地獄の氷叢さん家   作:M.T.

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予告していたプール回です。
途中オリストを挟みます。


第3期 林間合宿〜仮免試験編
第44話 氷叢さんとかき氷とプールと


No side

 

「夏休みの間長期の外出を控えろ!?」

 

 時は数日前に遡り、期末テストの後。

 麗日が目を見開きながら言うと、耳郎が答える。

 

「学校側からの要請だって」

「残念ですわ。両親とベネチアに旅行に行く予定でしたのに」

「ブルジョワや〜!」

 

 八百万がしれっと言った言葉に、麗日が卒倒しそうになる。

 夏休みにどこにも遊びに行けないと聞いて、芦戸がガックリと肩を落とす。

 

「あ〜あ、せっかくおニューの水着買ったのにぃ……」

「仕方ないよ。ウチらは一度、(ヴィラン)連合に襲われてるし」

「それでも遊びたい! どっか行きたい〜!」

 

 耳郎が宥めようとするが、芦戸は我慢ならないと言わんばかりに両腕をブンブン振る。

 すると葉隠が、満面の笑みを浮かべながら提案する。

 

「だったら、夏休み学校のプールに集まらない?」

「そうね。学校のプールだったら、先生も許可してくれると思うわ」

「いいねぇ! お金もかかんないし!」

「家に閉じこもってるよりマシか〜」

「でしたら、私が学校側に許可をもらってきますわ!」

 

 六花以外の女子六人がきゃいきゃいとはしゃぐ。

 だがそんな中、六花だけはどこか浮かない表情を浮かべていた。

 

「六花ちゃんも一緒に行こうよ!」

「あぁ、はい……」

 

 葉隠が六花を誘うと、六花は小さく頷く。

 何かを思い悩んでいるような六花の表情に、蛙吹が首を傾げる。

 

「ケロ? どうしたの、六花ちゃん? もしかしてプール苦手?」

「あ、えっと……そういうわけじゃないんですけど……」

 

 六花が言い淀むと、他の六人は顔を見合わせて頭上に「?」を浮かべる。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 そして日光浴当日。

 六花は、雪代お手製のシマエナガの柄のプールバッグを持って雄英の最寄り駅に来ていた。

 プールの時間までは、まだ一時間以上ある。

 にもかかわらず、何故駅に集合しているのかというと。

 

「みんな、来てくれてありがと!」

「三奈ちゃん、急にどうしたの?」

「いきなり集合時間を一時間早くしたいって言われてもさぁ……どうせ予定無かったからよかったけど」

「ごめ〜ん! 実は、みんなと一緒に行きたかったとこがあるんだ〜!」

 

 いきなり呼び出された他の女子が怪訝な顔をすると、言い出しっぺの芦戸が顔の前で手を合わせて謝る。

 事の発端は、数日前に「ちょっと寄りたいところがあるから集合時間を1時間早めたい」という芦戸のラインだった。

 芦戸に呼び出された六花達は、雄英とは逆方向に歩いていく。

 

「ジャーン!」

 

 垢離里駅から徒歩約5分、着いたのは割と本格的な台湾風かき氷の店だ。

 まだ『CLOSE』の札がかかっているというのに、店の前には人が並んでいる。

 

「かき氷?」

「私この店知ってる! すっごく人気だから、開店前には並んでないと売り切れちゃうんだよ!」

「もしかして三奈ちゃん、集合時間を一時間早くしたのって……」

「そ! ここ一回行ってみたかったんだ〜!」

 

 そう言って芦戸が、列の最後尾に並ぶ。

 平日の午前中という事もあり、休日よりは人が並んでおらず、開店前に売り切れという事態にはならなさそうだ。

 

「かき氷って、美味しいんですの?」

「マジ!? ヤオモモ、かき氷食べたことないの!?」

「さすがお嬢様……」

 

 さらっとお嬢様発言をする八百万に、麗日は眩しそうな顔をする。

 開店と同時に店のドアが開き、店の前で並んでいた六花達は店内へ通され、窓際のテーブル席へ案内された。

 メニューを開くと、カラフルなかき氷の写真が並んでいる。

 トッピングもできるようで、下にはタピオカやナタデココ、レアチーズなどのメニューがある。

 

「私はこれにする! 宇治抹茶!」

「私はマンゴーにしようかしら」

「ウチ、レモン」

「うーん……でしたら私はイチゴにしようかしら?」

「アタシは、ピオーネにレアチーズトッピング!」

「私はタピオカミルクティー!」

「私……このトロピカルブルーってやつにします。あとコーラください」

 

 六花達がそれぞれ食べたいものを注文すると、注文してから数分で七人分のかき氷が運ばれてきた。

 

「んまぁい!」

「濃い〜!!」

「メッチャふわふわ……!」

「こ、これは!? 果汁を凍らせて削ってますのね! 美味しいですわ!」

「お茶子ちゃん、私の一口食べる?」

「うん! 私のもあげるね!」

 

 六花達は、きゃいきゃいと喋りながらかき氷を味わった。

 今日の空のように真っ青なソーダ味のかき氷には、オレンジやパイナップル、ナタデココがトッピングされている。

 六花がかき氷を食べていると、蛙吹が話しかける。

 

「そういえば、前から気になってたんだけど……六花ちゃんって、氷になったまま食べ物を食べたりできるの?」

「……んと、固形物は無理です。でも液体とか氷だったらいけます」

「え、じゃあさ! 氷になってかき氷食べたらどうなんの!?」

 

 葉隠が質問すると、六花は“個性”を発動した状態でかき氷を食べる。

 するとみるみるうちに、髪が青く染まっていく。

 

「「「おおお!!?」」」

 

 数十秒のうちに、六花の髪は鮮やかな青色になった。

 

「体が氷なので……色のついた氷を食べると、色が染み込んじゃうんです……時間が経ったら元に戻ります」

「え、待って何それ。面白っ」

「じゃあ六花、アタシのも食べてみて!」

「私のもあげるわ」

「私のもどうぞ!」

「ウチの抹茶もあげる!」

「私のも食べて!」

 

 六花以外の六人は、面白がって自分達の分のかき氷を六花に食べさせた。

 結局、自分の分に加えて六人分のかき氷を一口ずつ食した六花だったが……

 

 

「失礼します」

 

 かき氷を食べ終わった後、登校した六花達はまず、更衣室の鍵を受け取りに職員室に向かう。

 職員室では、ちょうど相澤がパソコンで林間合宿の計画表を作成していたところであった。

 

「相澤先生、おはようございます」

「おは…………」

 

 六花に声をかけられて振り向いた相澤だったが、目の前の光景に絶句する。

 六花の肌は赤みがかった褐色に、髪は虹色に染まっている。

 ソーダの鮮やかな青色の中に、ピオーネの紫色(芦戸)、マンゴーのオレンジ色(蛙吹)、抹茶の緑色(麗日)、レモンの黄色(耳郎)、ミルクティーのベージュ色(葉隠)、イチゴの赤色(八百万)が混じっている。

 その光景を見て教師陣が全員ギョッとし、プレゼント・マイクがすかさずツッコミを入れる。

 

『Hey氷叢リスナー、なんだその髪色!? ゲーミングPCかよ!!』

「黙れ山田。氷叢、お前それどうした」

「えっとぉ……実は……」

 

 相澤に問い詰められた六花達は、学校に来る前の出来事を正直に話した。

 六花は、葉隠達に興味を向けられて“個性”を発動したままかき氷とコーラを摂取した事、そして他の女子達は、面白がって六花にかき氷を食べさせた事を白状した。

 すると相澤は、ため息をついて説教を始める。

 

「おい氷叢。公共の場で“個性”を使うんじゃない」

「……ごめんなさい」

「それから芦戸、蛙吹、麗日、耳郎、葉隠、八百万。お前らも、氷叢で遊ぶな」

「「「「「「……はい」」」」」」

 

 相澤に説教された六花達は、素直に謝った。

 

「……で、ちゃんと元に戻んのか」

「あ、時間が経ったら元に戻ります」

「ならいい。行け」

 

 そう言って相澤は、更衣室の鍵を渡す。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 その後六花達は、女子更衣室で水着に着替えた。

 着替える頃には、六花の髪と肌の色は元に戻っていた。

 六花は、制服の下には下着をつけておらず、素肌に直接学校指定の水着を着ている。

 下半分がスパッツのワンピースタイプ、所謂ユニタード型のスクール水着だ。

 

「六花、制服の下に水着着てきたんだ」

「はい……ちょっとしたライフハックです……」

「あったまい〜!」

 

 着替えの時間を短縮する為に家から水着を着てきた六花に対し、芦戸が感心する。

 だが……

 

「…………あ」

 

 プールバッグからラッシュガードを取り出そうとした六花が、バッグの中を覗き込んで小さく声を漏らす。

 その場で六花が固まっていると、麗日が声をかける。

 

「ん、六花ちゃんどうしたん?」

「……替えの下着……入れてくるのわすれました……」

「ベタベタや!!」

 

 六花のありがちな失敗に、麗日が吹き出す。

 効率を考えて家から水着を着てきたのはいいものの、替えの下着を忘れてしまうのはあるあるだ。

 

(うひょ〜〜〜!! ノーブラにノーパンかよぉ!! 唆るぜぇ!!)

 

 替えの下着が無いので下着をつけずに帰らなければならないというアクシデントに、六花の中のイマジナリー峰田が歓声を上げる。

 だが生憎、六花の場合は、そのまま帰るような事にはならない。

 何故なら……

 

「氷叢さん、こちらをお使いください」

 

 A組には、『創造』の“個性”を持つ八百万がいるからだ。

 八百万は、“個性”を使って六花のサイズに合わせた下着を創造した。

 高級そうなレースのついた白いブラジャーとショーツのセットだ。

 

「……ありがとうございます、モモさん」

 

(…………チッ)

 

 頭の中でブドウの舌打ちが聴こえたような気がしたが、六花は気にせずに下着を受け取った。

 水着に着替えた六花達がプールへ行き準備運動をしていると、ちょうど同じタイミングで、男子更衣室から飯田達が出てきた。

 そこには、上鳴、切島、爆豪、緑谷、峰田以外の男子が全員揃っている。

 

「あれっ!? 飯田くん!?」

「あんたらなんでいんの!?」

「緑谷くんに、一緒にプールでトレーニングをしないかと誘われてね!」

「え〜すごい偶然!」

 

 同じ日にほとんど全員がプールに集まるという偶然に、六花達が驚く。

 ちなみに、全ての元凶は上鳴と峰田だ。

 女子達がプールに行くという話を盗み聞きしていた峰田が、女子達の水着を見る為に、上鳴と共謀して『身体強化』という名目で女子達と同日にプールの使用許可を貰い、緑谷を誘ったのだ。

 純粋に身体強化をしに来た緑谷と、女子の水着目当ての二人が男子更衣室から出てくる。

 するとだ。

 

「遅かったじゃないか!」

 

 飯田が声をかけると、上鳴と峰田はズコォォォっと同時に転んで勢いよくプールサイドを滑っていく。

 二人がずっこけたのは、自分達と緑谷しかいないはずのプールサイドに他の男子達が集まっていたからだった。

 

「おいおいおい、なんでお前らがここにいんだよ!?」

「プールで体力強化するからみんなも一緒にどう? ってメールしておいたんだ」

 

 緑谷が答えると、上鳴と峰田が悔しがる。

 

「そういうことか、真面目かよ緑谷!」

「落ち着け上鳴。ここに水着姿の女子がいるのは間違いねぇ」

「この目に焼きつけるぜ!」

「新しく買った水着を!」

 

 そう言って二人が血眼で振り向いた先には、学校指定の水着を着て準備運動をしている女子達がいた。

 

「あら峰田ちゃん」

「上鳴も来てたんだ」

 

 女子達は二人に声をかけるが、期待を大きく裏切られた上鳴は絶望していた。

 

「なんだよその水着は。ビキニ着ろよビキニ」

 

 だが、峰田にとってはこれはこれでアリだったのか爽やかな表情を浮かべていた。

 

「スク水もええですなぁ」

「何でもいいんじゃねぇか!」

 

 峰田が満足げな表情を浮かべていると、上鳴がツッコミを入れる。

 すると飯田が上鳴と峰田に近寄ってくる。

 

「上鳴くん、峰田くん。学校内で体力強化とは見事な提案だ! 感心したよ! さぁ、みんなと一緒に汗を流そうじゃないか! ハッハッハッハッ」

「いや、ちょっと…」

「ま、待って…」

「「待ってくれぇぇぇぇぇぇぇ…」」

 

 飯田が高笑いしながら、乗り気ではない二人を引きずっていく。

 一方で、日光浴で許可を取った女子達は、一緒にプールで遊ぶ事にした。

 

「私ビーチボール持ってきたんだ!」

「いいねぇ!」

「六花ちゃんも一緒に遊びましょう?」

 

 蛙吹が六花の事も誘うが、六花はプールサイドに座ったままプールに入ろうとしなかった。

 

「あ、私は大丈夫です……」

 

 六花は、遠慮がちに首を横に振る。

 すると耳郎が六花に話しかける。

 

「六花、どうしたの?」

「……えっと、ごめんなさい。私、プールに入れないです」

「入れないって、どういうこと?」

「生……ぎゃあああ!!」

 

 峰田が最低発言をしようとすると、耳郎が耳のプラグを峰田の右耳に刺して爆音を浴びせる。

 

「えっと……どういうことかっていいますとね……」

 

 六花は、プールに入ると、女子達に近づいていく。

 すると女子達の顔がみるみるうちに青くなっていき、ブルブルと震え出す。

 六花を中心に、プールの水温が下がっているのだ。

 

「さ、さぶい……」

「ちべたい……」

「ひ、ひひひぶらさんっ……すっ、すびばせんが、もっ、もう少し、は、はは離れていただけると……」

 

 六花の周りに氷が浮き始め、他の女子達はガタガタ震えながら身を寄せ合う。

 よく見ると、少し離れたところで泳いでいた男子も寒がっていた。

 それを見た六花は、まずいと思ったのか、すぐにプールから上がった。

 

「えっと……プールに入れないってゆったのは、こういうことです。私の“個性”、異形型?の性質もちょっと混じってるみたいで……“個性”を使おうと思ってなくても、周りのものを勝手に冷やしちゃうんです。アレです、トールさんやツユちゃんさんといっしょです」

 

 そう言って六花は、プールサイドに戻っていく。

 六花の“個性”には異形型の性質も少し混じっており、氷化していない状態でも常に体が冷たく、何もしなくても勝手に周りのものを冷やしてしまう性質がある。

 相澤の『抹消』の“個性”をもってしても、この特異体質だけは消す事ができない。

 そのため六花は、今まで一度も水泳の授業を受けた事が無いのだ。

 六花が大人しく見学しようとすると、葉隠がパンッと手を叩いて提案する。

 

「あ、だったらさ! 六花ちゃんは宙に浮いて一緒に遊ぼうよ!」

「あ、その手があったか!」

「それなら六花ちゃんも一緒に遊べるわね」

「透ちゃん、ナイスアイディア!」

「そういうことなら、六花も一緒に遊ぶよね?」

 

 女子達が六花を誘うと、六花は首を縦に振った。

 上鳴と峰田が飯田に扱かれて悲鳴を上げている間、六花達は芦戸が持ってきたビーチボールで遊んだ。

 

「行くよー!」

「ほい!」

「ケロッ」

「ん」

「それ〜!」

「はい!」

「……わっ」

 

 六花達は、持ってきたビーチボールで水上バレーをした。

 しばらく遊んでいて、六花以外の六人は汗をかいてくる。

 

「そろそろ上がって休憩しない?」

「そうですわね。私、アイスティーを持ってきましたの! ロイヤルダージリンですわ」

「それ絶対高いやつじゃん」

「こうきゅうちゃ……」

「お茶子ちゃん、しっかり」

 

 八百万がワインボトルに入ったアイスティーをクーラーボックスから取り出すと、麗日が卒倒する。

 七人で八百万の持ってきたアイスティーを飲んでいるとだ。

 

 

「ッたりめーだ! でなきゃこの俺がてめェみてーなクソナードに負けるわけねぇだろ!」

 

 出入り口から、爆豪の声が聴こえてきた。

 見てみると、いつの間にか爆豪と切島がプールサイドにいた。

 

「メールくれたのに遅れてわりぃ。爆豪連れ出すのに手間取っちまって」

「そういう流れか…」

「おいクソデクゥ! なんなら今すぐ白黒つけるかぁ? あぁ!?」

 

 爆豪が手を爆発させながら煽るが、緑谷は乗り気ではなかった。

 

「いや、そんな…」

「確かに、訓練ばかりじゃつまらないな」

 

 だが、飯田は存外乗り気だった。

 飯田は、何か閃いた様に顎に手を置くと、男子にとある提案をする。

 

「皆! 男子全員で誰が50mを一番早く泳げるか競争しないか?」

「おおっ!」

「面白そう!」

「やろうぜ!」

 

 飯田が提案すると、上鳴、瀬呂、砂藤が返事をした。

 すると、八百万が飯田に話しかける。

 

「飯田さん、私達もお手伝いしますわ」

「ありがとう!」

「“個性”は? 使っていいの?」

「学校内だから問題はないだろう。ただし人や建物に被害を及ぼさないこと」

 

 飯田が言うと、爆豪は緑谷と轟を睨みつける。

 

「ブッ潰してやるよデク。もちろんお前もな! 半分野郎!」

 

 爆豪が緑谷や轟に対してバチバチと火花を散らしている間に、女子達は男子達の組み合わせを決め、公平を期すという理由で泳ぎ方は自由形に決まった。

 上鳴、爆豪、口田、常闇、峰田の順番に並び、八百万が“個性”で創造したホイッスルを持って掛け声を出す。

 

「それでは位置について! よーい…」

 

 ホイッスルの音を合図に競泳が始まった。

 ただ一人を除いて、4人が水に飛び込んでいく。

 

「爆速ターボ!!」

 

 爆豪は、両手を爆発させて空中を爆速で進み泳がずにゴールしてしまった。

 

「どうだこのモブ共!!?」

「どうだじゃねぇ!」

「泳いでねぇじゃねぇか!」

「自由形っつっただろうが!」

 

 切島と瀬呂が抗議すると、爆豪が両手から爆破を放ちながら反論する。

 

「バクゴーさん、1位すごいです」

「「…………」」

 

 六花が珍しく笑っているのを見て、男子達は何も言えなくなってしまう。

 女子達が爆豪に対して何も言わないあたり、別にルール違反ではないという事だろう。

 元はと言えば、ゲームを始める前にルールの確認をしなかった自分達が悪いのだ。

 

 二組目の切島、砂藤、轟、瀬呂が順に並び、ホイッスルを合図に全員が一斉に飛び出す。

 切島と砂藤は“個性”の関係上普通に泳がざるを得なかったが、瀬呂はテープで空中を移動する。

 だが、轟は氷を出してその上を滑っていき、見事一着でゴールした。

 

「「だから泳げって!!」」

 

 真面目に泳いだ上鳴と峰田が、再びツッコミを入れた。

 そして三組目の障子、尾白、緑谷、飯田が順に並び、ホイッスルを合図に全員が一斉に飛び出す。

 障子、尾白、緑谷は普通に泳ぐが、飯田はコースロープの上をエンジンで爆速を生み出し滑っていく。

 

「飯田もかよ!!」

 

 言い出しっぺの飯田がいきなりズルをしてきたので、上鳴がツッコミを入れる。

 すると、それを見て緑谷が負けじと水中でフルカウルを発動し超速で泳いでいく。

 そして、タッチの差で緑谷が一着、飯田が二着となった。

 

「「「「おおー!!」」」」

 

 真面目に泳いで一位になったのは緑谷が初めてだったため、クラスメイト達は歓声を上げる。

 

「やられたよ、緑谷くん」

「飯田くんも凄かったよ」

 

 緑谷と飯田が、まるで名勝負だったかのように熱い握手を交わす(飯田は真面目に泳いでいなかったが)。

 こうして、それぞれの組で一位となった爆豪、轟、緑谷の三人の中で一位を決める事になった。

 

「各予選の勝者、爆豪くん、轟くん、緑谷くんの3人で優勝者を決める。それでいいか?」

 

 飯田が提案すると、一部納得いかない者がいたものの全員が了承する。

 今まで審判をしていた八百万が観戦し、代わりに飯田が審判をする事になった。

 三人が並ぶと、飯田が掛け声を上げる。

 

「それでは50m自由形の決勝を始める!!」

 

 始まる決勝戦。

 六花達は、決勝に残った三人をプールサイドで応援した。

 

「いったれ爆豪!」

「相手殺すなよー?」

「轟も負けるなー!」

「デクくんがんばれー!」

「皆さんファイト!」

「ん、ファイト……おー……」

 

 六花達が、それぞれ一位になると思う相手を応援した。

 唯一ちゃんと泳いだのが緑谷だったので、緑谷への声援が一番大きかったが。

 

「よーい!」

 

 

 

 ピーーーーーッ

 

 ドボォンッ!!!

 

「「「!?」」」

 

 

 

 開始の合図と同時に、飛び出した三人がプールに落ちる。

 六花がもしやと思い振り向くと、入り口付近には“個性”を発動し目を光らせている相澤がいた。

 

「17時、プールの使用時間はたった今終わった。早く家に帰れ」

「そんな、先生!」

「せっかくいいとこなのに!」

 

 上鳴と瀬呂がいちゃもんをつけると、相澤が威圧感たっぷりに睨みつける。

 

「何か言ったか…?」

「「「何でもありません!」」」

 

 相澤が睨みつけると、上鳴達は即座に手のひらを返す。

 結局勝負はお預け、六花達は不服にもそのまま帰っていくのであった。

 

 

 

 

 




かき氷のくだりは、構想当初から考えていたオリストです。
なんとか挟みたかったので、プールの回に合わせて挟みました。
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