あと、今回もアンチ・ヘイト要素入ります。
苦手な方はブラウザバック推奨。
夜嵐 side
俺って奴は、昔から恐れを知らないタチだった。
何でもお気に入りにしてしまうタチだった。
そんな俺だから、ヒーローという人々の存在を知るや否や、熱狂した!
目の前のピンチに全霊をかけて挑む、その熱き闘志たるや!!!
だから
サインを貰おうとした俺を拒絶し、俺に見向きもせずに憎悪の目をしたあのヒーロー……
あのヒーローの…遥か先を憎むような眼だけが!
俺の唯一嫌いなモノだった。
俺は、雄英の推薦入試で轟と出会った時、一目でエンデヴァーの息子だとわかった。
だって、何かを憎むようなあの目つきが、エンデヴァーと同じだったから。
それでも、入試をきっかけに友達になれると思っていたんだ。
だがあいつは、かつてのエンデヴァーと同じように、「邪魔だ」の一言で俺を拒絶した。
それから俺は、エンデヴァーやあいつのようにはなりたくなくて、雄英の推薦合格を蹴った。
仮免試験で改めて轟を見た時、あの頃とは雰囲気は違っていたが、どうしてもあいつを好きにはなれなかった。
いつの間にか、あいつを許せない気持ちでいっぱいになっていて、何も見えなくなっていた。
――
氷叢の言葉で、その事に気付かされた。
初めて体育祭であいつを見た時、友達になりたいと思っていた。
あいつの戦いっぷりは、誰よりも熱かったから。
だが、氷叢の俺を軽蔑するような眼差しを見て、俺はあいつと同じ土俵に上がる事すら許されていないと悟った。
それと同時に、取り返しのつかない過ちを犯してしまった事を痛感した。
俺があいつに、あんな冷たい目をさせたんだ。
エンデヴァーの冷たい目を嫌っていたはずの、この俺が。
何が、ヒーロー……!!
一番なりたくないもんに、俺自身がなっていたんじゃないか。
――どこ見てるんですか。それでもヒーローですか?
――す、すいませんっス……
俺は氷叢に諭され、その上ギャングオルカの攻撃から救われた。
俺が反応すらできなかった攻撃を、あいつはあっさり防ぎ、それどころか足を引っ張った俺を救けた。
レベルが違う。
今俺が戦闘に参加したところで、あいつの足を引っ張るだけだ。
だったらせめて、一人でも多く救けて、失態を取り返す!!
「轟ィ!!!」
俺は、要救助者の避難誘導をしに水難ゾーンへ行った轟を追って声をかけた。
「ごめん、俺が悪かった!! 俺にも何か手伝わせてくれ!!!」
俺はさっきの非礼を詫びて、救助のサポートを申し出た。
俺を見上げた轟は、怒りに満ちた表情をしていた。
虫のいい事を言ってるのはわかってる。
俺は氷叢や轟の足を引っ張って、轟に対して身勝手な事を言ったんだから。
だが轟は、すぐに要救助者の方を向き直して言った。
「……ちょうど人手が足りなかったところだ。要救助者を運ぶの手伝え」
「はいっス!! ヒーロー名『レップウ』、助太刀するっスよ!!!」
俺は残りの試験時間、水難ゾーンにいた受験生達のサポートに徹した。
轟の氷と俺の風で水難ゾーンにいた要救助者を救い出し、安全な場所へ移動させた。
水難ゾーンの要救助者を全員救出し、他のエリアに要救助者がいないか探しに行こうとした、その時だった。
ビーーーーーーーー!!!
『えー、只今を持ちまして配置された全ての『
◆◆◆
ギャングオルカ side
「えっと……みなさん、こおらせてすみませんでした……」
「いやいや、君のその
試験が終わった後、氷叢六花が我々の凍結を解除して、サイドキック達と一言二言交わしてからステージを後にする。
すると部下達が俺に謝罪してくる。
「シャチョーすみません、仕事できませんでした…」
「
実は、俺がこの依頼を受けた当初の予定では、拘束用プロテクターを装着するはずだったのだが、公安から『一人ヤバいのがいるから拘束用プロテクターは必要ない。本気で叩き潰せ』とのお達しがあったのだ。
俺達は万全に動ける状態で、一切の慢心も油断もせずに
……いや、彼女だけではない。
受験生全員の『救けよう』という執念や行動のひとつひとつが、俺達という障壁を乗り越えたのだ。
「フフ……」
将来有望なヒヨッ子達の姿を見て、俺は思わず笑みを溢したのだった。
◆◆◆
No side
「どうかなぁ…」
「やれることはやったけど…どう見てたのかわかんないし…」
「こういう時間いっちばんヤダ」
「ん……同感です……」
「人事を尽くしたならきっと大丈夫ですわ」
試験の後、六花達は着替え終わって再び試験会場に集まり、合格発表を待っていた。
そして、ついに合否発表が始まった。
『皆さん長いことお疲れ様でした。これより発表を行いますが…その前に一言。採点形式についてです…我々ヒーロー公安委員会と『
目良の言葉と共に、モニターに合格者の名簿が表示される。
六花は、それを見て「うへぇ」とうんざりした顔をしてから、前にいた爆豪の肩を叩いて話しかける。
「バクゴーさん、わたしの名前さがしてください。わたし、字読むのきらいで……」
「自分で探せやアホが」
「むぅ……っ」
爆豪に一蹴された六花は、不服そうに頬を膨らませながらも、自分の名前を探す。
名簿のは行を確認すると、きちんと氷叢六花の名前が表記されていた。
そしてその一つ上には、爆豪勝己の名前もある。
「わぁぁぁ、わぁぁぁぁ……っ」
「フン」
六花が嬉しそうに爆豪の肩を叩くと、爆豪は当然だと言わんばかりに腕組みをする。
一方で、他のクラスメイトはというと。
「みみみみみ……っあっ、あった……!」
「峰田実! あったぜ!」
「あったぁ…」
「あるぞ!!」
「よし…」
「コエー」
「麗日ァ!!」
「フッ」
「良かった…」
「あったぜ!」
「っ……!」
「わー!!」
「点滴穿石ですわ」
「ケロッ」
「やったー!」
「っしぇーい!!」
「あったァ!!」
緑谷、峰田、耳郎、飯田、障子、瀬呂、麗日、常闇、尾白、砂藤、口田、芦戸、八百万、蛙吹、葉隠、上鳴、切島も合格していた。
そして……
「ショートさん……」
六花は、まだ自分の名前を探している轟の方を見た。
轟は、名簿を見て僅かに目を見開くと、顔の前で両手の指を合わせ、深くため息をついた。
「はぁ……っ」
轟のリアクションを見て、クラスメイトは一斉に名簿をもう一度確認する。
名簿には、きちんと轟焦凍の名前が書かれていた。
「いよっしゃあああああ!!!」
「スゲェよ、マジでスゲェよ!!」
「雄英全員仮免受かっちゃったぁ!!」
「わっ……ぁ……」
六花達A組は、全員合格という結果を大喜びしていた。
六花も、頬を緩めて顔の周りにふわふわした雪を散らしている。
「青山くんも受かったんだねぇ!」
「やったじゃん!」
「ウィ☆」
葉隠と芦戸は、一次試験の時に助けてくれた青山も合格していた事を喜んでいた。
一方で、青山のクラスメイトである夜嵐はというと。
「やっぱ、無いか……」
夜嵐は、自分の名前が無い事に落ち込んでいた。
だが、何かを決心したのか、前を向き直して轟のもとへと歩いていく。
そして、豪快に地面に頭をぶつけて謝った。
「轟!! ごめん!! 俺、試験中にあんたに色々勝手なこと言った!! 本当にごめん!!」
「いいよ、元々俺が蒔いた種だし……というかそんなことより、氷叢と真堂先輩には謝ったのか?」
轟が言うと、夜嵐はハッとして、今度は六花に謝る。
「氷叢さん!! ごめん!! あんたの邪魔をして、迷惑かけてすみませんでした!!!」
そう言って夜嵐は、六花に向かって地面に頭を打ちつけた。
六花は、最初は何の事を謝っているのかわからなかったが、試験中に真堂ごとギャングオルカを吹っ飛ばして足を引っ張った事を言っているのだと思い出した。
「……え? ああ、べつにもういいですよ。
六花は、怒るわけでもなく、諭すわけでもなく、あっさり夜嵐を許した。
だが、六花の夜嵐を見る目は冷め切っていた。
過去の過ちを水に流したのではなく、期待する事をやめて見切りをつけたのだ。
『えー、全員ご確認頂けたでしょうか? 続きましてプリントをお配りします。採点内容が詳しく記載されてますので、しっかり目を通しておいて下さい』
六花は、近くにいた公安委員会の黒服からプリントを受け取った。
『ボーダーラインは50点、減点方式で採点しております。どの行動が何点引かれたか等、下記にズラーっと並んでます』
六花はプリントを受け取って、プリントにずらっと並んだ字を見て「うへぇ」とうんざりしながらも、点数と減点の理由を確認した。
すると葉隠が、六花のプリントを覗き込みながら話しかけてくる。
「ねぇ六花ちゃん何点だった?」
「……ん、70点です。まわりとのコミュニケーションがたりないのと……あと、全体的に見切り発車だってかかれてます……トールさんは……?」
「76点。要救助者を混乱させたり他校の人達との連携で手間取ったりしちゃったとこで減点されてる」
「ケロ、透ちゃんは見えないからその辺難しいわよね」
「そうなんだよねぇ〜。梅雨ちゃんは?」
「89点よ。行動そのものというよりは、初動が少し遅れたところとかで減点されてるわ」
「「わぁ……」」
六花は、葉隠や蛙吹と一緒にお互いの点数を見せ合いっこした。
相変わらず優等生な蛙吹に対して、六花と葉隠は身を寄せ合って感心したように目をぱちくりさせる。
他のクラスメイトも、お互いに点数を確認し合っていた。
「飯田くんどうだった?」
「80点だ。全体的に応用が利かないといった感じだったな。緑谷くんは?」
「僕71点。行動自体ってより行動する前の挙動とか足止まったりする所で減点されてる」
飯田と緑谷がお互いの点数を確認し合っていると、偶然二人の点数を聞いていた爆豪が、顔を歪めながらグシャっと自分のプリントを握り潰す。
「クソが……! デクに1点負けた……!」
「え、バクゴーさん70点だったんですか? わたしもですよ」
「あ?」
「70点♪ 70点♪ いっしょ、いっしょ♪ ふふふっ、あははは♬」
「人の点数バラすな殺すぞ!!」
何が可笑しいのか、六花がケタケタ笑いながら爆豪の点数を周囲にバラすと爆豪が六花に向かってキレる。
そんな中、目良が全員に向かって説明を始める。
『合格された皆さんはこれから緊急時に限りヒーローと同等の権利を行使出来る立場となります…すなわち
目良の言葉を聞いて、緑谷は自分の目指すヒーロー像を見据えて、静かにグッと拳を握りしめた。
だが、目良の説明はここで終わりではない。
『そして…えー、不合格となってしまった方々。点数が満たなかったからとしょげてる場合じゃありません。君達にもまだチャンスは残っています。三ヶ月の特別講習を受講の後、個別のテストで成績を出せば君達にも仮免許を発行するつもりです』
目良が言うと、不合格者達が僅かに目を見開く。
『今私が述べたこれからに対応するには、より質の高いヒーローがなるべく多く欲しい。一次はいわゆる落とす試験でしたが、選んだ100名はなるべく育てていきたいのです。そういうわけで全員を最後まで見ました。結果決して見込みがないわけではなく、むしろ至らぬ点を修正すれば合格者以上の実力者になる者ばかりです。学業との並行でかなり忙しくなるとは思います。次回4月の試験で再挑戦しても構いませんが─────…』
「当然!! お願いします!!」
目良の用意した救済措置を、夜嵐は、ピシッと背筋を正しながら志願した。
それを見て、隣にいた青山は、彼を励ますかのようにウインクをしていた。
◇◇◇
「はわぁぁぁ……」
試験が終わった後、六花は発行された仮免許証を持ってふわふわした雪を散らしていた。
「早くママに見せたい……っ」
六花は、新品の仮免許証を握りしめながらふふっと笑った。
相澤は、そんな六花を見て微かに頬を緩めていた。
今回、相澤から見て一番頑張ったのは六花だった。
授業を真面目に聞かない問題児ではあるものの、理不尽を乗り越え、クラスメイトと足並みを揃えて前に進んでいる六花の強さには、相澤も感服していた。
そんな中、Ms.ジョークが相澤に話しかけてくる。
「イレイザー、せっかくの機会だし今後合同の練習でもやれないかな」
「ああ…それ、いいかもな」
Ms.ジョークの提案に相澤が乗ろうとした、その時。
「おーい!!」
夜嵐が、大声で呼びかけて手を振りながら六花達に近づいてくる。
「轟!! 俺、あんたと友達になりたいっス!! けどな、正直まだ好かん!! ごめん!!」
「どんな気遣いだよ」
「こっちも善処する」
夜嵐の謝罪に対し、切島が呆れながらツッコミを入れ、轟は素直に受け入れる。
そのやり取りを六花が少し離れたところから見ていると、夜嵐は、今度は六花に話しかけてくる。
「あと、氷叢さん!!」
「うわ……なんですか?」
「試験の時、怒ってくれてありがとうございました!! まだ許して貰えてないかもしれないけど、俺はあんたとも友達になりたいっス!!」
「あ、そうですか」
「それじゃ!!」
そう言って夜嵐は、手を振りながら豪快に去っていった。
六花は、夜嵐に対して向ける感情は無関心に近く、友達になりたいとは思っていなかった。
だが過去の過ちを反省して仲良くなりたいと言っている人間を、クラスメイトの前で拒絶する気にもなれなかった。
六花が無表情で夜嵐を見送っていると、彼のクラスメイトの青山が話しかけてくる。
「彼は豪胆だけど、意外と繊細なところもあるんだよ。色々迷惑かけてごめんね、クラスメイトとして謝るよ」
青山が、画風の違う顔つきに似合わずシリアスな顔で謝ってきた。
すると葉隠は、ハッと思い出したように顔を上げてから、青山に手を振って話しかける。
「あっ、そうだ! 青山くん、一次試験の時はありがとう! 私、青山くんが助けてくれなかったら危なかったよー!」
「ドゥリアン☆」
葉隠が礼を言うと、青山はキザっぽくウインクをした。
雄英と士傑のほのぼのした交流が終わり、それぞれがバスに戻ろうとしたその時、青山が足を止めて緑谷に話しかけてくる。
「ねぇキミ……ちょっといいかな☆」
「へっ!?」
急に話しかけられた緑谷はビクッとするが、青山のやけに真剣な表情を見て、大事な話だという事を察する。
まだ周りにクラスメイトがいるのを気にした緑谷は、慌てて他のクラスメイトに声をかける。
「ご、ごめんみんな! 先行ってて! 僕、トイレ行ってくる!」
緑谷は、トイレを口実にクラスメイトをバスに戻らせると、青山と二人で人のいない茂みの中へと向かっていった。
その様子を、爆豪がじっと見ていた事に気づく事もなく。
仮免試験は全員合格です。
爆豪と六花ちゃんはお互いをフォローし合って大幅減点を免れ、轟はギャングオルカの相手を六花ちゃんに任せたのでイナサとの衝突を免れました。
そして本作では雄英に落ちた青山くんも、士傑の超新星として無事仮免を取得しています。
ただしイナサと肉、テメーらはダメだ。
イナサは六花ちゃんと友達になりたいと息巻いておりますが、六花ちゃんは完全に一線引いちゃってます。
轟くんの方はまだ望みはありますが、お互い様だった原作と違って轟くんの非が消滅して仮免試験の補講で会う機会も消えたので、轟くんとの関係修復も原作より時間がかかると思います。
熱いヒーローが好きだと言っていた奴が、自分のやらかしのせいで一番実力がアツい子を氷点下まで冷めさせるの、芸術点高くて私は好きだよ(ゲス顔)。