地獄の氷叢さん家   作:M.T.

6 / 6
第6話 氷叢さんの個性把握テスト

No side

 

 入学初日。

 A組の生徒20名は、新品の体操服に着替えてグラウンドに集まっていた。

 

「“個性”把握…テストォ!?」

 

 急な発表に、生徒達は皆驚いていた。

 入学式やガイダンスはどうするのかと、ほとんどの生徒の頭に疑問が浮かぶ。

 そんな生徒達の意見を、麗日が代弁した。

 

「入学式は!? ガイダンスは!?」

「ヒーローになるならそんな悠長な行事、出る時間ないよ。雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り。ハンドボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ? “個性”禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けてる。合理的じゃない。まぁ文部科学省の怠慢だよ」

 

 相澤は、麗日の疑問をバッサリ切り捨ててからそう愚痴を言いつつ、六花に目を向けた。

 

「氷叢、中学の時ハンドボール投げ何mだった」

「えっと……ごめんなさい、覚えてないです」

「そうか。じゃあ爆豪、お前は?」

「67m」

「じゃあ“個性”を使ってやってみろ。円から出なきゃ何をしてもいい。早よ。思いっきりな」

 

 そう言って相澤がボールを渡すと、爆豪はボールを受け取って円の中に入る。

 爆豪は、ボールを持った腕を振りかぶり、そして──

 

「んじゃまぁ…死ねぇ!!!」

 

 

 

 ボオォン!!! 

 

 

 

(((……死ね?)))

 

 掛け声として上げられた暴言に、他の生徒の心の声が重なった。

 爆豪が球威に爆風を乗せてボールを投げると、ボールは三重の環状の雲を残して遥か彼方へと飛んでいく。

 しばらくしてボールが着地し、相澤の持っていた端末から『ピピッ』と音がする。

 

「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

 そう言って相澤が見せた端末には、『705.2m』と表示されていた。

 

「なんだこれ!! すげー面白そう!」

「705mってマジかよ!?」

「“個性”思いっきり使えるんだ!! 流石ヒーロー科!」

 

 “個性”を自由に使える環境を与えられた事で、多くの生徒がはしゃぐ。

 ヒーロー科といえど、中学までは一般人だったため、“個性”の使用が禁じられていた。

 “個性”を自由に使える機会に飢えていた生徒達は、水を得た魚のように目を輝かせて食いついた。

 

 だが『面白そう』という失言が、相澤の地雷を踏み抜く事になる。

 相澤の纏う空気が、急にガラリと変わった。

 

「………面白そう…か。ヒーローになるための三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい? よし。トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

「「「はあああ!?」」」

「生徒の如何は先生(おれたち)の自由! ようこそ、コレが雄英高校ヒーロー科だ」

 

 そう言って相澤は、不敵な笑みを浮かべながら前髪を掻き上げる。

 

「最下位除籍って…!! 入学初日ですよ!? いや初日じゃなくても…理不尽過ぎる!!」

 

 あまりにも理不尽な決定に、麗日はA組を代表して声を上げた。

 すると相澤が、麗日の意見に反論する。

 

「自然災害…大事故…身勝手な(ヴィラン)達…いつどこから来るか分からない厄災。日本は理不尽に塗れてる。そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったなら御生憎様。これから三年間、雄英は全力で君達に苦難を与え続ける。Puls Ultraさ。全力で乗り越えて来い」

 

 相澤は、人差し指をクイっと曲げ、挑発で焚き付けてきた。

 

「さて、デモンストレーションは終わり。こっからが本番だ」

 

 こうして、“個性”把握テストが始まった。

 

 

『START!!』

 

 最初の種目は、50m走。

 既に出席番号14番まで計測を終えた現時点でのトップは、飯田の3秒04だった。

 順番が近い六花は、近くにいた『透明化』の“個性”を持つ女子、葉隠に話しかける。

 

「あのぉ……すみません……除籍ってなんですか?」

「えっ、わかってなかったの!?」

「すいません……」

「最下位になったら、ヒーロー科から追い出されちゃうってこと! だから皆必死で最下位にならないように頑張ってるんだよ!」

「へ……!?」

 

 葉隠がわかりやすく説明すると、六花はショックを受ける。

 他の皆がショックを受けていたので良くない事だろうとは思っていたが、まさかそこまで重い罰だとは思っていなかったのだ。

 

「なるほどです……除籍はイヤです……がんばらないと……」

 

 六花は、ようやく危機感を持ち始め、ぐっと拳を握りしめて緊張をほぐす。

 

「次! 爆豪、氷叢」

 

 準備が整うと、相澤が二人の名前を呼ぶ。

 本来は葉隠と爆豪、その次に六花と緑谷なのだが、爆豪と六花の“個性”だと隣の葉隠と緑谷を巻き込む可能性が高いため、合理的配慮で葉隠と六花の順番が入れ替えられた。

 そんな訳で、次は爆豪と六花の番だった。

 

『イチニツイテ、ヨーイ……START!!』

 

 スタートと同時に、六花は体から冷たい煙を発しながら驚異的なスピードで駆け抜けた。

 

『0秒46!!』

 

 六花がゴールに到着すると、計測ロボが結果を発表する。

 さらに4秒弱遅れて、爆豪が両掌から爆破を放ってゴールした。

 

『4秒13!!』

「…………!!」

 

 ゴールに辿り着いた爆豪は、先にゴールした六花を見て愕然としていた。

 スピードには自信があったにもかかわらず、3秒以上も差をつけられたのだから。

 一方で、六花の“個性”に純粋に興味を示す者もいた。

 

「ねぇねぇ、凄いね! どんな“個性”!?」

「全然見えへんかった…!」

「走りで遅れを取るとは……! 流石は最高峰といったところか…!!」

 

 ピンク肌と黒白眼が特徴的な女子の芦戸、麗日、飯田が六花に話しかける。

 一方で、当の本人はというと。

 

「わ……わぁ……」

 

 急に話しかけられてビックリしたのか、プチパニックを起こしていた。

 

 

 場所を移し、次は体育館で握力の計測が行われた。

 握力は、50m走の時とは違い、各々が好きにペアを作って計測をした。

 男子は男子同士、女子は女子同士でペアを組んでいたが、A組は男女の数が奇数なので、男女ひとつずつ3人グループができた。

 六花は、芦戸と葉隠と一緒に握力の計測を行った。

 

「よし、じゃあ最後は六花だね!」

「え……と、どうやるんです?」

「ここを思いっきりグッと握るの!」

 

 二人に説明を受けて、六花は握力計を右手で握る。

 その直後、右手から白い煙が出たかと思うと、握力計がバキッと音を立てて壊れた。

 流石にまずいと思ったのか、六花は「あ」と小さく声を漏らした。

 

「あ……どうしよ……」

「先生ー! 六花ちゃんが握力計壊しちゃいましたー!」

「測定不能って書いとけ」

「「「「測定不能とかあるんだ!!?」」」」

 

 

 再びグラウンドに戻り、第3種目は立ち幅跳び。

 

「えっと……先生、私の場合どうすればいいです?」

 

 六花は、背中から氷の翼を生やし、ふわりと宙に浮き上がった。

 その姿は、まるで氷の妖精だ。

 空中に浮いている六花を見て、相澤が尋ねる。

 

「それいつまで続けられる?」

「わかんないです」

「じゃあ無限で」

「「「「無限!!?」」」」

 

 

 第4種目、反復横跳び。

 

「う〜ん……むずかしいなぁこれ」

 

 六花は、50m走、握力と同様、体から白く冷たい煙を出し、人間離れしたスピードで器用に動いた。

 結果は128回と好記録だったが、慣れない種目だったためかミスを連発し、葡萄のような頭の小柄な男子生徒・峰田に1位を譲る結果となった。

 

 

 第5種目、ボール投げ。

 この種目では、既に麗日が“個性”を使ってボールを浮かせ、無限という記録を叩き出していた。

 六花は、自分の番が来るとボールを持って円の中に入り、ボールを雪で覆った。

 あっという間に、カラスの形をした雪像が出来上がる。

 

「ほら、行っといで」

 

 六花は、ボールを覆っている鳥の雪像を、自分の掌から飛ばした。

 すると雪像は空高く飛んでいき、そのまま姿が見えなくなった。

 

「おい氷叢、アレはどれくらい飛ばしていられる?」

「わかんないです」

「じゃあお前も無限だ」

「「「「雑だな!!?」」」」

 

 相澤のあまりの雑な判定に、クラスメイトがツッコミを入れる。

 六花の次は、緑谷の番だ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

緑谷 side

 

 ダメだこれ!

 すぐ出来るような簡単な話じゃない!

 皆…一つは大記録を出してるのに…!!

 残りは持久走、上体起こし、長座体前屈…もう後がない…!!

 このままだと…僕が最下位──…

 

「緑谷くんはこのままだとマズいぞ……?」

「ったりめーだ。“無個性”のザコだぞ!」

「“無個性”!? 彼が入試時に何を成したか知らんのか!?」

「は?」

 

 オールマイト…!!

 お母さん…!

 絶対なるんだ!!!

 ヒーローに──

 

 

「46m」

 

 え……?

 な、なんで……?

 

「な…今、確かに使おうって…」

「“個性”を消した」

「!?」

「つくづくあの入試は…合理性に欠くよ。お前のような奴も入学出来てしまう」

 

 冷たくそう言い放つ相澤先生の目は、赤く光っていた。

 

「消した…!! あのゴーグル…そうか……! 視ただけで人の“個性”を抹消する“個性”!! 抹消ヒーロー『イレイザーヘッド』!!!」

 

 イレイザーヘッド…(ヴィラン)退治専門のアングラ系ヒーロー…!!

 全然メディア露出してないから気付かなかった……!!

 

「見たとこ…“個性”を制御出来ないんだろ? また()()()()になって、誰かに助けて貰うつもりだったか?」

「そっ、そんなつもりじゃ…!」

 

 僕が弁解しようとすると、相澤先生の首に巻かれた布が体に巻きつけられ、相澤先生の元へ引き寄せられる。

 

「どういうつもりでも、周りはそうせざるをえなくなるって話だ。昔、()()()()()()()()が大災害から一人で千人以上を救い出すと言う伝説を創った。同じ蛮勇でも…お前のは一人を助けて木偶の坊になるだけ。緑谷出久、お前の力じゃヒーローにはなれないよ」

 

 相澤先生の言葉が、深く突き刺さった。

 その直後、逆立っていた相澤先生の髪がフッと下に落ちる。

 

「“個性”は戻した…ボール投げは2回。とっとと済ませな」

 

 相澤先生にそう言われ、ボールを持ってもう一度円の中に戻る。

 

「大丈夫かなぁ……」

「指導を受けていたようだが」

「除籍宣告だろ」

「なんの話ですか」

「てめえ喋ってんじゃねえ殺すぞ氷女」

「ヒュッ」

 

 力の調整…僕にはまだ出来ない…!

 この一投で『出来る可能性』に賭けるのか?

 オールマイトも言ってたのに?

 一朝一夕にはいかないって…!

 ダメだ…ダメだ…

 

 それならただ!!

 全力で!!

 

「見込みゼロ……」

 

 相澤先生の言う通りだ。

 まだ…

 

「────!?」

 

 これまで通りじゃヒーローになんてなれやしない。

 まだだ!!!

 まだ!!!!!

 僕は人より何倍も頑張らないと…ダメなんだ!

 

 最大限で…最小限に…

 だから全力で!!

 今!!

 僕に出来る事を!!!

 

 

 

「SMASH!!!」

 

 

 

 僕は指先にだけ力を集中させて、全力でボールを投げた。

 ボールが、衝撃波を放ちながら遥か遠くへと飛んでいく。

 

「あの痛み…程じゃない!! 先生……! まだ……動けます!」

「こいつ……!」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

No side

 

「あの痛み…程じゃない!! 先生……! まだ……動けます!」

「こいつ……!」

 

 指を赤黒く変色させた緑谷が痛みに耐えながら笑うと、相澤が目を見開いてニヤリと笑う。

 緑谷の記録は『705.3m』、デモンストレーションの時の爆豪を僅かに上回る記録だ。

 

「やっとヒーローらしい記録出したよーー!」

「指が腫れ上がっているぞ! 入試の件といい…おかしな“個性”だ……」

「わ……わぁっ……」

 

 麗日は両手を挙げて喜び、飯田が驚いた様子を見せる。

 その隣では、六花がシパシパと瞬きをしていた。

 

「………………!!!」

 

 一方で爆豪は、口をあんぐりと開けて愕然としていた。

 ずっと“無個性”だからと見下していた幼馴染みが、自分を上回る記録を叩き出したのだ。

 何かの間違いだと言わんばかりに、爆豪が緑谷に突っかかる。

 

「どーいうことだコラ! 訳を言え! デクてめぇ!!」

「うわああ!!!」

「わっ……」

 

 爆豪が掌から爆破を起こして緑谷に掴み掛かろうとした、その時だった。

 爆豪の言動に驚いた六花が、反射的に爆豪に“個性”を使う。

 すると爆豪の掌に霜が降り、爆破が不発に終わる。

 

「んだっこれ…!? 冷てえ…てめえか氷女…!!」

「えっと……ごめんなさい……ビックリしてつい……」

「助かる氷叢。ったく、何度も“個性”を使わすなよ……俺はドライアイなんだ」

 

(((“個性”凄いのにもったいない!!)))

 

 相澤が自身の“個性”の弱点を明かすと、生徒達が心の中でツッコミを入れる。

 目を使う“個性”にもかかわらずドライアイなのは致命的だ。

 逆に、目を酷使しすぎてドライアイになったのかもしれないが。

 

「時間がもったいない、次準備しろ」

 

 そう言って相澤は、次の測定の準備を始める。

 緑谷が痛みに耐えながら左手で右手の人差し指を押さえていると、麗日が駆け寄ってくる。

 

「うわあ…指、大丈夫?」

「あ…うん…」

 

 麗日が心配すると、緑谷は強がって次の種目に移ろうとした。

 するとその時、六花がズンズンと緑谷に歩み寄り、いきなり右手を掴んで持ち上げた。

 

「わあ!? な、何!?」

 

 いきなり手を掴まれた事に驚いたのか、緑谷は顔を真っ赤にして素っ頓狂な声を上げる。

 だがその直後、緑谷の腫れ上がった指をキラキラと氷の粒が覆い、指の腫れがみるみるうちに引いていく。

 痛みも一緒に引いているのか、緑谷の顔色が良くなっている。

 

「が……がんばって……」

「あ、ありがとう…」

 

 六花が控えめに応援すると、緑谷がはにかみながら感謝を伝える。

 だがその時、相澤が六花を睨みつけ、地を這うような声で叱った。

 

「おい氷叢、そいつを甘やかすな。まだテストは終わってねえぞ」

「あ……ごめんなさい……」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

爆豪 side

 

 デクが、ボール投げで俺のデモンストレーションの記録を超えやがった。

 ありえねぇ…!

 ついこないだまで…道端の石っコロだったろーが………

 

 ――良いなぁ、かっちゃん“個性”かっこいいもんなぁ。僕も早く出ないかなあ。

 ――デクがどんな“個性”でも、俺にはいっしょーかなわねーっつーの!

 

 道端の石っコロだったろーが!!!

 

 

「爆豪、さっさと移動しろ」

 

 先公に声をかけられて、俺は体育館に移動しようとした。

 すると、その時だった。

 

「あのぉ……」

 

 氷女が、後ろから俺のジャージを引っ張って話しかけてきた。

 俺の顔面にコーラをぶち撒けて、さっきは俺の掌を凍らせてきやがったクソ女。

 クソッ、こんなバカそうな女が俺より上だなんてありえねぇ…!!

 こいつといい、デクといい、俺をイラつかせやがって…!!

 苛立ちながらも無視して歩いていると、また氷女が話しかけてくる。

 

「……なんでそんなに怒ってるです?」

「うるせえ、喋ってんじゃねえクソ女」

 

 ズカズカ踏み込んでくる氷女を突っぱねようとした、その時だった。

 

「ふぅーーっ……」

 

 氷女が、俺の顔面に息を吹きかけてきやがった。

 何だこれ、クッソ冷てえ!?

 

「なっ、何しやがるてめえ!!」

「ごめんなさい、頭冷やしてあげようと思って……私、すぐ怒る人、ビックリするから()です」

「てめえ…!!」

 

 俺は氷女に掴みかかろうとしたが、先公が「早く準備しろ」と言わんばかりの目で俺を睨んできたもんだから、氷女を押し除けて体育館に入った。

 クソが……

 あの女、後で絶対殺す!!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

No side

 

 そうして、体育館内で行われた第6種目、上体起こし。

 床に敷かれたマットの上に寝転がって測定を行うのだが……

 六花は、背中から氷の翼を生やすというズルをして挑んだ。

 

「……それ、アリなの?」

「……どうなんでしょう」

 

 芦戸が呆れ顔でツッコミを入れると、六花は小首を傾げる。

 翼の厚みの分体を動かす角度が半分になったので、87回という好記録を叩き出した。

 相澤が何も言わなかったので、アリだと判断されたようだ。

 

 

 第7種目、長座体前屈。

 

「えーっと……お尻と背中を壁につけて…膝を曲げないように伸ばす……でしたっけ?」

「そうそう」

「……いきます」

 

 芦戸と葉隠にやり方を教えてもらって、合図と共に体を前に倒す。

 だが六花の場合は、それで終わりではなかった。

 

「や!!」

 

 掛け声と共に、手首から白い煙が出る。

 その直後、六花の両手首がロケットパンチのように勢いよく前に吹き飛ぶ。

 しばらくして、『ゴヂン!!』と測定器が体育館の壁にぶつかる音が聴こえた。

 

「「……マジで?」」

 

 芦戸と葉隠は、手首が吹っ飛んでいった方を見て呆然としていた。

 記録、149m。

 

 

 再びグラウンドに戻り、最終種目、持久走。

 3kmのトラックを走ってタイムを競うという競技だった。

 六花は背中から氷の翼を生やして飛び、10秒ほどで完走した。

 先に走り終わった六花が雪でシマエナガを作って暇潰ししていると、スクーターを創造して2着でゴールしたポニーテールの女子が話しかけてくる。

 

「凄いですわね、氷叢さん」

「…………どなたです?」

「八百万百です。以後お見知り置きを」

 

 八百万と名乗る女子が、丁寧に六花に自己紹介をした。

 こうして、全ての測定が終わった。

 

 

「んじゃパパっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので、一括開示する」

 

 全ての種目が終わると、相澤が全員を整列させ、端末を起動する。

 だが……

 

「ちなみに除籍は嘘な」

 

 相澤が、空中に順位表を表示すると同時にそう告げた。

 生徒達がポカンとしていると、相澤はハッと笑って言った。

 

「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

「「「はーーーーーー!!!!??」」」

「はわ……」

 

 相澤の言葉に、主に飯田、麗日、緑谷の3人が驚愕する。

 緑谷に至っては、驚きのあまり作画が荒れていた。

 六花は、本気で除籍されると思っていたので、緑谷達と一緒に崩れ落ちていた。

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない…ちょっと考えれば分かりますわ…」

 

 そんな4人を尻目に、八百万が呆れたように言い放つ。

 

「そゆこと。これにて終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類あるから目ぇ通しとけ。緑谷、リカバリーガール(ばあさん)のとこ行って治してもらえ。明日からもっと過酷な訓練の目白押しだ」

 

 相澤は、そう言って去り際に緑谷に保健室利用書を緑谷に手渡し校舎裏へ向かう。

 

「ビックリしたぁぁぁ〜!!」

「本気で除籍されると思った……」

「ね〜!」

「ねえ、戻ったら“個性”教え合いっこしようよ!」

「賛成〜! 私、六花ちゃんの“個性”気になる!」

「わ……わぁ……っ」

 

 一緒に測定をした芦戸と葉隠に連れられる形で、六花は教室に戻って行った。

 中学の頃とは違って優しく人当たりのいいクラスメイト達に、心が温かくなるのを感じた。

 その様子を、轟という男子生徒が、少し離れたところから見ていた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

相澤 side

 

 “個性”把握テストが終わり、緑谷に保健室利用書を渡した俺は、人の気配を感じて校舎裏に向かった。

 するとだ。

 

「相澤くんのウソつき!」

 

 ビジネススーツに身を包んだオールマイトが、俺に話しかけてきた。

 やっぱりこの人だったか……

 

「オールマイトさん…見てたんですね…暇なんですか?」

「『合理的虚偽』て!! エイプリルフールは一週間前に終わってるぜ。君は去年の一年生…()()()()()()()()()()にしている。『見込みゼロ』と判断すれば迷わず切り捨てる。そんな男が前言撤回っ! それってさ! 君も緑谷君(あの子)に可能性を感じたからだろう!?」

 

 オールマイトは、俺を指差しながらそう尋ねた。

 

「…………君()? 随分と肩入れしてるんですね…? 先生としてどうなんですか、それは…」

 

 俺が指摘すると、オールマイトは指を差したポーズのまま、表情を強張らせ冷や汗をかく。

 

「“ゼロ”ではなかった。それだけです。見込みがない者はいつでも切り捨てます。半端に夢を追わせる事ほど残酷なものはない」

 

 そう言い放ち、オールマイトの横を通り過ぎて歩いて行く。

 ()()()のようになるくらいなら、そうなる前に一度死を与え、そこから這い上がらせる。

 それが俺なりの教育だ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

オールマイト side

 

 相澤くんは、持論を言い放つと私の横を通って去っていった。

 君なりの優しさってわけかい、相澤くん…

 でも…

 

「やっぱ……合わないんだよな────」

 

 ボール投げの高記録で相澤くんが心変わりし、なんとか緑谷少年が除籍されるという事態は回避できた。

 だが、安心している時間はないぞ、少年…

 明日からが…本番だ。

 

 

 

 

 




50m走でオリ主と葉隠さんの順番を入れ替えた理由ですが、爆豪とオリ主が両方範囲攻撃持ちなので、隣の生徒への影響を考えた合理的配慮です。
トップ組の爆豪とオリ主はお互いの“個性”が干渉し合っても「冷てえわクソが」「びっくりした」で済みますが、ドベ組のデク葉隠は隣に邪魔されたら怪我しかねないので……

どうでもいいメモ
“個性”把握テストの結果

 1位 氷叢六花   11位 麗日お茶子
 2位 八百万百   12位 口田甲司
 3位 轟焦凍    13位 砂藤力道
 4位 爆豪勝己   14位 蛙吹梅雨
 5位 飯田天哉   15位 瀬呂範太
 6位 常闇踏陰   16位 上鳴電気
 7位 障子目蔵   17位 耳郎響香
 8位 尾白猿夫   18位 葉隠透
 9位 切島鋭児郎  19位 峰田実
10位 芦戸三奈   20位 緑谷出久
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

とある英雄の原子熱冷(作者:むぎのん)(原作:僕のヒーローアカデミア)

退屈な世界だった。▼ヒーローが正義を語り、誰もがそれを信じている世界。▼そんな中に放り込まれた異物、麦野沈利。▼だが彼女は、ある日出会ってしまう。▼見慣れた目をしてる少年、轟焦凍に。▼交わるはずのなかった二人の関係は、やがて_____


総合評価:911/評価:8.09/連載:4話/更新日時:2026年04月13日(月) 15:41 小説情報

鋼鉄艦船のヒーローアカデミア(作者:花咲 凛香)(原作:僕のヒーローアカデミア)

ヒロアカ×戦艦(主にアズレンや艦これ風)のオリキャラがヒーローを目指す物語ですが▼基本的に現在に沿って書きますがオリジナル回を多く書くことが多いかもです▼


総合評価:140/評価:6.67/連載:21話/更新日時:2026年06月16日(火) 22:17 小説情報

青き炎のBEACON《道標》(作者:リクライ)(原作:僕のヒーローアカデミア)

私は──『ブラック★ロックシューター』▼ 感情の形を知らない、人の形をした何か。青い炎を宿す瞳と、害すあらゆるものを打ち倒す存在の名前。▼私は──『ブラック★ロックシューター』▼ 怯える少女の心を守るため、彼女の代わりに痛みを引き受け、世界の全てを傷つけ続ける歪んだ鏡に映る自分。▼私は──『ブラック★ロックシューター』▼ 夜の底で挫けた者たちの悲鳴に応え、黎…


総合評価:814/評価:8.19/連載:27話/更新日時:2026年05月18日(月) 21:30 小説情報

闇なる鴉はかく語りき(作者:とんこつラーメン)(原作:僕のヒーローアカデミア)

あの日、俺が『彼女』と出会ったのは偶然だったのかもしれない。▼けど、出会ったこと自体は決して間違いではなかったと今でも思っている。▼彼女がいなかったら、色んなことが変わっていたかもしれないから。▼これは、そんな闇の中で生きて、闇の中で育ってきた『彼女』と、アングラな俺が出会ったことで始まる物語だ。▼


総合評価:661/評価:8/連載:20話/更新日時:2026年06月18日(木) 22:49 小説情報

治療狂人のヒーローアカデミア(作者:熊田ラナムカ27)(原作:僕のヒーローアカデミア)

▼ この世界は病んでいる。▼ ▼ あまりに命を粗末にし過ぎている。▼ ▼ 故に特効薬と万能薬が必用だ。▼ ▼ 存在しないなら私がなろう。▼ ▼ この世界全てを癒す存在に。▼ ▼「よって貴方を病源体だと判断します。直ちに治療致しますので、どうかその場を動かずに」▼ ▼「手洗い忘れただけで病源体扱い!?流石に酷くない!?直ぐ洗うから、ちょっとま──うあぁ!?」▼…


総合評価:1022/評価:8.44/連載:8話/更新日時:2026年06月12日(金) 19:21 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>