No side
勇学園との合同訓練の数日後、いつも通りにホームルームが行われる。
「えー… そろそろ夏休みも近いが、もちろん君らが30日間一ヶ月休める道理はない」
「まさか…」
相澤の言葉に、緊張が走る。
補習か訓練か、と身構えた生徒達に、相澤が告げる。
「夏休み林間合宿やるぞ」
「「「「知ってたよーーやったーー!!!」」」」
相澤が発表すると、教室のボルテージが一気に最高潮まで高まる。
「肝試そーーー!!」
「風呂!!」
「花火」
「風呂!!」
「カレーだな…!」
「行水!!」
「自然環境ですと…また活動内容が変わってきますね」
「いかなる環境でも正しい選択を…か。面白い」
「寝食皆と!! ワクワクしてきたぁあ!!」
「湯浴み!!」
一人やかましいエロブドウがいたが、A組はそれぞれ皆合宿と聞いてはしゃいでいた。
だが、そんな生徒達を、相澤が一睨みで黙らせる。
「ただし、その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は…学校で補習地獄だ」
「みんな頑張ろーぜ!!」
「女子ー!! 頑張れよー!! 特に氷叢ー!!」
「名指し……」
切島の声援に対して、峰田のやたらと具体的な声援に、六花が思わずツッコミを入れる。
六花は、赤点は補習と聞いて少しばかり焦っていた。
◇◇◇
時は流れ6月最終週。
夏休みに行われる林間合宿の存在を皆が心待ちにする中、期末テストまで残すところ1週間を切ったのだが…
「全く勉強してねーー!!」*1
上鳴は必死そうな様子で叫んでおり、芦戸は楽観的な様子だった。
「体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねぇーー!!」
「あっはっはっは」*2
「確かに」*3
成績下位の二人の様子を見て、テストの順位があまり高い方ではない常闇も焦っていた。
すると砂藤が口を開く。
「中間はまーー入学したてで範囲狭いし、特に苦労無かったんだけどなーー…」*4
「……ウン」*5
「行事が重なったのもあるけどやっぱ、期末は中間と違って……」
「演習試験もあるのが辛え所だよなぁ」*6
「「中間9位!?」」
余裕そうな表情を浮かべている峰田は、意外にも好成績だった。
峰田を勝手にドベ仲間だと思い込んでいた芦戸と上鳴が、峰田を非難する。
「あんたは同族だと思ってた!」
「お前みたいなやつは馬鹿で初めて愛嬌出るんだろが…! どこに需要あんだよ…!!」
「世界かな」
峰田は思いっきり調子に乗っていた。
すると、緑谷が二人に声をかける。
「芦戸さん、上鳴くん! が…頑張ろうよ! やっぱ全員で林間合宿行きたいもんね!」*7
「うむ!」*8
「普通に授業受けてれば赤点は出ねえだろ」*9
「言葉には気をつけろ!!」
緑谷が上鳴と芦戸の二人を励まし、飯田が頷く。
さらに轟が追い討ちをかけるような発言をすると、上鳴がさらにダメージを受ける。
すると中間トップの八百万が芦戸と上鳴に声をかける。
「お二人共、座学なら私お力添え出来るかもしれません」*10
「「ヤオモモーーー!!!」」
八百万が言うと、二人は狂喜した。
だが「演習の方はからっきしでしょうけど…」と落ち込む八百万を見て、轟は首を傾げた。
さらに、耳郎、瀬呂、尾白の3人が八百万に声をかける。
「お二人じゃないけど… ウチも良いかな? 二次関数応用ちょっと躓いちゃってて………」*11
「わりぃ俺も! 八百万古文わかる?」*12
「俺も」*13
「え、え」
八百万は、クラスメイトから頼られた嬉しさで打ち震えていた。
「良いデストモ!!」
八百万が大喜びで快諾し、5人は八百万の家に勉強をしに行く事になった。
一方、爆豪の所へは切島以外誰も寄ってこなかった。
「この人徳の差よ」*14
「俺もあるわてめェ教え殺したろか」*15
「おお! 頼む!」
切島は、爆豪に勉強を教えてもらう事になった。
そんな中、意外な人物が六花に声をかける。
「あのょ……バクゴーさん。私も勉強見てもらっていいですか……」*16
「あぁ?」
六花が、現代文の教科書を持って爆豪に声をかけた。
「私、あんまりあたまよくないので……勉強おしえてほしいです……」
「知るかよ、ポニーテールんとこ行きゃいいじゃねぇか」
「モモさんはいそがしそうなので……バクゴーさんだったらヒマそうじゃないですか」
「「ブフッ!!」」
六花が爆豪に対して『暇そう』とハッキリ言い放つと、切島と瀬呂が吹き出す。
すると爆豪が、急に態度を変えて六花の胸ぐらを掴む。
「舐めてんのかてめェ教え殺したるわ!!」
「あ、お願いします……」
爆豪が六花の胸ぐらを掴んで吠えると、六花は教科書を盾にしつつ頷く。
そんな六花の中間テストの順位は最下位だ。
「……六花が成績悪いのって意外だよね」
「わかる」
「抜けてるとこはあるけど、勉強とかはサラッとこなすタイプだと思ってたわ」
芦戸、耳郎、瀬呂の三人は、爆豪に勉強を教えてもらいに行く六花を見て言った。
見た目はクール系で賢そうで、普段の授業でも難しい問題もきちんと答えているので、周りはてっきり勉強ができるものと思っていた。
六花は、入試ではマークミスをやらかしたせいで合格点ギリギリになってしまい、中間テストでも解答欄がズレていたり字が汚すぎて記述問題で減点されたりして赤点になってしまった。
◇◇◇
昼休み、緑谷、飯田、轟、麗日、蛙吹、葉隠、六花の7人が食堂で一緒に食事をとっていた。
緑谷はカツ丼を、飯田はビーフシチューを、轟と六花は蕎麦を、麗日は日替わり定食を、蛙吹はクリームシチューを、葉隠は醤油ラーメンを注文して食べていた。
緑谷は、期末試験の話をする。
「普通科目は授業範囲内からでまだなんとかなるけど…演習試験が内容不透明で怖いね…」
「突飛なことはしないと思うがなぁ」
「普通科目はまだ何とかなるんやな…………」*17
緑谷がサラッと『普通科目は何とかなる』と言ったので、麗日はかなりショックを受けていた。
「一学期でやったことの総合的内容」*18
「とだけしか教えてくれないんだもの、相澤先生」*19
「戦闘訓練と救助訓練、後はほぼ基礎トレだよね」
「お蕎麦うまっ……」
葉隠、蛙吹、麗日が演習試験の内容について話し合う中、六花はマイペースに蕎麦を頬張っている。
「試験勉強に加えて体力面でも万全に…あイタ!!」
緑谷が話そうとすると、突然何者かが緑谷の頭を肘で小突く。
緑谷が見上げると、後ろには物間が立っていた。
「ああごめん。頭大きいから当たってしまった」
「B組の! えっと…物間くん! よくも!」
物間が謝るフリをして緑谷を煽ると、緑谷が頭を押さえながら振り向く。
すると物間は、ここぞとばかりに煽り散らしてくる。
「君らヒーロー殺しに遭遇したんだってね。体育祭に続いて注目を浴びる要素ばかり増えていくよね、A組って。ただその注目って決して期待値とかじゃなくてトラブルを引きつける的なものだよね」
「「「「「!?」」」」」
「…………」
「うま……うま……」
いきなり煽ってきた物間に緑谷達がギョッとする中、轟と六花だけは興味無しと言わんばかりに黙々と蕎麦を食べ続けていた。
「あー怖い! いつか君達が呼ぶトラブルに巻き込まれて僕らにまで被害が及ぶかもしれないなあ! ああ怖……ふっ!!」
「洒落にならん。飯田の件知らないの?」
物間が煽っていると、すぐに背後から手刀が飛んできて物間は気絶した。
物間の背後には、B組の姉貴分の拳藤が立っていた。
拳藤は、すかさず物間の食事を預かって近くのテーブルに置く。
「ごめんなA組、こいつちょっと心がアレなんだよ」
「拳藤くん!」
「……あ、ケンドーさん」
拳藤の登場に、さっきまで蕎麦を貪っていた六花がようやく顔を上げる。
すると拳藤が緑谷達に期末試験の話をする。
「あんたらさ、さっき期末試験が不透明とかって言ってたよね。入試ん時みたいな対ロボットの実戦演習らしいよ」
拳藤が言うと7人全員が驚き、緑谷が拳藤に尋ねる。
「え!? 本当!? なんで知ってるの!!?」
「私知り合いに先輩がいるからさ、聞いた。ちょっとズルだけど」
「ズルじゃないよ! そうだきっと前情報の収集も試験の一環に織り込まれてたんだ。そっか、先輩に聞けば良かったんだ。何で気付かなかったんだ…」
「………!?」
拳藤の発言を聞いて緑谷がブツブツ言うと、拳藤がドン引きする。
その時、拳藤に引き摺られていた物間が息を吹き返した。
「馬鹿なのかい、拳藤? 折角の情報アドバンテージを!! こここそ憎きA組を出し抜くチャンスだったんだ…」
「憎くはないっつーの」
物間が言うと、拳藤は再び物間に手刀を叩き込んで気絶させた。
◇◇◇
「んだよロボならラクチンだぜ!!」
「やったあ!」
その後、A組の教室では、緑谷から試験内容を聞かされた上鳴と芦戸が呑気に喜んでいた。
その様子を、障子が呆れながら見ていた。
「お前らは対人だと“個性”の調整大変そうだからな……」*20
「ああ! ロボならブッパで楽勝だ!!」
「あとは勉強教えてもらって」
「これで林間合宿バッチリだ!!」
芦戸、上鳴、瀬呂の三人が、すっかり調子に乗って盛り上がる。
するとその時、爆豪がドアに向かいながら口を開く。
「人でもロボでも、ぶっ飛ばすのは同じだろ。何がラクチンだ、アホが」
「アホとは何だアホとは!!」
「うるせえな、調整なんか勝手に出来るもんだろ、アホだろ! なあ!? デク!」
爆豪が緑谷を名指しすると、緑谷が僅かに目を見開く。
「“個性”の使い方…ちょっとわかってきたか知らねえけどよ。てめェはつくづく俺の神経逆撫でするな」
「あれか…! 前のデクくん、爆豪くんみたいな動きになってた」
「あーーー確かに…!」
「体育祭みてえなハンパな結果はいらねえ……! 次の期末なら個人成績で否が応にも優劣つく…! 完膚なきまでに差ァつけててめェぶち殺してやる! 轟ィ…!! 氷叢ァ…!! てめェらもなァ!!」
そう言って爆豪は、教室を出ていく。
「…久々にガチなバクゴーだ」
「焦燥…? あるいは憎悪……」
「バクゴーさん、そんなことより勉強おしえてください。私、赤点はヤです」
切島や常闇が不機嫌そうな爆豪を見て怪訝な表情を浮かべる中、六花はマイペースに自分の勉強の心配をして爆豪を追いかける。
◆◆◆
No side
「あつい……」
テスト前最後の日曜日。
六花は、爆豪の家の近くの図書館に訪れていた。
ちなみに六花の服装は、ノースリーブのブラウスに黒のキュロット、黒いメッシュのスニーカーといった格好で、髪は頭の後ろで無造作なシニヨンにしている。
お気に入りのシマエナガのリュックには、お気に入りのシマエナガのペンケースと、全教科の教科書とノートを一式詰めている。
蒸し暑さに文句を垂れつつも、一秒でも早く冷房のきいた室内に入るべく、六花は少し駆け足で図書館へ向かう。
◆◆◆
切島 side
「頼むぜ、爆豪!」
「よろしくお願いします……バクゴーさん」
「うっせーんだよ、クソ髪! 氷女!」
図書館の窓際の席で、俺と氷叢、爆豪がそう言うと、本を読んでいた周りの人達から視線を向けられる。
やっべ、声デカかったか……?
今日は日曜からか、図書館はまあまあ混んでいる。
つーかこういう静かすぎる場所って、慣れてねぇんだよなぁ。
爆豪が、家だと親御さんがいるから嫌だとか、俺の家まで行ってられねぇとか、色々わがまま言うから、結局図書館で勉強する事になった。
ちなみに、氷叢の家に行くという選択肢は初めから無かった。
いやぁ、流石に女の子の家に男二人で行くのは……な?
爆豪に一回しか教えないからとりあえず問題を見せろと言われて、周囲の視線を気にしつつ、俺は持ってきた数Iの教科書を開いて、引っかかった問題を指さす。
二次関数の応用だ。
「いや~、数学はさっぱりでよ」
「んなもん簡単だろ……」
そう言うと、爆豪は僅かに考えてから、サラサラと答えを書き出した。
「こうだよ」
えっ?
早っ、てか今どうやって解いた!?
つーか解き方は!?
俺が解き方を聞くと、爆豪はすげぇ雑な教えた方をしてきた。
そうかこいつ、頭良すぎて勉強で躓いた事がねぇから、わからねぇって事がわからねぇんだ!
なんてこった……
これじゃ勉強教えてもらう意味ねーじゃねーか!
「ここをバーッと計算してから、こっちをガーッて計算すりゃいいんだろが」
でも爆豪なりに、一生懸命教えようとはしてくれてんだよな。
てかよく聞いてりゃ、漢らしいな……!
俺が思わず叫ぶと、「シーッ」と声が聴こえる。
周りの人が人差し指を口の前にして、静かにしろと促す。
思わず今日一番の大声を出し、顔が赤くなるのが自分でもわかる。
すると爆豪が「ダセェ」と笑ったもんだから、爆豪に文句を言う声がまた大きくなって、すぐにまた謝る。
俺は、さらに次の問題も質問する。
二次関数の最小値の最大を求める問題だ。
「あっ、じゃあこの問題は?」
「あぁ? んなもん……」
「4」
爆豪が答えるより早く、氷叢が答えを言った。
「……あ?」
「この条件の時、m(a)の最大値は4です」
「てめェ、何勝手に答えとんだ」
「だって……バクゴーさんが答えるのおそいから……」
「んだとてめェ!!」
「まぁまぁ……」
氷叢がナチュラルに爆豪を煽ると、爆豪がキレて声を荒げるのを、俺が宥めた。
その後も爆豪が俺達に勉強を教えたんだけど、氷叢の理解度が思いの外高かった。
理系科目、特に数学に関しちゃ、むしろ氷叢の方が爆豪より早く解く事もあるくらいだ。
爆豪もそうだけど、氷叢も頭良すぎだろ!
なんで爆豪の雑な説明を一発で理解できんだよ!
つーかこんだけ頭良いのに、なんでテストの時最下位だったんだ……?
「……てめェ、そんだけわかっててなんで中間の時ビリだったんだよ」
「えっと……解答欄一個ずつずれてたのと……あと、字が汚くて読めないってゆわれて……」
氷叢が答えると、爆豪が舌打ちしながら氷叢の額を教科書で引っ叩いた。
「あだっ!」
「おいバクゴー、なんで叩くんだよ!?」
「うぅ〜〜……」
「なんとなくだクソが」
「ひでえ!!」
「なんとなく」で女子の頭叩くとか、漢らしくなさすぎだろ!?
なんて思いながら思わずツッコミを入れたその時、一人の男の子が俺達のもとへ歩み寄ってくる。
心配して声をかけると、男の子は爆豪を指差した。
「ゆーえーたいいくさいのひょーしょーしきでしばられてたおにーちゃんだよね?」
「あ?」
「どーしてしばられてたの? うるさかったから? としょかんでもうるさくするとしばられちゃう?」
男の子の純粋な疑問に、爆豪が瞬間湯沸かし器のように一瞬で沸点に達する。
「うるせえ!! クソガキ!!!!」
俺が止める間もなく、爆豪が怒鳴り散らした。
そして今度は、爆豪がキレたせいで、男の子がわんわんと泣き出した。
「すっ、すんませんでしたぁー!!」
周りの視線が痛くて、俺はすぐに平謝りした。
俺は図書館から、慌てて逃げるように氷叢と爆豪を連れ出した。
◇◇◇
「……バクゴーさんのせいで勉強できなかったです」
「うるせぇクソ女」
「うあー、こんぐらい騒がしい方がやっぱ落ち着くなー! な、爆豪!」
「勝手に落ち着いてろや」
図書館から逃れてきた俺達は、駅前のファミレスに避難した。
休日の午後、昼の混雑のピークは過ぎたといっても、客はそれなりにいる。
そこかしこで喋ってるせいか、多少声を大きくしても、さっきみたいに怒られる事はなかった。
空いている6人席に座ると、しばらくして店員さんが注文を取りに来たので、とりあえずドリンクバーを注文した。
店員さんが去っていった後、俺はドリンクバーを取りに行く事にした。
「俺、持ってきてやるよ。何がいい?」
「コーラ」
「おう、わかった!」
「バクゴーさん、コーラ好きなんですね。私もです。仲間です」
「勝手に仲間にすんじゃねぇ、クソが」
氷叢が爆豪に親近感を抱いて話しかけると、爆豪がぶっきらぼうに堪える。
するとその時、氷叢も席を立った。
「エージさん、待ってください、私も行きます。一人じゃコップ三つ持てないでしょ」
「あ、そっか」
そう言って俺と氷叢は、ドリンクバーに向かう。
俺もコーラにすっかなぁ……
なんて考えながら備え付けのコップを置いてコーラのボタンを押すと、コーラがコップの中に注がれる。
その様子を見て、氷叢がキャッキャとはしゃぐ。
「しゅわしゅわ〜!」
シュワシュワと音を立てて弾けるコーラを見ながら、氷叢がその場でぴょんぴょん飛び跳ねる。
マジでコーラ好きなのな……
なんて考えながら、氷叢と一緒に三人分のコーラを持って席に戻ると、誰かが俺達の席に座っていた。
俺達とタメくらいの男子二人が、親しげに爆豪と話している。
「爆豪、何、知り合いか?」
「……バクゴーさんのお友だちです?」
俺と氷叢が話しかけると、センター分けの奴と癖っ毛の奴が俺達に気づく。
「あ、雄英の人だー」
「六花ちゃんだ、ホントにカツキのクラスメイトだったんだな」
「りっちゃん、生で見ると可愛いなやっぱ。カツキが羨ましいわ」
「りっちゃん言うなクソモブ!!」
「いや、なんでお前がキレてんの……?」
二人が氷叢に話しかけると、何故か爆豪がキレたもんだから、センター分けの奴が苦笑する。
そんな三人のやり取りを見て、氷叢が爆豪に話しかける。
「……で、バクゴーさん、どなたです?」
「中学んときのダチだよ。さっさと自分のテーブル戻りやがれ」
「なんだよ、冷てえなぁ」
ぶっきらぼうに答える爆豪に、爆豪のダチは名残惜しそうに顔を顰めながらも立ち上がろうとする。
俺は、席を立とうとする二人を引き留めてニカッと笑った。
すると爆豪が「勉強は」と尋ねてくる。
「ちょっとくらい構わねえさ。ダチは大事にしねえとな!」
「私も大丈夫です。ちょっと席つめますね」
俺と氷叢が言うと、爆豪のダチ二人が眩しそうに顔を顰める。
……ん?
そんな変な事言ったか?
なんて思っていると、癖っ毛の奴が、俺達が爆豪の友達だと思えないくらいいい奴だと言ってくれた。
俺が爆豪の事を自分の信念に真っ直ぐな男だと言うと、爆豪がキレてきた。
俺と爆豪のいつものやり取りに、センター分けの奴が懐かしむように頷く。
そういや中学の頃の爆豪って、どんな奴だったんだ……?
ちょっと気になって聞いてみると、中学の頃の爆豪は、唯我独尊って感じだったらしい。
二人の揶揄うような説明に対して、爆豪がイラついた様子で拳を振るう。
そして、隣に座っていた癖っ毛の奴を立ち上がらせると、爆豪は空いたグラスを持って、ドリンクバーに向かった。
そんな爆豪を見送りながら、二人が口を開く。
でも、中学の頃の比べたら、今はだいぶ丸くなっているらしい。
今の爆豪はどんな感じか聞かれて、俺は少し考えてから答える。
「さっきも言った通りだぜ。あいつは裏がねえから、一緒にいて気持ちいいんだ。実力もあるし、そこはみんな認めてると思う」
「……口わるいしすぐキレるし乱暴だけど、意外と面倒見いいとこあるって……最近になって気づきました」
俺に続けて、氷叢も言う。
俺は爆豪の昔の話を聞き、入学当初の頃の事を思い出していた。
確かに出会ったばかりの頃の爆豪は、ずっと何かに苛立っていたように思う。
特に、緑谷が絡むとやばかったなぁ。
「そういえば、緑谷も同じクラスだったんだろ?」
「え、デクさんと……?」
俺と氷叢が言うと、二人は微妙な顔をして歯ぎれが悪くなる。
二人は、今まで緑谷の事を馬鹿にしていたらしい。
でも今はその事を反省していて、体育祭で緑谷の活躍を見た時は、純粋にすげぇって思ったんだとか。
人の事をバカにするなんて、漢らしくねぇ。
でも、もうとっくに反省してる奴を、俺は責める気にはなれなかった。
自分の過ちを認めて態度を改めるのは、強え奴にしかできねぇ事だと思う。
それに……
「緑谷、そう言ったらきっと喜ぶと思うぜ! あ、いや照れるかな?」
「私もそう思います」
俺が言うと、氷叢がブンブンと首を縦に振る。
誰よりも漢らしい緑谷なら、きっと二人の事も許すはずだ。
いや、もしかしたら、許すどころか、二人が困ってたら助けようとするかもしれない。
「……そうかもな」
「あいつ、人がいいからな」
二人は、少しホッとしたように言う。
気が少し楽になったのか、二人は身を乗り出して話し出した。
体育祭の時の緑谷が凄かったとか、もしかしたら勝ち進んで爆豪や氷叢といい勝負してたんじゃないかとか、とにかく緑谷の話で盛り上がった。
するとその時だ。
「……デクがなんだって?」
後ろから、低い声が聴こえてくる。
振り向くと、コーラを片手に、怒りに顔をひくつかせている爆豪がいた。
ビキビキと目が吊り上がっていく。
「デクがサマになってただぁ……? 寝言は寝て言え!!! おめーらの目は節穴か!!! その穴ん中でキレイな大爆破見せてやるよ!!!!!」
「爆豪、落ち着けって!」
「バクゴーさんうるさいです」
掴み掛かろうとする爆豪を氷叢と一緒に押さえ、その間に二人が逃げると、誰の体が当たったのか、テーブルが大きく揺れた。
そして置いていたグラスが倒れて床に落ち、割れる。
そのせいで、周りの客が俺達に気づいてザワザワし出す。
あっ、やべっ……
「うるせえ!!! モブ客どもは黙ってクソ飯でも食ってやがれ!!!!」
「ヒェッ……」
他の客に対する爆豪の暴言に氷叢がドン引きした、その時だった。
「お客様」
叫んだ爆豪の肩を掴んだのは、いかつい体格の店員だった。
ネームプレートには店長の肩書がついている。
「他のお客様のご迷惑になりますので、もう少しお静かに……」
「うるせえ!! 俺も客だろうが!!!!」
「他のお客様にご迷惑をかけるお客様は、お客様ではございません。そして当店は、クソ飯も出しておりません」
そして俺達は、問答無用でファミレスを追い出された。
「てめーらがデクの話なんかするからだ!! つーか全部クソデクのせいだ!!!」
「落ち着け、爆豪!!」
「バクゴーさんいいかげんにしやがれください」
「じゃ、じゃあまたなー!」
慌てて去っていく昔のダチに怒鳴る爆豪を、氷叢と一緒に押さえる。
確かに入学当初に比べたら落ち着いたような気もするけど、これじゃあなぁ……
つーか俺、早く勉強しねーとやべぇんだけど……
中間テストの結果です。
1位 八百万百
2位 飯田天哉
3位 爆豪勝己
4位 緑谷出久
5位 轟焦凍
6位 蛙吹梅雨
7位 耳郎響香
8位 尾白猿夫
9位 峰田実
10位 障子目蔵
11位 口田甲司
12位 砂藤力道
13位 切島鋭児郎
14位 常闇踏陰
15位 切島鋭児郎
16位 葉隠透
17位 瀬呂範太
18位 芦戸三奈
19位 上鳴電気
20位 氷叢六花
世にも珍しいビリ主ちゃんw
ほとんどの作品が、オリ主の順位は1〜6位ですからね。
10位台のオリ主はまだ見ますが、ビリのオリ主は、私の知る限り見た事がありません。
一応六花ちゃんをフォローしておくと、学力が低いわけじゃないんです。
脳みその作りが学力試験と絶望的に相性が悪すぎるだけなんです。