地獄の氷叢さん家   作:M.T.

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第48話 氷叢さんの女子会・その2

耳郎 side

 

 覗きを画策した峰田を氷漬けにして虎に引き渡したウチらは、部屋に戻って雑談をしていた。

 ウチは窓の近くで涼みながら、皆と一緒に話していた。

 議題は主に、さっきの峰田に対する愚痴だ。

 

「……もっと氷の温度下げとけばよかったです」

 

 みんなが峰田に対して憤る中、六花が枕を抱きしめながらぼやく。

 すると麗日の背中を押していた梅雨ちゃんが、今まで峰田は何度痛い目に遭っても反省しなかったから、今回も反省しないだろうと言った。

 梅雨ちゃんの冷静な指摘に、ウチらは全員納得し、ヤオモモに至っては頭を抱えた。

 職場体験明けといい、合宿一日目といい、何度も制裁を喰らったにもかかわらず、峰田は諦めずにまた覗きを画策した。

 もうそういうイキモノだと思うしかないのかもしれない。

 なんて考えたその時、ドアがノックされ、声をかけられる。

 

「拳藤だけど、ちょっといいかな」

 

 拳藤……? なんだろう、こんな時間に。

 全員で目配せしてから、ヤオモモがドアを開ける。

 そこには拳藤を先頭に、同じB組の小大と塩崎、そして柳がいた。

 拳藤は、持っていた袋をヤオモモに差し出す。

 

「さっきはありがとね、これお礼」

「お礼?」

「えー、なになに?」

 

 拳藤が差し出した袋を、芦戸が興味津々といった様子で覗く。

 それに続くように、ウチらも袋を覗く。

 

「お菓子だーっ」

「おいしそう……っ」

「持ってきたお菓子の詰め合わせで悪いんだけどさ」

 

 袋の中には、カ◯トリーマアムやキ◯トカット、か◯ぱえびせんやぽ◯ぽた焼などのお菓子が入っていた。

 多分B組の皆が持ち寄ったお菓子だろう。

 でもなんで……?

 

 ヤオモモがハッとして、さっきの峰田のバカを謝る。

 すると拳藤、柳、小大、塩崎が、さっき六花が峰田を止めた事を感謝してきた。

 塩崎曰く、今ここにいない角取、取蔭、小森の三人も、本当は一緒にお礼がしたかったそうだ。

 

「だからさ、これもらってよ。ほんの気持ち」

「でも……」

 

 拳藤がお礼を言いながらお菓子を差し出すと、ヤオモモが戸惑う。

 六花はともかく、ウチらは礼を言われるような事は何もしていない。

 そもそも全ての元凶はクラスメイトの峰田だ。

 お礼を受け取って良いものかヤオモモが迷っていると、芦戸と六花がずいっと前に出る。

 

「それじゃ、ありがたく!」

「……いただきます」

「芦戸さん、氷叢さんっ?」

 

 遠慮なくお菓子を受け取る芦戸と六花に戸惑うヤオモモに、ウチと梅雨ちゃんで説得する。

 

「それじゃ、皆で食べようよ!」

 

 当然の事をしたまでだと渋るヤオモモに、葉隠がそう提案した。

 

「女子会しよー! 女子会! せっかくだし」

 

 葉隠のその提案をきっかけに、ウチらは女子会をする事になった。

 テンションが一気に上がったウチらは、拳藤達が持って来てくれたお菓子や、自分達で持ち寄ったお菓子を部屋の真ん中に広げ、布団を車座に敷いて座る。

 そんでもって自販機で買ったジュースで乾杯をした。

 なんというか……こういうのもたまには悪くないな。

 B組と話す機会ってほとんどなかったし。

 

「……わたし、女子会はじめてなんですけど……なにするかわかんないです」

「女子が集まって、何か食べながら話すのが女子会なんじゃないの?」

 

 六花の言葉に、芦戸が答える。

 盛り上げた本人も、何をするかわかっていないらしい。

 すると葉隠が、チッチッチッと人差し指を振る。

 

「女子会といえば……恋バナでしょうがー!」

 

 えぇ……恋バナ……?

 恋という響きに、梅雨ちゃんと麗日は恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 マジかぁ、そういう感じか……

 

 恋と聞いて、ヤオモモは分かりやすく動揺していた。

 ヤオモモ、相変わらずピュアセレブだなぁ……

 

「コイバナ……? なんですかそれ」

 

 どうやら六花も、恋バナに馴染みがないらしい。

 その様子を見て心がホッコリするのを感じつつも、話はあれよあれよと進んでいき、女子会のテーマは恋バナに決まった。

 

「それじゃ、付き合ってる人がいる人ー!」

 

 葉隠が、右手を挙げながら質問する。

 でも周りを見渡してみても、名乗り出る女子はいない。

 

「……えっ、誰もいないの!?」

 

 言い出しっぺの葉隠が、驚いた様子で言った。

 どうやら誰も隠したり嘘をついたりしている様子はない。

 どうしよう、ちょっと焦ってきたかも。

 中学の頃の友達は、彼氏できたって言ってたしなぁ……

 

 拳藤の苦笑しながら、忙しかったから仕方ないと言うので、思わず頷く。

 ヒーロー科は月曜から土曜までびっしり授業があり、特にヒーロー基礎学の演習はハードモードだ。

 恋人を作ってイチャイチャしている余裕なんかない。

 

「ね、片思いでも良いから誰か好きな人居ないのー?」

 

 芦戸がキュンキュンしたいと言いながら、他の女子達を見渡す。

 一度ついてしまった火はそう簡単には消せない。

 するとその時、六花が真顔で燃料を投下する。

 

「……オチャコさん、デクさんのことが好きなんじゃないんですか?」

「ゴフッ!!?」

 

 六花が尋ねると、麗日が吹き出す。

 そんな麗日の顔は茹で蛸のように真っ赤だ。

 

「「おやおやぁ?」」

 

 明らかに動揺した麗日を見て、芦戸と葉隠がニヤリと笑う。

 麗日は、焦って早口になりながらも必死に否定しようとする。

 

「な、ななな何言うとるん六花ちゃん!? ちゃうから! 私とデクくんはそういうんじゃ……あっ、いや別に、今のは繋げて言っただけで……というかなんでそういう話になるん!?」

「いや……なんでって……特に根拠とかないですけど、なんとなくです」

「そうそう! 恋に理屈なんてないんだよ!」

「実際のところどうなのさ!」

 

 六花の悪気のない発言に便乗する形で、葉隠と芦戸が尋問する。

 六花って、ノンデリなのに妙に勘が鋭いところがあるんだよなぁ。

 ウチもなんとなくそうなんじゃないかと薄々思ってたけど……これはほぼ100パークロだな。

 

「ちゃ、ちゃうよ! ちゃうちゃう!! 別に好きとかそういうんじゃないから!!」

「じゃあデクさんのこと嫌いです?」

「いや、嫌いやないけど……っ」

「じゃあ好きなんです?」

「っ〜〜〜!!」

「ほらほら吐け〜っ!」

「ネタはもう上がってんだよ!」

「っ……ほんまそういうんじゃ〜!」

 

 葉隠と芦戸が、麗日の脇腹くすぐりながら尋問すると、麗日は手をブンブン振る。

 その拍子に指先の肉球が二人に触れたのか、二人の体がふわりと宙に浮き上がる。

 

「ひゃっ?」

「うわっ」

「あっ、ごめん!」

 

 麗日が慌てて両手の肉球を重ね合わせ、“個性”を解除すると、二人がぽすっと布団の上に落ちた。

 すると梅雨ちゃんが、冷静に口を開く。

 

「みんな、その辺にしてあげて。お茶子ちゃんが困ってるわ」

「そうです皆さん、話したくないものを無理矢理聞き出すのはどうかと……」

「え〜やだやだ根掘り葉掘り聞きたい〜! 無理矢理にでも恋バナしたい〜!!」

 

 梅雨ちゃんと塩崎が麗日に助け舟を出すと、芦戸が布団の上で手足をバタバタさせて騒ぐ。

 ようやく恋バナクレクレから解放された麗日は、両頬に掌を当てて動悸と顔の熱を落ち着かせようとする。

 するとその時、芦戸が思い出したように言った。

 

「あ、そうだ! 六花はどうなのさ!」

「え、私?」

 

 突然指名された六花が、きょとんとする。

 雄英ヒーロー科最強かつ、トップクラスの美少女。

 ドジが多かったりたまにぶっ飛んだ発言をしたりするけど、そんな一面もクラスでは天然かわいいと受け入れられ、本人の知らないところでプロヒーローも加入しているファンクラブまでできているらしい。

 そんな六花の恋バナに、その場にいた全員が注目する。

 実はウチもちょっと気になっている。

 でも六花は、表情ひとつ変えずに言った。

 

「うーん……特にないですよ?」

「またまたぁ! 恋、してるんだろ?」

「いや、全然」

 

 芦戸が探りを入れてみるも、六花は首を横に振って否定する。

 

「……これ、どっちだと思う?」

「さぁ……?」

「ん」

「六花ってあんまり表情変わんないからわかんないんだよね」

 

 柳、拳藤、小大が顔を見合わせるので、ウチも苦笑いしながら言った。

 六花は表情の変化が乏しいから、何を考えているかわからない事が多い。

 嘘をついているのか、それとも本当に好きな人がいないのか、本人の証言だけでは判断ができなかった。

 でもその時、葉隠が思い出したように言う。

 

「あ、でもさ! 六花ちゃん、この前轟くんと一緒に帰ってたじゃん? あれは何なのさ!」

「え、まじで!? どういうことか説明してもらおうか?」

 

 葉隠が提供したネタに、芦戸が再び取り調べのようなノリになる。

 確かに、最近轟と二人でいる事が多いように思う。

 

「ああ、あれはショートさんのお母さんのおみまいに行ってただけですよ……? お互いお母さんが親戚同士なので、それでよく呼ばれるんです」

「そうだったんだ〜」

「はい」

「う〜ん、なんかデジャヴ」

 

 真相を聞いて、葉隠と芦戸は肩透かしを食らった気分になる。

 蓋を開けてみればデートなんかじゃなくて、ただの親戚付き合いの延長だった。

 そういえば体育祭前に六花と緑谷が付き合ってるって噂があったけど、あれもただの筋トレだったっけか。

 

「ショートさんは……ライバルっていうより、弟みたいな感じですかね。話すペースがゆったりしてて、話してて心地いいんです」

「確かに、轟ちゃんは六花ちゃんと雰囲気が似てるから、話しやすいのはわかる気がするわ」

「そうかもね〜」

 

 六花が言うと、梅雨ちゃんと葉隠が頷く。

 最初は近づくなオーラ全開だったけど、体育祭以降丸くなって、本来は穏やかで話しやすい性格だって最近になって気がついた。

 お互い蕎麦好きだし、氷の“個性”だから、割と性格の相性は良いのかもしれない。

 なんて考えていると、芦戸が布団に身を預けながら唸る。

 

「だめだぁー、結局キュンキュンできてないよ!」

「それじゃあさ。妄想でキュンキュンしようよ!」

 

 葉隠の提案に、梅雨ちゃんと柳がきょとんとする。

 妄想って……流石にそれはちょっと……

 

「妄想っていうか、想像? 例えばA組とB組の中で彼氏にするなら誰!? みたいなの」

「それいいかも」

「よくわかんないですけど……なんか面白そうです」

 

 葉隠の提案に、芦戸と六花が食いつく。

 どこか乗り気じゃないヤオモモを、拳藤が何事も経験だと説得すると、ヤオモモも納得する。

 

「じゃあ早速……彼氏にするなら誰がいい!?」

「彼氏かー……」

 

 そう言われて考えてみても、いまいちピンとこない。

 つーか、そもそも彼氏にしたい男がいない。

 まぁ、それ言っちゃおしまいなんだけどさ。

 なんて考えていると、ヤオモモが口を開いた。

 

「……あ」

「なに? ヤオモモ。彼氏にしたい人いたー!?」

「私じゃなくて耳郎さんですわ」

 

 は?

 ウチ?

 

「耳郎さんは、よく上鳴さんと仲良くお話しているなと思い出しまして……上鳴さんはいかがですの?」

「ちょ、ヤメテ! そりゃ、あいつは喋りやすいけどさ、チャラいじゃん。絶対浮気する」

「そうですか? デンキさん、好きになった人には尽くすタイプだとおもいますけど」

「私もそう思うわ。上鳴ちゃん、付き合ったら一途になりそう」

「え〜、そうかな……?」

「上鳴ちゃんって、女の子には優しいでしょう?」

「ん……わたし、入試の時たすけてもらいました」

 

 ウチが納得いかずに唸っていると、梅雨ちゃんと六花が上鳴のいいところを言った。

 そういえば、梅雨ちゃんと六花はあいつと入試会場が一緒だったって言ってたっけ。

 確かに悪い奴じゃないんだけど、でもなぁ〜……

 

「ただの女好きってだけじゃない?」

 

 まぁでも……

 

「…………峰田(くん、ちゃん、ミノルさん)よりマシだ(です)けど」

「ん」

 

 ウチらが口を揃えて言うと、小大が頷く。

 あまりの息のぴったりさに、自分でもつい笑ってしまった。

 

「峰田に比べりゃ、誰だってマシだよ~!」

「……ミノルさん、そろそろ除籍されないか本当に心配です」

「いや、ないでしょ。害獣を野に放つようなもんだもん」

「あぁ、それもそうですね……」

 

 ウチの意見に対して、納得する六花。

 これだけ問題行動をやらかしておきながら除籍されないのは、多分性欲の権化を監視しておく目的もあるんだろう。

 野に放って性犯罪者になられるよか、ウチらが制裁できる範囲でセクハラしてる方がまだマシだしな。

 ケタケタと笑っていた芦戸が、B組に峰田みたいなのはいないのかと聞くと、拳藤がB組の男子は皆硬派だと答えた。

 物間みたいなちょっと心がアレな奴はいるらしいけど。

 

「B組の……赤点の人……」

 

 物間という単語に柳と小大がゲンナリする中、六花が思い出したように言う。

 赤点の人って……

 まぁ、物間は心がアレだからしょうがないか……

 

 

 その後イケメン繋がりで轟の名前が上がったけど、親のエンデヴァーが厳しそうだという理由で候補から消えた。

 期末試験でエンデヴァーと戦った六花に至っては、「くさい」と暴言を吐いていた。

 まぁ六花は轟と親戚だし、そもそも最初から候補に入ってないのは当然なんだけど。

 唯一塩崎だけは、エンデヴァーに慈しみの心を向けてたけど、恋愛感情があるわけではないらしい。

 

 その次は飯田が候補に上がったけど、真面目すぎるが故に却下。

 女子に握手を求められただけで動揺して拒否するような真面目の塊に、まともな交際ができるかどうかすら怪しい。

 

 そしてその次は真面目で努力家な緑谷が候補に上がったけど、重度のオールマイトオタクだから却下。

 あいつとデートしようものなら、オールマイトの握手会やサイン会にしか連れて行ってもらえなさそうだ。

 彼氏としてはないと切り捨てる拳藤達に、麗日はどこか歯痒そうな顔をしていた。

 

 

「じゃあ爆豪は?」

「ないな」

 

 今度はウチがばっさり切った。

 

「成績優秀、将来有望……だけど、あの性格じゃあなー」

「でもバクゴーさん、いいところもありますよ。勉強教えてくれましたし……面倒見はいいと思います」

「六花、まさかの爆豪!?」

 

 六花のまさかの擁護に、芦戸が食いつく。

 えぇ、マジで……?

 

「いや、いいところが無いわけじゃないってだけで、バクゴーさんうるさいのでヤです。わたし、もっと落ち着いた人がいいです」

 

 まさかの爆豪派かと思いきや、六花が冷静に首を横に振る。

 アレか、尊敬できる部分もあるけど、付き合いたいと思うにはあとひと押し足りないって感じか。

 まぁでも、気持ちはわからなくもないな。

 ウチも、絶対プライベートで関わりたくないけど曲は好きなアーティストとかいるし。

 

 その後も他の候補を挙げていくものの、芦戸の厳しい審査で全員篩から振り落とされ、結局彼氏にしたい男子は一人も浮かんでこなかった。

 キュンキュンに飢えた芦戸が、布団の上で足をバタバタさせながら、キュンキュンしたいと唸る。

 そんなに恋バナがしたいか……

 なんて半ば呆れていると、葉隠が少し考えてから提案する。

 

「それじゃ、逆で考えてみるっていうのは? 私達が男子で、男子がもし女の子だったら彼女にするなら誰! みたいな」

 

 葉隠の提案に、ウチらは妄想を膨らませる。

 でもいくら考えても、女装した男子達の姿しか浮かんでこない。

 するとその時、柳が口を開く。

 

「でも、一佳が男ならモテそう」

 

 柳の意見に、小大と塩崎も頷く。

 B組の中で一番かっこいいのは、満場一致で拳藤だ。

 ヤオモモも、職場体験で拳藤にフォローしてもらったらしい。

 それを聞いたらウチも、拳藤が男だったら、彼氏としてはアリな気がしてきた。

 

「わたしも、ケンドーさんはかっこいいとおもいます。わたし、ケンドーさんにたすけてもらったことあります」

「ちょっと、やめてってば」

 

 ヤオモモと六花も同意すると、拳藤が照れくさそうに苦笑する。

 ウチも拳藤のイケメンエピソードにうんうんと頷いた。

 そう言えば六花、入学初日に迷子になってたところを拳藤に助けてもらったって言ってたっけ。

 

 芦戸は、男になった拳藤がチカンを撃退するところを想像して、惚れ惚れした表情を浮かべる。

 拳藤が男だったら、外見も内面もイケメンなのは間違いない。

 でも、女子同士でキュンキュンしてどうするって話だ。

 

「やっぱさ、恋愛目線で見るからしっくりこないんだよ。相棒(サイドキック)目線とかなら、意外とキュンキュンしそうなとこも見えてくるかもよ?」

相棒(サイドキック)ねえー」

「もしくは、一日入れ替わるなら、とか?」

 

 拳藤の提案に、それぞれが考え込む。

 芦戸は瀬呂と、梅雨ちゃんは常闇と、麗日は爆豪と、葉隠は砂藤と、ヤオモモと小大は口田と入れ替わってみたいらしい。

 ちなみにウチは上鳴と入れ替わって、放電してウェイ状態を体験してみたい。一回で充分だけど。

 

「六花は?」

「ん〜……わたしはショートさんかバクゴーさんがいいです。氷しか出せないので、たまには火とかあったかいのも出してみたいです」

「爆豪まさかの二回目!?」

 

 意外な人気株に、思わずツッコミを入れる。

 まぁ性格はともかく、強いからなー。

 

 その後芦戸が補習に行かなきゃいけなかった事を思い出し、またしても恋バナを欲しがった。

 すると梅雨ちゃんが口を開く。

 

「恋に落ちる、って言うでしょ? だから、気がつくと落ちてしまっているものなのよ。きっとその時になれば、誰かに気持ちを話したくてたまらなくなるんじゃないかしら。恋バナはその時にたくさんしましょ」

「ツユちゃんさん……いいことをおっしゃる……」

 

 梅雨ちゃんの言葉に、ウチらはほんわかした。

 だけどそれは一瞬だけで、その後すぐ芦戸がキュンキュンクレクレに変貌した。

 流石にそのまま補習に行かせるのは可哀想だったから、もうしばらく恋バナに付き合った。

 

 思い切って芦戸に好きなタイプを聞き出したら、強そうだけど子供っぽいところもあってヤンチャだけどずっと一緒にいてくれる男がタイプだというので、梅雨ちゃんが「それって黒影(ダークシャドウ)ちゃんみたい」だと言い、女子達は黒影(ダークシャドウ)のかっこかわいい一面で盛り上がる。

 芦戸が、黒影(ダークシャドウ)もアリかもと考え始めたその時、六花と葉隠が揶揄うように言った。

 

「ん……トコヤミさんとお付き合いすれば、ダークシャドウさんもいっしょです」

「じゃあ、黒影(ダークシャドウ)って”個性”を持ってる常闇くんがタイプってことで!」

「ってことで! じゃないよ! もうこうなったら意地でもキュンキュンしてやる! 次は……現役ヒーローの中で、もし結婚するなら誰!?」

 

 えぇ、マジかぁ〜……

 正直ちょっと戸惑いはあったけど、満更でもなかった。

 

 ウチらの恋バナは、まだまだ終わらない。

 さらにそこへ戻ってきた小森、角取、取蔭の三人も加わり、話はより一層盛り上がる。

 妄想でキュンキュンこそできなかったものの、女子部屋は和気藹々とした空気に満ちていた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

No side

 

 なおその頃、男子達は明日の肉じゃがの豚肉を巡ってクラス対抗腕相撲大会をしていたのだが、勝負は大将戦の鉄哲対爆豪にもつれ込んでしまっていた。

 その大将戦も物間の妨害によって無効試合となってしまったため、緑谷の提案で枕投げ対決に変更した。

 最初は“個性”禁止のルールだったのだが、なかなか決着がつかず苛ついた爆豪が弾みで“個性”を使ってしまい、そこから枕投げは「うっかり!」「うっかり!」と連呼しながらの“個性”の応酬と化した。

 もはや何でもありのデスマッチだ。

 

 だが、“個性”を使って騒いだのが相澤に見つかり、A組B組関係なく説教を受ける事となった。

 そして、争いの元になるような肉は無くしてしまえという相澤の暴論によって、男子のみ肉抜きとなったのであった。

 

 

 

 

 




あれだけやらかしてる峰田が除籍されない理由ですが、リードで繋いでおくためと考えたら割と納得なんですよね。
ヒーロー科に入れるだけの実力がある性欲の権化を下手に除籍したら、害獣を野に放つようなものですし。
除籍したその日にレ◯プ魔になられでもしたら、相澤先生的にはたまったもんじゃないでしょう。
まあ、セクハラされる女子達や、こいつのせいでヒーロー科に上がれなかった清廉潔白な普通科生徒には同情しますが。
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