藤田ことねは憂いていた。
給料日まであと一週間だというのに、明日の食費もままならないくらいカツカツだからだ。
最近はレッスンに次ぐレッスンで、バイトを減らさざるを得なかったのが原因である。
このままではまずい。非常にまずい。
ということで、ことねはバイトの帰り道にプロデューサーに相談してみることにした。
ちなみにこのバイト先は、『プロデューサーと同じバイト先だから』という理由でシフト調整をあえてしなかった。
「うーん…藤田さんはアレルギーとかありますか?」
「え?ないですけど…」
「よかった。じゃあ明日、俺がお弁当を作って持っていきますね」
「え!?そんな悪いですよ!」
「心配いりません。担当アイドルがピンチな時に助けるのはプロデューサーの使命です。
「で、でも準備に時間かかるだろうし…」
「いつも朝の四時に起きて犬の散歩に行ってるんで早起きは慣れっこです」
「いや、その…本当に大丈夫ですって。ほら…咲希からもらうとかじゃ…」
「藤田さんにそんな乞食みたいなことはさせられません」ハイライトオフ
(怖えよその眼ぇ!!)
「あーもう分かりましたよ!よろしくお願いしますぅ!!」
「はい。任せてください」
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翌日
「藤田さん。教室へ行く前にこれを」
真島はカバンからランチバックを取り出し、ことねに差し出す。
「基本大丈夫だとは思いますが、食べれなかったら残してくれても構いません」
「えぇ…。まぁ、ありがとうございます♪」
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そんなこんなで昼休み
ことねは、咲希と手毬と一緒に弁当を広げる。
「あら?ことね。弁当箱がいつもと違うようだけど」
「これ?いやぁ実はさぁ、プロデューサーが昨日作ってくれてさぁ」
「ふ、ふーん。私もプロデューサーに作ってもらおうかな。」
にやけ顔のまま、ことねは弁当箱を開ける。
するとそこには、エビフライらしきもの、豆苗、茶色い玄米があった。
「……何だこれ」
「エビフライ…にしては随分小ぶりだね。ことねのプロデューサー、お金ないからケチってるんじゃないの?」
「いや流石にプロデューサーはそんなこと…やりそうだけど」
手毬とことねが首を傾げているところに、突如リーリヤがとんでもないことを言い出す。
「あれ?それってザリガニですか?」
「は?ザリガニ?」
「はい。えっと…スウェーデンにはザリガニを食べる文化があるので、何度か見たことがあるんです。フライはエビのものより小さくて、濃厚な味みたいですよ」
「へ、へぇ…ザリガニ、ね」
ことねは先ほどまで凝視していたものに向き直る。確かにエビにしては小さいうえに、自分のプロデューサーは決して材料をケチるような人ではないこともわかっていた。日本ではザリガニは比較的取れやすく、材料もかからない、まさにエビの代用としてこれ以上のものはないとも感じていた。
(いやだとしても担当アイドルにそんなゲテモノ食わすかフツー!!リーリヤちゃんが言うには濃厚な味らしいけど、そんなことないですよね?これは身の部分をケチったエビフライですよね?プロデューサー?)
おそるおそる、ことねはフライを口へ運ぶ。
とても濃厚な味がした。
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所変わって食堂
「あれ?真島。今日は弁当じゃないのか?」
「はい。今日弁当箱は藤田さんが使ってて。何でも金欠らしいんすよ」
真島は竜胆からもらった一切れのトンカツを食べながら話す。
「…そんな中お前はこんな乞食みてぇなことしてんのか。藤田ちゃんがこんなとこ見たらどうなるんだろうなぁ」
「きっとすごく怒りますね」
「じゃあこんなことすんなよ」
「いや俺も金ないですし」
「うわぁ…」
「ところで弁当には何を入れたんだ?」
「おかしなものは入れてないですよ。ザリガニのフライに、豆苗のソテー、あとは醤油かけご飯ですね」
「なるほど。やっぱお前イカれてるよ」
「そんなにヤバいっすかね?」
「うん。…真島が貧乏なのは聞いてたけど、まさかここまでとは…。というかそれなりに給料貰ってんだからこんな倹約生活やめな?」
「こればっかりは性分なんで仕方ないっすね。あと俺の給料が水電気もろもろ差し引いたら2、3万くらいしか手元に残らんので」
「…プロデューサーとアイドルの給金って大体9:1くらいだよな。ちゃんと貰ってんのか?」
「いやぁ実は、俺のとこの倍率は9:1じゃなく、19:1くらいなんだ。…これ藤田さんには内緒にしてくださいね?」
「……真島。あとでなんか奢ってやるよ」
「マジっすか?あざっす」
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放課後
「………プロデューサー。お弁当のことなんですけど」
「わかっています。洗っておきますね」
「そーいうことじゃないですよ!!!」
ことねが机をバンッと叩く。
「一体どんな生活をしたらあんなサバイバル飯になるんですか!?」
「すいません。口に合いませんでしたか?」
「いやめちゃくちゃ美味しかったですけどぉ…ってそうじゃなくて!あんなのを毎日食べてるんですか!?」
「流石に毎日は食べませんよ。月末とか、今日みたいな日しか食べません。本来なら、藤田さんにこんなものを作るのはいかがなものかと思いましたが、金欠とのことで仕方なく。本当に申し訳ありません」
真島は謝罪の念を込めて頭を下げた。
「ちょっ、そんなに頭下げないでくださいよ。別に怒ってるわけじゃないんで」
「怒ってないんですか?」
「はい。確かに使ってる食材には驚きましたけど、いや本当に驚きましたけど、栄養バランスはしっかりしてるらしいし。何より、その…美味しかったので」
ことねは頬を赤く染めながら感想を述べる。
「ありがとうございます。……うん。見事に完食されてますね。俺としても嬉しいです」
「_____________________プロデューサー」
「はい?」
「ご馳走様でした」
「…はい。お粗末さまでした」
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「ところで本日の夕食の話なのですが…」
「え!?まさかもう一個お弁当作ってきてくれたんですか、プロデューサー!」
「いえ。我が家に弁当箱は一つしかないので、それはできませんでした。代わりといっては難ですが、こちらの方に協力していただきましょう。どうぞ」
真島が合図すると、一人の女性が入ってくる。誰が入ってきたかは、概ね予想できるだろう。
「聞いたわよことね。今日の夕食がないそうね。今夜は私の家に来なさい!この十王星奈が、最高のもてなしをさせてもらうわ!!!」
「星奈会長!?」
「それじゃあ星奈さん。あとはよろしくお願いします」
「任せてちょうだい。さぁ行きましょう、ことね」
「勘弁してくださぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」
〜おまけ〜
手毬「…プロデューサー。私にお弁当作ってくれない?にんじんしいたけは入れないで、できれば唐揚げもお願い」
才原「えぇ…。トンカツは冷凍食品とかはダメ?」
手毬「やだ。作って」
才原「じゃあ無理」
美鈴「まあ。まりちゃん、プロデューサーに頼まなくとも、私に頼めばいくらでも作るのに…許しませんよ、まりちゃんのプロデューサー」ハイライトオフ
才原「なんでさ」