地獄の氷叢さん家   作:M.T.

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今回はなかなかに難産でした。


第38話 氷叢さんの期末試験(3)

No side

 

「それぞれステージを用意してある。10組一斉にスタートだ。試験の概要のついては、各々の対戦相手から説明される。移動は学内バスだ。時間がもったいない、速やかに乗れ」

 

 相澤に促され、六花と麗日はバスに乗る。

 

「よ、ヨロシクね、六花ちゃん……」

「あ、はい」

 

 麗日は、ガチガチに緊張した様子で六花に話しかけてくる。

 まさかNo.2ヒーローと戦わされるとは思ってもいなかったので、当然の反応だ。

 

「でも、正直六花ちゃんがペアで、だいぶ気が楽やわ」

「どうでしょう……試験の内容によっては、むしろ足を引っ張るかもです」

「え?」

 

 そんな会話をしていると、試験会場に到着した。

 

「着いたぞ。ここが我々の戦うステージだ」

「あっつ……! 何なんこれ……!?」

「ん……」

 

 バスを降りた先に見えたのは、炎が燃え盛る市街地だ。

 ステージの外からでも、熱気が伝わってくる。

 その規模は、USJの火災ゾーンの比ではない。

 おそらく、六花への対策として用意された特設ステージだ。

 

「あ、あの……! 試験内容って……まさか、エンデヴァーさんを倒すとかじゃないですよね……!?」

 

 麗日が、前に出てエンデヴァーに尋ねる。

 

「今から説明する。試験の制限時間は30分。君達の目的は、『この俺にこのハンドカフスをかける』か、『どちらか一人がこのステージから脱出』。君達も雄英生なら、似た形式の戦闘訓練は経験しているだろう?」

「あ、はい……」

「というか、逃げてもいいんですか!?」

「ああ。何しろ今回は、極めて実戦に近い状況での試験。俺を(ヴィラン)そのものと考えろ。会敵したと仮定し、戦って勝てるならそれで良し。だが、実力差が大きすぎる場合や“個性”の相性が悪い場合、逃げて応援を呼んだ方が賢明な場合もある」

「それってつまり……」

「戦って勝つか、逃げて勝つか……ってことですね」

「そうだ。君達の判断力が試される。だがそれだと、逃げの一手だと思うだろう? そこでだ」

 

 そう言ってエンデヴァーが、手首にバングルのようなものを装着する。

 

「……ん、なんですそれ」

「錘だ。サポート科に作ってもらったらしい。俺の火力にも耐える優れ物だそうだ。これを、体重の約半分の重量を装着する。ハンデってやつだ」

「戦闘を視野に入れる為、ですか……」

「その通り。それとわかっているとは思うが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、たとえクリアしても、二人とも不合格とするからな」

 

 そう言ってエンデヴァーは、ひと足先に会場へ入る。

 六花達も、会場に入って指定の位置へと向かう。

 

「オチャコさん……あのくさいおじさんにカフスかけられると思います……?」

「六花ちゃん、もう少し言葉選んだ方がええと思うよ?」

 

 六花が失礼極まりない発言をすると、麗日が顔を引き攣らせる。

 六花は時々、心臓に毛が生えているのかと思うほど歯に衣着せぬ物言いをする事がある。

 肝が据わっているなぁ、と思いつつ、麗日は勝てる見込みがあるかどうかを考える。

 

「うーん……難しいと思う。エンデヴァーさん、空中での移動手段あるからなぁ……というかそもそも、熱すぎて近づけへんよ!」

「じゃあ……逃げの一手……ですね……でももし逃げ切れなかったら、その時は…………」

「……その作戦で行くんやね、わかった」

 

 作戦がまとまり、二人は『合格しようね』の意を込めて互いにサムズアップする。

 

『皆、位置についたね。それじゃあ今から雄英高校1年、期末テストを始めるよ! レディーーーー…ゴォ!!!!』

 

 開始の合図と同時に二人が走り出そうとした、その時。

 

「っ! オチャコさん!!」

「わ゛っ!!」

 

 嫌な予感がした六花が、咄嗟に麗日を庇って氷の防壁を出す。

 そのコンマ数秒後の事だった。

 

 

 

 FOOOSH!!!

 

 

 

 先程まで二人がいた場所に、一直線に炎が飛んでくる。

 災害級の熱量により、近くにあったコンクリートのビル群のガラスが飴のように融解し、外壁がバターのように融け始める。

 

「だいじょうぶですか……!?」

「うん……!」

 

 氷の壁に加えて、六花が咄嗟に麗日の体を氷の膜で保護したため、二人は無傷だった。

 だが……

 

「う、嘘やろ……!?」

 

 目の前の光景を見て、麗日が青ざめる。

 ただでさえ炎が燃え盛っていたビル群が、今の一撃で原型を留めずに崩壊していた。

 火災などという表現が生温い、まさに灼熱地獄だ。

 今の火炎放射の発生源と思しき方向に目を向ければ、そこには紅い炎を身にまとったエンデヴァーがいた。

 

「俺は(ヴィラン)だ。全力でかかってこい、ヒーローども」

 

 そう言ってエンデヴァーが、軽く殺気を込めて二人を威圧しながら近づいてくる。

 

「オチャコさん行って!」

「う、うん……!」

 

 六花が叫ぶと、麗日が弾かれたように走り出す。

 その直後、エンデヴァーと六花が同時に飛び出す。

 

「『ジェットバーン』!!」

「や・き・そ・ば・パンチ!!」

 

 炎の拳と氷の拳が空中でぶつかり合う。

 膨大な熱気と冷気がぶつかり合い、体育祭の時の比ではない威力の衝撃波が発生する。

 衝撃波に吹っ飛ばされそうになりながらも、麗日はエンデヴァーの死角に入り込み、そのまま音を立てずにゲートへと突っ走る。

 だが……

 

「『ヘルスパイダー』!!」

「わ゛!!」

 

 エンデヴァーは、ゲートへ向かう麗日を見逃さず、左手の五指から糸状に圧縮した熱線を放つ。

 咄嗟に避けた麗日だったが、その直後、後ろにあったビルが木っ端微塵に切り裂かれる。

 

「痛ぅ……!」

 

 避けた拍子に転んだ麗日は、すぐに立ち上がろうとする。

 だがすぐに第二、第三の矢が飛んでくる。

 避けきれない距離まで炎が迫ってきたその時、六花が麗日を庇う形で飛び出し、冷気で炎を相殺した。

 麗日の無事を確認した六花は、エンデヴァーを睨みつけながら口を開く。

 

「……殺す気ですか」

「そのくらいでなければ訓練にならん。少なくとも、貴様にはな」

「じゃあ動けなくします」

「ムッ……?」

 

 六花が言うと、エンデヴァーの右拳が凍りつく。

 『やきそばパンチ』を放った時、エンデヴァーの右拳を冷やしておいたのだ。

 霜がエンデヴァーの体の半分程を覆ったのを確認してから、六花は巨大な氷塊を出してエンデヴァーを閉じ込める。

 だがその直後、氷の中心が黄色を帯びた赤色に光る。

 そして数秒のうちに氷が全て融け、中から平然としたエンデヴァーが出てくる。

 

「冷やしてくれて感謝する。体に熱が籠るのが弱点だったものでな」

「……まじすか」

 

 皮肉を言いながら無傷で氷塊から抜け出したエンデヴァーを見て、流石の六花も面倒臭そうな顔をする。

 

「……だったらこれはどうですか?」

 

 そう言って六花が、無数の巨大な雪玉を飛ばす。

 ひとつひとつが直径1mを優に超え、まるで砲弾のように飛んでくる。

 だがエンデヴァーは、それら全てを炎で相殺した。

 

「攻撃が単調で読みやすい。俺を倒したければ、もっと工夫するんだな」

「むぅ……」

 

 六花は鋼鉄並みの硬度に固めた雪の塊をエンデヴァーにぶつけ、エンデヴァーはそれを炎の拳で砕く。

 炎と雪がぶつかり合い、衝撃波によって溶岩のように黒く固まった瓦礫が街中に吹き飛ぶが、既に火災によって建物が一つ残らず燃えているので今更だ。

 

 エンデヴァーと六花は、互いに決定打を入れられず、勝負は拮抗していた。

 単純な“個性”のスペックや才能は圧倒的に六花の方が上だが、経験値による立ち回りはエンデヴァーの方が上だ。

 加えて、エンデヴァーの熱が暑がりな六花にとって明確な弱点になり得るのに対して、六花の冷気はエンデヴァーにとって弱点にならないどころか、むしろエンデヴァーの最強の必殺技である『赫灼熱拳』の弱点の克服に利用されてしまう。

 六花にとっては、まさに相性最悪の相手だ。

 だがここで六花は、攻めの一手に出た。

 

「……おじさん、あつくるしいので、わたしあんまりすきじゃないです。なので、おじさんのだいっきらいなものをプレゼントします」

 

 六花がそう言った、次の瞬間。

 

「HAHAHAHAHA!! わーたーしーがー!! 氷叢少女に呼ばれて来た!!!」

 

 聴き覚えのある声と共に、何かが上空から降ってくる。

 高らかに笑い声を上げながら落ちてきたそれは、ドォン、と地響きを起こしながら着地し、その衝撃で周囲の炎が消し飛ぶ。

 やがて煙が晴れ、そこに立っていたのは、全身が氷と雪でできたマッスルフォームのオールマイトだった。

 

「やあ、エンデヴァー!! 最近調子はどうだい? たまには手合わせでもしないかい!?」

「なっ……!?」

「……名付けて『冬将軍・オールマイトver.』です」

 

 忌々しい二本の触角を見てわなわな震えているエンデヴァーに対し、六花がニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 その直後、冬将軍・オールマイトver.ことアイスマイトが、エンデヴァー目掛けて右ストレートを放つ。

 

「『AVALANCHE TEXAS SMASH』!!!」

 

 アイスマイトの右ストレートを放つと、衝撃波によって吹き飛んだ範囲が白く凍りつく。

 

「『ICEBERG CAROLINA SMASH』!!!」

 

 アイスマイトは、今度は両腕を十字に組んで突進し、左右の手刀でクロスチョップを放つ。

 するとチョップの軌道上が凍りつき、氷山が出来上がる。

 エンデヴァーは、体からの炎でアイスマイトの攻撃を相殺していたが、よりにもよって憎きオールマイトが現れた事に苛立ったようで、ゴウッと体から炎を放つ。

 

「ええい、忌々しい……!! 『プロミネンスバーン』!!」

「『BLIZZARD DETROIT SMASH』!!!」

 

 エンデヴァーは、アイスマイト目掛けてありったけの炎を放つ。

 するとアイスマイトは、エンデヴァーの炎を相殺すべく、渾身の右ストレートを放つ。

 炎熱と吹雪が正面からぶつかり合い、今までの比ではない威力の衝撃波が発生する。

 肌をチリチリと焼く程の炎熱に晒されるが、アイスマイトは問答無用で炎の中を突き進む。

 だが……

 

「……オールマイト(ヤツ)を差し向けるか……確かに、俺を挑発するには効果的だ。だがこの技には、致命的な欠陥があるぞ」

「!!」

「オールマイトなら、こんなに弱くない」

 

 エンデヴァーにアイスマイトの拳が届く事はなく、肘から先が融け、首がボトっと落ちた。

 そして、その場に膝をつき、エンデヴァーにもたれかかるように前のめりに倒れる。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

エンデヴァー side

 

「……ふん、所詮はこの程度か」

 

 俺は、膝をついたオールマイトの雪像を見下ろしながら、誰にでもなく呟く。

 氷叢め、よりにもよって忌々しいオールマイトの雪像をぶつけてくるとは……

 だが蓋を開けてみれば、飛んだ期待外れだ。

 つい挑発に乗せられて本気で『プロミネンスバーン』を放ってしまったが、この程度の熱なら問題ない。

 そんな事を考えながら、首と腕が無くなったオールマイトの雪像を突き飛ばそうとした、その瞬間。

 

「いいえ、計算どおりです」

 

 その声を聴いた俺は、背筋が凍りつくような錯覚を抱く。

 振り向くと、いつの間にか背後に回り込んでいた氷叢くんが、冷気を纏った拳を振りかぶっていた。

 俺への嫌がらせの次は、不意打ちか。

 もっと捻ったものを見せてくれるのかと思っていたが、正直、期待外れというか……

 俺を冷やしたところで逆効果だという事を学習していないとは、残念だ。

 俺は、氷叢くんの拳を裏拳で受け止め、冷気を炎で中和した。

 

「不意打ちをしたければ、相手に気づかれないようにするんだな」

「……そうですね。ところでおじさん、アイスの天ぷらって、食べたことあります?」

「……何?」

 

 脈絡のない発言に疑問を抱いた、その瞬間。

 宙に浮き、隙のない動きで俺目掛けて何かを振り下ろしている麗日くんの姿が視界の端に映った。

 何だ? ボウリングボール大の雪玉……?

 流石にこの至近距離で炎を放つわけにもいかず、熱を込めた左の拳で雪玉を砕いた、次の瞬間。

 

「解除!!」

 

 その言葉と同時に、俺の左腕にハンドカフスがかけられた。

 

「……やるじゃないか」

『報告だよ。条件達成最初のチームは、麗日・氷叢チーム!』

 

 試験が終わると、試験会場全体にリカバリーガールのアナウンスが響き渡る。

 

「や、やった……うぷっ!?」

「わっ……オチャコさん……大丈夫ですか……?」

「ぎ、ぎぼぢわるい……」

 

 試験をクリアして気が抜けた麗日くんが吐き気に苦しむと、氷叢くんが慌てて麗日くんに駆け寄る。

 ……ひとつ解せないな。

 麗日くんは、どうやって俺にカフスをかけられる距離まで接近した?

 俺は彼女が近づけないように、炎を出し続けて周囲の温度を上げていた。

 俺に近寄れるタイミングなど、なかったはずだが……

 

「ひとつ聞きたい。麗日くんは、どうやって俺に接近した? 常人が近づいて無傷でいられる温度ではなかったはずだが?」

「えっとですね……あなたがさっき冬将軍オールマイトと戦ってたじゃないですか。その中に、オチャコさんが隠れてたんです。中が空洞になってて、その中に“個性”で自分を浮かせたオチャコさんが隠れてて……ほら、ちょうどアイスの天ぷらといっしょです」

「……雪と冷えた空気が断熱材の役割を果たして俺の炎を遮断し、麗日くんの接近を許した……というわけか。道理で奴が俺を殴った時、手応えがなかったわけだ」

 

 おそらく、彼女達の作戦はこうだ。

 まず、氷叢くんが雪玉で俺の気を引いている隙に、麗日くんが雪像の中に隠れ、俺に特攻を仕掛ける。

 雪像に守られているおかげで、麗日くんは俺の最大出力の炎を受けても火傷を負わなかった。

 『赫灼熱拳』は、『溜めて放つ』という性質上、最大出力で撃つには必ず数秒から数分間のクールタイムが必要になる。

 だからこそ、わざと俺を挑発して最大出力を無駄撃ちさせ、クールタイムの瞬間を狙った。

 街への被害も、俺が街を破壊し尽くした後なら関係ない。

 そして氷叢くんが気を引いている間に、麗日くんは自分を無重力状態にして俺に接近し、カフスを雪玉で覆ってぶつける事で、俺に触れる事なくカフスをかけた。

 

 加えて、氷叢くんの雪玉攻撃にもちゃんと意味があった。

 俺の注意を自分に向けさせると同時に、どの程度の強度の雪玉なら俺の炎熱にも耐えられるかを実験していたのだ。

 

 正直、作戦に粗がなかったと言えば嘘になる。

 その気になれば、麗日くんの接近に気付いた時点で焼き払う事もできた。

 だが俺がこの試験で評価対象にしていたのは、氷叢くんではなく、麗日くんの方だ。

 俺の目を欺いてカフスをかけられる距離まで接近したという意味では、充分及第点だ。 

 ……というか、この至近距離で炎を放てば、本当に焼き殺してしまいかねないからな。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

麗日 side

 

 試験開始前、私は六花ちゃんと作戦を話し合った。

 最初は六花ちゃんが気を引いている隙に私がゲートを通る作戦だった。

 でも高速移動の手段を持つエンデヴァーさん相手だと、その作戦は厳しいんじゃないかって話になった。

 

「もし逃げ切れなかったら、その時は、すぐにカフスをかける作戦に切り替えます」

「いやいや! さっき熱すぎて触れへんって話になったやん!」

「それなんですけど、別におじさんに直接さわらなくても、カフスさえかければいいんですよね?」

「だから、カフスをかけるには、近づかなあかんやん!」

「近づくだけなら簡単ですよ。オチャコさん、アイスの天ぷらって食べたことあります?」

 

 六花ちゃんは、そう言って私に作戦を話した。

 六花ちゃんの作戦は、私が雪玉の中に隠れてエンデヴァーさんに接近して、最大出力を出させた後で、クールタイム中に奇襲を仕掛ける、というもの。

 まさにアイスの天ぷら作戦だ。

 

「……わかった、その作戦でいくんやね」

「お願いします……オチャコさんの負担が大きいですけど……」

「六花ちゃん、私だってヒーロー志望だよ。みんな頑張っとるんやもん、私だけ楽しようなんて考えてへんよ。でもエンデヴァーさん、勝負に乗ってくれるかなぁ……」

「……オチャコさん。おじさんの嫌いなものって、知ってます?」

「私に聞かれても知らんよ! あっ、でも……もしかしたら、オールマイトがそうなんやないかな?」

「オールマイト?」

「うん。エンデヴァーさん、万年No.2なんて言われてオールマイトに対抗心燃やしとるらしいから……オールマイトが相手やったら、勝負に乗ってくれる……かも?」

「……なるほど。オチャコさん、私……悪いこと考えちゃいました」

 

 そう言って、六花ちゃんが悪い顔をする。

 私もデクくんみたいになりたくて、ちょっとだけヒーローの事調べたりしとったけど、まさかそれが役に立つとは……

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 六花ちゃんと一緒に試験をクリアした後、私はというと、エンデヴァーさんと戦った時の傷が少し残ってたから、リカバリーガールに治してもらった。

 でも、怪我とか吐き気なんか気にしてられへん。

 私だって、デクくんみたいに勝ちたかったもん。

 なんて考えていると、六花ちゃんが話しかけてくる。

 

「……今、デクさんみたいに……って、考えてました?」

「えっ!!?」

「オチャコさん、もしかして……」

 

 六花ちゃんは、パチパチ瞬きをしながら私の顔をじっと見る。

 そして少し考え込んでから、核心を突くような発言をした。

 

「……デクさんのこと、好きなんですか?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、もうエンデヴァーさんとの試験はとっくに終わったのに、私の顔が沸騰した。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

No side

 

 六花と麗日が試験をクリアした後も、試験は続いた。

 他のペアも続々とクリアしていき、制限時間の30分が過ぎ、試験は終了した。

 

 1組目 麗日・氷叢 vs エンデヴァー

 結果:合格。六花の雪玉作戦で麗日がエンデヴァーに近づき、G(ガンヘッド)M(マーシャル)A(アーツ)の要領でハンドカフスを嵌めて勝利。

 

 2組目 爆豪・緑谷 vs オールマイト

 結果:合格。序盤こそ喧嘩していたが、爆豪の渾身の大爆破と緑谷の自壊ギリギリの出力50%の『デトロイト・スマッシュ』でオールマイトをゴールから遠ざけ、そのまま爆豪が爆破で緑谷をゲートへぶっ飛ばして勝利。

 

 3組目 轟・八百万 vs イレイザーヘッド

 結果:合格。八百万のオペレーションによって、形状記憶合金入りの捕縛武器でイレイザーヘッドを拘束し、ハンドカフスを嵌めて勝利。

 

 4組目 蛙吹・常闇 vs エクトプラズム

 結果:合格。蛙吹と常闇が抜群のコンビネーションを見せ、蛙吹の秘策で常闇がエクトプラズムの義足にハンドカフスを嵌めて勝利。

 

 5組目 口田・耳郎 vs プレゼント・マイク

 結果:合格。耳郎に発破をかけられた口田が無数の虫にプレゼント・マイクを襲わせ、虫嫌いのプレゼント・マイクが気絶している間に二人でゲートを抜けて勝利。

 

 6組目 飯田・尾白 vs パワーローダー

 結果:合格。飯田が足となり、『レシプロ・バースト』の旋風で尾白をゲートへ蹴っ飛ばして勝利。

 

 7組目 障子・葉隠 vs スナイプ

 結果:合格。障子が前に出てスナイプの気を引いている間に、葉隠がスナイプに奇襲を仕掛け、ハンドカフスを嵌めて勝利。

 

 8組目 瀬呂・峰田 vs ミッドナイト

 結果:合格。初手で瀬呂が眠らされてしまったが、峰田が孤軍奮闘。ミッドナイトの嗜虐心を利用してゲートから遠ざけ、「今回ばかりはオッパイお預けだぜ」などと言いながらゲートを通って勝利。

 

 9組目 切島・砂藤 vs セメントス

 結果:不合格。セメントスが次々生み出すセメントに苦戦し、二人とも“個性”を使い果たしてダウンし時間切れ。

 

10組目 芦戸・上鳴 vs 根津校長

 結果:不合格。始終根津校長の頭脳に翻弄され、ピ◯ゴラスイッチ攻撃に苦戦している間に時間切れ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

氷叢雪代(ノウメン) side

 

「死柄木さん、こっちじゃ連日あんたらの話で持ちきりだぜ。何かデケェことが始まるんじゃねえかって」

「で、そいつらは?」

 

 義爛さんが煙草を吹かしながらドアから顔を覗かせると、弔くんは写真を握り潰して塵にする。

 義爛さんは、下顎から下が焼け爛れた黒髪の青年と、セーラー服を着た可愛らしい女の子を連れてきた。

 

「生で見ると…気色悪いなァ」

「うわぁ手の人、ステ様の仲間だよねえ!? ねえ!? 私も入れてよ! (ヴィラン)連合!」

 

 男性は開口一番に失礼極まりない発言をし、女の子は頬を染めてはしゃぐ。

 すると、弔くんは不機嫌そうに二人を指差す。

 

「…………黒霧。こいつらトバせ。俺の大嫌いなモンがセットで来やがった。餓鬼と礼儀知らず」

「はあ?」

「まァまァ…せっかくご足労頂いたのですから、話だけでも伺いましょう死柄木弔。それに、あの大物ブローカーの紹介。戦力的に間違いはない筈です」

 

 黒霧さんがお子ちゃまな弔くんを宥めると、義爛さんがタバコを吸いながら二人を紹介する。

 

「何でもいいが手数料は頼むよ黒霧さん。紹介だけでも聞いときなよ。まずこちらの可愛い女子高生。名も顔もしっかりメディアが守ってくれちゃってるが、連続失血死事件の容疑者として追われてる」

「トガです! トガヒミコ。生きにくいです! 生きやすい世の中になってほしいものです! ステ様になりたいです! ステ様を殺したい! だから入れてよ弔くん!」

「意味がわからん。破綻者かよ」

 

 義爛さんが紹介すると、トガヒミコと名乗る女の子が上機嫌で語り出す。

 上機嫌になっているトガちゃんを見て、弔くんは呆れた様子でため息をつく。

 すると今度は、義爛さんが下顎から下が焼け爛れた青年を紹介する。

 

「んでこちらの彼。目立った罪は犯してないが、ヒーロー殺しの思想にえらく固執してる」

 

 すると青年は、いきなり文句を言い出す。

 

「不安だな…この組織、本当に大義はあるのか? まさかこのイカレ女を入れるんじゃねえよな?」

「おいおい、その破綻JKですら出来ることがお前は出来てない。まず名乗れ。大人だろう」

「今は荼毘で通してる」

「通すな。本名だ」

「出すべき時になったら出すさ。とにかく、ヒーロー殺しの意志は俺が全うする」

 

 荼毘と名乗る青年が言うと、弔くんは不機嫌そうに椅子から立ち上がった。

 

「聞いてないことは言わないでいいんだ。どいつもこいつもステインステインと…………」

「いけない死柄木…」

「良くないな…気分が良くない。ダメだお前ら」

 

 黒霧さんが止めようとするも、弔くんは二人を殺そうと両手を伸ばす。

 すると、黒霧さんがワープゲートで弔くんの両手と荼毘くんの右手、そしてトガちゃんのナイフを持った右手をワープさせた。

 

「落ち着いて下さい死柄木弔。あなたが望むままを行うのなら、組織の拡大は必須。奇しくも注目されている今がその拡大のチャンス。排斥ではなく受容を。死柄木弔」

「…………うるさい」

「どこ行く」

「うるさい!」

 

 義爛さんが尋ねると、弔くんは子供のように駄々をこねながらバーを出て行った。

 あーあ、まさに子ども大人って感じですね。

 

「取引先にとやかく言いたかないが…若いね。若すぎるよ」

「殺されるかと思った!」

「…………気色悪りぃ…………」

「返答は後日でも宜しいでしょうか? 彼も自分がどうすべきかわかっている筈だ…わかっているからこそ何も言わずに出て行ったのです。オールマイト、ヒーロー殺し…もう二度鼻を折られた。必ず導き出すでしょう。あなた方も自分自身も納得するお返事を…」

 

 黒霧さんは、そう言って義爛さんを説得する。

 そんな中、トガちゃんが私に話しかけてくる。

 

「……で、あなた誰ですか? あなたも(ヴィラン)連合?」

「ええ、まぁ……弔くんのお友達、みたいなものですかね」

「気色悪りぃ……何だそのふざけた面は。あんた、何者だ?」

「余計な詮索は感心しませんねぇ。人には知られたくない秘密のひとつやふたつ、あるでしょう? 私も、()()()()

「……まぁな」

 

 自分は偽名を名乗っておきながら、私の正体を詮索しようとする荼毘くんに対して、彼の抱えているであろう秘密をちらつかせて釘を刺す。

 すると荼毘くんは、すぐに大人しくなった。

 新しいお友達が増える事に内心ちょっぴりワクワクしていると、またしてもトガちゃんが話しかけてくる。

 

「ねぇお面さん、私、まだあなたのお名前聞いてないです。なんて呼べばいいですか?」

「……私、ですか。名乗る名前はありません。お面をつけてますし……ノウメン、とでも呼んでください」

 

 トガちゃんの質問に対して、私は淡々と答える。

 これから起こす大事件を想像しながら、仮面の下でほくそ笑んだ。

 

 

 

 




お茶子ちゃんと一緒に合格しなきゃいけないという縛りが無ければ、某海軍大将同士の戦いみたいになってます。
まあそうなった場合は、勝つのは六花ちゃんの方なんですけどねw
経験値や相性差でもひっくり返せない火力差があるので……

周りから引っ張ってきた熱をMPに変える(=つまり冷やせば冷やすほど強くなる)オリ主ちゃんの“個性”は、我ながら上手い設定だと思ってます。
周りを冷やし続けると体が冷える轟くんとは逆で、オリ主は周りを冷やし続けると体に熱がこもります。
模擬市街地一個分程度なら、冬なら一瞬で氷点下まで下げられますが、日本全土となると数時間〜数日かかります。
ちなみにこのエンデヴァー、ハンデどころか、六花ちゃんの氷のおかげで普段の2〜3割増しで強いです。


演習試験の最終結果です。

 1組目 ●    エンデヴァー VS 麗日・氷叢 ◯
 2組目 ●    オールマイト VS 爆豪・緑谷 ◯
 3組目 ●  イレイザーヘッド VS 轟・八百万 ◯
 4組目 ●   エクトプラズム VS 蛙吹・常闇 ◯
 5組目 ● プレゼント・マイク VS 口田・耳郎 ◯
 6組目 ●   パワーローダー VS 飯田・尾白 ◯
 7組目 ●      スナイプ VS 障子・葉隠 ◯
 8組目 ●    ミッドナイト VS 瀬呂・峰田 ◯
 9組目 ◯     セメントス VS 切島・砂藤 ●
10組目 ◯      根津校長 VS 芦戸・上鳴 ●
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