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No side
『次の試験でラストになります! 皆さんにはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます』
二次試験の内容が発表されるが、救助訓練の経験が浅いA組の何人かはきょとんとしている。
「「パイスライダー…?」」
「バイスタンダー! 現場に居合わせた人のことだよ。授業でやったでしょ」
「一般市民を指す意味でも使われたりしますが…」
「へぇ……」
上鳴と峰田が頓珍漢な事を言っていると、葉隠と八百万が説明する。
普段から授業を真面目に聞いていない六花は、二人の説明を、まるで初耳かのようなリアクションで聞いていた。
『ここでは一般市民としてではなく仮免許を取得した者として───…どれだけ適切な救助を行えるか試させて頂きます』
目良の説明中、障子がある事に気がつく。
「む…人がいる…」
「え…あぁ!? あぁあ!? 老人に子供!? 危ねえ何やってんだ!?」
怪我をした老人や子供が、妙に慣れた足つきでフィールドを彷徨いていた。
『彼らはあらゆる訓練において今引っ張りダコの
「要救助者のプロ!?」
『『
モニターに映っている『
よく見ると、フィールドを彷徨いている『
まさにヒーロー人気の現代に則した職業だ。
『傷病者に扮した『
そこでアナウンスは終了し、各々が準備に取り掛かる。
するとその時。
「士傑こっち来てんぞ」
切島が、パンを食べながら振り向く。
近づいてきたのは、毛原をはじめとする士傑高校2年1組の生徒達だ。
「爆豪くん、氷叢さん」
「あ?」
「……?」
「肉倉…糸目の男が、君達のところに来なかった?」
「ああ…ノした」
「やはり…! 色々無礼を働いたと思う。気を悪くしたろう。あれは自分の価値基準を押し付ける節があってね。何かと有名な君達を見て暴走してしまった。雄英とは良い関係を築き上げていきたい。すまなかったね」
毛原は、クラスメイトの肉倉が爆豪と六花に暴言を吐いた事を謝罪した。
六花は、隣にいた爆豪に小声で話しかける。
「え、バクゴーさん他の学校の人に絡まれてたんですか? 災難でしたねぇ」
「あぁ? てめェ、控え室で見てたんじゃねぇんかよ」
「あー……覚えてないです」
爆豪に聞かれるも、六花は肉倉の事を思い出せなかった。
六花には、一度一線を引いた相手は二度と思い出さない悪癖がある。
そもそも直接会ってすらいない相手なら尚更だ。
六花の中で、肉倉の存在は忘却の彼方へと追いやられていた。
「それでは」
そう言って毛原がクラスメイトを引き連れて立ち去ろうとする。
すると轟は、毛原と一緒に去ろうとした夜嵐に話しかける。
「おい、坊主の奴。俺、なんかしたか?」
轟が話しかけると、夜嵐が後ろを振り向く。
彼は、轟を憎しみのこもった目で見下ろしていた。
「………ほホゥ。いやァ申し訳ないっスけど…エンデヴァーの息子さん。俺はあんた
夜嵐は、轟に冷めた目を向けて言い放つ。
「夜嵐、どうした」
「何でもないっス!!」
毛原に声をかけられ、夜嵐は毛原についていく。
その直後、試験開始の非常ベルが鳴り響く。
『
アナウンスが響く中、控え室の壁が開き、試験の準備が整っていく。
二次試験が始まり、六花達100人が一斉に飛び出す。
「とりあえず一番近くの都市部ゾーンへ行こう!」
「なるべくチームで動くぞ!」
緑谷達は、チームで動こうとした。
だが爆豪は一人で勝手に行ってしまい、上鳴、切島、六花も爆豪についていく。
六花は、ユキちゃん軍団を使って周囲に『
「チュリリッ」
「ありがとう、ユキちゃん。んっと……怪我してる人を見つけました。あっちとあっちとあっちです」
「よし、行くぞ!」
ユキちゃん達に『
だが、六花達が向かったエリアは瓦礫で埋め尽くされていて、救助しようにも足の踏み場も無かった。
「あー……これ、先にジャマな瓦礫を無くしちゃった方がよさそうですね。バクゴーさん、ここら辺を更地にしてください」
「あ!? 俺に命令してんじゃねぇぞてめェ!」
「出来ないならいいです。自分でやります」
「出来るわクソが!!」
六花が雪で柵を作ってから指示を出すと、爆豪は苛つきながらも瓦礫を爆破して柵の内側を更地にした。
きちんと爆豪を使いこなしている六花を見て、上鳴と切島が驚いていた。
「すげぇ……」
「よっしゃあ!! 俺らも見てねぇで救助……」
二人が救助に動こうとしたその時、六花が両手から吹雪を放つ。
六花の放った吹雪は、不安定な瓦礫を凍らせて固定し、重傷者から順番に浮かせて運びながら応急処置をしていく。
出血が多い要救助者は氷で止血をし、手足を負傷している要救助者は氷でギプスを作って固定する。
「わっ、なんだ!?」
「雪!?」
「待って、その人まだ応急処置終わって……!」
既に救助活動に取り掛かっていた他校の生徒達は、いきなり吹雪で巻き上げられていく要救助者を見て混乱していた。
だが六花は、お構いなしに救助活動を続けていく。
数十人の『
「するぞ……」
救助するぞと意気込んでいた上鳴と切島だったが、眼前の光景に目を点にしていた。
六花達がいたエリアは、1分もかからずに全ての『
一方で、吹雪で運ばれていた『
(雑…のように見えて、迅速かつ的確な“個性”の使い方をしているな。崩れそうな建物を氷で補強し、重傷度の高い要救助者から順に風で浮かせて救出しつつ、応急処置が必要な要救助者には適切な応急処置を施している。1年生とは思えない繊細なコントロールだ)
「だがやっぱり雑!! 減点だよォ!!」
「はわっ……」
『
減点されて困惑する六花に、切島と上鳴がフォローを入れる。
「氷叢、まず安全確認と怪我人の状況確認しねぇと!」
「……あっ、そうでした」
「あと、やるなら先に声掛けしないと、要救助者も先に救助してた人達もビックリしちゃうだろ」
「……そうですね。ごめんなさい」
二人が言うと、六花がハッとする。
六花は“個性”の扱いこそプロの域に達しているが、人とコミュニケーションを取るのが極端に苦手だ。
そこで切島は、お互いの苦手な部分をカバーできるように、救助のやり方を変える事にした。
「じゃあ俺達が先に救助に行って安全確認するから、合図したら救助してくれ!」
「……ん、わかりました」
六花は、上鳴と切島をサポートする形で救助活動をした。
二人のフォローもあり、その後は特に減点される事なく、一人ずつ迅速かつ確実に救助していく。
六花が救助をする姿にあてられたのか、爆豪も文句を言いつつも救助に参加していた。
要救助者を救出した六花は、付き添いが必要な要救助者を連れて救護所へ向かう。
だが、その時だった。
BOOOOM!!!!
「何だあ!!?」
突然、救護所付近の壁が爆発と共に大破し、フィールドの各地で小規模な爆発が連鎖的に発生する。
そして立ち込めた土煙から、ゾロゾロと人影が現れる。
「対敵。全てを並行処理…できるかな」
「ギャングオルカ!」
現れたのは、No.10ヒーロー《ギャングオルカ》と、そのサイドキック達だった。
『
ギャングオルカのサイドキック達は、救護所を襲おうと次々と飛び出してくる。
その隊の最奥で、ギャングオルカは品定めするような目で六花達を見ていた。
「さて…どう動く!? ヒーロー!」
ニヤリと不敵に笑うギャングオルカに対し、六花はどう対処しようか思考を巡らせる。
するとその時、たまたま近くにいた真堂が飛び出し、ギャングオルカ達に立ち向かう。
「皆を避難させろ! 奥へ!
「……! はいっ……『
真堂の指示を受け、六花は救護所を巨大なかまくらで覆い、かまくらを浮かせて安全な場所へと運ぶ。
六花が要救助者達や治癒系の他校生達をかまくらで守りながら遠くへ飛ばしている間に、真堂が地震を起こしてギャングオルカ達を足止めした。
「インターバル1秒程の震度で畳み掛ける! 近づかせない!!!」
真堂の地震によって地面が割れ、ギャングオルカのサイドキック達が足を止める。
だがその程度では、ギャングオルカにとっては足止めにすらならなかった。
「温い」
ギャングオルカが、必殺技である『超音波アタック』で真堂の脳を揺らそうとする。
だが……
「そうでもないですよ」
六花がギャングオルカと真堂の間に割り込み、氷に変えた脚で蹴り付けようとしていた。
ギャングオルカは、当たってはいけない攻撃だと直感で察知したのか、超音波を防壁にしつつ六花の蹴りを回避する。
六花の攻撃を回避しつつサイドキック達に目を向けると、サイドキック達は全員六花の氷結で拘束されて動けなくなっていた。
「っ……すみませんシャチョー……!」
「痛ってぇ、動けね……!」
「せんぱいが……ゆらしてるあいだに……『
「……はは、役に立てたようで何よりだよ」
「……ほぅ」
六花に美味しいところを奪われた真堂は目元をひくつかせるが、ここは六花と協力してギャングオルカを足止めした方が賢明と判断したのか、大人しく引き下がる。
真堂が地面を揺らした事で生じた一瞬の隙を狙ってサイドキック全員を凍らせた六花の判断に、ギャングオルカは素直に感心する。
「だが、これはどうかな?」
そう言ってギャングオルカは、六花に『超音波アタック』を仕掛ける。
それに対して六花は、咄嗟に自分の体を雪に変えて超音波を無効化した。
「『震伝動地』!!」
「ん……『氷霧』」
真堂がタイミングよく揺れを放ってギャングオルカを一瞬足止めし、六花がその隙にギャングオルカに冷気の霧を放つ。
シャチは本来低温に耐性があり、北極や南極などの冷たい海を好む生物だが、恒温動物である以上は低温への耐性には限度がある。
六花の放った氷の霧が体に付着したギャングオルカは、急速に体温を奪われ動きが鈍る。
そして、そのタイミングを狙ったかのように、六花とは別方向から放たれた氷結がギャングオルカの動きを封じた。
六花が振り向くとそこには、右手から冷気を放つ轟がいた。
「ショートさん……」
「救護所の方で音がしたもんだから応援に来た。手ェ貸すか?」
「……や、だいじょうぶです……ショートさんは、避難と救助をおねがいします……」
「わかった」
六花が指示を出すと、轟が頷く。
現状制圧はほとんど終わっており、轟以上に広範囲制圧に長けた六花がギャングオルカを足止めしている今、轟がこの場に残って援護するメリットはほとんど無い。
むしろギャングオルカは六花に任せて、まだ近くにいる要救助者の避難と救助をした方が、結果的には六花の負担を減らす事になるのだ。
轟が要救助者の避難に向かい、六花がダメ押しと言わんばかりにギャングオルカを氷漬けにしようとした、その時だった。
「ふぅきィイイイイ飛べえええっっ!!!」
夜嵐が旋風を放ちながら上空から現れ、その場にいた真堂ごとギャングオルカ達を吹き飛ばした。
「あっ……」
夜嵐の風で巻き上げられた真堂を、六花は咄嗟に氷でキャッチして救出した。
六花には滞空手段があるので夜嵐に吹き飛ばされても平気だが、そうではない真堂がそのまま吹き飛ばされていれば大怪我は免れなかった。
真堂が夜嵐の攻撃の巻き添えを喰らった、それだけではない。
せっかく轟と六花が氷漬けにしていたギャングオルカとサイドキック達が氷ごと吹き飛ばされ、自由の身となってしまっていた。
「
「…………」
ギャングオルカ達の制圧をアシストするどころか状況を悪化させた夜嵐に対し、六花は無言で苛立ちを露わにする。
それを見た轟は、避難誘導に向かう足を止め、怒りに満ちた表情を浮かべながら夜嵐に言い放つ。
「おい、何やってんだお前」
「ムム……あんたもいたとは! エンデヴァーの息子!」
「んなことはどうだっていい。救助の邪魔すんなら引っ込んでろ」
「そういうとこっスよ、やっぱりあんたはあの時と何も変わってないっス!! ヒーローってのは俺にとって熱さだ! 熱い心が人に希望とか感動を与える!! 伝える!! だからショックだった! その目からはただただ冷たい怒りしか伝わってこなかったんだから! そして入試の時、あんたを見てあんたが誰かすぐにわかった。何せ、あんたは全く同じ目をしてた! 俺は、あんたら親子のヒーローだけはどーにも認めらんないんスよぉ!」
夜嵐の言い分に、轟は苛立ちを覚える。
かつてはエンデヴァーを憎んでいたが、緑谷や六花に踏み込まれ、神野の事件の時にエンデヴァーが六花を救い出した事で、エンデヴァーへの憎悪の炎は消えた。
轟が夜嵐に苛立っていたのは、そこではなかった。
雑な攻撃を咎めようとしたら論点をすり替えられ、六花や真堂を吹き飛ばした事を反省せずに逆ギレされた事が許せなかったのだ。
「お前……っ」
轟が夜嵐に反論しようとした、その時。
ヒュウッと二人の間に冷風が吹きつけ、二人は何者かに心臓を掴まれるような感覚を抱く。
「ショートさん」
二人の間にふわりと舞い降りた六花が、轟に向かって言い放つ。
二人が言い争いをしている間に、周りは幻想的な銀世界と化しており、ギャングオルカのサイドキック達は何の見せ場も無く氷像と化していた。
「わたし……さっき避難と救助をおねがいしましたよね? なんでこんなところにいるんですか?」
「あ、ああ……悪い……」
六花が威圧しながら言うと、轟は自分のやるべき事を思い出して頷く。
そして六花は、今度は夜嵐の方を振り向いて口を開く。
「それと、そっちのあなた……」
六花は、夜嵐を睨みつけながら言い放つ。
「
「ッ!?」
六花の冷たく突き刺すような声と視線に、夜嵐はゾワッと総毛立つ。
上から夜嵐を冷めた目つきで見下ろしながら、六花は静かにどこかを指差す。
六花が指を差していたのは、先程夜嵐がギャングオルカ達を吹き飛ばす時にスルーした他校生や『
「どこ見てるんですか。それでもヒーローですか?」
「す、すいませんっス……」
六花が睨みながら言うと、夜嵐が萎縮する。
するとその時、六花の冷気から回復したギャングオルカが襲いかかってくる。
「終わったか?」
ギャングオルカが眼前に迫ってくる中、六花は雪を操って夜嵐を遠くへ吹き飛ばし、素早くギャングオルカの懐に入り込むと、氷に変えた拳から電撃を放つ。
「『
「ぐおっ……!!」
六花が電撃を放つと、ギャングオルカが痺れて一瞬動きを止める。
その一瞬を見逃さず、六花はギャングオルカに接近して両手で体に触れる。
六花は両手から急速に体温を奪いにかかるが、ギャングオルカは仮にもNo.10ヒーローだ。
当然黙ってやらせるわけがなく、力ずくで六花を引き剥がそうとしてくる。
「そう簡単にやらせるとでも?」
六花を引き剥がしにかかるギャングオルカだったが、体に思うように力が入らない事に気がつく。
六花に冷やされて体温が下がっているのもそうだが、体表面が異様に乾燥しているのだ。
「むっ……?」
「わたし……しってますよ……シャチさん、乾燥に弱いんですよね……? 体表面の水分をこおらされたら、どうなるんでしょうかね……?」
六花がそう言っている間にも、ギャングオルカの体には霜が降りていく。
シャチの“個性”を持つギャングオルカは、常人に比べて極端に乾燥に弱い。
それに気づいた六花は、ギャングオルカの体表面の水蒸気を凝華させて氷に変える事で、極度の乾燥状態を生み出し、ギャングオルカの体力をじわじわ削っていたのだ。
「……大したもんじゃないか」
「わたしだけじゃないですよ……せんぱいとショートさんがスキを作ってくれて……シャチさんの体力を削ってくれてたおかげです」
六花がそう言うと、ギャングオルカはフッと微笑む。
その直後、ギャングオルカは六花の手によって氷像と化した。
本作でのイナサの扱いはあまり良くありません。ファンの方はごめんなさい。
命の恩人と友達を貶す、真堂先輩を吹っ飛ばして救助の邪魔をする、敵や救助者そっちのけでレスバする、偏った価値観を押し付けるなど、六花ちゃんの地雷をこれでもかってくらい踏みまくってるので。あれ?原作とやってる事ほとんど一緒…
そして“個性”を鍛え続けてたら知らんうちに雷属性を修得してた六花ちゃん。
氷属性は雷属性にもなれるんですよ(ドヤ顔)。
上鳴みたいな広範囲制圧はまだできませんが、狙った相手に電撃を当てられるのがデカいです。
しかも出力には上限が無いので、やろうと思えばガチ雷も落とせます。
六花ちゃんの必殺技です。
ご参考までに。
・『
氷に変えた掌から電気を発生させ、相手を電気ショックで麻痺させる技。
爆豪との特訓中に偶然編み出した。