地獄の氷叢さん家   作:M.T.

74 / 78
今回はサプライズとしてあるキャラを登場させてみました。
ヒントは、Y.A.君です。


第71話 氷叢さんの仮免試験(2)

No side

 

「おい、待てって爆豪!」

 

 試験開始直前、六花は緑谷達と別れた爆豪を追いかけていた。

 切島と上鳴も爆豪を追いかけ、四人で高速道路上を移動していた。

 そんな中、六花が他の三人に話しかける。

 

「あのぅ……わたし、よくわかってないんですけど、これ……どういうルールでしたっけ?」

 

 六花の発言に、他の三人が目を点にする。

 きょとんとしている六花に対し、上鳴が恐る恐る話しかける。

 

「……あのさ、六花ちゃん。もしかして、ルールちゃんと聞いてない……?」

「あ、はい……」

「マジかよ……!?」

 

 一次試験のルールを把握していない六花に対して、切島は頭を抱えた。

 六花は、よりにもよって試験のルールをきちんと聞いていなかったという、受験生としてあり得ないやらかしをしていた。

 側から見れば受かる気が無いとしか思えないやらかしに、爆豪までもがブチ切れる。

 

「あ゛ークソウゼェ!! ルールくらい聞いとけやカス!!」

「ごめんなさい……」

 

 爆豪が怒鳴ると、六花がしゅんとして謝る。

 するとその直後、ゲーム開始の合図が鳴り響き、他校の生徒が一斉に六花達を取り囲む。

 

「「「「「死ねぇぇぇ!! 雄英!!!」」」」」

 

 動物の耳がついたメカのようなコスチュームを着た生徒、天狗をモチーフにしたコスチュームを着た生徒、赤いマントを羽織りアーマーを身につけた生徒、猿をモチーフにしたピンクと黄色のコスチュームを着た女子生徒、その他大勢の受験生が、高速道路の遮音壁の外から飛び出してきて、六花達四人にボールを投げつけてくる。

 

「んどっくせぇ……! 『徹甲弾(A・Pショット)・機関銃(オートカノン)』!!」

 

 爆豪は、目元をひくつかせながらも、自分に向かってくるボールを撃ち落とした。

 切島は硬化した両腕でボールを弾き、上鳴は二人の後ろに隠れてボールを凌いでいた。

 そして六花はというと、両手から冷気を放ち、爆豪の死角から向かってくるボールを凍らせる。

 

「『雪礫』」

 

 六花は、凍らせたボールを操作して、ボールを投げてきた生徒に全弾お返しした。

 もちろん、冷気を放つ時にちゃっかり他校の生徒を凍らせて拘束しておく事も忘れない。

 

「えっ……? ちょっ、嘘だろぉ!?」

「くっそぉ、避けらんねぇ!」

「反則だろォ!!」

「うわあああああああ!!!」

 

 六花がボールを操って飛ばすと、半数以上の生徒のターゲットにボールが当たる。

 そのうち何人かの生徒は、ターゲットが三つとも光って撃沈していた。

 

「やられたらやり返す……倍返し……です……っ」

 

 そう言って六花がドヤ顔をした、その直後。

 

「……ん?」

 

 ピピッという電子音と共に、六花のターゲットが三つとも光る。

 そして六花の装着したターゲットからは、目良の声が聴こえてくる。

 

『通過者は控え室へ移動してください。早よ』

 

 未だに試験のルールをきちんと理解できておらず、一次試験を通過した実感が無い六花は、きょとんとしていた。

 

「……あれ? なんかわたし、通過しちゃった……? まぁいいや……じゃ……みんな、がんばってください……」

 

 先に通過した六花は、爆豪達にひらひらと手を振ると、氷の翼で控え室へと飛んでいく。

 

「クソがぁ! 抜け駆けしやがって、あのクソ女……!!」

「まぁまぁ、落ち着けって爆豪!」

「いいように考えよ!? 六花ちゃんのおかげで、俺ら助かったじゃん!」

 

 ルールを真面目に聞いていなかった六花がうっかり抜け駆けした事に爆豪がブチ切れると、切島と上鳴が押さえ込む。

 そんな中、近くに設置してあったスピーカーから、目良のアナウンスが聴こえる。

 

『えー……たった今、一人目の通過者が出ました。脱落者6名……あ、情報が入り次第私がこちらの放送席から逐一アナウンスさせられます』

 

 目良のやる気のないアナウンスが会場内に響く中、荒れる爆豪を切島と上鳴で宥めていた。

 そんな中、三人に不穏な影が忍び寄る。

 三人も、周りの受験生達も、敵がすぐそこに迫っている事に気づきすらしていなかった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「飲み物……お菓子も……いろいろある……」

 

 全受験者の中で最速でクリアを果たした六花は、控え室で軽食を食べながらクラスメイトを待っていた。

 コーラの入った紙コップを片手に、暴君ハ◯ネロをひとつ手に取る。

 

「っ〜〜……!!」

 

 突然襲いかかった辛さに六花は目を見開くが、ウマ辛味が気に入ったのか、次々とリング状のそれを手に取って爆食いする。

 

「うま……うま……っ」

 

 控え室に設置されたモニターを見ると、緑谷達が真堂達傑物学園の生徒達に狙われていた。

 

『威力最大! 『震伝動地』!!』

『うわああああっ!!』

『ムチャクチャするなァーーーー!!』

『デクくん!』

 

 真堂の必殺技によって地面を割られ、A組は散り散りになってしまう。

 そして爆豪達はというと。

 

『これは示威である。就学時より責務と矜持を涵養する我々と、粗野で徒者のまま英雄(ヒーロー)を志す諸君らとの水準差』

『目が細すぎて相手の実力見えませんってか』

『私の眼は見目良く長大である!!』

 

 爆豪達三人は、何やら六花と別れた直後に士傑高校の生徒、肉倉精児に目をつけられ、言い争いになっている様子だった。

 肉倉の“個性”の影響か、彼や爆豪達の周りには、バスケットボール大のグロテスクな肉塊に変えられた受験生達が転がっていた。

 お菓子を食べてまったりして少し眠くなってきた頃、ようやく二人目の通過者が現れる。

 

『うお!? 脱落者120名!! 一人で120人脱落させて通過した!!』

「ん……」

 

 一人の受験生が一気に120人を脱落させたと聞き、六花はモニターを見るが、それがA組の誰かではないと分かるとすぐに興味が失せて、カ◯ムーチョを摘み始める。

 するとその時、控え室の扉が開き、二人目の通過者が控え室に入ってくる。

 

「あ、いた!! 雄英の!! さっき通過したの、あんただったんスね!!!」

「血の人」

 

 120人以上を脱落させた二人目の通過者は、夜嵐だった。

 ターゲットとボールバッグをつけっぱなしのままカラム◯チョを爆食いしている六花に、夜嵐が親切に話しかける。

 

「ターゲット外さないんスか!? ターゲットを外すキーが奥にあるっスよ!!」

「ん……? ああ、ご親切にどうも……」

 

 夜嵐に言われて、ターゲットをつけっぱなしだった事を思い出した六花は、ターゲットとボールバッグを外して返却ボックスに入れる。

 そして席に座り直して再びお菓子を食べようとすると、夜嵐が話しかけてくる。

 

「俺、一度あんたと話してみたかったんス!! 体育祭の時のあんた、熱かったっス!!!」

「はぁ……」

「ヒーローは誰が好きっスか!?」

 

 いきなりグイグイ話しかけてこられて、六花は困惑の表情を見せる。

 遠い目をしながら心の中で『ニガテなタイプだ』と思いつつも、聞かれた事には律儀に答える。

 

「ん……と、ミルコさん……」

「マジっスか!? 俺もミルコ好きっスよ!! あの人は熱いヒーローっス!!」

「あとは……えんでばぁさん……ですかね……さらわれた時、たすけてもらったので……」

 

 六花がエンデヴァーの名前を出した途端、夜嵐の目元がピクリと動き、急に真顔になる。

 さっきまでのうるささが嘘のように、夜嵐は小さな声でポツリと呟く。

 

「……そっスか」

「……?」

 

 明らかに自分に対する態度が変わった夜嵐に対して、六花はきょとんとした様子で首を傾げる。

 

「で、何の話でしたっけ!?」

 

 一度話は途切れたが、夜嵐は再び大きな声で話しかけてくる。

 

「……げぷっ」

 

 あまりにもグイグイ来る夜嵐の態度に対して、六花は胸焼けし、露骨に嫌そうな顔をしながらげっぷをした。

 するとその時、戦況が大きく動く。

 

 

『お茶子ちゃんに梅雨ちゃんか……カァイイねぇ』

『いきなり何をするの、あなた』

 

 六花の視線の先のモニターには、ターゲットが一個ずつ光っている蛙吹と麗日が映っている。

 蛙吹は、舌を怪我して血を流していた。

 彼女達の前には、黒いボディースーツを身に纏った茶髪の女子、現見ケミィがいた。

 現見は、試験そっちのけで、折り畳みナイフを握って二人に襲いかかる。

 二人は背中合わせでお互いに警戒し合うが、現見はいつの間にか二人の頭上に現れ、麗日を組み伏せ、蛙吹にはダーツの要領でナイフを投げる。

 蛙吹は、長い髪に刺さったナイフがそのまま後ろの瓦礫に突き刺さり、瓦礫にくっついたまま動けなくなってしまう。

 現見は、麗日の耳元で何かを囁く。

 

『あなたは何でヒーローを志してる? 名誉? 誇り? 誰の為? お茶子ちゃん、あなたのことがもっと知りたいな』

 

 そう言って現見が微笑むと、麗日は思わず目を見開いて青ざめる。

 その時、現見が手に握った注射器を麗日の脚に刺した。

 現見の手に握られた注射器に、麗日の血液が溜まっていく。

 蛙吹は、舌を伸ばして麗日を助けようとした。

 だがその時、他校生の攻撃によって、三人が立っていた瓦礫の山が崩れ、間髪入れず飛んできた他校生の攻撃によって、三人は散り散りになる。

 

『いったた……』

 

 麗日が態勢を立て直す暇もなく、傑物学園や他校の生徒達が次々と攻撃してくる。

 するとその時、近くにいた蛙吹が手を差し伸べてくる。

 

『お茶子ちゃん、こっちよ! 早く!!』

『『早く!!』じゃねーよ!!』

『ケロッ』

 

 麗日を助けようとした蛙吹だったが、他校生に邪魔されてジタバタしてしまう。

 そしてそのまま足元の瓦礫が崩れ、下に落ちてしまった。

 麗日は咄嗟に飛び出し、蛙吹に触れて浮かせて助けた。

 

『大丈夫!?』

『ええ、平気よ。ありがとう』

 

 麗日に礼を言う蛙吹だったが、麗日の背後からボールを当てようとしていた。

 だがその時、麗日が蛙吹の手を振り払って言った。

 

『あなた……梅雨ちゃんじゃないよね?』

『ケロ?』

『何の考えもなく飛び出して、受け身も取らずに落ちるなんて、私の知ってる梅雨ちゃんやない……もしかしてあなた、さっきの士傑の人?』

 

 麗日が言うと、蛙吹の顔がドロっと溶ける。

 現れたのは、現見の顔だった。

 

『気付いて助けたってことは、逆に利用しようとしたの?』

『そんなつもりは無かったよ。でも梅雨ちゃんやないなら、あのまま落ちてたら大怪我してたやろ?』

『ふぅん……優しいんだね。あなたのこと、もっと教えてほしいな』

 

 そう言って現見が、麗日に襲い掛かろうとする。

 すると、その時だった。

 

『SMASH!!!』

 

 現見目掛けて、空気砲が飛んでくる。

 現見が後ろに跳んで空気砲を回避すると、間髪入れずにテープが飛んでくる。

 現見はテープも避けて、麗日から距離を取った。

 

『麗日さん!』

『デクくん、瀬呂くん!』

 

 麗日のもとへ、緑谷と瀬呂が駆けつけてきていた。

 だが麗日が二人の方を向いた瞬間、現見が近くに落ちていたボールを拾って、麗日のターゲット目掛けて投げつけた。

 するとその時、ピンク色の鞭のようなものが飛んできて、ボールを弾き飛ばした。

 

『ケロッ』

『梅雨ちゃん!』

 

 緑谷と瀬呂に加えて、蛙吹も合流した。

 四体一で分が悪くなったのか、現見はその場から逃げ出した。

 一方、別のモニターでは、ちょうど轟が一次試験を通過したところだった。

 そしてその頃、爆豪達はというと。

 

 

『諸君ら1年A組は品位を貶めてばかり…特に貴様だよ、爆豪!!』

「バクゴーさん、いろんなところで嫌われてる……」

 

 先程までと変わらず肉倉が、爆豪達三人に突っ掛かり、グロテスクな肉の塊を飛ばしていた。

 爆豪が爆破で肉塊を吹き飛ばし、上鳴が円盤状のサポートアイテムを投げつけて爆豪をサポートするが、肉倉は人数の不利を手数と経験値でカバーしてきた。

 六花はその様子を見て、他人事のように呟きながらコーラを飲んでいた。

 だが……

 

『そしてここにはいないが氷叢六花、貴様ら二人には英雄(ヒーロー)を志す資格は無い!!』

「……ん?」

 

 肉倉が六花の事も言及すると、六花はコーラを飲む手を止める。

 

『体育祭での幼稚で品性の欠片も無い態度、そしてあろうことか、身内から犯罪者を出しておきながら平然と仮免試験を受験する厚顔無恥な振る舞い!! 万死に値する!!』

「…………」

 

 自分がいないところで肉倉に好き勝手言われ、六花は面白くなさそうに冷めた目でモニターを眺める。

 おそらく肉倉は、開会式の選手宣誓の時の六花の他の生徒を無自覚に煽るような発言や、障害物競走での側から見れば舐めているとしか思えない態度、そして騎馬戦では仲間外れにされた腹いせに自分以外の騎馬を全て凍らせるという暴挙に出た事を言っているのだろう。

 だがそんな事は六花の知った事ではない。

 第一、顔すら知らない父親や、とっくの昔に絶縁を言い渡された親族のやらかしで責められる筋合いなど無い。

 無茶苦茶な理屈で責め立てる肉倉に対して、六花は心の中でそっと線引きをした。

 

『私が手折り気づかせよう。帰属する場に相応しい挙止、それが品位であると』

 

 そう言って肉倉が、無数の肉片を三人に向かって飛ばす。

 すると爆豪は、その場で跳び上がると、両肩に装着してあるサポートアイテムを展開する。

 

『メンツが揃ってねぇとこでダラッダラよぉ……そういうのは面と向かって言ったらどうっスか、先パイ!』

 

 爆豪は、サポートアイテムで後方をカバーした状態で『徹甲弾(A・Pショット)』を放ち、肉倉の肉塊をひとつ残らず撃ち落とした。

 

『今だ殺れアホ!!』

 

 爆豪の合図と同時に、上鳴がちょうど肉倉の背後に設置されていたポインター目掛けて電撃を放つ。

 

『『ターゲットエレクト』!!』

『ぐあぁぁぁっ!!』

 

 上鳴の放った電撃が、肉倉の腹部を貫通する。

 肉倉は、ブスブスと黒い煙を上げながらよろけた。

 その瞬間、『安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)』を発動した切島が、肉倉の懐に入り込み、右拳を振りかぶる。

 

『『烈怒頑斗裂屠(レッドガントレット)』!!』

『げぼぁっ!!』

 

 切島のボディーブローによって、肉倉は胃液をぶちまけながら吹っ飛んでいく。

 肉倉が遮音壁に叩きつけられると同時に、“個性”が解除され、肉塊にされていた他の受験生が元に戻る。

 爆豪、上鳴、切島の三人は、元に戻った受験生を二人ずつ倒して一次試験を通過した。

 

 その時、一次試験をクリアした轟が控え室にやって来る。

 轟は、ターゲットとボールバッグを外して椅子に座ろうとした。

 するとだ。

 

「マジっスか!? 自分もスタンプマン好きっスよ!! 彼は熱いヒーローっス!!」

 

 轟は、他の通過者と話をしていた夜嵐と目が合った。

 夜嵐は、何故か敵視するような目つきで轟を睨みつけてきた。

 轟は、推薦入試を受けたなら会ったはずだと考えを巡らせるが、それらしき人物を思い出せなかった。

 そんな中、六花が轟に話しかけてくる。

 

「ショートさん……おつかれさまです……」

「お前一人か?」

「あ、はい……でも、今バクゴーさんたちが通過したとこみたいです」

「そうか」

 

 そんなやりとりをしてから、二人で並んで椅子に座る。

 轟が六花と二人でクラスメイトが来るのを待っていると、爆豪達三人が控え室にやって来た。

 この時点で、通過人数は20人余りだった。

 

「あ゛!? ざっけんな、辛ぇの残ってねぇじゃねーか!!」

「……あ、ごめんなさい……全部たべちゃいました……」

「よしてめェぶっ殺す!!」

「「まぁまぁ……」」

 

 辛いお菓子を六花が全部食べ尽くしたと聞いて暴れる爆豪を、上鳴と切島が宥めた。

 そして5分遅れて蛙吹、麗日、瀬呂、緑谷の四人が、それからさらに10分遅れて障子、耳郎、八百万の三人が通過した。

 その後傑物学園の生徒達がまとめて通過し、その後に口田、砂藤、常闇が通過した。

 この時点で、通過者は100人中82名。

 A組でまだ通過していないのは、芦戸、飯田、尾白、葉隠、峰田の五人だ。

 

 飯田以外の四人は、襲いかかってきた他校生を返り討ちにし、ちょうど通過に必要な人数を倒した。

 気絶した他校生のターゲットを発光させようとしたその時、葉隠が網のようなもので拘束されてしまった。

 

『わっ!』

『葉隠さん!』

『『『もらったぁ!!』』』

 

 網にかかった葉隠を他の三人が助けようとしたところを、他校生が一斉に群がって攻撃を仕掛けようとする。

 四人のターゲットに一つ、二つとボールが当たってしまい、三つ目のターゲットにボールが当たりそうになった、その時。

 突然降り注いだ青い光の雨が、飛んできたボールを全て撃ち落とした。

 

『こういう美しくないやり方は良くないと思うんだよね☆ 僕の美しい顔を見ていれば、汚いやり方で勝ち上がろうという気は起こらないと思うんだ☆ 君達もそう思うだろ?』

 

 声が聴こえてきた方を振り向くと、一人の男子生徒が立っていた。

 士傑高校の制帽を頭に被り、キラキラと輝く紫色のマントを身につけ、腰にベルトが巻かれた銀色のアーマーを身につけたキザっぽい男子生徒だ。

 

『あ、君は……!』

『Vous n'êtes pas blessée, mademoiselle?(怪我はないかい、お嬢さん?)』

 

 葉隠の窮地を救った男子生徒、青山優雅は、葉隠に向かってウインクをしてみせた。

 

『チッ、邪魔しやがって!』

『士傑か、てめェもまとめて潰してやる!』

 

 他校生は、葉隠達を助けに入った青山ごと脱落させようとする。

 

『『ネビルビュッフェ』!!』

 

 青山は頭の後ろで手を組み、腹部から青いレーザーを発射してボールを全て撃ち落とした。

 そして断続的に放たれたレーザーによって葉隠を拘束していた網が焼き切れ、葉隠は網から抜け出す事ができた。

 おまけに、他校生の注意は完全に青山に向き、近くにいた葉隠達から注意が逸れていた。

 葉隠達は、青山が注意を引きつけてくれている間に、気絶した他校生にボールを当ててクリアしようとする。

 だがその時、急に青山が腹を抱えて膝をつく。

 

『ぅぐ……オナカイタイ☆』

『『『今だやれぇぇぇ!!!』』』

 

 他校生は、青山が腹痛で倒れたタイミングを狙って、葉隠達ごと狙った。

 するとその時、どこからか聴き慣れたエンジン音が聴こえる。

 

『『レシプロトルネード』!!』

『『『ぐあああ!!』』』

 

 飯田が、高速回転して脚で旋風を起こしながら、クラスメイトや青山に襲い掛かろうとしていた他校生達を蹴り飛ばす。

 

『皆、大丈夫か!!』

『『『『委員長!!』』』』

 

 窮地に駆けつけてきた委員長の飯田の姿を見て、芦戸と尾白は安堵の表情を浮かべ、峰田に至っては涙を流していた。

 飯田の援護のおかげで、芦戸、尾白、葉隠、峰田の四人はクリアを果たし、続けて飯田と青山もクリアした。

 クラス全員がクリアしたのを見届けてから、飯田が青山に礼を言う。

 

『君のレーザーのおかげで、皆を見つけられたよ。ありがとう』

『…………ま☆ 僕のキラメキは止められないってことだよね☆』

 

 青山は、注目を飯田に掻っ攫われて少し不満そうな表情を浮かべつつも、礼を言われた事が嬉しかったのか、飯田の感謝の言葉を受け取った。

 

『現在、通過者90名。あと10名で終了です』

 

 最後にクリアした五人が、控え室へと向かう。

 その間にも、続々と残りの受験生達がクリアしていく。

 そして……

 

『3名! 2名! 1名! 0名! 100人!! 今埋まり!! 終了! です! ッハーーー!! これより残念ながら脱落してしまった皆さんの撤収に移ります』

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「おぉおお〜〜〜…っしゃああああ!!!」

「スゲェ!! こんなんスゲェよ!」

「雄英全員一次通っちゃったあ!!!」

「ん……よかったです……」

 

 その後控え室にて、A組は全員無事に一次試験をクリアした事を喜び合っていた。

 六花も、表情は真顔だが、両手を挙げてふわふわした雪を出しながら喜んでいる。

 

「へえ!! 肉倉先輩落ちちゃったんスか!!!!」

「声デカイわ。先走って行動するから、あの激情型男! お前らもだ! 1年の夜嵐と青山はともかく…ケミィ! ダメよ!」

「ハァイ」

 

 少し離れたところでは、士傑の生徒達が話していた。

 士傑高校2年1組の委員長である毛原長昌に注意された現見は、制帽をクイッと上げながらしおらしく返事をした。

 

「……?」

 

 六花は、見逃さなかった。

 毛原に叱られる現見を、隣にいた青山が険しい表情で見つめていたのを。

 

『えー、100人の皆さん。これ、ご覧下さい』

 

 突然点いたモニターには、先程まで六花達が一次試験を受けていたフィールドが映っていた。

 なんだと思い全員が食い入るようにモニターを眺めていると、フィールドのあちこちで爆発が起き始める。

 爆発は瞬く間にフィールド全体に広がり、フィールドはまるで大規模テロか災害にでも遭ったような悲惨な有り様と化した。

 

(((何故!!)))

 

 その場にいた全員が、心の声を揃えて呆然とする。

 

『次の試験でラストになります! 皆さんにはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます』

 

 

 

 

 




六花ちゃんはうっかり一抜けしちゃったおかげで、お肉先輩とエンカウントせずに済みました。
六花ちゃんがお肉先輩と対峙する案もあったのですが、お肉先輩が冷凍肉になる未来しか見えなかったのでボツにしました。
かっちゃん達に楽はさせません。
ちなみに六花ちゃんに最初に奇襲を仕掛けた受験生は、原作でお肉先輩に肉塊に変えられていた受験生達です。

そして前話の士傑の金髪の生徒は青山君でした。
ちなみに本作で青山君が雄英に落ちた理由ですが、筆記試験で合格ボーダーギリギリに六花ちゃんが食い込んだ事で、1点差で足切りされたからです。

ところで、青山君の両親のやらかしを知らずに六花ちゃんをディスっていたお肉先輩ですが、あくまでヴィランの家族云々は、何かと目立っている六花ちゃんをディスるための口実です。
青山君の両親のやらかしを知っても青山君を排斥したりはしないのでご安心を。

面白いと思っていただけましたら、高評価・お気に入り・感想等をよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。