熟れた果実だからこそ……ッ!   作:atsuya

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しかしこの一夏、変態である!

朝の素晴らしい邂逅を終え、授業中だ。

流石IS学園。

なんとも素晴らしいマダム……ではない授業内容だ。教師のレベルも高い。

マダム達からの知恵が無くては授業についていくことはなかっただろう。

 

「ISは操縦者の生態機能を補助する役割があり、心拍数、などを安定した状態に保つことができます。その他にも……」

山田先生の言葉を遮り、一人の女生徒が質問をとばす。

 

「先生ー。それってなんか体の中を弄られてる様ですけど大丈夫なんですか?」

なるほど、ISを動かした時に感じる物は捉え方によっては不安の材料となってしまう。

その質問もわからないわけではないな。自分も偶然に動かした時には戸惑ったものだ。表情には出ていなかったとのことだが。そこまで、無表情のつもりはないのだがな。マダム達にも「一夏くんは表情がわかりやすいわ」と言われるしな。

 

「大丈夫ですよ。皆さんはブラジャーをつけていますよね? それと同じで……」

ん?

山田先生の声が俺と目が合った瞬間に止まってしまった。どういうことだ?

 

「あ、織斑くんはわかりませんよね。あは、あはは」

まあ、確かにブラジャーはしてないからな。

逆に男が下着のブラジャーの着け心地を詳しく知っていたら、それこそ問題であろう。いや、男性用のブラジャーもあるからこの考えは早計か?

 

「そうですね、ブラジャーの事については良く分かりませんが先生が何を言いたいかは理解できました。サポーター等の物と同じ、と言うことでしょう。どうぞ授業を続けて下さい」

 

「あ、ありがとうね織斑くん」

 

「いえ、それに私はマダムにしか興味がありませんので安心してください」

 

「そ、そうですか」

ふっ。

これで授業のフォローも完璧だろう。故に胸をさりげなく隠しているクラスメイト諸君よ、心配することはない。

 

「完璧なフォローではないわ馬鹿者め」

ん?

相変わらず箒は独り言が多いな。もしや、かまってちゃんなのか? 授業中は無理だが休み時間は話しているだろうに。

 

「コホン、山田先生。授業の続きを」

 

「はいっ!」

姉の一言により緩かった教室内の空気が変わる。流石としか言いようが無いな。俺の場合はマダム達といる時が一番緩やかで厳格な空気だと思うがな。

その後は私の姉が睨みを効かせているのもあってか、授業は滞りなくスムーズに進んで行った。

 

キーンコーンカーンコーン。

 

「織斑くーん!」

「質問とかいいかなぁ〜!」

「夜ヒマ? ベッドは空いてる? 抱き枕は必要?」

初日の時とは打って変わり、クラスにいる女生徒達が大量に私の席の元へと集まってきた。

 

「質問ならばかまわんよ。ただベッドはマダム達にしか空ける予定はないな」

フッ……。マダムとの添い寝、考えるだけでも素晴らしいイベント行事だな。まさに至高……!

おや? 後ろの方で整理券を配っている女生徒がいるな。後で商売のわけ前でも頂きにいくとしよう。私を使って儲けだしたのだ、それ位は構わんはずだ。

そして、そのお金を使いマダム達に細やかな贈り物を……いや、食堂のマダ……おばちゃんに贈るのもアリだな。ふふふ、夢が広がる。

 

「ねぇねぇ千冬お姉さまって家でどんなかんじ?」

おっと、自らの思考に没頭しすぎていた様だ。いかんいかん、こんな体たらくでは礼儀作法を教えてくださったマダム達に申し訳ないな。

 

「姉のことか? ふむ、幾ら姉弟と言えどプライベートを軽く話してはいかんだろう。申し訳ないがその質問には答えられんな。因みに私は家ではマダムについて学んでいるぞ」

 

「そ、そう……」

 

スパンッ‼︎

 

「一々、クラスのSAN値を下げにかかるな!」

む? 姉が私の後ろにいつの間にか立っていた。相変わらずスペックが尋常ではないな我が姉よ!

しかし、クラスのSAN値を下げてしまったか。

 

「皆、済まないな。姉のプライベートを話せず」

 

「そっちじゃないわ⁉︎ 戯け!」

箒よ! 幾ら休み時間に一人で座っていたからと言って、いきなり声を荒げるのはどうかと思うぞ。部屋でコミュニケーションの本でも進めてみるか?

あと姉よ、何故ため息を吐いているのだ?

 

「本当に良い弟なんだがなぁ……」

よしてくれこんなところで、照れるではないか。

すると、どうだろう姉と箒が同じタイミングでため息を吐き出した。

仲がよろしいことで私はとても嬉しい。

それよりも何故に考えていることがすぐに読まれてしまうのだろうか。

 

「ところで織斑、お前のISだが準備までに時間がかかる」

我が姉の言葉を聞き、クラスからはざわめきの声が上がる。それもそのはずだ、専用機が貰えると言う事なのだから。

 

ISのコアと言う物は世界に467機しか存在していない。そして、そのコアは開発者である篠ノ之束にしか作ることができない。しかしながら束さんはすでにISのコアを作っていない。専用機を頂けるのは余程の訓練に耐えたものだけであり、私は男子であるが故の特例と言うことだ。

 

「なるほど、それはISのコアを受け取るものとして恥ずべき行いはできんな」

 

「そう言うことだ」

 

「無様にならん仕草をマダム達に早速教わらねば……」

 

「無様で恥ずべき行動いきなりするな⁉︎」

無様で恥ずべき行いを私がすでに行っている……だと⁉︎

い、いったいどういうことなんだ。

まさか……はっ! 分かった、分かったぞ姉よ!

 

「織斑先生」

 

「なんだ織斑」

 

「確かに私は無様な行動をしていた」

 

「何⁈ わ、分かってくれたか!」

ああ、姉よ。

確かに私は無様だった。これが今、ハッキリとわかった。

 

「直ぐにマダムに頼るのはダメだと言うことだな!」

 

「は?」

 

「迂闊だった、私はすでにマダム達から無様にならん行動を学んでいたはずだというのに……! マダム達に連絡を取ることばかりを優先してしまった! ありがとう織斑先生、いや我が姉よ!私の間違いを正してくれるとは、最高の姉を持って幸せだ。出来れば十年後もそのままでいてくれ」

 

ズゴッ‼︎

 

「………織斑先生だ」

私の脳天に今まで以上の衝撃が突き刺さる。流石にこれは効くぞ。

 

「千冬さん。ツッコミどころが違いますよ」

やはり、織斑先生と言わなければダメだったか。箒もそこのところは気をつけたほうが良いぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休み時間になり先ほどとは違い、セシリア・オルコットが私の目の前までやって来た。

 

「安心しましたわ。まさか訓練機が相手ではただでさえ詰まらない試合が、もっと詰まらなくなるところでしたわ」

腰に手を当てて、お決まりのポーズをとる。ふむ、似合ってはいるな。しかしマダム達の気品のある行動はどんな仕草をしていても美しい。あれは何故なのだろうな、まさに神の奇跡としか言いようが無い。

 

「聞いてますの?」

 

「ああ、聞いている。マダム達の行動は何故ああも神秘的なのか? だったか?」

 

「全然違いますわ⁈ あなた全く聞いてませんでしたわね⁈」

 

「失礼、マダムの事を考えると思考がズレてしまうのでな。許して欲しい」

 

「この方末期ですわ⁉︎」

何が末期だというのだ、失礼も甚だしいな。

 

「さて、昼餉の時間故私は失礼する。箒よ食堂に行こうではないか」

 

「う、うむ」

 

「ちょ⁈ 無視ですの!」

 

「すまんなセシリア・オルコット。昼餉の為には重大ミッションがあるのでな」

 

「何の話しですのっ‼︎」

それはもちろん重大ミッションのことだ。

おばちゃんを口説き落とすと言う名のな。ふっ……時間は多い方が良い。早く行かねばな。

席を立ち、箒を伴って食堂へと向かう。後ろでセシリア・オルコットがギャーギャー騒いでいる気がするが今はそんな事はどうでもいいのだ!

 

「箒よ食券は私にまかせろ」

 

「こいつがおばちゃんを口説く為に私は呼ばれたのか……?」

んん?

小声ではよく聞こえんぞ箒。

さあ! 私の戦場へと急ごうではないか!




まだ、ISがでない。
何故だ……。

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