地獄の氷叢さん家   作:M.T.

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第21話 氷叢さんの1回戦

No side

 

 レクリエーションが終わった後、ついにメインイベントのトーナメントが始まる。

 セメントスは、地面に手をついてスタジアムの中心にリングを作った。

 広めの四角いリングで、四隅に設置された松明には火が灯っている。

 

「オッケーもうほぼ完成」

『サンキューセメントス! ヘイガイズ! アァユゥレディ!? 色々やってきましたが!! 結局これだぜガチンコ勝負!! 頼れるのは己のみ! ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ! 分かるよな!! 心・技・体に知恵知識!! 総動員して駆け上がれ!! 一回戦!! 成績の割に何だその顔! ヒーロー科、緑谷出久!! (バーサス)!! あの角からなんか出るの!? ねぇ出るの!? ヒーロー科、芦戸三奈!!』

 

 プレゼント・マイクの実況に、観客達のボルテージが高まる。

 そんな中、緑谷は緊張した様子で、芦戸は自信満々な様子でステージに上がる。

 

「にっひっひ、1回戦は楽勝だね〜♪」

 

 芦戸は、ニヤリと笑いながら緑谷を挑発する。

 対する緑谷は、緊張でガチガチに固まっていた。

 

『ルールは簡単! 相手を場外に落とすか行動不能にする、後は『参った』とか言わせても勝ちのガチンコだ!! 怪我上等!! こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから!! 道徳倫理は一旦捨てとけ!! だがまぁ勿論命に関わるよーなのはクソだぜ!! アウト! ヒーローは(ヴィラン)を捕まえる為に拳を振るうのだ!』

「なんかこういうルールの戦い、昔の漫画にありませんでしたっけ」

「ええ。7つの玉を集めるお話よね」

「そう、それです。でも確か、途中から玉関係なくなっちゃうんですよね」

 

 六花はプレゼント・マイクの実況を聴きつつ、蛙吹に髪を整えてもらいながら話していた。

 六花の髪は、蛙吹の手によって綺麗な編み込み団子にアレンジされている。

 そうしている間にも、戦いの火蓋が切られた。

 

『んじゃレディ……START!!』

「先手必勝!!」

 

 最初に仕掛けたのは、芦戸だった。

 芦戸は、靴の裏から酸を噴出してスケートの要領で距離を詰めると、緑谷目掛けて酸を放つ。

 素の身体能力で芦戸の酸を避ける緑谷だったが、飛沫までは避けきれず、強酸の粒が緑谷に降りかかる。

 

「うわっ!」

「へへっ、溶かしちゃうよ〜!」

『緑谷、芦戸の猛攻に対し、防戦一方!! そして後ろは崖っぷち!! まさに絶体絶命!! このまま終わっちまうのか!?』

 

 芦戸は、強酸を噴射して緑谷を追い詰めていき、逃げ場を奪っていく。

 そして緑谷はとうとう、場外ギリギリまで追い詰められた。

 

「これで終わりだよ!!」

 

 そう言って芦戸は、両手足に酸を纏って緑谷に飛び掛かる。

 酸の痛みで踏ん張る力が抜けたところを、場外に押し出すという戦法だ。

 だがそれも、緑谷の作戦通りだった。

 緑谷は怯むどころか、強酸を纏った芦戸の腕を掴んで耐えた。

 

「えっ、嘘!?」

「あの時の痛み……程じゃない……!!」

『あーっと!! 緑谷、耐えたァーーー!! つーかアレ痛くねえのか!?』

 

 緑谷は、酸で肌が焼ける痛みに顔を歪めつつも、芦戸の腕をしっかりと掴んで離さなかった。

 そしてそのまま、芦戸の重心を崩し、腕を脇に抱え込んで素早く体を回転させる。

 

「ごめんなさい、芦戸さん!」

「わっ!!」

 

 緑谷は、芦戸に鮮やかな一本背負い投げを喰らわせた。

 いくら身体能力が高い芦戸といえど、完全に虚を突かれた上に、腕を掴まれた状態では抜け出せなかった。

 そして……

 

「でやあっ!!」

 

 ダンッと音を立てて芦戸が着地した瞬間、彼女の足がラインを超えた。

 

「芦戸さん場外!! 2回戦進出、緑谷くん!!」

『決まったァーーー!! 緑谷、芦戸を場外ギリギリまで引きつけて投げ飛ばしたァ!! 見事な作戦勝ちだァーーー!!』

「あーん悔しい〜!!」

 

 緑谷を場外に押し出すはずが逆に投げ飛ばされてしまった芦戸は、両腕をブンブン振って悔しがる。

 一方で、腕を壊さずに初戦を制した緑谷は、火傷の痛みに耐えつつ安堵のため息をついた。

 

「くっ……緑谷と芦戸の“個性”が逆だったら……!!」

「クソすぎだろ」

 

 峰田が拳を握りしめて悔しがっていると、耳郎が軽蔑の眼差しを向ける。

 こうして1回戦第1試合は、緑谷の勝利で幕を閉じた。

 

 

 1回戦第2試合、瀬呂と轟の試合は、轟の圧勝だった。

 最初こそ瀬呂が先手必勝で轟にテープを巻きに行ったものの、轟が一瞬でスタジアムの半分を覆う氷を出して瀬呂を氷漬けにし、戦闘不能に追い込んだ。

 勝ったはずの轟は、始終何かに苛立っているような表情を浮かべていた。

 そして瀬呂は、観客達からドンマイコールを浴びせられるのだった。

 

「次、六花ちゃんよね。頑張って」

「はい……!」

 

 蛙吹に送り出され、六花はリングへと向かう。

 凍ったリングを乾かしてから、第3試合が始まる。

 

 

『ステージを乾かして次の対決!! 優秀なのにどこか普通!! ヒーロー科、尾白猿夫!! (バーサス)!! 予選本戦1位と強すぎるよ君!! つーかもうこいつ一人でいいんじゃねーか!? 同じくヒーロー科、氷叢六花!!』

 

 プレゼント・マイクの紹介とともに、尾白と六花がリングに上がる。

 するとだ。

 

「きゃああああああ!!! 六花様ああああああ!!!」

「六花様ああああああ!!! ファイトおおおおおお!!!」

「リッチャン!!」

「リッチャン!!」

「リッチャン!!」

 

 主に経営科やサポート科の観客席から、六花を応援する歓声が聴こえる。

 1回戦や2回戦の比ではない数のカメラマン達が、一斉にフラッシュを焚く。

 先程のレクリエーションのチア合戦のせいか、六花は一躍人気者になっていた。

 六花の美貌や強さに魅入られた他科の間でいつの間にか『六花様ファンクラブ』なるものまで結成されており、六花のファン達が、『創造』の“個性”を持つ八百万もビックリの仕事の早さで、デフォルメ化された六花の顔がプリントされた法被や団扇などのグッズまで作っていた。

 六花は歓声のせいで落ち着かないのかキョロキョロしており、対戦相手の尾白も苦笑いを浮かべている。

 

「六花ちゃん、頑張って」

「尾白やっちまえーーー!! 格闘ゲームみたいに服が破れる感じで倒せーーーーー!!」

「クズかよ」

 

 女子達が純粋に六花を応援する中、峰田が最低な応援をする。

 六花がファン達の気色の悪い愛が重めの歓声に気を取られている間に、戦いの火蓋が切られた。

 

『START!!』

 

 開始の合図と同時に、尾白が六花目掛けて走る。

 六花も一瞬遅れて、尾白目掛けて走り出した。

 だが、スタートと同時に走り出した尾白よりも、一瞬遅れて走り出した六花の方が速かった。

 六花は、一瞬で尾白の懐に入り込むと、自身の右拳を氷に変えて固め、ギリギリまで拳を引いて構える。

 そして……

 

「や!! き!! そ!! ば!!!」

 

 大きく声を張り上げて叫びながら、尾白の腹目掛けて拳を振り抜く。

 

「パンチ!!!」

「がはっ……!!」

 

 六花のボディーブローが、見事に尾白の腹に突き刺さる。

 受け身が間に合わずに直撃を喰らった尾白は、そのまま場外へと吹っ飛ばされた。

 

「尾白くん場外!! 氷叢さん2回戦進出!!」

『しゅっ、瞬殺!! 第2試合の轟対瀬呂戦をも置き去りにする瞬殺劇!! 氷叢の快進撃は、誰にも止められないのかーーーーっ!!?』

 

 一瞬にして勝負が決まり、観客席が歓声に包まれる。

 尾白を極力傷付ける事なく場外に追い込んだ六花は、両手で握り拳を作って掛け声を上げる。

 

「……やきそば食べて、元気100倍っ……ふんっ」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

心操 side

 

 ――心操くん洗脳〜〜!? すげえ初めて聞いた! うらやまし〜〜!

 ――悪ィことし放題じゃんか!!

 ――足つかないしね〜〜〜〜〜、私ら操ったりしないでよ〜!?

 

 犯罪者…(ヴィラン)向きの“個性”だって遠回しに言われるのは慣れっこだ。

 そりゃあ俺だって、他人が持ってたらまず悪用を思いつく。

 

 ――ハハ……皆そう言うよ…

 

 そんな事を言われる度に、俺は反論するわけでも、不満を口にするわけでもなく、ただ笑ってやり過ごした。

 思ってる事をぶつけたって、どうせ嗤われて、正論言われて終わりだから。

 

 ――雄英〜? いいんじゃない、記念に受験してみたら?

 ――あんまり気を落とすなよ。雄英を受験するってだけですごいことだと思うぞ。

 

 親にも、遠回しに『お前には無理だ』と言われた。

 だけど、反発した事は一度もなかった。

 期待するだけ無駄だって、最初からわかってたから。

 

 別に、中学の奴等も、親も、間違った事は言ってない。

 お誂え向きの“個性”を持ってる奴だけが、ヒーローになって輝ける。

 そういう世の中、仕方のない事。

 でも……

 

 ――なんで騎馬戦の時に言ってくれなかったんですか……! そんなすごい“個性”持ってるって知ってたら、チーム組んでたのに……!

 

 あいつは、俺の“個性”を悪く言わなかった。

 それどころか、俺の“個性”を知っても、警戒せずに話しかけてきた。

 

 今思えば、今までずっと無駄な時間を過ごしてきた。

 こんな“個性”じゃヒーローにはなれないって、心のどこかで“個性”を言い訳にしてた自分が馬鹿らしく思えてきた。

 ああいう奴もいるって事を、もっと早くに知ってたら、無駄な事で悩まずに済んだのに。

 

 

「や!! き!! そ!! ば!!! パンチ!!!」

 

 ふと、A組の氷叢の声が聴こえてくる。

 見ると、リングの上では、氷叢が一撃で相手の猿みたいな男子生徒を吹き飛ばしていた。

 『焼きそばパンチ』、あいつは確かにそう叫びながら拳を振り抜いた。

 

「……は? 焼きそば?」

「なんだよ、『焼きそばパンチ』って」

「どこに焼きそば要素があんだよ、ふざけてんのか?」

 

 クラスの皆は、あいつの掛け声の意味がわからずに、ふざけて言ったと思っている。

 クラスの皆だけじゃない、A組の奴等も、先生達も、プロも、誰も知らない。

 この場で俺だけが、あいつの掛け声の意味を知ってる。

 

 ――シンソーさんのやきそばのおかげで私、元気出ました。私、シンソーさんの分までがんばって、絶対優勝します……!

 

 ふざけてなんかいない。

 あいつは誰よりも、真剣に勝負に挑んでる。

 あいつなりに、俺に報いようとしてるんだ。

 

 っとに、余計なお世話だよ。

 でも……

 

「……頑張れ」

 

 気がつけば俺は、氷叢を応援していた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

No side

 

 続く第4試合。

 発目の口車に乗せられた飯田が、全身にサポートアイテムを装着した状態でリングの上に立った。

 試合が始まってしまえば、そこからは発目の独壇場。

 発目は、飯田の攻撃をのらりくらりと躱しながら、10分にも及ぶサポートアイテムのプレゼンを披露した。

 そして……

 

「ふーーー…全て余すことなく見て頂けました。もう思い残すことはありません!!」

「騙したなあああ!!!」

 

 発目が満足げな表情でリングを去っていくと、完全にいいように利用された飯田は憤慨して叫ぶ。

 

「発目さん場外!! 飯田くん2回戦進出!!」

「すみません。あなた、利用させてもらいました」

「嫌いだぁああ君ーーー!!」

 

 こうして第4試合は、勝った方が悔しがり、負けた方だけが得をするという何とも言えない結果に終わった。

 

 

 第5試合。

 上鳴と、B組女子の塩崎との試合だ。

 

体育祭(コレ)終わったら飯とかどうよ? 俺でよかったら()()()()。多分この勝負、一瞬で終わっから」

 

 そう言って、開始の合図と同時に放電した上鳴だったが…

 

『瞬殺!! あえてもう一度言おう! 瞬・殺!!!』

 

 蓋を開けてみれば、塩崎の圧勝だった。

 塩崎の“個性”は『ツル』、頭から生えた蔓を操り、切り離して操作する事もできる。

 上鳴の電撃は塩崎の切り離した蔓に完封され、そのままエンプティを起こして行動不能になったところをガチガチに拘束され試合終了。

 第5試合は、上鳴が見事にフラグを回収する形で幕を閉じた。

 

 

 第6試合。

 A組屈指の戦闘力を誇る常闇と、推薦入学者の八百万との戦いだったが、呆気なく終わってしまった。

 常闇は、八百万から距離を置いたまま黒影(ダークシャドウ)を操って先制攻撃を仕掛けた。

 一方の八百万は、盾を創造して常闇の攻撃を防いでいたが、反撃に移る前に場外に押し出されてしまった。

 

 

 第7試合。

 “個性”ダダ被りの切島と鉄哲の試合だったのだが……

 お互いの実力は拮抗しており、決着がつかないまま、お互い同時にリングに倒れ込んだ。

 

「両者ダウン!! 引き分け!!」

 

 結局、この試合では決着がつかず、体力が回復してから簡単なゲームで再度勝負する事になった。

 そして二人が回復するまでの間に、先に第8試合が行われた。

 

 

『1回戦最後の組だな…中学からちょっとした有名人!! 堅気の顔じゃねぇ、ヒーロー科、爆豪勝己!! (バーサス)…俺こっち応援したい!! ヒーロー科、麗日お茶子!』

 

 プレゼント・マイクの私情丸出しな実況に、観客の注目が二人に集まる。

 試合が始まる前、爆豪は麗日に忠告した。

 だが……

 

『START!!』

 

 試合開始と同時に、麗日が爆豪に接近を仕掛けた。

 当然爆豪は、正面から向かってくる麗日を爆破で吹き飛ばした。

 最初の爆破で視界が遮られるが、爆豪は体操服の上着が見えた事で追撃する。

 だがそれは麗日が“個性”で浮かせた上着で、本命の麗日は爆豪の背後から接近していた。

 爆豪は、麗日が触れる前に気配に気づくと、振り向いて麗日を爆破で吹き飛ばした。

 それを見て、六花が口を開く。

 

「……見てから撃った?」

 

 爆豪の動きは、麗日の囮作戦に気付いていたのではなく、接近に気付いてから吹き飛ばしたような動きだった。

 爆豪の“個性”は、爆破の度に煙が視界を塞いでしまうというデメリットがあるが、ヒーロー科の中でもトップクラスの反応速度を持つ爆豪にとっては大したデメリットにならない。

 触れなければ“個性”を発動できない麗日は、爆豪の反応速度には分が悪い。

 それでも麗日は、爆豪に接近を仕掛ける。

 その度に爆破で吹き飛ばされるが、それでも立ち上がり、姿勢を低くして接近した。

 何度も爆豪に爆破を浴びせられる麗日を見て、クラスメイトが青ざめる。

 

「お茶子ちゃん…!」

「爆豪まさかあいつそっち系の…」

 

 クラスメイトは、ドン引きしながら試合を見守っていた。

 そんな中六花は、冷静に言い放つ。

 

「……うーん、バカですね」

「なっ……!?」

 

 無神経な発言をする六花に対して、クラスメイトが六花の方を見る。

 最初の囮作戦が通じずにヤケを起こしている麗日に対する死体蹴り発言だと思い、近くの席に座っていた葉隠が窘めようとする。

 

「ちょっと六花ちゃん、そんな言い方…!」

「えっ? あ、いや……私がバカって言ったのは……」

 

 自分を窘めようとする葉隠に対して、六花が弁解しようとした、その時だった。

 

「おい!! それでもヒーロー志望かよ! そんだけ実力差あるなら、早く場外にでも放り出せよ!! 女の子いたぶって遊んでんじゃねーよ!!」

「そーだそーだ!」

 

 観客席にいたヒーロー達が、爆豪にブーイングを浴びせる。

 

『一部から…ブーイングが! しかし正直俺もそう思…わあ肘っ! 何SOON…』

 

 プレゼント・マイクも他のヒーロー達と同じ意見を言おうとすると、相澤がプレゼント・マイクの顔を肘で小突く。

 あちこちからブーイングが響く中、マイクから相澤の声が響く。

 

『今遊んでるっつったのプロか? 何年目だ? シラフで言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ。ここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろう。本気で勝とうとしてるからこそ、手加減も油断も出来ねぇんだろが』

 

 相澤の発言に、ヒーロー達はまだ何か言いたそうだったが、大人しく席に戻る。

 

「そろそろ…か…な… ありがとう爆豪くん… 油断してくれなくて」

「あ…?」

 

 麗日は、両手の指を合わせて“個性”を解除した。

 すると、大量の瓦礫が降り注ぐ。

 それを見た六花は、降り注ぐ大量の瓦礫を指差しながら口を開く。

 

「私がバカって言ったのは、バクゴーさんの方です。自分を殺す武器をまんまと作らされてたんだから」

 

 観客席にいた六花は、気づいていた。

 麗日が、爆豪の注意を下に向けさせて爆破でリングを抉らせ、爆豪に一矢報いる為の武器を()()()()()()事に。

 

「勝あアアァつ!!」

 

 麗日は、絶対に勝つという強い思いを胸に、力強く叫んだ。

 

『流星群ー!!!』

『気づけよ』

 

 プレゼント・マイクが驚いていると、相澤が横からツッコミを入れる。

 麗日は、瓦礫の雨の中、爆豪に接近を試みる。

 避けるにしろ、撃ち墜とすにしろ、必ず隙ができる。

 その隙に接近し、爆豪に触れるつもりだった。

 だが…

 

 

 

 

 

 

 

 BOOOM!!! 

 

 

 

「!!」

 

 爆豪は、降ってくる瓦礫を一撃で全て吹き飛ばした。

 

「デクの野郎とつるんでっからなてめぇ。何か企みあるとは思ってたが…」

「…………………一撃て…」

『会心の爆撃!! 麗日の秘策を堂々───正面突破!!』

 

 爆豪が言うと、渾身の攻撃が通用しなかった麗日は、絶望からか顔をグシャグシャにする。

 戦闘訓練の時の規模を超える大爆破で瓦礫を吹き飛ばした爆豪は、汗腺を酷使して痛めた左腕を押さえてため息をつく。

 

「危ねぇな…」

「うう゛…」

「いいぜ! こっから本番だ! 麗日!」

 

 爆豪もやる気を出し、麗日は最後の力を振り絞って立ち向かっていく。

 だが、突然麗日が倒れた。

 

「ハッ、ハッ…んのっ…身体言うこと…きかん…まだ…〜〜〜〜…父ちゃん…」

 

 麗日は這いつくばって向かっていこうとするが、もはやとっくに限界を超えていた。

 これ以上の試合の続行は不可能と判断したミッドナイトは、勝敗を言い渡す。

 

「………麗日さん…行動不能。2回戦進出、爆豪くん───!」

 

 倒れた麗日は、担架でリカバリーガールの元へ運ばれる。

 

『ああ麗日…ウン、爆豪一回戦とっぱ』

『やるならちゃんとやれよ』

 

 応援していた麗日が負けたので、プレゼント・マイクはあからさまにテンションが下がっていた。

 

『さぁ気を取り直して、一回戦が一通り終わった!! 小休憩挟んだら早速次行くぞー!』

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

爆豪 side

 

 麗日(丸顔)との試合を終えた俺は、スタジアムの出入り口へと向かう。

 汗腺を酷使したせいでまだ左手が痛むが、この程度ならまだ闘れる。

 そのまま観客席に戻ろうとすると、デクと鉢合わせした。

 

「うわあ、かっちゃん…」

「んだてめェ何の用だ死ねカス!!」

「いや…次、僕だから…控え室で準備…あと…一回戦おめでとう…シネカス…じゃあ…!」

 

 そう言ってデクがその場を去ろうとする。

 こいつ、しらばっくれやがって……

 

「てめェの入れ知恵だろ。あの捨て身のクソ策は」

 

 俺が言うと、デクが足を止めた。

 やっぱり、クソデクが麗日(丸顔)に策を仕込んでやがったか……

 

「厄介なことしやがって、ふざけんじゃ…」

「違う……全部……麗日さんが君に勝つ為に考えて組んだんだよ。厄介だ、って思ったんならそれは……麗日さんが、君を翻弄したんだ」

 

 あいつが全部自分で考えただと…?

 ……クソが、どいつもこいつも苛つかせやがって。

 

 

「おーう、何か大変だったな悪人面!!」

「組み合わせの妙とはいえ、とんでもないヒールっぷりだったわ爆豪ちゃん」

「うぅるっせぇんだよ黙れ!!」

 

 観客席に戻るなり、瀬呂(テープ)蛙吹(カエル)が話しかけてきた。

 いきなり絡んできた二人に怒鳴りながら空いてる席に向かうと、今度は上鳴(アホ)が話しかけてくる。

 

「まぁーしかしか弱い女の子によくあんな思い切りのいい爆破できるな。俺はもーつい遠慮しちまって…」

「完封されてたわ上鳴ちゃん」

「…あのな、梅雨ちゃん…」

「フンッ!!」

 

 上鳴(アホ)蛙吹(カエル)を無視して、ちょうど空いていた耳郎()の隣に座る。

 こいつら、好き勝手言いやがって……

 

「どこがか弱ェんだよ」

 

 誰に向けてでもなく放った言葉は、歓声にかき消された。

 

 

『あーーーおォ!! 今、切島と鉄哲の進出結果が!!』

 

 実況(プレゼント・マイク)の声に、観客席が沸き立つ。

 

「んんんんんんんんんんんん」

「んんんんんんんんん゛っ」

 

 スタジアムを見ると、切島(クソ髪)とB組のダダ被り野郎が腕相撲をしていた。

 俺が観客席に戻ってくるまでの間に、勝負が始まっていたらしい。

 

「ガァ!!」

 

 切島(クソ髪)が、ダダ被り野郎の腕をセメントの台に叩きつけ、第7試合の決着がついた。

 

『引き分けの末、キップを勝ち取ったのは切島!! これで二回戦進出者が揃った! つーわけで…そろそろ始めようかぁ!』

 

 1回戦が終わり、2回戦に向けてセメントスがフィールドを整え始めると、飯田(メガネ)が席を立つ。

 

「では氷叢くん、ぼ…俺達もそろそろ移動しよう」

「……えっ? なんでですか?」

「緑谷くんと轟くんの試合が終わったら、次は君と俺の試合だろう!?」

「はっ……そうでした」

 

 飯田(メガネ)が声をかけると、氷叢(氷女)がハッとして席を立つ。

 このアホ……今の今まで自分の順番忘れてたんか。

 やっぱりこいつが俺より上だなんて納得いかねぇ……!!

 

 飯田(メガネ)が控え室に向かった後で、氷叢(氷女)も慌てて控え室に向かう。

 俺は、急ぎ足で階段を降りる氷叢(氷女)に声をかけた。

 

「おい、氷叢」

「ん、なんですかバクゴーさん」

 

 客観的に見て、こいつは俺より強ぇ。

 だが、それがなんだってんだ。

 俺はこいつをぶっ殺して、1番になるんだよ。

 

「てめぇは俺がぶっ殺すんだよ。その前にみっともねぇ負け方しやがったら殺すぞ」

「…………はいっ」

 

 俺なりに発破をかけると、氷叢(氷女)が握り拳を作って頷く。

 ふん、俺が言うまでもねぇってか。

 絶対決勝でぶっ殺して優勝してやる。

 

 

 

 

 




1回戦のデクさんの相手にアシミナを選んだのは、オリ主のせいで落ちた心操くんの代わりになり得る相手として、唯一現状のデクさんが勝てそうだったからです。
オリ主→まず無理
尾白くん→OFA使えば勝てるだろうけど体術で押し切られたらきつい
他のキャラ→原作の組み合わせを極力変えたくない
笑いながら指ぶっ壊すデクさんなら多少酸をかけられても平気だろうから、酸に耐え切って至近距離で投げ技ぶちかませばワンチャン、と。
本作のデクさんはフィジカルに強化が入ってるので、ギリギリOFA無しでアシミナに作戦勝ちできましたが、そもそも身体能力の差が天と地ほどあるので、原作デクさんならこうはいかなかったです。
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