3位 轟チーム         0P(直前ポイント:1000P)
4位 緑谷チーム        0P(直前ポイント:895P)
5位 鉄哲チーム        0P(直前ポイント:685P)
6位 拳藤チーム        0P(直前ポイント:420P)
7位 鱗チーム         0P(直前ポイント:0P)
7位 葉隠チーム        0P(直前ポイント:0P)
7位 峰田チーム        0P(直前ポイント:0P)
7位 物間チーム        0P(直前ポイント:0P)
7位 心操チーム        0P(直前ポイント:0P)
7位 小大チーム        0P(直前ポイント:0P)
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