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麗日 side
私は、保健室でリカバリーガールに治療してもらった後、購買で新しい体操服を買ってから控え室に戻ってきて、ちょうど着替えようとしていた時、デクくんが控え室のドアを開けた。
「負けてしまった」
「………………れ」
控え室に来たデクくんに、私は笑顔で話しかけた。
「最後いけると思って調子乗ってしまったよ、くっそーー…」
「麗日さん…ケガは…大丈夫?」
「うん。リカバリーされた! 体力削らんよう、程々の回復だから、擦り傷とかは残ってるけど。いやぁーやっぱ強いねえ爆豪くんは! 完膚なかったよ! もっと頑張らんといかんな私も!」
左手をブンブン振って悔しがると、デクくんが心配そうに話しかけてくる。
「………大丈夫…?」
「大丈夫! 意外と大丈夫! デクくんだって、すぐ先見据えてやってるし…負けたからって負けてられんよ」
「………そんな」
私がデクくんと話していたちょうどその時、切島くんとB組の鉄哲くんの試合が終わった。
延長戦は、切島くんが勝ち上がったらしい。
次は、デクくんと轟くんの試合だ。
「…もう…! じゃあ…」
「ああごめん! 私おってデクくん全然準備が…! 見とるね、頑張ってね」
私がそう言って手を振ると、デクくんが頷いて控え室を後にする。
デクくんが出ていった後、私はついさっき電話をくれた父ちゃんに折り返しの電話をした。
「…………電話、さっきごめんな。父ちゃん」
『いや、こっちこそ忙しい時にすまんな。いやー…テレビ、母ちゃんと見とったよ! 惜しかったなーー!! でも凄かったぞ!』
「惜しくないよ。凄くもない。最後焦りすぎたし…あそこからの打開策、何もあらへん状態やったし…完敗」
『そうなんかァ。難しいことはようわからんけど…別に負けたからって、道閉じるわけやないんやろ? 来年もあるんやろ?』
「勝ち進めばそんだけ、色んなタイプへの対応とか見せられんねん。一戦じゃ、スカウトする方もわからへん」
『なーにを生き急いどんのや』
「だって…!! 早く私…父ちゃん達…」
『……………お茶子はもォ…急がんでも大丈夫やで。そんななるくらい優しいお茶子は、絶対良いヒーローんなるって、俺わかっとるもん』
私は、父ちゃんの言葉を聞きながら、溢れてくる涙を拭った。
悔しいよ……!!
私だって、デクくんみたいに勝って、父ちゃんと母ちゃんに楽させてあげようと思って……!!
なのに、私の全力、全然爆豪くんに通じんかった……!!
◇◇◇
ひとしきり泣いた後、私はデクくんの試合を見に観客席に戻ろうとした。
すると、ちょうど飯田くんと六花ちゃんが控室に向かってきた。
そっか、デクくんの試合が終わったら、次は飯田くんと六花ちゃんの試合か……
「二人はまだ始まっとらん?」
「うら…」
「見ねば」
「目を潰されたのか!!! 早くリカバリーガールの元へ!!」
飯田くんが、私を心配して声をかけてくる。
あかん、泣きすぎて目が腫れぼったくなってしもた……
「行ったよ、コレはアレ。違う」
「違うのか! それはそうと、悔しかったな…」
飯田くんは、私に同情の言葉をかけた。
すると今度は六花ちゃんが、私と飯田くんに話しかけてくる。
「あの……オチャコさん、イーダさん。デクさんとショートさんの試合、一緒に見ませんか?」
「「え?」」
「ほら……私かイーダさんは、次はデクさんかショートさんと戦うことになるわけですし……近くで見た方がいいかなって思うんですけど……」
「確かに……間近で二人の試合を見て、今後の糧にするべきだな」
「うん。あの氷結、デクくんどうするんだ…?」
私は、飯田くんと六花ちゃんと一緒に、入場ゲートからデクくんの試合を見る事にした。
飯田くんと六花ちゃんの言う通りだ。
今は試合を見て、今後に活かさへんと……
◆◆◆
No side
『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!! まさしく両雄並びたち今!! 緑谷
最初に仕掛けたのは轟だった。
轟は、瀬呂の時と同様、氷結で攻撃を仕掛ける。
だが緑谷は、轟の氷結をデコピンで相殺した。
轟は何度も氷結を放ってくるが、その度に緑谷は指と腕を使って迎撃した。
右手の指と左腕を壊した後は、壊れた指を使って氷結を相殺した。
そこで緑谷は、轟の弱点を指摘する。
なんでも轟の弱点は、氷の“個性”だけを使い続けると、体温が下がりすぎて身体能力が低下する事だという。
その弱点は、左の炎を使う事で解消できるが、エンデヴァーへの復讐に囚われている轟は、炎を使おうとはしなかった。
すると緑谷が、壊れた右手を握りしめながら、轟に向かって叫ぶ。
「皆…本気でやってる! 勝って…目標に近づく為に…っ、一番になる為に!
緑谷が叫ぶと、轟は苛立ったような表情を見せ、勝負を急いで接近戦を仕掛ける。
すると緑谷は、轟の懐に入り込み、『ワン・フォー・オール』のパワーを込めた拳で轟の腹にボディーブローを叩き込む。
轟が氷結を放って反撃してくると、デコピンができなくなった緑谷は、今度は口に指を引っ掛けて衝撃波を放ち、氷結を相殺した。
「何でそこまで…」
「期待に応えたいんだ…! 笑って、応えられるような…カッコいいヒーローに……なりたいんだ!! だから全力で! やってんだ皆! 君の境遇も君の決心も、僕なんかに計り知れるもんじゃない………でも…全力を出さないで一番になって完全否定なんて、ふざけるなって今は思ってる!」
「うるせえ…………………」
「だから……僕が勝つ!! 君を超えてっ!!」
緑谷は、ボロボロの右手で轟を殴り飛ばした。
「親父を───…」
「君の! 力じゃないか!!」
緑谷が、轟に向かって叫ぶ。
すると……
ゴオッ
『これは───…!?』
フィールドに、赤い炎が吹き荒れる。
轟が、ここに来て初めて炎を出したのだ。
「勝ちてえクセに…………ちくしょう…敵に塩を送るなんて、どっちがふざけてるって話だ…俺だって、ヒーローに…!!」
緑谷に胸の内を打ち明けた轟は、微笑んでいた。
すると、エンデヴァーが激励しながら観客席の階段を降りていく。
「焦凍ォオオオ!!! やっと己を受け入れたか!! そうだ!! いいぞ!! ここからがお前の始まり!! 俺の血をもって俺を超えていき!! 俺の野望を果たせ!!」
『エンデヴァーさん急に“激励”…か? 親バカなのね』
いきなり轟に対して激励を始めたエンデヴァーに、実況席の二人は呆れ返っていた。
一方、リングの上では、緑谷と轟がぶつかり合っていた。
「ミッドナイト!」
セメントスがミッドナイトに叫ぶと、ミッドナイトは自身のコスチュームのタイツを破って肌を露出させ、眠り香を出して二人を眠らせようとする。
轟が氷を出すと、緑谷が超パワーで駆け抜けて右腕を振りかぶった。
轟は、左手を前に出し、全力で炎を放つ。
「緑谷、ありがとな」
ゴォオオオオオオッ
突然、ステージが大爆発を起こした。
氷結で冷やされた空気が炎で熱された事により一気に膨張、スタジアム全体を巻き込む規模の大爆発が起こったのだ。
セメントスが二人の間にセメントの壁を作って衝撃を殺していくが、爆発がその壁をも全て粉々に砕いていく。
自分達にも被害が及ぶと思ったのか、六花は咄嗟に氷の膜を張って飯田と麗日を守った。
蒸気とコンクリートの煙でリングが見えず、誰も勝負がどうなったのかわからない。
だがその時、蒸気がわずかに揺らぎ、人影が見える。
そこにいたのは、スタジアムの壁に叩きつけられ、満身創痍の状態でもたれかかっている緑谷だった。
リングの上には、目を見開いて立ち尽くしている轟がいた。
「緑谷くん……場外…轟くん───…三回戦進出!!」
◇◇◇
その後、リングの補修のため、休憩時間が設けられた。
その間に飯田、麗日、六花は、緑谷の見舞いに向かう。
途中で蛙吹、峰田と合流し、5人で保健室に行った。
「「「デ緑ク谷くくん!!!」」」
5人が駆けつけた先には、リカバリーガールに応急処置されている緑谷と、彼の見舞いに来ていたトゥルーフォームのオールマイトがいた。
六花は、怪訝な顔をして、オールマイトに話しかける。
「……あなたどなたです?」
「あっ、わ、私は……ええと、八木俊典といって、この学校の用務員を……」
「? 初めまして……」
オールマイトが苦し紛れに誤魔化すと、六花と麗日は怪訝な表情を浮かべつつも会釈をする。
「みんな…次の試合…は」
「ステージ大崩壊の為、しばらく補修タイムだそうだ」
「心配で来ました」
「怖かったぜ緑谷ぁ、あれじゃプロも欲しがんねーよ」
「塩塗り込んでくスタイル感心しないわ」
「でもそうじゃんか」
峰田が負けた緑谷に追い討ちをかけるような発言をすると、蛙吹が舌で引っ叩く。
するとその時、リカバリーガールが六花達を追い出しにかかる。
「うるさいよホラ! 心配するのは良いが、これから手術さね」
「「「シュジュツー!!?」」」
リカバリーガールの発言に、飯田、麗日、峰田が驚く。
六花は、リカバリーガールに追い出されつつ、何か手伝えないかと考えリカバリーガールに指示を仰ぐ。
「あの、リカばあ先生……私は……?」
「あんたは次の試合があるんだろう。こっちのことはいいから、自分の試合に集中しな」
「あ、はい……」
手術を手伝おうとした六花だったが、次の試合が控えているとの事で追い出されてしまった。
◇◇◇
2回戦第2試合。
『2回戦第2試合!! 1回戦ではまんまと利用されちゃったが、今度こそ見せ場を作れるか!? 眼鏡な爆走野郎飯田!!
プレゼント・マイクの声が響き渡る中、飯田と六花が対峙する。
「氷叢くん。入学してから、俺は君に負けてばかりだ。だからこそ俺は、君に挑戦する。遠慮なく、最初から全開でいかせてもらおう」
「んっ……」
飯田が正々堂々と六花に宣戦布告すると、六花が警戒して構える。
『START!!』
「トルクオーバー…レシプロバースト!!」
試合開始と同時に、飯田が全速力で突っ込んでくる。
飯田は、そのまま六花を場外に押し出そうと、肩を掴もうとしてくる。
だが六花の肩を掴もうと伸ばした飯田の両手は、空を切った。
「や!!」
「なあああああーーーーー!!?」
飯田は、混乱のあまり素っ頓狂な声を上げる。
彼の目には、六花が突然消えたように見えた事だろう。
だが観客は、何が起こったのかを理解していた。
飯田の頭上には、マ◯オのように片腕を上げながらジャンプした六花がいた。
何かさせる前に場外に押し出すという、飯田の作戦自体は悪くなかった。
実際、今の飯田に取れる最善手だ。
だが飯田にとって不運だったのは、飯田の最高速度に余裕で反応できる六花が相手だった事だ。
六花は、普段は周りを巻き込まないように音速を下回る速度でしか走っていないが、その気になれば戦闘機をも置き去りにする速度で走行できる。
極超音速の世界にも容易く適応できる六花の反応速度の前では、飯田の最高速度など止まっているも同然。
飯田の動きを見て如何様にも動ける六花にはもはや、迎撃する必要すら無い。
ギリギリまで引きつけたところで回避し、自滅を誘えばいいだけの話なのだから。
六花を捕まえ損ねた飯田は、そのまま場外目掛けて爆走してしまう。
『飯田、凄まじい加速で氷叢を捕らえた───かと思いきや、そのまま暴走!! このままだと場外になっちまうぞ!? 止まれ、止まれーーーーーっ!!』
飯田は速度を落として止まろうとするが、一度最高速度まで加速してしまうと、急には止まれない。
しかもリングは、六花の出した氷のせいで凍結して滑りやすくなっており、自分の意思での減速や方向転換すらままならない。
言うなれば、凍結した道路の上をノーマルタイヤで急加速して走っているようなものだ。
結果、飯田の足は完全に制御を失い、場外へとスリップしてしまった。
「やばっ」
スリップした飯田がそのままスタジアムの壁に激突しそうになると、六花は雪で即席のクッションを作って緩衝した。
結果、飯田は雪の中に埋もれる事になったが、幸いにも雪のクッションを出すのが間に合ったおかげで怪我はなかった。
「飯田くん場外!! 3回戦進出、氷叢さん!!」
『氷叢、危なげなく飯田を下し準決勝進出!!』
勝負が終わると、六花が飯田に歩み寄る。
「……ごめんなさい、イーダさん。やりすぎました。だいじょうぶですか」
六花は、飯田を覆う雪を融かした。
すると、悔しそうに唇を噛み締める飯田の姿が目に映る。
「くっ……兄さん……!!」
続く第3試合。
常闇と塩崎の試合だ。
「行け、
「アイヨ!」
常闇が命令すると、
塩崎は、無数の蔓を伸ばし、常闇と
だが
「オセーヨ!」
塩崎が蔓を伸ばすスピードよりも、
本体である常闇を先に拘束していれば塩崎にもまだ勝機はあったかもしれないが、常闇本人が距離を取って攻撃している上に、
とうとう塩崎を追い詰めた
「きゃあ!」
そして、蔓を張り直される前に、塩崎を場外へ投げ飛ばした。
「塩崎さん、場外!! 3回戦進出、常闇くん!!」
2回戦第3試合は、常闇の勝利で幕を閉じた。
2回戦最終試合。
爆豪と切島の試合だ。
『カァウゥンタァ〜〜〜〜〜!!!』
切島のカウンターが決まると、プレゼント・マイクが実況をする。
少しダメージを負った爆豪は、一度距離を取る。
すると切島は高笑いして頑丈さをアピールした。
「効かねーっての爆発さん太郎があ!!」
『切島の猛攻になかなか手が出せない爆豪!!』
「オラアアア! 早よ倒れろ!!」
切島は、連続攻撃で確実に爆豪にダメージを蓄積させていった。
だが爆豪が切島の脇腹を爆破すると、切島はダメージを負った。
爆破が効かないはずの切島にダメージが入ったため、プレゼント・マイクは驚いていた。
『ああー!! 効いた!!?』
「てめェ全身ガチガチに気張り続けてんだろ。その状態で速攻仕掛けてちゃ、いずれどっか綻ぶわ」
そこからは早かった。
爆豪は、切島に連続で爆破を浴びせた。
「死ねえ!!!」
そしてトドメの一撃を入れると、切島はついにダウンした。
爆豪は、ヒーローらしからぬ笑みを浮かべながら切島に言い放つ。
「まぁ、俺と持久戦やらねえってのもわかるけどな」
「切島くん、行動不能!! 爆豪くん、3回戦進出!!」
『爆豪エゲツない絨毯爆撃で3回戦進出!! これでベスト4が出揃った!!』
ミッドナイトが勝敗を言い渡し、プレゼント・マイクが実況をして第4試合は終了した。
こうして2回戦が全て終わり、準決勝進出者4人が出揃った。
原作では飯田くんとお茶子はデクvs轟戦を観客席で見ていましたが、よくよく考えたら飯田くんの試合は次なので、本作では入場ゲート付近で見ているという設定に変更しています。
原作飯田くんは、もしデクvs轟戦が一瞬で決着ついたらどうするつもりだったんだろうか。
ちなみに飯田くんを翻弄したマ◯オ風ジャンプは、後に『ヒムラワープ』と呼ばれ語り継がれることになります。