インターン編は、あまり話数をかけずにサクッと終わる予定です。
No side
「皆いいか!? 列は乱さずそれでいて迅速に!! グラウンドへ向かうんだ!!」
仮免試験の翌日、六花達は始業式に参加する為、グラウンドへと向かっていた。
委員長である飯田の指示で、一列に並んでいたのだが……
「いやおめーが乱れてるよ」
「委員長のジレンマ!!」
瀬呂に指摘され、飯田がくぅっと歯を食いしばる。
いつも通りの光景に、六花はどこかホッとした様子だった。
そんな中、麗日と尾白が話す。
「入学式出られやんかったから、今回も相澤先生何かするんかと思った」
「まー4月とはあまりに事情が違うしね」
そんな話をしながら歩いていると……
「えぇA組全員仮免受かったの!? 一人くらい落ちててよ!!」
「B組物間! 相変わらず気が触れてやがる!」
B組の物間が、六花達を指差してストレートに負の感情をぶつけてくる。
切島は、物間が期末試験で筆記・実技の両方で赤点という快挙(?)を成し遂げ林間合宿で一人だけ肝試しができなかった事を思い出し、顎に手を当ててニヤリと笑う。
「さてはそっちは、またおめーだけ落ちたな」
「ハッハッハッハッハッ」
切島の発言に対して物間は腹を抱えて笑うと、急に真顔になってクルッと踵を返す。
「いやどっちだよ」
切島のツッコミに対し、物間は待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑い、振り向きざまに両手を広げてドヤ顔をする。
そんな物間の後ろには、B組が勢揃いしていた。
「こっちも全員合格。問題児の君らA組と違って、僕らB組が落ちるわけないだろう?」
「一言余計だなお前!」
物間がしれっとA組を貶すと、上鳴が物間を指を差して言った。
六花は物間をガン無視して、後ろにいた拳藤に話しかける。
「ケンドーさん……そっちの試験はどうだったんですか?」
「私達は、球当てと救助演習でしたが……」
「あぁ、多分そっちと同じだと思うよ。私らの会場はシシドが
「えっとぉ……シャチさんです」
「えっ、ギャングオルカ!? 嘘だろ!?」
六花や八百万と話していた拳藤は、A組の試験の
ちなみにB組の試験の
そんな話をしていると、拳藤の隣にいた角取が口を開く。
「ブラドティーチャーによるゥと、後期ィはクラストゥゲザージュギョーあるデスミタイ。楽シミしテマス!」
「へぇ! そりゃ腕がなるぜ!」
「つか外国人さんなのね」
角取の話に切島と上鳴が乗っかってほのぼのした空気が流れていたその時、物間が角取に何かを耳打ちした。
角取は、首を傾げながら物間に言われた言葉を復唱した。
「ボコボコォにウチノメシテヤア…ンヨ?」
「アハハハハハ!!!」
「変な言葉教えんな!!」
無自覚にA組に暴言を吐く角取の後ろで、物間がA組に首切りのジェスチャーをしながら高笑いしていると、拳藤が物間に目潰しを喰らわせた。
そんなやり取りを聞きながら六花が眠そうにあくびをした、その時だった。
「オーイ、後ろ詰まってんだけど」
「すみません!! さぁさぁ皆、私語は慎むんだ! 迷惑かかっているぞ!」
後ろから声をかけられ、飯田が振り向きざまに謝りながら他のA組に声をかける。
六花もなんとなく後ろを振り向いてみると……
「かっこ悪ィとこ見せてくれるなよ」
後ろには、C組の心操が立っていた。
心操を見て、六花は僅かに目を見開く。
「あ、シンソーさん」
「体育祭の時、宣戦布告してきた人」
六花と耳郎は、下駄箱の前で靴を履き替えながら言った。
六花は、心操に対して「久しぶり〜」と言わんばかりに手を振りながら、ふわふわした小さな雪を体の周りに散らす。
そんな中、瀬呂は心操を見て片眉を上げ顎に手を当てながら首を傾げる。
「あれ…なんかあいつ…なんとなく…ゴツくなった気が」
◇◇◇
グラウンドには、全校生徒33クラス、計660名の生徒が勢揃いしていた。
全校生徒の視線の先の朝礼台に立つのは、根津校長だ。
「やぁ! 皆大好き小型哺乳類の校長さ! 最近は私自慢の毛質が低下しちゃってね、ケアにも一苦労なのさ。これは人間にも言えることさ。亜鉛・ビタミン郡を多く摂れる食事バランスにしてはいるものの、やはり一番重要なのは睡眠だね。生活習慣の乱れが最も毛に悪いのさ。みんなも毛並みに気を遣う際は睡眠を大事にするといいのさ!」
校長は、クソほどどうでも良くてありえない程長い話を始めた。
「ぐごぉぉぉ……すぴぃぃぃ……」
六花は、校長の話が長すぎるあまり、前に並んでいた爆豪の背中に頭を預けて爆睡していた。
六花にもたれかかられた爆豪は、六花の涎がシャツに染みていくのを感じて不愉快そうな表情を浮かべている。
「生活習慣が乱れたのは皆もご存知の通り、この夏休みに起きた事件に起因しているのさ。柱の喪失、あの事件の影響は予想を超えた速度で現れ始めている。これから社会には大きな困難が待ち受けているだろう。特にヒーロー科諸君にとっては、顕著に表れる。2・3年生の多くが取り組んでいる“
六花の涎に不快さを覚えていた爆豪だったが、『
「“
「職場体験の発展系みたいなものかしら…?」
一番前に並んでいた芦戸と蛙吹は、校長の話を聞いて小声で話していた。
そんな中、校長はさらに話を続ける。
「暗い話はどうしたって空気が重くなるね。大人達は今その重い空気をどうしようか頑張っているんだ。君達はぜひともその頑張りを受け継ぎ発展させられる人材となってほしい。経営科も普通科もサポート科もヒーロー科も、皆社会の後継者であることを忘れないでくれたまえ」
校長はそう言って締め括り、トテトテと朝礼台から降りていく。
「だいぶ短くまとめただろ? 定石を覆したのさ」
「流石です」
校長が去り際にブラドキングに話しかけると、ブラドキングは校長の視線に合わせてしゃがみながら感心した。
その後は生活指導のハウンドドッグから寮生活や学校生活における諸注意を受け、3年生から順番に教室へ戻っていく。
◇◇◇
その後、朝のHRにて。
「じゃあまあ…今日からまた通常通り授業を続けていく。かつてない程に色々あったが、うまく切り替えて学生の本分を全うするように。今日は座学のみだが後期はより厳しい訓練になっていくからな」
相澤は、手の上で広げていた出席簿を閉じながら、いつも通りに話をする。
校長の話にあったインターンだが、相澤の口からは説明がなかった。
「話ないねぇ…」
芦戸は、コソッと後ろの席の蛙吹に耳打ちした。
すると相澤が芦戸を睨む。
「何だ芦戸?」
「ヒッ! 久々の感覚!」
芦戸が怯えていると、代わりに蛙吹が挙手をして質問した。
「ごめんなさい先生、いいかしら。さっき始業式でお話に出てた“ヒーローインターン”って、どういうものか聞かせてもらえないかしら」
蛙吹が質問をすると、皆が顔を見合わせる。
「そういや校長が何か言ってたな」
「俺も気になっていた」
「先輩方の多くが取り組んでらっしゃるとか…」
「はへ……?」
蛙吹の疑問に便乗する形で、瀬呂、常闇、八百万が口を開く。
爆睡して校長の話を聞いていなかった六花は、一人だけきょとんとしていたが。
生徒達の疑問の声を聞いて、相澤は頭を掻きながら話し始める。
「それについては後日やるつもりだったが……そうだな、先に言っておく方が合理的か…平たく言うと校外でのヒーロー活動。以前行ったプロヒーローの下での職場体験…その本格版だ」
「はぁ〜そんな制度あるのか…」
相澤の説明に、納得したような態度を見せた麗日だったが…
「……………」
しばらくの間考え込んで、ハッと何かを思い出したように口を開けると…
「体育祭での頑張りは何だったんですか!!?」
席から立ち上がって勢いよく挙手をしながら叫んだ。
あまりの声量に、ほとんど対角線上にいる六花ですら「わっ」と肩を跳ね上がらせる。
「確かに…! インターンがあるなら、体育祭でスカウトを頂かなくとも道が拓けるか」
「まー落ち着けよ、麗かじゃねぇぞ」
「しかしぃ!」
飯田が納得する中、砂藤が麗日を落ち着かせようとするが、麗日は拳をぐっと握って食い下がる。
必死な麗日に対し、そんなリアクションも想定の範囲内だったのか、相澤は冷静に説明を続けた。
「
「早とちりしてすみませんでした…」
相澤が言うと、麗日は恥ずかしそうに頭を下げてから席に座った。
「仮免を取得したことで…より本格的・長期的に活動へ加担できる。ただ1年生での仮免取得はあまり例がないこと。
『一限は、英語だーー!! すなわち俺の時間!! 久々登場俺の壇場待ったかブラ!!! 今日は詰めていくぜーー!!! アガってけー!! イェアア!!』
「「「はーい」」」
プレゼント・マイクが相変わらずのハイテンションで教室に入ってきて、一限目の英語の授業が始まった。
◇◇◇
その後、A組寮一階の談話スペースでは。
「そうそう、そうやって書くのよ」
「わー、六花ちゃん字上手くなったねぇ!」
「……ん!」
蛙吹と葉隠に見てもらいながら、六花は雪代への手紙を書いていた。
葉隠の言う通り、六花は雄英に入ってから見違えるように字が上手くなった。
雄英に入りたての頃は、記入欄に合わせて字を書く事すらできていなかったが、最近ではお手本を見なくてもきちんと人が読める字が書けるようになってきた。
六花が一生懸命に手紙を書いていると、轟が話しかけてくる。
「何やってんだ?」
「あ……と、ママにおてがみ書いててっ……」
雪代への手紙を書いていた六花だったが、轟と見舞いに行く約束をしていた事を思い出す。
「あ、そうだ……ショートさん、今週の日曜、大丈夫そうです……っ」
「おう、助かる」
六花がスマホでカレンダーを確認しながら言うと、轟が小さく頷く。
そんな中、切島、砂藤、芦戸は、今日の授業の話をしていた。
「なァ、今日のマイクの授業さ…」
「まさかお前も…?」
「当然のように習ってねー文法出てたよな」
「あーソレ!! ね! 私もビックリしたの!」
「予習忘れてたもんなァ…」
「一回躓くともうその後の内容頭に入らねんだよ」
三人が勉強の話をしているのを聞いて、流石に危機感を覚えた六花は、ぴえん顔で爆豪に泣きつく。
「あぅぅぅ……」
「なぁー、爆豪今日の英語わかる?」
「は? わかるわ教え殺したろか」
「おぉ助かる!」
六花が泣きつき切島も頼み込むと、爆豪は睨みながらも承諾した。
そして耳郎、葉隠、尾白は、今朝のHRでも話題に上がっていたヒーローインターンについて話した。
「インターンの話さ、ウチとか指名なかったけど参加出来ないのかな」
「前に職場体験させてもらったところでやらせてもらえるんじゃないのかな」
「やりたいよねぇ」
A組がワイワイと話している中、今日の男子寮のゴミ捨て当番の緑谷が、男子全員のゴミをまとめて一階に降りてくる。
「ゴミ出し行ってきます!」
「いってらー」
「てか今日の女子寮のゴミ出し六花じゃなかった?」
「……はっ」
手紙に没頭するあまりゴミ出し当番を忘れていた六花は、耳郎の指摘によってようやく自分がゴミ出し当番だった事を思い出した。
六花は、すぐに女子寮のゴミをまとめて、緑谷と一緒にゴミ捨て場にゴミを持って行く。
するとその時、ゴミ捨て場の壁に、奇妙なものが見えた。
壁からカートゥーンアニメ調の顔が出ており、六花達を見てニコッと笑っている。
その人物は、スゥッと上半身だけ壁から出すと、ゴミ捨て場を指差しながら言った。
「ゴミね、食品トレイとかも可燃で出しちゃって大丈夫だからね」
上半身裸で壁から出てきた変態を見て、六花は目を丸くしながらスマホを操作していた。
「……つ、通報……しなきゃ……っ」
「待って待って、通報しないで! 俺は怪しい人じゃないよ!」
「あ、怪しい人は……みんなそう言うって……ママが……」
「確かに!!」
六花が正論を言うと、壁から出てきた変態はHAHAHAHAと高笑いする。
さらには、壁の中に引っ込んで消えたかと思うと、今度は地面から現れ、上半身だけを地面から生やす。
「君達A組の子だよね!?」
「うわあ!!?」
「ひっ……」
急に地面から現れた変態に、緑谷と六花は思わず悲鳴を上げた。
すると変態は、何がおかしいのか大口を開けて高笑いする。
「ビックリしたよね!!? 悪いことをしたぁーー!! ビックリすると思ってやってるんだけどね!!」
「何なんですかあなたは!?」
「アハハハハハハハ何だろうね!! 俺も何してるんだろうって思うんだよね!! 極稀に!!」
「やっぱり……通報します……」
笑いながら意味不明な事を言う変態を見て、六花は再びスマホを取り出して操作しようとする。
「まァ俺のことはじきにわかるんだよね。とにかく元気があって何よりだよね!! 氷叢さんに緑谷くん、だったよね? ガンバレ!!」
その言葉を最後に、変態はその場から姿を消した。
六花と緑谷は、呆然と立ち尽くしたまま顔を見合わせる。
「え……なんでわたしの名前……えっ、こわ……」
「うん……でも今の人、どっかで見たことある気が……」
◇◇◇
始業式から三日後の金曜日。
六花達はいつも通り、教室に集まってホームルームを受けていた。
「それじゃあ、先日話した通り、本格的にインターンの話をしていこう。入っておいで」
相澤がそう言うと、教室の前の扉が開く。
どうやら、事前に誰かを呼んでいたらしい。
そこから、三人の男女が入室してくる。
「職場体験とどういう違いがあるのか、直に経験している人間から話してもらう」
「「あ!」」
入室してきた男女を見て、六花と緑谷は目を見開く。
後ろから順番に、目つきの鋭い猫背の男子生徒、水色のロングヘアーの女子生徒、そして先頭には、六花と緑谷が三日前にゴミ捨て場の前で会った変態がいた。
「多忙な中都合を合わせてくれたんだ。心して聞くように。現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3名────…通称ビッグ3の皆だ」
教壇には、三人の上級生が並んで立っていた。
「雄英生のトップ…」
「ビッグ3…!!」
「あの人達が…的な人がいるとは聞いてたけど…!」
「びっぐすりー」
「めっちゃ綺麗な人いるし、そんな感じには見えねー…な?」
耳郎、芦戸、上鳴が相澤が声を上げる中、緑谷は昨日の変態が誰なのかを思い出していた。
去年の体育祭の2年の部で、あまり良い順位ではなかったにもかかわらず、やたらと強烈なインパクトを残していた生徒だ。
「じゃ手短に自己紹介いいか? まずは天喰から」
相澤がビッグ3に自己紹介を促すと、俯いていた天喰が顔を上げる。
天喰が全員をひと睨みすると、教室の空気が変わる。
(一瞥だけでこの迫力──!! おおおおお!!!)
天喰の迫力に押されたA組は、いい感じに緊張感を高める。
だが…
「駄目だミリオ…波動さん…ジャガイモだと思って臨んでも…頭部以外が人間のままで依然人間しか見えない。どうしたらいい、言葉が……出てこない」
「「「「!?」」」」
「頭が真っ白だ…辛いっ…! 帰りたい………!」
(ええ……!!)
天喰は、泣き言を言いながらA組に背を向け、黒板に額を押し付けた。
その様子を見たA組は唖然とし、尾白が恐る恐る尋ねる。
「雄英…ヒーロー科のトップ…ですよね…」
「あ、聞いて天喰くん! そういうのノミの心臓っていうんだって! ね! 人間なのにね! 不思議! 彼はノミの『天喰環』。それで私が『波動ねじれ』。今日は“
波動が、天喰に代わってA組に説明をした。
ズバズバ言ってしまうタイプではありそうだが、この人はまだまともそうだとA組が安心したのも束の間……
「けどしかしねえねえところで君は何でマスクを? 風邪? オシャレ?」
波動は、いきなり障子に質問してきた。
「これは昔に……」
「あらあとあなた轟くんだよね!? ね!? なんでそんなところを火傷したの!?」
「………!? それは──…」
「芦戸さんはその角折れちゃったら生えてくる? 動くの!? ね? 峰田くんのボールみたいなのは髪の毛? 散髪はどうやるの!? 蛙吹さんはアマガエル? ヒキガエルじゃないよね? 氷叢さんはなんで爆弾のピンつけてるの? それどこで売ってたの? どの子もみんな気になるところばかり! 不思議」
波動は、次々とA組の生徒に質問をした。
たまに人の地雷を踏み抜いてしまっているが、そんな事は気にも留めずに幼稚園児のようにねぇねぇと聞いて回る。
「天然っぽーい、かわいー」
「幼稚園児みたいだ」
上鳴と芦戸は、好奇心旺盛で天然な波動を見てほんわかしていた。
「オイラの玉が気になるってちょっとちょっとーーー!!? セクハラですって先パハァイ!!」
「違うよ」
峰田がハァハァと息を荒げながらセクハラ発言をすると、後ろの席の八百万が汚物を見るような視線を向け、瀬呂が冷静にツッコミを入れる。
「ねえねえ耳郎さんのプラグはどこまで伸ばせるの? 自分の体を支えられたりする? ねえねえ答えて気になるの」
波動は、ぴょんと教壇を飛び降りて一番前の席の耳郎の机にしがみつくと、ねぇねぇと質問する。
そんな波動に対する六花の印象はというと……
「ステキなおねえさん……っ」
六花は胸の前で両手を組み、目をキラキラと輝かせながら波動を見ていた。
「え、ステキなんだ……」
「どこが琴線に触れたんだ……?」
「だって……バクゴーさんにもらったピン、気になるって……わたしもこのピン気に入ってるから、いっしょだなぁって……」
(((あっそこなんだ)))
六花が爆豪に貰った髪留めを左手で触れながら言うと、他のクラスメイトが心の中でツッコミを入れる。
六花にとっての善悪の判断基準は、相変わらずガバガバだった。
そんな中、教壇を降りて気になる生徒に片っ端から話しかけていた波動は、いきなり六花の頬に触れてくる。
「わぁ、氷叢さんのほっぺ、ひんやりもちもちしてて気持ちいい! 不思議!」
「みにゃ」
波動は、六花の頬の感触が気に入ったらしく、ずっとぷにぷにしている。
六花も満更でもないらしく、嫌がってはいなかった。
だが、A組に背を向けて泣き言を言っている天喰と、説明そっちのけで六花の頬の感触を堪能している波動に痺れを切らした相澤が、ギロリと残りの一人を睨みつける。
「合理性に欠くね?」
「イレイザーヘッド、安心してください!! 大トリは俺なんだよね!」
相澤がさっさと説明しろと言わんばかりに睨むと、昨日の変態が慌ててサムズアップをしながら腕を振る。
「前途ーーー!!?」
変態は、ずいっと体をA組に向けると、耳を澄ませるようなピーズをしながらA組にネタ振りをする。
だがA組は、何を言っているのか分からず、全員きょとんとしてしまった。
クラスがしばらく静まり返ると、変態はバッと上体を起こす。
「多難ー! っつってね! よォしツカミは大失敗だ!!」
そう言って変態は、HAHAHAHAと高笑いをした。
そんな上級生達を見て、砂藤が不安そうに前の席の口田に話しかける。
「………3人とも変だよな? ビッグ3という割には…何かさ…」
「風格が感じられん…」
砂藤が話しかけると、常闇が腕を組みながら頷く。
すると変態は、困惑するA組の空気を察したのか、急に真顔になって話し始めた。
「まぁ何が何やらって顔してるよね。必修ってわけでもない
「ミリオ!?」
「君達まとめて、俺と戦ってみようよ!!」
ミリオと呼ばれた変態が、とんでもない提案をした。
「「「え……ええ〜〜!?」」」
いきなりの提案に、A組は騒然としていた。
「俺達の経験をその身で経験した方が合理的でしょう!? どうでしょうねイレイザーヘッド!」
「……………好きにしな」
ミリオがそれっぽい事を言うと、面倒臭くなった相澤は、全てをミリオに丸投げした。
こうしてA組は、全員ミリオと勝負する事になったのだった。