このままだと六花ちゃんとの差がエグいので、他のA組にも頑張ってパワーインフレについてきてもらいます。
B組は……ごめん、そのうち強化イベいれるからゆるちて。
No side
「さあみんな焼けたぞ!! 好きなだけ食べなさい!!」
「「「「よっしゃああああ!!!」」」」
オールマイトがバーベキューを振る舞うと、切島、芦戸、上鳴、峰田が飛び上がって喜ぶ。
I・エキスポのレセプションパーティー中に起きた事件から一夜明けた今日。
六花達A組は、海沿いでバーベキューをしていた。
オールマイトが、捕まっていた自分達を助けてくれた礼にと、海沿いのテラスを貸し切って六花達にバーベキューを振る舞ってくれたのだ。
網の上には串焼きやラムチョップやソーセージ、エビやムール貝、とうもろこしや茄子などの野菜が焼けており、テーブルには鍋に入ったパエリアと、コーラやジュースなどの飲料が並んでいる。
「わぁっ……」
六花は、美味しそうに焼けた串焼きやラムチョップを見て、口の端から涎を垂らしている。
黒いキャミソールと白いホットパンツを身につけ、白いレザーサンダルを履いている六花はいつもより露出度が高く、近くにいた尾白や砂藤をドギマギさせた。
「うんまあああい!」
「これ美味しいね」
「うん……」
芦戸、耳郎、口田は同じ網を囲んで仲良くバーベキューを食べ。
「うんめぇぇ!!」
「すごい食い意地だな……」
「峰田くん!! 一人で取りすぎだぞ!!」
「い、飯田くん落ち着いて……」
一人で何本も串焼きを取って食べる峰田を、障子が若干引き気味に見ており、その近くでは飯田が峰田を注意し、その飯田を緑谷が宥め。
「「あ〜ん」」
麗日と蛙吹は仲良く串焼きを食べさせ合い。
「いい焼き加減ですわ!」
「……そうだな」
「……八百万、お前それは……」
八百万と轟が一緒に串焼きを食べる中、八百万の前に置かれている大量の串と鍋を見て常闇が冷や汗を流し。
「わぁぁい、バーベキュー!!」
「うんめぇ〜!」
「はふっ、はふっ……」
「あはは……」
ハイテンションな葉隠、ひたすら串焼きを食べまくる砂藤、ハムスターのように串焼きやラムチョップを頬張る六花を尾白が見て笑い。
「おい爆豪! お前も食え!」
「飯持ってきてやったぞ〜」
「コーラもな」
「……フン」
一人でテーブル席に座っている爆豪に、切島が串焼きを、上鳴がパエリアを、瀬呂がコーラを持っていく。
「バクゴーさん、このソースおいしいですよ」
六花は、右手にラムチョップを、左手にマスタードソースのボトルを持って爆豪の隣に座る。
美味しそうにラムチョップを頬張る六花の口の周りやテーブルは、バーベキューソースとマスタードソースで汚れている。
「てめェ食い方汚ねぇんだよ」
「んぅ」
六花の食べ方にイラッときたのか、爆豪が六花の口元を乱暴にナプキンで拭いた。
そんな爆豪のテーブルマナーは意外にも完璧で、食べ終えた皿には食べカスひとつ残っていない。
一見良家のお嬢様のように見える六花のテーブルマナーを、一見不良に見える爆豪が正すというちぐはぐな光景を、爆豪派閥の三人は温かい目で見ていた。
するとその時だ。
「みんな、食べ終わってからでいいから、コスチュームに着替えて私と一緒に来てくれないか? メリッサが、是非とも君達に礼がしたいそうだ!」
スマホでメリッサと通話していたオールマイトが、突然六花達を呼ぶ。
◇◇◇
「それじゃあ、私はここで! まだやることがあるのでな!」
六花達をメリッサのもとへ案内したオールマイトは、そう言って足早に去っていく。
メリッサに呼ばれてオールマイトに連れてこられたのは、I・アイランドのアカデミーだった。
指定の研究室の前で待っていると、メリッサが研究室から出てくる。
「みんな、来てくれてありがとう」
「あの、メリッサさん。ここって関係者以外は入れないはずじゃ……!?」
「そうなんだけどね、今日は特別。みんなに会って欲しい人がいるの」
メリッサがそう言って振り向くと、再び研究室のドアが開く。
研究室の中からは、カーリーパーマのロングヘアをペイズリー柄のヘアバンドでまとめ、丸縁眼鏡と白衣を身につけた長身の美女が現れる。
二重のタレ目とぷるっとした厚めの唇、濃い眉と高い鼻を持ったラテン系の顔立ちが特徴的で、中性的な服装でも隠しきれない色気を醸し出している。
見たところ、三十代前半から後半といった年頃だ。
彼女の肩に乗った梟型のロボットが、キョロキョロとレンズの目を動かしている。
「はじめまして。ソフィア・ミネルヴァです。あなた達が雄英ヒーロー科1年A組の子達ね。会えて嬉しいわ」
「うひょぉ〜!!」
「どエロい美女キターーー!!」
「上鳴くん、峰田くん、直球すぎ……」
上鳴と峰田が露骨に喜ぶと、緑谷が顔を引き攣らせる。
そんな中、メリッサが女性を紹介する。
「紹介するわ。私がこのアカデミーで一番お世話になってる先生、“個性”化学専攻のソフィア教授よ。アカデミーを代表する天才科学者で、パパとサポートアイテムの共同開発をしたこともあるのよ!」
「ちょっとやめてよメリッサ、私なんかシールド博士の足元にも及ばないわよ」
メリッサの紹介に、ソフィアという女性が照れ笑いしながら謙遜する。
メリッサと仲良さそうに話しているソフィアに、八百万が恐る恐る尋ねる。
「あの、ソフィア教授。お話というのは……?」
「あなた達に来てもらったのは、他でもないわ。助けてもらったお礼に、あなた達のパワーアップをサポートしたいの」
「お礼? 何のことでしょうか!?」
ソフィアが言うと、飯田がバッと手を挙げて尋ねる。
するとソフィアは、他の学生や教員に聞かれないように声を小さくして言う。
「ここだけの話、昨日の事件を解決してくれたのって、あなた達なんでしょう?」
「「「「!!」」」」
ソフィアが言うと、六花達が目を見開く。
昨日の事件は、表向きは
だがどこから情報が漏れたのか、一部の住民の間では、島内にいる雄英生が事件を解決してくれたという噂が広まっているのだ。
「実は私も、レセプションパーティーに参加してたの。
「いや、そんな……」
「ウチらはほとんど何もしてないですし……」
「てかアタシ達まで来て良かったのかなぁ……? パーティー会場に行ってないんだけど……」
「ケロ」
ソフィアが礼を言うと、麗日と耳郎が謙遜し、芦戸と蛙吹が困惑する。
パーティーに参加する予定だったメンバーはともかく、留守番組は褒められるような事をしていないにもかかわらず礼をされる事に困惑していた。
だが、そんな彼らに遠慮させまいと、ソフィアは明るく振る舞った。
「いいのいいの、あのオールマイトのお気に入りの子達をサポートできるなんて光栄だわ」
「でも、いきなりこんな大人数で来て、迷惑じゃないですか……?」
「大丈夫! どうせ今休講だし、ウチの研究室広いから!」
尾白が遠慮がちに言うと、ソフィアは満面の笑みを浮かべてウインクしながらサムズアップをして言った。
「さ、入って入って!」
そう言ってソフィアは、A組を無理矢理研究室の中に押し込む。
研究室の中は20人全員が入っても窮屈に感じないほどに広く、雄英のサポート科を軽く凌ぐ設備が揃っている。
最先端の設備が揃った研究室に、緑谷達は好奇心を抑えきれずにいたが、一人だけ別のものに釘付けになっているエロブドウがいた。
「
(((((峰田がいったーーーー!!)))))
峰田が、無駄に発音のいい英語でソフィアをナンパした。
だが……
「あ、ごめん、それは無理。私、心に決めてる人がいるの」
ソフィアは、流暢な日本語で峰田のナンパを断った。
軽く自分を上回る語学力で撃沈させられた峰田であった。
「早速なんだけど、今日はあなた達の“個性”を診せてもらうわね。診断結果をもとに、みんなに合ったトレーニングプランを提案するわ。ここにはいろんな設備があるから、みんなの“個性”に合ったプランが立てられると思う。メリッサ、機材の調整は?」
「今終わりました、先生!」
「ありがとう。それじゃ、まずは君から診せてもらうわ」
「「えっ!?」」
ソフィアは、緑谷に近づくと、いきなり無遠慮に緑谷の右手を握った。
握手された緑谷だけでなく、その光景を見ていた麗日まで驚く。
「へぇ、超パワーの“個性”? 良いじゃない! しかもこんなに増強率の高い“個性”、初めて見たわ!」
「へっ!?」
「でも自壊しないように使うとなると、50%くらいが限界かしら? 100%使えるようになったらどうなっちゃうのかしら!? 気になる〜!」
ソフィアが興奮気味に言いながら緑谷に詰め寄ると、緑谷が困惑する。
そして次は、いきなり爆豪の手首を掴む。
それを見た六花は、少し面白くなさそうな顔をした。
「そっちの君は、『爆破』の“個性”ね。汗腺から爆発性の汗を分泌するのか……主成分はニトログリセリンかしら? 確かに強力な“個性”だけれど……戦闘力の高さは、“個性”が強いというより、あなた自身のセンスの賜物のようね。ん〜、Amazing!」
「てめェ、勝手に触んじゃねぇ!!」
「
ソフィアが爆豪の手首を掴みながら“個性”の情報をペラペラ喋ると、爆豪がキレながら爆破を放ってきたので、ソフィアが半歩後ろに跳んで避ける。
「あはは、ごめんごめん、驚かせちゃったね。私の“個性”は『
「……エロくね?」
ソフィアが“個性”の説明をすると、峰田がギリギリセクハラになりそうな発言をしたので、蛙吹が舌で顔を引っ叩く。
「他の皆の“個性”も、この掌で調べさせてもらうわね。あなた達が帰国するまでの間、1年A組の戦力アップを全力でサポートするわ!」
そう言ってソフィアが、ぐっと握り拳を作りながら意気込む。
10分もかからずに全員の“個性”を解析し終えたソフィアは、すぐに20人全員のトレーニングプランを練って提案した。
梟型のロボットのアテナで撮った映像から、さらに全員のデータを収集し、プランを修正していく。
No.1 芦戸三奈
“個性”:『酸』
今のままだと、ただ酸を出しているだけでバリエーションが足りないわ。
水鉄砲みたいに勢いをつけたり、酸をミスト状にしたり、逆に粘性を高めて絡め取る動きを加えてみるのはどうかしら?
No.2 蛙吹梅雨
“個性”:『蛙』
温度変化以外に特に課題は無いわね。ジムの使用許可出しておくから、地道に筋トレ頑張れ!
あと、コスチューム用に断熱性の素材を発注しておくわね。
No.3 飯田天哉
“個性”:『エンジン』
課題は最高速度に到達するまでの時間の短縮ね。定期的なエンジンのメンテと、あとは地道に走り込みする事ね。
メンテに必要な部品はこっちで発注しておくわ。
No.4 麗日お茶子
“個性”:『
自分や周りのものを武器に変えられる強みを活かした方がいいと思うわ。
今の格闘術、手足に錘をつけた状態でやってみたら?
No.5 尾白猿夫
“個性”:『尻尾』
あなたも特に課題らしい課題は無いわね。
島内にプロも参加する格闘場があるから、そこで格闘技の練習をするといいわ。
No.6 上鳴電気
“個性”:『帯電』
指向性に関してはどうしようもないから、サポートアイテムで補うしかないわね。
あと、焦ってブッパしなくていいように、相手を観察する癖をつけなさい。
No.7 切島鋭児郎
“個性”:『硬化』
関節技や内部破壊、あとは持久戦に弱いから、立ち回りで補う事ね。
相手をよく観察して、回避か防御かを見極める癖をつけなさい。
No.8 口田甲司
“個性”:『生き物ボイス』
まず普段から意識して腹式呼吸をするようにした方が良さそうね。
それと筋トレをする時は、肺活量やスタミナ向上の為に低酸素マスクをつけなさい。
No.9 砂藤力道
“個性”:『シュガードープ』
まずは持久力が課題ね。“個性”のデメリットは血糖値スパイクが原因でしょうから、普段の食事を低GI食品に切り替えて、決まった時間に運動する習慣をつけなさい。
それと今のままだと動きが単調だから、エキスポの格闘場で近接格闘術を学んできなさい。
No.10 障子目蔵
“個性”:『複製腕』
大方問題ないと思うけど、強いて言うなら複製速度と索敵精度が課題ね。
集中力を鍛えるトレーニングを取り入れてみましょう。
No.11 耳郎響香
“個性”:『イヤホンジャック』
遠距離技だけじゃなくて、音波攻撃を近接格闘にも取り入れたらどうかしら?
インパクトの瞬間に音波を放って内部破壊とか出来たら強そう!
No.12 瀬呂範太
“個性”:『テープ』
テープを射出するだけじゃなくて、巻き取る力を鍛えたらやれる事が増えるんじゃないかしら。
それこそイレイザーヘッドの捕縛武器を参考にしてみたら?
No.13 常闇踏陰
“個性”:『
近接戦が弱みだから、そこを直していきましょうか。
例えば
No.14 轟焦凍
“個性”:『半冷半燃』
威力は申し分ないけど、“個性”の使い方が単調だわ。
まずは無駄に視界を塞ぐ氷結を改善するのと、炎のコントロールを氷に追いつかせるのが課題ね。
No.15 葉隠透
“個性”:『透明化』
もしかして、光の屈折率を変えられるんじゃない?
まずは体に光を当ててみて、光を曲げられるか試してみて!
No.16 爆豪勝己
“個性”:『爆破』
爆破を放つ度に黒煙が出過ぎ。不完全燃焼が原因でしょうから、点火する時の掌の温度をもっと上げる事ね。
あと、威力を上げる為にも圧縮撃ちも試してみたら?
No.17 氷叢六花
“個性”:『氷冷』
炎熱以外の弱点も無いし、当面はみんなのサポートに回ってもらうわ。
余力があれば、炎熱に耐える訓練もしてみるといいかもね。
No.18 緑谷出久
“個性”:『フルカウル』(仮)
パワーとスピードは申し分ないけど、使い方はまだまだ発展途上ね。
色々言いたい事はあるけど、まずはテレフォンパンチを直す事ね。
あなたも格闘場で武闘派ヒーローに揉まれてきなさい。
No.19 峰田実
“個性”:『もぎもぎ』
ただボールを投げるだけじゃ芸が無いわ。
ボールを数珠みたいに繋いで武器にしたり、そこら辺の板にくっつけて盾にしたり、色々面白い使い方ができそうね。
No.20 八百万百
“個性”:『創造』
咄嗟に動かなきゃいけないような場面に弱いのが課題ね。
どんな状況でも対応できるように、『これをやったら強い』っていう型を作っておきなさい。
「みんな、お疲れ様! 調子はどう?」
「「「「うへぇ〜〜〜……」」」」
日が暮れた頃、メリッサが飲み物を持って様子を見に来た。
その頃には、ほとんど全員疲れ果てて椅子や床に座り込んでいた。
メリッサが持ってきた冷たい飲み物が、トレーニングで熱った体に染み渡る。
「ソフィア先生って、結構スパルタだよなぁ〜……」
「雄英よりプルスウルトラしてんじゃねぇ……?」
「ああ。だが、実に効率が良いメニューだ。短期間でも課題を克服できるよう、よく考えられている」
「ええ。これなら、帰国までにパワーアップが見込めそうですわ」
瀬呂や上鳴が弱音を吐く中、飯田と八百万はソフィアの提案したメニューの無駄の無さに感心していた。
彼女の“個性”は強力で有用性が高いが、完璧なトレーニングメニューを編み出したのは、彼女自身の頭脳だ。
クラス一の頭脳を持つ八百万でさえも舌を巻くばかりだ。
そんな中、麗日と六花がメリッサに話しかける。
「そういえば、メリッサさんってソフィア先生に一番お世話になってるって言ってましたよね? どうやって仲良くなったんですか?」
「あ……それ、私も気になってました……」
二人が尋ねると、メリッサが少し恥ずかしそうに話し始める。
「……実は私ね、入学した頃はあんまり成績が良くなかったの。“個性”も無いし、先生からもほとんど期待されてなかったわ。でもソフィア先生は、初めて会った時から私に期待してくれてたの。課題のアドバイスをくれたり、研究室に誘ってくれたりして、おかげでここでの勉強が楽しくなったわ。だから時間がある時は、こうして先生のお手伝いをしてるのよ」
「いい先生なんですね!」
「ええ!」
◆◆◆
緑谷 side
夜11時、I・エキスポの闘技場で武闘派ヒーロー達に可愛がられてボロボロになった僕は、休憩中に研究ノートに課題を書き留めていた。
今のままじゃ、全然ダメだ。
もっとギアを上げていかないと……
なんて考えていると。
「やあ、調子はどう?」
ソフィア先生が、缶コーラを二つ持って僕に声をかけてきた。
僕はすぐにその場で立ち上がって返事をする。
「はい! 正直キツいですけど、すごく参考になりました! 自分ではわからなかった課題が見つかって……!」
「そう。お役に立ててるようで何よりだわ」
ソフィア先生は、爽やかな笑顔を浮かべて言ってから、「でも」と続ける。
「できることなら、シールド博士と一緒に研究を続けたかったわぁ」
ソフィア先生は、少し寂しそうに言った。
その表情は、尊敬する研究者を失ったというより、まるで恋人との別れを惜しんでいるようだった。
「えっと……ソフィア先生って、もしかして……」
僕が遠慮がちに聞こうとすると、ソフィア先生は、僕が気になっていた事を察したのか、小さく頷いてからベンチに腰掛けながら口を開く。
「……好きだったのよ、シールド博士のこと」
やっぱり……
やけにシールド博士の事を持ち上げるから、そうなんじゃないかと思ってたけど……
僕が話した時に感じた直感は、間違っていなかった。
「あーあ、後妻の座狙ってたのになぁ。こんなことなら既成事実作っとけばよかったわ」
ソフィア先生は、コーラを一気に飲み干してから包み隠さずに言った。
「あの、もしかしてメリッサさんのことを気にかけていたのって……」
「最初はね、娘のメリッサと仲良くしておいて、博士とお近づきになるつもりだったのよ。ほら、“ He that would the daughter win, must with the mother first begin.”って言うじゃない? 君達の国の表現で言うなら、『将を射んと欲すればまず馬を射よ』……だっけ?」
あ、あけすけ……!
しかも目的の為なら手段を選ばない人だ……!
なんか発目さんを思い出すなぁ……
「あ、でも勘違いしないでね。きっかけは不純だったかもしれないけど、私は彼女のことを、ちゃんと一生徒として見てるわ。努力や研究への熱意は認めてるし、卒業後はウチの研究チームに入ってほしいっていうのは本心だから」
それを聞いて、僕は少し安心した。
メリッサさんの努力を評価してくれる人は、ちゃんといたんだ。
ソフィア先生は、それだけ伝えると、ベンチから立ち上がって出口へ向かう。
その途中で足を止めて踵を返し「あ、そうそう」と言うと、僕のもとへ駆け寄って耳打ちしてくる。
「あなたの“個性”、オールマイトから貰ったってこと、みんなには黙っておくわね」
…………えっ!!?
「なっ……なんで知って……!?」
「言ったでしょ? あなたの体のことは全部丸わかりだって」
動揺を隠せない僕に対して、ソフィア先生はウインクしてみせた。
……そっか、相手の体の情報が全部わかるって事は、“個性”の出所もわかるって事じゃん。
僕もまだまだだなぁ……
◇◇◇
それから2日後。
あれから僕達は、ソフィア先生やメリッサさんにアドバイスを貰って、利用できるものを全部利用して、自分達の課題を克服した。
そして今日は、いよいよ帰国の日だ。
空港に向かう前に、僕達は訓練の成果を確かめる為に、
参加したのは、僕、かっちゃん、轟くんの三人だ。
その結果は……
『くっ……クリアタイム7秒!! 現在同率第2位です!!』
「よしっ!!」
僕達三人が、同じタイムで並んだ。
氷叢さんの記録には届かなかったけど、それでも3日前より1秒縮められた。
練習の成果を実感した僕達は最後に、空港まで見送りに来てくれたメリッサさんとソフィア先生にお礼を言った。
「「「「ありがとうございました!!」」」」
「みんなの役に立ててよかったわ!」
「またいつでも来てね」
僕達が頭を下げてお礼を言うと、二人が笑顔を浮かべる。
僕達の乗った飛行機が離陸すると、I・アイランドが小さくなっていく。
メリッサさんやシールド博士に会って、
色々大変だったけど、この島での出来事はいい思い出になった。
いつか、オールマイトみたいな最高のヒーローに。
メリッサさんに貰ったフルガントレットを握りしめながら、僕は心の中でそう呟いた。
本作オリジナルキャラ。
カーリーパーマのロングヘアをヘアバンドでまとめ、丸縁眼鏡をかけたラテン系美女。髪色はブルネット、瞳の色はジェードグリーン。
デヴィット・シールドに次いでI・アイランドを代表する天才科学者で、アカデミーの教授でもある。専攻は“個性”化学。梟型のロボット『アテナ』をペットとして飼っている。
アメリカのカンザス州出身。14歳の時にアメリカ最高峰の大学を首席で卒業し、19歳で教授のポストを手に入れた才女。デヴィットと共にサポートアイテムの共同開発をした事もある。
アカデミーの教授代表としてレセプションパーティーにも参加しており、窮地を救ってくれた六花達に対する恩返しとして、1年A組全員の戦力大幅アップに貢献した。
メリッサの事を入学当初から気にかけており、課題のアドバイスをしたり、研究を手伝ってもらったりと持ちつ持たれつの関係。
実はデヴィットに好意を抱いており、虎視眈々と後妻の座を狙っている(メリッサの事を気にかけているのも、デヴィットの娘だからという理由。ただし彼女の努力や研究への熱意は認めており、卒業後は研究チームに入ってほしいと本気で考えている)。
“個性”:『
掌で触れた相手の肉体の情報を知る事ができる。
年齢や性別、“個性”、身長、体重、BMI、FFMI、体脂肪率、人種、血液型、体温、血圧、血糖値、血中酸素濃度、病気の有無等、得られる情報は1000を超える。
ただし、自分には適用不可。
得られた情報はある程度なら記憶しておく事ができるが、容量を超えると古い順に消える。容量は本人の知能に比例する。