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エンデヴァー side
たった今、地下施設での戦いが決着した。
氷叢六花が、氷叢雪代を後ろにいた脳無ごとまとめて氷漬けにした。
プロが学生に助けられるなど、情けない限りだが……おかげで重傷者を出さずにこの場を制圧できたのだから、文句は言うまい。
俺が合図を送ると、外で待機していた機動隊が独房に入ってくる。
「そいつらを連行しろ」
「はい!」
俺達が脳無と氷叢雪代を連行しようとした、その時だった。
突然、氷叢雪代の口から泥のような液体が湧き出す。
「なっ……!?」
「ママ!!」
氷叢雪代の口から溢れ出た液体はあっという間に彼女の体を包み込んだ。
氷叢六花は、咄嗟に氷叢雪代を引き留めようとしたが、泥が空を切り、氷叢雪代が姿を消した。
「クソッ、転送系の“個性”か……!」
「おじっ……えんでばぁさん、どうするんですか……!?」
「決まっているだろう、奴を追う。バーニン、キドウ、オニマー! ここは任せたぞ!」
「「「ラジャ!」」」
転送されたとすれば、脳無の倉庫かバーのどちらかだろう。
俺は、この場をサイドキックと機動隊に任せ、氷叢雪代が転送されたであろう場所へと行こうとした。
するとその時、氷叢六花が追いかけてくる。
「待ってください、わたしもいっしょにいきます……!」
「ダメだ。ここで待機していろ」
「わたし、ママがどこにいったのかわかります! だから連れていってください!」
氷叢六花が、氷叢雪代の居場所がわかると言い出し、“個性”で氷の鳥を出現させた。
彼女を危険に晒す事は避けたいが、それが本当なら、最短で氷叢雪代のもとへ行けるかもしれない。
俺は少し考えてから、結論を出した。
「……わかった、案内しろ」
すると機動隊の一人が止めに入る。
「ちょちょ、エンデヴァーさん!? その子、ついさっきまで人質だったんですよ!? そもそも学生ですし!」
「今はそうも言ってられない緊急事態だ。責任なら、全て俺が負う。ここは任せたぞ」
そう言って俺は、氷叢六花が出した氷の鳥の上に乗る。
氷の鳥は上空へ飛び上がると、一気に加速して一直線に飛んでいく。
俺の後ろには、氷叢六花が追いかけてきていた。
「……あの、えんでばぁさん……さっきは、たすけてくれてありがとうございました……あと、くさいってゆってごめんなさい」
「……気にしていない。それより、もっとスピードを上げろ」
「あっ、はい」
◆◆◆
オールマイト side
「相澤くん……!」
相澤くんが、リューキュウの背中に乗って上空から爆豪少年を救出してくれた。
爆豪少年はこの場を切り抜け、連合は全員相澤くんに視られて“個性”を使えない。
今のうちに──
「『抹消』か……いいね、向こうから来てくれるとは、手間が省けて助かる」
そう言ってオール・フォー・ワンは、ニヤリと笑うと、素の身体能力だけで高く跳び上がり、リューキュウに飛びつこうとした。
いかん……!!
オール・フォー・ワンめ、相澤くんの“個性”を奪うつもりか……!!
「イレイザーと少年を守れ!!」
リューキュウの背中に乗っていたヒーロー達が、相澤くんと爆豪少年を守ろうとする。
オール・フォー・ワンは、素の膂力だけで、立ち向かってきたヒーロー達を殴り飛ばそうとした。
「SMASH!!!」
私は、すぐに跳び上がってオール・フォー・ワンに追いつき、上から殴りつけて地上へ叩き落とした。
「オールマイトォ!!」
「リューキュウ、今のうちに行きなさい! できるだけ遠くへ!!」
「……っ、ええ!」
私が言うと、リューキュウは速度を上げて飛行した。
今ので相澤くんの“個性”が解けてしまったが、おかげで皆がオール・フォー・ワンから離れられた。
これで私も、心置きなく戦える。
ここで一気に片をつける!!
「まだ間に合う!! 追うわよ!!」
「俺に行かせろ!! 力余ってしょうがねぇんだ」
私が地上に降りて連合を叩こうとしたその時、連合の一人が“個性”を使ってリューキュウ達を追おうとした。
するとその時、どこからか飛んできた何かが、連合のメンバーに次々と一撃を叩き込み、連合のメンバーのうち、死柄木と黒霧、そして少女を除く七人の意識を刈り取る。
あれは……グラントリノ!!
「遅いですよ!」
「お前が速すぎんだ」
「助かりました、グラントリノ。これで、やっと心置き無くお前を倒せる!」
私は、起き上がってスーツについた汚れを払っていたオール・フォー・ワンを指差しながら言った。
「連合もあと二人!! 終わらせる!」
グラントリノは、残る連合の方へと飛び出した。
「弔くん終わりたくないです」
「やられたな、一手でキレイに。形勢逆転だ」
そう言ってオール・フォー・ワンが、両手の親指、人差し指、中指から黒い棘を射出する。
私は棘を咄嗟に避けたが、狙いは私ではなかった。
オール・フォー・ワンが刺したのは、さっきグラントリノが気絶させた、サングラスをかけた男と黒霧だった。
その直後、黒霧の“個性”が自動的に発動し、ワープゲートが開く。
ちょうどその時、グラントリノは死柄木の方へと飛んでいっていた。
「塵になれ」
死柄木は飛んでくるグラントリノに触れようとし、グラントリノは死柄木に飛び蹴りを喰らわせようとするが、互いの攻撃が当たる寸前で突然死柄木が引っ張られ、グラントリノの蹴りが外れた。
そして、そのまま少女の方へと飛ばされる。
「え、やーーそんなに急に来られてもぉ」
少女にぶつかると
「待て…ダメだ先生!」
男はオール・フォー・ワンの棘でゲートの中へ投げ入れられ、それを阻止しようとしたグラントリノは、棘で弾かれる。
「ぐっ」
「
死柄木が言い終わる前に、死柄木はゲートの中へと引き摺り込まれた。
メンバー全員がゲートに入ると、ゲートは渦を巻いて消滅した。
「弔、君は戦いを続けろ」
私は、一気に距離を詰めオール・フォー・ワンを殴ろうとした。
だが奴は、狡猾な事に、泥状のワープによってグラントリノを自身の目の前に転送し、盾として利用した。
「僕はただ弔を助けに来ただけだが、戦うというなら受けて立つよ」
寸止めをしようとしたが間に合わず、拳がグラントリノの左頬に当たってしまう。
「すみません!!」
さらには、『衝撃反転』の“個性”によって私の攻撃は弾き返され、私自身の腕に決して小さくはないダメージを与えた。
私が態勢を立て直そうとしたその時、奴はついさっき街を吹き飛ばした衝撃波を放とうとする。
「何せ僕はお前が憎い。かつてその拳で僕の仲間を次々と潰し周り、お前は平和の象徴と謳われた。僕らの犠牲の上に立つその景色、さぞや良い眺めだろう?」
オール・フォー・ワンは、グラントリノごと私を吹き飛ばそうとした。
いかん……!!
「DETROIT SMASH!!!!!!!!」
私は、咄嗟にグラントリノを助け出して奴と拳を撃ち合い、衝撃波を相殺した。
相殺が間に合い、街への被害は最小限に食い止められた。
だが、今ので体にガタが来たらしく、歯を食いしばった拍子に喀血する。
「心置きなく戦わせないよ。ヒーローは
「黙れ」
私は、右手でオール・フォー・ワンの左腕を掴むと、そのまま力を込めてへし折る。
「貴様はそうやって人を弄ぶ! 壊し! 奪い! つけ入り支配する! 日々暮らす方々を! 理不尽が嘲り嗤う! 私はそれが! 許せない!!」
私は、左手に抱えていたグラントリノを放し、怒りを込めて左拳を奴の顔面に叩き込んだ。
その一撃で、奴の装着していたマスクが破損する。
露わになったのは、皮膚が焼け爛れのっぺらぼうのような顔をした奴の素顔。
「いやに感情的じゃないか、オールマイト。同じような台詞を前にも聞いたな。『ワン・フォー・オール』先代継承者、志村菜奈から…」
その名前を聞いた瞬間、私の中で怒りが爆発する。
「貴様の穢れた口で、お師匠の名を出すな…!!」
――誇れ俊典!
「理想ばかりが先行し、まるで実力の伴わない女だった…! 『ワン・フォー・オール』生みの親として恥ずかしくなったよ。実にみっともない死に様だった…どこから話そうか…」
「Enough!!」
奴を黙らせようと、拳を振り下ろそうとした瞬間、奴が右手を私に向け、衝撃波を放ってくる。
なんとか空中で態勢を立て直そうとした瞬間、背後から音が聴こえる。
振り向くとそこには、報道局のヘリが飛んでいた。
「俊典!」
激突しそうになったその時、グラントリノが私を受け止めてくれた。
「六年前と同じだ! 落ち着け!! そうやって挑発に乗って! 奴を捕り損ねた!! 腹に穴を開けられた! お前のダメなとこだ! 奴と言葉を交わすな!」
「……はい…」
「前とは戦法も使う“個性”もまるで違うぞ。正面からはまず有効打にならん! 虚を突くしかねえ。まだ動けるな!? 限界超えろ! 正念場だぞ!!」
「………はい!」
私は、グラントリノの言葉を聞いて自身を落ち着かせた。
そうだ、冷静になれ……でなければ、奴を討ち倒す事は出来ん。
そう自分に言い聞かせたその時、奴が大袈裟に両手を広げながら話し始める。
「弔がせっせと崩してきたヒーローへの信頼、決定打を僕が打ってしまってよいものか…でもねオールマイト。君が僕を憎むように、僕も君が憎いんだぜ? 僕は君の師を殺したが、君も僕の築き上げてきたものを奪っただろう? だから君には可能な限り醜く惨たらしい死を迎えて欲しいんだ!」
オール・フォー・ワンは、そう言って再び腕を膨らませる。
さっきの衝撃波か……!!
「でけえの来るぞ! 避けて反撃を───」
「避けていいのか?」
嘲るような奴の言葉の直後に、背後から物音が聴こえる。
背後に、誰かがいる。
Shit!!
「君が守ってきたものを奪う」
そう言って奴が、“個性”を発動する。
相殺するしか……!!
ドオオオォォォ…!!
◆◆◆
オール・フォー・ワン side
「まずは怪我をおして通し続けたその矜持、惨めな姿を世間に晒せ。平和の象徴」
僕の目の前には、左の拳を突き出したオールマイトの姿があった。
今の攻撃を相殺したか。
だが……
「頬は痩け目は窪み!! 貧相なトップヒーローだ。恥じるなよ、それが
その代償は、大きかったようだ。
オールマイトは、トゥルーフォームに戻っていた。
ボロボロで痩せ細った、惨めな姿だ。
その姿を嗤ってやったが、奴の目はまだ死んでいなかった。
醜態を晒す事を恥とも思わず、私を睨んでくる。
「……そっか」
「身体が朽ち衰えようとも…その姿を晒されようとも…私の心は依然平和の象徴!! 一欠片として奪えるものじゃあない!!」
「素晴らしい! まいった、強情で聞かん坊なことを忘れてた。じゃあ
その言葉に、オールマイトは目を見開いて呆然と立ち尽くす。
「君の嫌がることをずぅっと考えてた。君と弔が会う機会を作った。君は弔を下したね。何も知らず、勝ち誇った笑顔で」
「嘘を………」
「事実さ。わかってるだろ? 僕のやりそうなことだ。あれ…おかしいなオールマイト、笑顔はどうした?」
僕は、両手の親指で両頬を吊り上げながら笑う。
「き…さ、ま…!」
「やはり…楽しいな! 一欠片でも奪えただろうか」
「〜〜〜ぉおおお───…!!」
後悔と自責に苛まれたオールマイトは、地に膝をついて叫ぶ。
あぁ、その顔だよオールマイト。
その顔が見たかった。
やはり、君を壊すのは愉しいな。
「負けないで…オールマイト、お願い…救けて」
その時、オールマイトの後ろで生き埋めになっていた一般人のか細い声が聴こえた。
するとオールマイトが、右腕だけマッスルフォームを展開しながら叫ぶ。
「お嬢さん、もちろんさ。ああ…! 多いよ…! ヒーローは…守るものが多いんだよオール・フォー・ワン!! だから、負けないんだよ」
オールマイトは、笑いながら拳を振りかぶっていた。
とっくに活動限界は迎えているはずだ。
それでもなお立ち向かうその姿、全く忌々しい。
「渾身。それが最後の一振りだね、オールマイト。手負いのヒーローが最も恐ろしい。腸を撒き散らし迫ってくる君の顔、今でもたまに夢に見る……でもね、オールマイト。捨て身がヒーローの専売特許だとでも?」
そう言って僕は、手元に氷叢雪代を転送した。
彼女は、僕の手元に転送した時には既に、全身が凍りついて身動きが取れなくなっていた。
僕がオールマイトと闘り合っている間に、氷叢六花に敗けたらしい。
彼女に任せるには、荷が重すぎたか……
こうなってしまったらもう戦力としては期待できないが、まだ使い道は残っている。
「
「なっ……!?」
僕は、氷叢雪代の頭を掴んで彼女から“個性”を奪い、代わりに爆破装置を付与した。
するとオールマイトが、僕から氷叢雪代の身柄を奪い返そうと飛び出す。
「やめろ!!!」
僕は、オールマイト目掛けて、氷叢雪代の体を投げつけた。
その直後──
BOOOOOM!!!
氷叢雪代の体が、空中で爆発した。
周囲数十メートルを、爆炎が包み込む。
「……ぉぉぉおおおおおおおっ!!!」
オールマイトは、ショックに打ち震えて叫ぶ。
オールマイトが完全に油断したところを、『空気砲』でトドメを刺そうとした、その時。
「ママ!!!」
僕とオールマイトの間に割り込む形で、何かが飛んできた。
そこにいたのは、ドクターの別荘に転送したはずの氷叢六花だった。
この僕をもってしても“個性”を奪えなかった、氷叢の血の最終到達点。
氷叢六花は、落ちていく氷叢雪代の体を受け止めると、彼女の体を氷で覆った。
「ママ……ねぇ、起きてよ、ママ!!」
「氷叢少女……!!」
「僕から目を逸らすとは、随分と余裕だね。無様に死ね、オールマイト」
僕は、氷叢六花に気を取られたオールマイト目掛けて“個性”を発動させた。
僕が『空気砲』を放とうとしたその時、背後から炎が飛んできた。
「何だ貴様…その姿は何だオールマイトォ!!!」
炎を相殺しながら振り向くと、炎を纏って空を飛んでいるエンデヴァーがいた。
「
「応援に来ただけなら、観客らしく大人しくしててくれ」
僕が『空気砲』でエンデヴァーを吹き飛ばそうとしたその時、エッジショットが僕の顔面目掛けて飛んでくる。
「ぬかせ破壊者。俺達は救けに来たんだ」
その下ではシンリンカムイが、ボロボロになったギャングオルカ、ベストジーニスト、Mt.レディの三人を、プッシーキャッツ達が一般人を助けていた。
「我々…には、これくらいしか出来ぬ…あなたの背負うものを少しでも…」
「虎…!」
「あの邪悪な輩を…止めてくれオールマイト…!! 皆、あなたの勝利を願っている…!! どんな姿でも、あなたは皆のNo.1ヒーローなのだ! 皆あなたの勝利を、願っている!」
「煩わしい」
僕は『空気砲』を地上に放ち、下にいるヒーロー達を吹き飛ばした。
「精神の話はよして、現実の話をしよう。さっきは衝撃を相殺するので精一杯だったようだが……果たしてもう一撃は耐えられるのかな?」
「なっ……!?」
僕は、まだ破壊の被害が少ない区域に掌を向ける。
何も、この攻撃をオールマイトに当てる必要はない。
奴が必死に守ってきたものを僕の手で奪い壊し、途方もない絶望感を与えてから殺そう。
絶望と自責に歪んだオールマイトの顔を想像して微笑んだその時、冷風が僕の頬を掠めた。
「……何?」
真夏だというのに、吹雪が襲いかかる。
振り向くと、氷叢六花が、全身に冷気を纏いながらこちらへ飛んできていた。
「許さない……!!」
氷叢六花は、僕を睨みつけて敵意を向けている。
……これは少し拙いな。
下手にやり合うと、さっきの二の舞になりかねない。
出来る事なら生け捕りにしたかったが、流石の僕もオールマイトの攻撃を掻い潜って生け捕りにする余裕はない。
実に惜しいが、
触れる事が出来ないなら、近づかせずに殺せばいいだけの話だ。
「ここで殺すのは心苦しいが……そっちが闘る気なら、受けて立つよ。今僕が掛け合わせられる最高・最適の“個性”達で君を殺す」
「Shit!! 氷叢少女!!」
「君はそこで見ていろオールマイト。大事な教え子が消し炭になるところをね」
僕は、今持っている炎熱系“個性”や補助系“個性”をフル稼働させて、氷叢六花を迎え撃つ準備をした。
『燃焼』×3、『火炎放射』×3、『高温』×4、『耐熱』×10、『熱伝導』、『核融合』、『放熱』、『熱線』、『プラズマ』、『
この組み合わせにエンデヴァーのような広範囲制圧や精密操作は期待できないが、自身の体温を上昇させる事に特化していて、体表面の温度は1万度を優に超える。
もっとも、火力が強すぎて相手の死体が残らないのが難点だが──
「う゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛……!!」
気がつくと氷叢六花は、僕の数センチ手前まで迫ってきていた。
“個性”を使って体を冷やしながら、僕に近づいてくる。
「…………は?」
バカな……
彼女には、高温への耐性は無いはずだ。
金属すら一瞬で蒸発するこの高温下で、何故肉の形を保っていられる?
それだけではない……温度が少しずつ下がっている?
いや、違う……膨大な熱を、全て吸収しているんだ。
氷叢六花の心臓部が、微かに青白い光を放っている。
まさか、“個性”の容量を超えた事で覚醒したというのか……?
◆◆◆
No side
――キミの本来の“個性”は、どんなに熱いものでも立ち所に冷やして自分の力に変えることができるにゃん。暑さに弱いのは、“個性”に体が追いついてないってこと。それは多分、キミのお母さんから受け継いだ“個性”を使いこなすことができれば、解決できるにゃん。
かつてラグドールが、六花の“個性”についてそう語っていた。
六花の自身の体を氷に変え氷を操る“個性”は、父親の氷太郎から受け継いだ“個性”だが、六花の“個性”には、母親の氷花から受け継いだ因子も混じっていた。
氷花の“個性”は『冷却』、触れたものから熱を奪い冷やす“個性”だった。
氷花も六花同様、生まれつき循環器が変異しており、冷やしたものから奪った熱を余剰エネルギーとして溜め込む事ができる体質の持ち主だった。
火力が高い代わりに使えるエネルギーに限界のある“個性”と、エネルギーを溜め込める代わりに動かす先の無い“個性”、その二つが混じり合い、奪ったエネルギーを使って無尽蔵に氷を操れる“個性”を持った六花が生まれた。
だが、六花の“個性”が持つ本来の力は、それだけではなかった。
あらゆるものを冷やす“個性”を持つ氷花は、熱湯だろうと、溶岩だろうと、触れている限り極低温に達するまで温度を下げ続ける事ができる。
そしてそれは、六花も同じだった。
容量を超えた事で氷花の因子が完全に覚醒した六花の“個性”は、ある境地に到達しようとしていた。
本来地球上に存在しないはずの、物理学上の温度の下限、『絶対零度』。
「う゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛……!!」
周囲から熱を奪いながらオール・フォー・ワンに接近した六花は、そのままオール・フォー・ワンに飛びつき、直接体温を奪いにかかる。
オール・フォー・ワンは『空気砲』で六花を吹き飛ばそうとしたが、タッチの差で六花がオール・フォー・ワンの体に触れる方が早かった。
六花の手が触れた箇所から、オール・フォー・ワンの体は急激に冷やされていく。
「おあぁぁぁぁぁ!!!」
オール・フォー・ワンは、抵抗も虚しく六花に凍死寸前まで体温を奪われる。
体温低下によって全ての“個性”が完全に活動を停止し、『エアウォーク』をも維持できなった事で、オール・フォー・ワンは地面に真っ逆さまに落ちていく。
◆◆◆
オール・フォー・ワン side
「やめろ、やめろ……!!」
僕の精神世界が、氷叢六花の“個性”によって、一瞬にして白銀の世界と化した。
僕の“個性”達が、次々と凍りついて機能を停止していく。
“個性”を強制発動させようにも、体温が下がりすぎて“個性”の強制発動すらもうまく機能しない。
駄目だ、こんなところで終わってたまるか……!!
「いやぁ、過ごしやすい温度になりましたね。でも少し寒いかな? あー、温かいお蕎麦が食べたい」
どこからか、聴き覚えのある声が聴こえてくる。
振り向くと、唯一、氷叢雪代の因子だけは、凍りつく事なく平然としていた。
氷叢雪代の因子を奪っておいたのが、早速役に立つとはね。
彼女の“個性”を使って、凍りついた“個性”達を解凍すれば……!!
「氷叢雪代!! 何をしている!? 早く僕を助けろ!!」
僕は、氷叢雪代の“個性”を使って、他の“個性”達を解凍しようとした。
だが彼女は、僕を拒絶し、鼻で笑った。
「『助けろ』ですって? 私のことを捨て駒にしておいて、随分と虫の良いことを言うんですね。あなた、魔王なんでしょう? 人に頼ってないで、自分でなんとかしたらどうです?」
「お前は僕の“個性”だろう!? 黙って僕の言うことを聞け!!」
僕の体が凍りついて動かなくなる中、氷叢雪代は、満面の笑みを浮かべて言った。
「とっととくたばれ、クソ野郎」
そう言って彼女は、僕の顔面を掴むと、体についた氷を操ってさらに温度を下げてくる。
「嫌だ……!! 嫌だ、嫌だ、嫌だぁぁぁああああああっ!!!」
◆◆◆
No side
六花に凍らされ、雪代にトドメを刺されたオール・フォー・ワンは、完全に生命活動を停止した。
そして落ちていった先には、拳を振りかぶったオールマイトがいた。
「UNITED STATES OF SMASH!!!!」
オールマイトは、渾身の一撃をオール・フォー・ワンの頭部に叩き込む。
オールマイトの拳により、凍結して脆くなったオール・フォー・ワンの頭部は粉々に砕け散った。
悪の帝王は体ごとその野望を打ち砕かれ、平和の象徴の勝利が確定した。
「はふっ…………」
オールマイトの勝利を見届けた六花は、ゆっくりと地上に降り立つ。
三日間の監禁生活と“個性”の酷使による疲労のせいか、その場で倒れ込んだ六花を気遣い、オールマイトがコスチュームの一部を破いて六花の体に被せ、右腕を高く挙げて勝利のスタンディングポーズを取った。
修正点は、以下の3つです。
・六花の転送先を、蛇腔からAFOの泥ワープの発動圏内に変更
・それに伴い、雪代さんの末路を変更
・AFOの心理描写を投入