地獄の氷叢さん家   作:M.T.

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作者はコーラが大好きです。
マックやピザはもちろん、寿司や焼き鳥もコーラで食います。
ビールは味が嫌いなので、ビールに合うものは大体コーラで食ってます。
たまにペプシに浮気しますが、基本はコカコーラ派です。


第5話 氷叢さんの入学初日

No side

 

 時は遡り、実技試験直後。

 

「実技総合成績が出ました」

 

 その声と共に、大きなスクリーンに受験生の実技のポイントが書かれた順位表が表示される。

 スクリーンには、上位十名が表示されていた。

 中でも注目されていたのは、氷叢、爆豪、そして緑谷の三人だ。

 

救助P(レスキューポイント)0で2位とはなぁ!!」

『1P』『2P』(仮想ヴィラン)は標的を捕捉し近寄って来る。後半他が鈍って行く中、派手な“個性”で寄せ付け迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」

 

 教師陣が、金髪と目つきの悪い顔が特徴的な、爆豪という男子生徒の映像を見て感想を言う。

 爆豪は始終会場を縦横無尽に駆け回り、ハイペースで次々とギミックを爆破して回っていた。

 周りの受験生達に悪態をついて脅かしたり『死ね』などといった暴言を吐いていたため救助P(レスキューポイント)は0だったが、それでもギミックを壊して稼いだ点数だけで1位を取っており、才能と技術は頭ひとつ抜けている事は誰の目から見ても明らかだった。

 

「対照的に敵P(ヴィランポイント)0で8位。アレに立ち向かったのは過去にもいたけど…ブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」

「思わず YEAH! って言っちゃったからなーーー」

「しかし自身の衝撃で甚大な負傷…まるで発現したての幼児だ。妙な奴だよ。あそこ以外はずっと典型的な不合格者だった」

「細けえことはいんだよ! 俺はあいつ気に入ったよ!!」

「YEAH! って言っちゃったしなーー」

 

 次に教師陣は、説明の時に眼鏡の受験生に注意をされていた緑谷という男子生徒の映像を見て感想を言った。

 緑谷は爆豪とは対照的に敵P(ヴィランポイント)を全く稼げておらず、誰の目から見ても落ちこぼれという印象だったが、0ポイントギミックから逃げる時に転んだ女子を助けようとして超パワーのパンチでギミックをブッ飛ばし、救助P(レスキューポイント)で60ポイントも稼いでいた。

 だが、自分の“個性”を制御し切れずに腕がボロボロになっており、その点に関しては審査員達も不安に感じていた。

 

「……で、圧倒的1位を叩き出した彼女」

「試験開始とほぼ同時に、仮想(ヴィラン)を会場ごと全部凍らせたばかりか、0(ポイント)まであっさり行動不能にしちまうとはな……」

「雄英始まって以来の逸材ですね……」

「俺思わずJEEZ!! って言っちゃったよ!」

 

 教師陣は、最初の数秒で会場ごと仮想(ヴィラン)を全て凍らせた氷叢に注目した。

 彼女は、最初の合図にも出遅れる事なく真っ先に飛び出し、生物以外を全て凍らせて圧倒的首位に躍り出た。

 そして0ポイントギミックを一瞬で凍らせて完全な機能停止に追い込み、巻き込まれていた大勢の受験生を救うという大活躍をした。

 

「それから、他の受験者を積極的に救助していることにも注目したいですね。まあ、圧倒的1位故の心理的余裕から来る行動って見方もできなくはないですが……」

「他の子達のクレームがなきゃ、救助P(レスキューポイント)でも2位の好成績だったんだけどねぇ」

(ヴィラン)退治は被害を最小限にってのが鉄則だからなぁ。人を避けて凍結させてたとはいえ、街に被害出しちまうのはいただけねえな」

 

 教師陣が、氷の“個性”を使って他の受験生を救助している氷叢の映像を見ながら惜しそうに言った。

 彼女の救助P(レスキューポイント)は、本来50ポイント与えられるはずだった。

 通常敵P(ヴィランポイント)だけで合格圏内にいる者は、救助P(レスキューポイント)は40ポイント程度が頭打ちとなる。

 そもそも救助P(レスキューポイント)は、戦闘向きの“個性”を持たない受験生への救済措置として設けられた審査基準だからだ。

 そんな中で、敵P(ヴィランポイント) で圧倒的1位を叩き出しているにもかかわらず、救助P(レスキューポイント) が50ポイントも加算されるのは異例中の異例だった。

 

 だがこの結果に対して、教師陣の間で論争が起こった。

 それは、試験中の氷叢の行動に対する他の受験生からのクレームが原因だった。

 試験終了後、彼女と同じ会場だった受験生から、「あいつに妨害されたから失格にしろ」というクレームが相次いだのだ。

 クレームの動機は、圧倒的強者への嫉妬や、自分がうまくいかなかった事への言い訳だが、彼女の最初の氷結が結果的に他の受験生の妨害になってしまった事実は否定できない。

 だがヒーロー科としては、彼女が人の命を救った事実を無かった事にするわけにはいかない。

 そこで、彼女のせいで思うように動けなかった者と彼女に助けられた者、両方の意見を加味した折衷案として、50ポイントの半分の25ポイントだけ加算するという形で落ち着いたのだ。

 

「そういや氷の“個性”といえば、轟もいたよな。推薦の」

「でもあっちは『半冷半燃』だろ? 似て非なる力だぜ」

「親戚か何かだったりすんのかね」

 

 教師陣は、氷叢の“個性”が推薦合格者の一人の“個性”に似ている事を指摘した。

 氷の「大規模な氷結ができる“個性”は珍しいため、親戚同士ではないかという推測も出てきた。

 

(………ったく、わいわいと…)

 

 総評そっちのけで盛り上がる他の教師陣を、一人の男が興味無しとでも言いたげな目で見る。

 教師陣の熱は冷めないまま、総評は続く。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 そして、入学当日。

 氷叢家の新居では、六花と保護者の雪代が入学式の準備をしていた。

 六花は新品の雄英の制服に身を包み、頭には雪代の手作りのお守りをつけている。

 雪代は長い髪を後ろで纏め、紋付の白藍の着物を着ている。

 

「ママきれ〜!」

「ふふっ、六花も新しい制服似合ってるよ」

「ほんと〜?」

 

 雪代は、鏡の前で六花の着ている制服を調整していた。

 雪代の着ている着物は、本家の人間であった母親から譲り受けたものだった。

 雪代の生家である氷叢家では、入学式や卒業式などの子供のお祝い事の時は着物と昔から決まっている。

 

 それから二人は、車で30分、そこからさらに電車で1時間かけて、雄英の校舎に到着した。

 渋滞を避ける為に1時間以上余裕を持って出発したため、入学式まではまだ1時間弱ある。

 下駄箱で靴を履き替え、道中にある掲示板でクラスを確認した。

 1年A組の名簿に六花の名前があるのを見て、雪代が指を差す。

 

「六花はA組だって」

 

 雪代は次に、同じA組の他の生徒の名前を確認した。

 その中に、入試の時に六花の事を庇ってくれたという蛙吹と上鳴の名前を見つけ、すぐに六花に知らせた。

 

「見て、梅雨ちゃんと電気くんも同じクラスみたいよ」

「わぁぁ……!」

「お友達が一緒で良かったね」

 

 雪代は優しく微笑みながら、六花の頭を撫でた。

 だがその時、同じA組に在籍しているある生徒の名前を見て、雪代の表情が強張る。

 彼女の微妙な表情の変化を感じ取ったのか、六花が話しかける。

 

「ママ〜、どうしたの?」

「……ううん。何でもない。それじゃあ、ママは体育館で待ってるから。一人で教室行ける?」

「うん!」

「わからなくなったら、地図を見るのよ」

「はぁ〜い」

 

 雪代が体育館へ向かうと、六花は逆方向へ元気よく歩き出す。

 だが、それから数分後。

 

 

「……あれぇ? ここどこだっけ……」

 

 六花は、完全に道に迷ってしまった。

 本来は廊下を真っ直ぐ歩くだけなので道に迷わないはずなのだが、ほんの思いつきで廊下を曲がってしまい、そこから歩いていくうちにどんどんA組の教室から遠ざかってしまった。

 雪代の言葉を思い出して地図と睨めっこしても、そもそもここがどこだかわからないのだから意味がない。

 どうすればいいのか考え込んでいた六花の目に、あるものが飛び込んでくる。

 

「……んん?」

 

 六花は、廊下に置かれていた自販機に目を惹かれた。

 そういえば、喉が渇いていたような気がする。

 六花は、自販機で飲み物を買おうとした。

 確か、自販機の飲み物は携帯で買えるってママが言ってた気がする。

 六花は、携帯をICカードリーダーに翳し、ボタンを押した。

 だが、カードリーダーから『ビーッ』と電子音が鳴るだけで、飲み物が出てこない。

 

「……あれ? おかしいなぁ」

 

 六花は、何度も携帯を翳したりボタンを連打したりしてみたが、やはり音が鳴るだけで飲み物は出てこない。

 ママが言ってた話と違う。

 どうすればいいか困り果てていた、その時だった。

 

「どうしたの?」

 

 オレンジ色のサイドテールの女子生徒が、六花に声をかけた。

 困っていた六花は、女子生徒に助けを求めた。

 

「えっと……お茶がほしいのに出てこなくて……」

「ちょっと見せて」

 

 六花に助けを求められた女子生徒は、六花がカードリーダーに翳していたスマホの画面を確認した。

 スマホの画面には、赤い字で『残高が不足しています』と表示されている。

 それを見て、女子生徒は「心配して損した」とでも言いたそうに笑った。

 

「なんだ、これ残高足りてないよ」

「ざんだか……?」

「お金が足りないから買えないの。現金持ってない?」

 

 女子生徒が尋ねると、六花は思い出したようにリュックのポケットからシマエナガの財布を取り出す。

 その中から、折り畳まれた一万円札を取り出した。

 もしもの時の為にと雪代が持たせてくれた軍資金だ。

 

「……あった」

「自販機は1万円札使えないよ?」

「はわ……」

 

 女子生徒の言葉に、またしても六花は困り果ててしまう。

 そんな六花に、女子生徒は救いの手を差し伸べた。

 

「しょうがないな、今回は私が奢ってあげる」

「……いいんですか?」

「あんた、新入生だろ? 私もなんだ。これはお近づきの印ってことで。あ、私、拳藤一佳。よろしく」

「え……と、氷叢六花……です。よろしくします」

 

 拳藤と名乗る女子が挨拶をすると、六花も自己紹介をした。

 

「で、何飲みたい?」

「えっと……」

 

 拳藤に何を飲みたいか聞かれた六花は、改めて自販機のラインナップを確認する。

 その中に、『MIGHTY COLA』と書かれた臙脂色の缶があるのを見つけた。

 缶には、サムズアップをしたオールマイトのリアルなイラストがプリントされている。

 

「……何ですかこれ?」

「コーラだよ、知らない?」

「知らないです……何ですかそれ」

「甘くてシュワシュワする飲み物だよ。飲んでみる?」

 

 そう言って拳藤は、六花の為にコーラを買った。

 ガコン、と音を立てて取り出し口に落ちたコーラの缶を手に取り六花に手渡す。

 だが、六花が缶の開け方がわからずに手間取っていたため、六花から一度缶を取り上げて代わりに開ける。

 プシュッと炭酸の音を立てるコーラの缶に、六花は興味津々だった。

 拳藤が缶を再び六花に手渡すと、六花は恐る恐る缶に口をつけて中身を飲んだ。

 

「……!? 何これ、おいしい……!!」

 

 六花は、初めてのコーラの味に、何度も瞬きをして感動していた。

 カラメル系の甘さと柑橘系の酸味にスパイス系の香り、舌の上でパチパチと弾ける炭酸の刺激。

 その全てが、六花にとっては新鮮だった。

 六花は両手でアルミ缶を握りしめ、あっという間にコーラを飲み干した。

 

 拳藤は、その様子を横目に、自分の分の缶コーヒーを買った。

 するとピピピピピ、と電子音を立ててルーレットが始まり、デジタル表示器に7が4つ並ぶ。

 

「うわっ、どうしよう、二本もいらないんだけどなぁ……」

 

 ルーレットが当選してしまい逆に困っていた拳藤の目に、コーラを飲み終わって満足そうな表情を浮かべた六花が映る。

 

「ねえ、もう一本いらない?」

「……いいんですか?」

「ルーレット当たったからもう一本タダで貰えるんだよ。何飲「コーラ」

 

 拳藤が尋ね終わる前に、六花が食い気味に即答した。

 拳藤が呆れたような笑みを浮かべながらコーラを選ぶと、六花は嬉しそうにコーラの缶を受け取る。

 

「ありがとうございます。えっと……」

「拳藤」

「そうでした、ケンドーさんはいい人ですね」

 

 六花は、コーラの缶を握りしめながら拳藤に感謝を伝えた。

 『善い人』の判定がガバガバ過ぎやしないかと思いつつ、六花の素直で裏表のない性格に、拳藤は思わず笑みをこぼす。

 

「あんた、面白いね。クラス違うけど、これからよろしくな」

 

 拳藤は、そう言って凛々しい笑みを浮かべた。

 たわいない話をしながら、二人で一緒に教室に向かう。

 歩いているうちに、1ーAの教室と1ーBの教室がある廊下に到着した。

 

「じゃ、私はB組(こっち)だから。入学式(あと)で会おうな」

 

 そう言って拳藤がB組の教室に入ろうとすると、六花もついて行こうとしたので、慌てて六花を教室から押し出した。

 

「いやいや、あんたは隣のクラスだろ」

「……そうでしたっけ?」

 

 六花は、首を傾げつつも、隣の教室へ向かう。

 だが六花が向かったのは、A組ではなく、C組の教室だった。

 

「いや、逆! そっちC組!」

 

 拳藤に指摘された六花は、ハッとして踵を返し、ようやくA組の教室に辿り着いた。

 六花の前には、『1ーA』と大きく書かれたドアがある。

 ここが六花の新しい教室だ。

 ドアの大きさは、高さ6m、幅2mを超える。

 雄英の校舎は、異形型の“個性”の配慮で、全教室このような作りになっている。

 逆に極端に体の小さい生徒への配慮からか、六花が手をかけているドアハンドルの他に、膝より低い位置にもひと回り小さいドアハンドルがついている。

 六花がドアを横に引くと、別の動力で動いているのか、思いの外軽くスライドしてしまい……

 

 スパーーーン!!

 

 と勢いよくドアが開いた。

 

「わ、わぁ……」

 

 六花は、思いっきり開いたドアに驚きつつ、少し緊張した様子で教室に入る。

 

「あ……あにょ……えっと……お、おはよーございます……です」

 

 六花がぎこちなく挨拶をすると、何人かは振り向いて「おはよう!」「おはようございます」などと返した。

 そんな中、眼鏡の男子が席から立ち上がって近づいてくる。

 

「ぼ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」

 

 飯田と名乗る眼鏡の男子は、ロボットのように直角に右手を差し出しながら、六花に自己紹介をした。

 話をする時に腕をロボットのように直角に振るのは飯田特有の癖なのだが、六花はそれを別の意味に捉えた。

 

「えと……い、伊良霧中学……氷叢六花……よろしくです」

 

 そう自己紹介を交えながら、両手で飯田の右手を握る。

 すると飯田は、ギョッとして右手をバッと引っ込めた。

 

「な、何をするんだ君は!?」

「へっ?」

「みっ、未婚の男女が手を繋ぐなど、ふしだらな!! 我々は雄英生として、風紀を保った行動をだな…!!」

「えっ、えっ、ご、ごめんなさい……握手だと思って……」

 

 飯田が顔を真っ赤にして肘から先をブンブン振り回すと、六花はパニックに陥ってわたわたする。

 ヒーロー一家の次男坊に生まれ、模範的なヒーローである家族に倣って清く正しい生活を心掛けてきた飯田は、今まで一度も母親以外の女性と手を繋いだ事すら無い。

 六花の握手は、女性に免疫のない飯田を乱心させるのには充分だった。

 だが、ようやく落ち着きを取り戻した飯田は、混乱している六花に慌てて弁解をした。

 

「あっ、いや、すまない! さっきのは癖のようなもので……」

 

 飯田が弁解すると、六花もようやく落ち着きを取り戻す。

 するとその時だった。

 

 

「あれ!? 六花ちゃんじゃん! ウェ〜イ!!」

「ケロケロ、やっぱりあなたも受かってたのね。嬉しいわ」

「わ、わ……」

 

 入試で一緒だった上鳴と蛙吹が、六花に歩み寄る。

 だが、六花は二人の事をすぐに思い出せず、突然詰め寄られた事に軽くパニックを起こしていた。

 

「俺、上鳴電気! 覚えてる?」

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」

「……そうでした、デンキさんとツユちゃんさんでした。よろしくです」

 

 二人が改めて自己紹介をすると、六花はようやく二人の事を思い出した。

 二人は入試の時、他の受験生に責められていた六花を庇ったのだ。

 優しい友人達との再会に、六花は心がほんわかするのを感じた。

 

「まず荷物を置いてきたらどうかしら? 六花ちゃんの席は、窓側の前から2番目よ」

「ありがとです」

 

 蛙吹に言われて、六花は自分の席に向かう。

 その途中で視線を感じた六花は、後ろを振り向く。

 

「…………」

「…………?」

 

 視線の先には、紅白頭の男子生徒が座っていた。

 無言で視線を向けられ、少し不安に感じつつも、六花は気にしないようにして自分の席に座った。

 六花の前の席には、不良のような見た目の男子、爆豪が座っていた。

 

「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」

「思わねーよ。てめーどこ中だよ端役が!」

 

 飯田が机に足をかけている爆豪に対し説教すると、爆豪が飯田に悪態をつく。

 すると飯田は、律儀にも自己紹介をした。

 

「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」

「聡明〜〜〜!? クソエリートじゃねえかブッ殺し甲斐がありそうだな」

「君ひどいな! 本当にヒーロー志望か!?」

「わ……わぁ……」

 

 飯田と爆豪のやり取りに、六花は縮こまって小さく震えていた。

 マイペースでおっとりしている彼女にとって、爆豪のような気性の荒い人間はまさに天敵。

 だが、お隣さんになってしまった以上は仲良くするしかない。

 どうやって仲良くなろうかと、六花なりに考える。

 

 その時ふと、拳藤に貰ったコーラの存在を思い出した。

 あとで飲もうと思って、もう一本は開けずに鞄の中にしまっておいたのだ。

 

 コーラはおいしい。

 おいしいものはみんな好きなはず。

 好きなものをプレゼントすれば、仲良くなれるかもしれない。

 

 そんなフロー図を頭の中に思い描いた六花は、勇気を出して席から立ち上がり、爆豪に話しかけた。

 

「あ、あにょ……」

「あ゛?」

「えっと……わ……私、氷叢六花……です。これ、あげます」

 

 そう言って六花は、未開封のコーラの缶を爆豪に差し出す。

 いきなりコーラを差し出してきた六花に対し、爆豪は怪訝そうな表情を向ける。

 

「……んだよ、これ」

「え……と……コーラですよ……? 甘くて、しゅわしゅわしてて……とってもおいしいです」

「コーラくらい知っとるわアホ!! なんで寄越してきたんだって聞いてんだよ!!」

「えっと……おちかづきのしるし……? おいしいですよ?」

「要らねえ。つか触んなクソモブが! 冷てえんだよ!」

「あ、開けてあげます」

「耳ついてんのかてめえ!」

 

 六花は、爆豪の言い分をスルーして無理矢理コーラの缶を持たせ、封を開けようとした。

 だが、開け方がわからない。

 どうすればいいのか考えた末に、六花はある解決策を思いつく。

 

「あ、そうだ! えい!」

 

 六花は、掌から小さな氷のナイフを出して、コーラの缶の飲み口の部分に突き刺した。

 すると、その瞬間。

 

 

 

 

 ブシュワアアアアアァァァァァ!!!!

 

 

 

 

 六花がナイフを刺した箇所から噴き出た大量のコーラの飛沫が、爆豪の顔面にクリーンヒットする。

 その光景を見ていたクラスメイトは、ほとんど全員目を丸くして驚いていた。

 

(((何やってんの!!?)))

 

 そして、顔面に大量のコーラを浴びた爆豪はというと。

 

「〜〜〜〜〜っっって゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛え゛え゛え゛!!!」

 

 目にコーラの飛沫が入ったのか、椅子から転げ落ちて悶え苦しみながらのたうち回っていた。

 コーラの炭酸と酸味は、口の中に入る分には程よい刺激だが、目に入った途端に凶悪な劇物と化す。

 しかも六花が開けたのは、普通のコーラより炭酸が強いマイティコーラだ。

 激痛のあまり悶絶する爆豪を見て、他のクラスメイトは満場一致でこう思った。

 

(((うわぁ……痛そう)))

 

 さらには、元凶である六花も、のたうち回る爆豪を見下ろして申し訳なさそうにした。

 

「あー……えっと……ごめんなさい……」

 

 六花が爆豪を憐れんで謝った、その時だった。

 ようやく目の痛みから抜け出した爆豪は、ガバッと起き上がると同時に六花の胸ぐらを掴んだ。

 

「ってめえブッ殺す!!」

 

 六花の胸ぐらを掴みながら至近距離で掌から赤い火花を散らす爆豪は、(ヴィラン)顔負けの凶悪な表情を浮かべていた。

 彼の“個性”は『爆破』、掌の汗腺からニトロのようなものを分泌し、任意のタイミングで爆発させる事ができる。

 凶暴な性格も、攻撃性の高い“個性”に由来する部分が少なからずあるようだ。

 

「わ……わぁ……!」

「やめるんだ!! 入学早々教室で乱闘騒ぎを起こすな!!」

「お、おい、これ俺らも止めに入った方がいいんじゃねえ!?」

 

 爆豪が六花の顔面を爆破しようとすると、真っ先に飯田が止めに入り、他のクラスメイトも主に男子を中心に止めに入った。

 その時ちょうど教室の前にいた緑谷ともう一人の女子の麗日は、目の前で繰り広げられている騒ぎに言葉を失い、教室に入るタイミングを完全に失ってしまった。

 だが、その時だった。

 

 

 

「乱闘騒ぎがしたいなら他所へ行け」

 

 どこからか、地を這うような声が聴こえる。

 声のした方を見ると、麗日の足元には、黄色い巨大な芋虫のようなものが転がっていた。

 

「ここは……ヒーロー科だぞ」

 

 それは、寝袋に入った小汚い髭面の男だった。

 寝袋に入った男は、ゼリー飲料を取り出すと、それを一気に飲み干した。

 

(((なんか!!! いるぅぅ!!!)))

 

 クラスのほとんど全員の心の声が、ひとつにまとまった。

 そんな中、男が立ち上がってヌゥっと寝袋から出てくる。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

 

(((先生!!?)))

 

「担任の相澤消太だ、よろしくね」

 

(((担任!!?)))

 

 相澤と名乗る男の自己紹介に、生徒達は心の声を揃えて困惑した。

 初手から生徒の前で奇行を繰り広げた不審者が担任など、当の本人達からしてみれば不安でしかなかった。

 そんな生徒達の様子などお構いなしに、相澤は寝袋から体操服を取り出す。

 

「早速だが、体操服(コレ)着てグラウンドに出ろ。あと氷叢、爆豪。床掃除しとけ」

 

 

 

 

 




お互い面識のないはとことエンカウント!!
飯田くんからとんでもないもの(ファースト手繋ぎ)を盗んでいったオリ主ちゃん!!
かっちゃんへの容赦ないコーラ爆撃!!
せっかくの正装を担任に無駄骨にされた雪代ママ!!
今回は情報量が多いね!!

とまあ冗談はさておき。
原作の入試結果ですが、原作でデクがレスキューポイントを60も貰えたのは、ヴィランポイントが0だったからっていうのがデカいと思います。
上位10名の中にヴィランポイントが30を超えていて尚且つレスキューポイントを40ポイント以上稼いでいる受験者がいない事から、ヴィランポイントだけで合格圏内に入っている受験者は、どんなに完璧に救助活動をしたとしても、レスキューポイントは40ポイントくらいが頭打ちなんじゃないかと推測。
そもそもレスキューポイントって、ヴィランポイントを稼げる“個性”じゃない受験者への救済措置的な側面もあるでしょうし。
ウチのヒロアカ二次で、他の作者さんの作品よりレスキューポイントを低めに設定しているのはそのためです。


どうでもいいメモ
入試結果


        EXAMINATION RESULT

           VILLAIN  RESCUE  TOTAL

  1位 氷叢六花    990      25    1015
  2位 爆豪勝己     77       0      77
  3位 切島鋭児郎    39      35      74
  4位 麗日お茶子    28      45      73
  5位 塩崎茨      36      32      68
  6位 拳藤一佳     25      40      65
  7位 飯田天哉     52       9      61
  8位 緑谷出久      0      60      60
  9位 鉄哲徹鐵     49      10      59
 10位 常闇踏陰     47      10      57
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