今回は後半ちょっとふざけました。
死柄木 side
「大物とは…皮肉が効いてるな、
俺の前には、トゥワイスが連れてきた
先生……いや、オール・フォー・ワンに写真を見せてもらった事がある。
「何!? 大物って有名人!?」
「いわゆる筋者さ。『死穢八斎會』、その若頭だ」
「極道!? ヤダ初めて見たわ、危険な香り!」
マグネの質問に答えると、マグネがはしゃぐ。
トガはいまいちピンと来ていないようで、床に座ったまま後ろにいるMr.コンプレスを見上げて尋ねる。
「私達と何が違う人でしょう?」
「よーし、中卒のトガちゃんにおじさんが教えてあげよう。昔は裏社会を取り仕切る恐ーい団体がたくさんあったんだ。でも、ヒーローが隆盛してからは摘発・解体が進みオールマイトの登場で時代を終えた。尻尾を掴まれなかった生き残りは、
「まぁ、間違っちゃいない」
Mr.コンプレスの皮肉めいた説明に、オーバーホールは不愉快そうに目を伏せながらも頷く。
「それでその細々ライフの極道くんが何故ウチに? あなたもオールマイトが第一線から退いてハイになっちゃったタイプ?」
「いや…ヒーローよりもオール・フォー・ワンの喪失が大きい。裏社会の全てを支配していたという闇の帝王…俺の時代じゃ都市伝説扱いだった。だが老人達は確信をもって畏れてた。死亡説が噂されても尚な。それが今回実体を現し…あの戦いで散った。つまり今は、日向も日陰も支配者がいない。じゃあ次は、誰が支配者になるか」
オーバーホールの偉そうな言い方に、俺は目を細めて静かに睨みつける。
まるで自分が支配者になるとでも言いたそうな口ぶりだな。
オール・フォー・ワンに操られていた頃の俺なら、次の支配者は俺になるとでも言って張り合っていたんだろうが……吹っ切れて俺なりにやりたい事を見つけた今、もうそんなものに興味は無い。
「支配者だぁ……? 俺はそんなもんに興味ないね。ただまぁ……この腐り切った世界を更地にしたいとは思ってるよ」
俺がそう言うと、オーバーホールは馬鹿にしたように目を細めながら尋ねる。
「まるでガキの癇癪だな。計画はあるのか?」
「計画? お前さっきから…仲間になりに来たんだよな?」
「計画のない目標は妄想と言う。妄想をプレゼンされてもこっちが困る。勢力を増やしてどうする? そもそもどう操っていく? どういう組織図を目指してる? 目標を達成するには計画がいる。そして俺には計画がある。今日は別に仲間に入れて欲しくて来たんじゃない」
あぁ……ダメだこいつは。
根本的に合わない。
「トゥワイス…ちゃんと意志確認してから連れて来い」
「計画の遂行に莫大な金が要る。時代遅れの小さなヤクザ者に投資しようなんて物好きはなかなかいなくてな。ただ名の膨れ上がったお前達がいれば話は別だ。俺の傘下に入れ。お前達を使ってみせよう。そして俺が次の支配者になる」
「帰れ」
俺がオーバーホールの誘いを却下した、その時。
奴の態度が気に入らなかったのか、俺が手を出すより先に、マグネ、マスキュラー、ムーンフィッシュが動いた。
そしてそれと同時に、誰もいないはずの場所から
「はっ、そりゃ今ここで殺してくれって意味でいいんだよなァ!?」
「おい待て──」
俺の制止も聞かずに、マスキュラーがオーバーホールを挑発しながら、全身に筋繊維を張り巡らせる。
マグネが磁石でオーバーホールを引き寄せ、マスキュラーとムーンフィッシュが同時に奴に攻撃を仕掛ける。
だが二人の攻撃が当たる直前、俺が殺気を感じた方向から発砲音が聴こえた。
ムーンフィッシュは、音速で飛んできたそれを歯で弾き飛ばす。
だがその一瞬が、敵にとっては絶好の隙になってしまった。
オーバーホールが
次の瞬間、筋繊維と歯が消し飛んだ。
マスキュラーとムーンフィッシュ……特にマスキュラーの方は、今ので決して軽くはないダメージを負った。
「先に手を出したのはお前らだ」
オーバーホールがそう言い放った、次の瞬間。
倉庫の壁を破って、手下と思しき奴等が乗り込んでくる。
「なるほど───…ハナからそうしてりゃ幾分わかりやすかったぜ」
「待て、どこから!! 尾行はされてなかった!!」
「大方どいつかの“個性”だろう」
「穏便に済ましたかったよ、
服についた埃を払いながら、オーバーホールが一方的に意見を押し付けてくる。
「てめぇ殺してやる!!!」
「弔くん、私刺せるよ。刺すね」
そんなオーバーホールに対して、トゥワイスとトガが敵意を剥き出しにする。
だが俺は、敢えて二人を止めた。
「………駄目だ」
「責任取らせろ!!!」
自分で勧誘した奴に仲間をいきなり傷つけられて、激昂するトゥワイスの気持ちはわかる。
だが今ここで闘り合っても戦力を削り合うだけだ。
「賢明だ、手だらけ男」
「すぐにとは言わないが、なるべく早めがいい。よく考えてみてくれ…自分達の組織とか色々…冷静になったら電話してくれ」
そう言ってオーバーホールは、俺の足元へ名刺を投げて去っていった。
……やってくれたな、オーバーホール。
俺達に喧嘩売って、タダで済むと思うなよ。
◆◆◆
No side
「1年生の
六花と轟が見舞いに行った次の日の月曜日、A組の教室では、相澤が協議の結果を報告する。
「えー、あんな説明会までして!?」
「でも全寮制になった経緯から考えたらそうなるか…」
「あぅぅ……」
残念そうに声を上げる切島と上鳴。
インターンと聞いて楽しみにしていた六花も、眉毛を八の字にして悲しそうに声を漏らす。
だが相澤の話は、そこで終わりではなかった。
「が、今の保護下方針では強いヒーローは育たないという意見もあり、方針として『インターン受け入れの実績が多い事務所に限り、1年生の実施を許可する』という結論に至りました」
相澤が言うと、六花の表情がパッと明るくなる。
だがその直後、肝心のミルコがインターンを受け付けているかどうかわからない事をふと思い出す。
「ミルコさん……インターンやってるかな……」
◇◇◇
『あ!? インターン!?』
「はい……えっと、ミルコさんはやってるかなって……」
授業の後、六花はミルコに直接電話をかけて尋ねた。
『ワリ! 私、スカウトしたのお前が初めてだから、インターンの受け入れ実績は無えんだよ。つーわけで多分ダメそうだ!』
「そうですか……」
ミルコにキッパリと断られ、六花は少し残念そうに俯く。
ミルコの方は六花をインターン生として受け入れるのは満更でもないようだが、彼女は基本的に一人で活動しており、後進を受け入れたのは六花が初めてなので、インターンの受け入れ実績は皆無だった。
『インターンの受け入れ実績が多い事務所』という最低条件を満たしていないので、学校側から許可を貰うのは絶望的だ。
『あ、でもお前、他にも指名貰ってんだろ? 私の知り合いでインターン受け入れてる奴いたら紹介してやるよ!』
「……! ありがとうございますっ」
ミルコが言うと、六花はパッと表情を明るくする。
結局六花は、ミルコが紹介した事務所にインターンに行ける事になった。
◇◇◇
「ケロ、六花ちゃん、透ちゃん。二人とも何の曲聴いてるの?」
「ん……『You Say Run』って曲です……」
「この前耳郎ちゃんに教えてもらったんだ!」
翌日、六花は蛙吹、葉隠と一緒に音楽を聴きながら食堂に向かっていた。
耳郎におすすめしてもらった曲を葉隠と一緒に聴きながら歩いていたら、ちょうど蛙吹と一緒になったのだ。
するとだ。
「あ、いたいた! 氷叢さん!」
「あっネジレせんぱい」
ちょうど階段から降りてきた波動が、六花に話しかけてくる。
六花は、音楽を止めてイヤホンを外してから波動の話を聞いた。
「あのねあのね、1年生がインターンやるって先生に聞いてね、リューキュウに相談してみたの。でね、1年生もインターン受け入れてくれるんだって。リューキュウ、氷叢さんのことは元々指名してたみたいだから、もし職場体験の時の事務所がインターン受け付けてなかったら来てもいいよって! ねね、一緒にインターン行かない?」
波動が、六花に前のめりに話しかけてくる。
彼女の話というのは、六花へのインターンの勧誘だった。
一瞬話に乗りかけた六花だったが、ミルコから事務所を紹介してもらう約束をしていた事を思い出す。
「あー……そのことなんですけど、ごめんなさい……ミルコさんが事務所を紹介してくれるそうなので、そっち行きます……」
「そっかぁ。あ、ねぇねぇ! 蛙吹さんと葉隠さんは?」
「ケロッ? 私達もいいのかしら?」
「うん、インターン行きたい子がいたら大歓迎だって!」
「ケロケロ、そういうことなら喜んで」
「あー……お誘いは嬉しいんですけど、私は今ちょっと勉強がやばくて……」
波動が蛙吹と葉隠をインターンに誘うと、蛙吹は快諾した一方で、葉隠は少し心苦しそうに断った。
インターンは普段の授業と並行して行わなければならないが、そもそも1年生はインターンに行く事を想定したカリキュラムではないので、比較的コマに余裕がある2・3年生と違って月曜日から土曜日まで毎日ビッシリ必須科目の授業がある。
蛙吹のような優等生ならともかく、葉隠のような成績下位組は、下手にインターンに行くとあっという間に授業に追いつけなくなってしまうリスクがあるのだ。
「あ、でもウチのクラスで行きたい人いたら誘ってみます!」
「うん、わかった!」
葉隠が言うと、波動がニコッと笑顔を浮かべる。
◇◇◇
そんなこんなで週末。
「ほわぁぁ……」
六花は、寝ぼけ眼のまま洗面用具を持って1階に降り、脱衣所に向かう。
すると、先客の芦戸がこれまた眠そうに声をかけてくる。
「あ、六花おはよー」
「……んあ、おはよーございます……」
芦戸が先に挨拶をすると、六花も挨拶を返す。
「ねぇ、今日さ、私ヤオモモの勉強会参加するんだけど、六花も参加しない?」
「あー……それなんですけど、ごめんなさい……わたし今日ちょっと用事があって……」
「そっかー」
洗面所で芦戸と会話を交わした六花は、先にパパッと歯を磨き終え、身支度を整えて寮を出発する。
お気に入りのシマエナガのリュックとコスチュームのケースを持ってバスの発着所に向かうと、そこには既に先客がいた。
「バクゴーさん、おまたせしました……」
「遅えんだよカス!!」
六花が声をかけると、爆豪がキレる。
無人バスが既に発着所に着いており、どうやら六花待ちだったらしい。
遅刻している事をようやく理解した六花は、「てへ」と頭を掻く。
「ったく……何でてめェと一緒なんだよ、クソが」
「だってバクゴーさん……職場体験の時の人、ダメだったじゃないですか……」
「……チッ」
六花は、コスチュームを持って爆豪と一緒にバスに乗った。
ミルコにインターン先を紹介してもらえた六花だったが、実はミルコはもう一人、爆豪の事も指名していたので、爆豪の事もインターン先に推薦してくれていたのだ。
ただでさえヒムラ建設の件で六花が非難されかねないので、雄英側は最後まで反対していたが、結局無事に許可が降り、爆豪も六花と一緒にインターンに行ける事になった。
爆豪は職場体験先のベストジーニストが休養中で、言わずもがなな性格なので当然ながらプロヒーローや上級生とのコネクションなど無く、インターンに参加するには大人しく六花について行く他なかった。
「んと……住所はたぶんここら辺のはずなんですけど……」
「多分だぁ? 住所くらい調べとけや」
「あ、ごめんなさい……」
バスで移動する事約5分、雄英の無人バスが停まったのは、特に何も変わったところはないオフィスビルだった。
予定の時間も近づいてきたのでビルに入り、手続きを済ませ、迎えが来るのをエントランスで待つ。
すると一人の女性が、六花達に近づいて話しかけてくる。
「爆豪様に氷叢様でございますね」
「あ?」
濃紺の髪をショートボブにした女性が、礼儀正しく六花達に話しかけ、名前を確認してくる。
鼻から首までの間を黒のマスクで覆い、道着にも見える黒の着物と紫紺の帯を身につけ、袴の代わりにスパッツを穿き膝丈の足袋を履いている。
女性は、確認を終えると深く頭を下げながら挨拶をする。
「お待ちしておりました。私、エッジショット事務所のサイドキック、モチヅキと申します。どうぞこちらへ」
そう言ってモチヅキと名乗る女性は、礼儀正しく名刺を差し出し、六花と爆豪を事務所へ案内した。
所々にからくり屋敷のようなギミックが施されたオフィスビルの中を歩いて行き、事務所に到着すると、そこに広がっていたのは、趣のある和室のオフィスだった。
掛け軸や盆栽などが配置され、轟の部屋に似た感じの雰囲気だ。
だが、肝心の事務所の姿が見当たらない。
その事を不思議に思っていると、六花達の目の前に、ドロン、と人影が現れる。
「
六花達の前に現れたのは、現・No.4ヒーロー、忍者ヒーロー《エッジショット》だった。
インターン編は、かっちゃんと一緒にデートエッジショット事務所でインターンです。