魔法少女リリカルなのはFF〜Midnight Circus〜 作:柳沢紀雪
早朝、山に囲まれた盆地に位置する要塞(フォートレス)は視界を遮る濃い霧の中に埋没してその姿を伺うことはできなかった。
レイリアはその霧に乗じてその上空へと進入し、全員を確認した。
「ガジェットの総数は変わらず。空中に5000,陸上に4000。合計9000ほど、10000には届かないが。かなりの数だ」
すでに別ルートより進入を開始しているエルンストの通信に空に飛ぶ彼らは緊張を高めた。
「目標潜入ポイントに到達。これより潜入を開始する。では、手はず通りに」
エルンストはそのまま返信を待たず通信を切り、以降の通信を不通とした。
「それじゃあ、私たちの出番だね」
なのはは【レイジング・ハート】を構え、嬉々とした様子でレイリアを見た。
「ええ。では、先陣を任せます。遠慮なくぶちかましてください」
レイリアは笑顔と共に親指を立て、あげくにはウィンクさえも彼女に送った。
「うん。お願い、レイジング・ハート」
『Yes,master.Mode Exeliron.Cartridge load (了解です、マスター。モードをエクセリオンへ移行。カートリッジをロードします)』
その先端より少し手前に装備された弾倉から、レイジング・ハートはベルカカートリッジを本体に装填させ、なのはのあふれんばかりの魔力をさらに増強させ莫大な光を放つ。
「温存しておけよ、本番はまだまだ先だ」
朱鷺守はその絶大な魔力を感じ、ヒュウと口笛を吹いた。
「高町一尉の攻撃の後、各自散会。チームを組みつつ戦闘開始」
レイリアの指示に全員が「了解」と答え、なのはは脳裏にインプットされた敵の中心へとその矛先を向ける。
「ディバイン・バスター!!!」
どこからか鈴の音がチリンと鳴った。
「複雑な作りだ」
隔壁の割れ目から内部に進入したエルンストは、未だアラームの響かない内部を見回しそうため息をついた。
先ほどから【ストライク・ビューワー】が収集する情報を租借し、彼はその内部にしかれたセキュリティーシステムの密度の濃さを思い知った。
「急ぐか」
そして、エルンストは【クリミナル・エア】をセットアップさせガジェットをコントロールする場所を検索した。
そして、歩き出したエルンストの懐から鈴の鳴る音が一つ響いた。
「なんだ?」
エルンストはそれを取り出し、そして見た。両親の形見のものかもしれない壊れたデバイスコア。それは何の光も放たない赤い宝石だった。
おそらく気のせいだったのだろうと彼は、それを再び懐にしまい込み道を急いだ。
「いいか、お前ら。単独で相手とやり合おうとするな。常に連携を心がけろ」
ひっきりなしに次が現れる戦場で、両手に持つナイフを振るいながら朱鷺守は全員に檄を飛ばした。
「そういうあなたも、もう少し連携を意識したらどうですか?」
その戦場の中心に立ち、様々な特殊効果弾頭を打ち続けるレイリアがそう朱鷺守に伝えた。
レイリアの周囲には彼を守ろうとするかのように、様々な色彩を放つ光弾がぐるぐると飛び回る。
その数はすでに20を超えて、なおも増え続ける。
「Magic burret , semi activ control.Gard to Tokinokami」
レイリアはそう叫び、朱鷺守の周辺に魔力弾を展開させた。その数8。
2発のデコイを含むそれは、ガジェットの照準を乱し、残る6は朱鷺守の死角に回り込もうとするそれらに襲いかかり打ち抜く。
「余計なことだよ、レイリア」
チッと乱暴に舌打ちした朱鷺守は、勝手に自分の獲物を捕られた腹いせに彼の背後に目をやった。
レイリアの弾頭をかいくぐり、高速度で飛来するガジェットをその目が捕らえた。
「Extreme Hurricane!!!
その言葉と共に朱鷺守の姿が消えた。いや、それはレイリアの目にそう映っただけに過ぎず、彼の姿は彼の背後に飛来するガジェットの機体を正確に捉え、それを両断した。
「俺に何の意識が必要だって?」
にやっと笑う朱鷺守は、ガジェットが吹き上げたオイルがべっとりと付着したナイフ、【ナイトホーク】を掲げニヤッと笑っていた。
「これは失礼。あなたの機動力は最高です」
朱鷺守の切り札。人間では到底移すことのできないほどの高速軌道制御技術は、それだけで力となるほど練り上げられたものだ。
朱鷺守はまたにやりと笑い、
「レイリア、お前は双子のリーファをフォローしにいけ。俺は、高町一尉とヴィータ二尉の所へ行く」
「了解です、朱鷺守一尉」
レイリアは再び特殊効果弾頭を周囲にまき散らしながら苦戦を強いられつつある双子のリーファの元へと飛び去っていった。
「ガジェット残り4800。先は長そうだな」
朱鷺守は、煙草を吸う仕草でため息をはき出すと、側に寄ってきたガジェットを一掃しそのまま姿を消した。
そして、彼が姿を示した先で戦闘を繰り広げる彼女たちはいきなり自身達の周りにのさばっていたガジェット達が一瞬でくず鉄に変化したことに目を見張った。
「朱鷺守一尉」
なのはは力強い増援に声を上げた。
「お二方の獲物を奪ってしまい申し訳なかったな」
それは先ほどレイリアに奪われたことに対する腹いせだったのだろうか。それに対してヴィータは、不満そうな表情を浮かべるが、獲物となるガジェットはまだまだ大量にいることを見、【グラーフ・アイゼン】の巨体を振り回す。
彼女の小さな体を起点として、それはまさに嵐のような回転を始めそれに群がるガジェットをことごとく打ち砕いていく。
「俺も、負けられないな。Extrem Hurricane!!」
再び神速の嵐が吹き荒れた。
「アクセルシュート。行って!」
『Yes,master』
薔薇色の粒子が収束し、彼女の周囲に広がり幾重もの結晶を形作る。それらはなのはの意志に忠実に従い、飛翔し彼らの周囲を埋めるガジェットの一翼に襲いかかる。
その一つ一つに込められた魔力、それを見て朱鷺守は改めて彼女の身に込められた魔力の絶大さを実感した。
「さすがはAce Of Ace。魔力量は時空世界随一か」
「朱鷺守、後ろだ!」
なのはの攻撃に目を取られた朱鷺守は背後、左右、正面、上下にガジェットの侵入を許した。
魔力行使の直後に硬直するなのは、敵を捌くことに手一杯のヴィータではそれをフォローすることができない。
敵の一斉射撃、光に満たされる朱鷺守。
「Illusion Air」
その爆風の先にあるものは、多くの姿を持つ朱鷺守。
「幻術? だけど魔力は感じない」
なのはは再び魔力をチャージしながらそれに目を見張った。
幻術により自らの姿多く見せる術は、彼女にとって初めてではなかった。現在執務官としてそのキャリアを積み上げるティアナ・ランスターもその幻術の使い手だったが、彼のものはそれとはまた違って見える。
ガジェットもその姿に幻惑され、その攻撃を停止させる。
「Escape Air」
朱鷺守達はそれを呟き、自ら生み出した幻術の数だけの攻撃を重ねる。
それは魔力を利用した幻術ではなく、彼の体得した特殊な機動制御だった。動きに緩急をつけ、瞬速と低速を組み合わせることで錯視を引き起こす。
周囲のガジェットを排除した朱鷺守はその姿を再び一体へと戻す。
(なるほど、あれはガジェットにも有効ということか)
急加速と急制動を繰り返すその機動は、体に莫大な負担を強いるものだった。故に、朱鷺守の間接は様々な類の軋みをあげ始める。
(やはり、あれは疲れるな)
朱鷺守は思い通りにならない自身の体の限界に舌打ちすると、痛覚のノイズを強引に頭の中から追い出すと、再び神速の世界へと飛び込んでいった。
『そんな戦い方を続けていると、いつかすべてを失いますよ、朱鷺守一尉』
朱鷺守はなのはの念話にゆっくりと笑みを浮かべた。
『問題ない、すでに覚悟の上だ』
守りたかったものを守れなかった。そのときから彼はすでに覚悟を決めていた。この身に何が訪れようともすべてを受け入れると。
彼は自らのすべてをかけて戦場を駆けめぐる。その瞳には何の後悔も浮かんでいなかった。
要塞に鳴り響くアラームは自分の侵入に対するものではないことは明らかだった。
閉ざされた隔壁を迂回しつつ、天井に張り巡らされた通気口の狭い通路に身を押し込めていたエルンストは外の様子に意識を向けた。
ここからではその様子を感じ取ることはできない、しかし【ストライク・ビューワー】が収集した情報からその状況を組み立てると、彼らの戦況は消して悪いものではないということだった。
(だが、多勢に無勢か。急がなくては)
外の警備に対して内部の警備はそれほど厳重ではなかった。ここまであっさりと侵入できたことに彼は敵の罠を感じ取ったが、今のところその様子はなく、要塞全体は外の彼らへの対策に追われている様子だ。
確かに、内部を警備するガジェットがかなりの頻度で彼の下を通り過ぎるが、ガジェットごときには彼を発見するような手だてはないことは明らかだった。
そして、彼はしばらく進み、通気口(エアダクト)から漏れ出す光を視界に捕らえた。
(目標地点に到達。警備は……警備兵四人と制御技師(コントローラー)八人か)
コントロールルームの正面のモニターには要塞周囲の戦略図が映し出され、その縁の小窓にはそれぞれ六人の魔導師が映し出されていた。
それは、外で必死にガジェットと戦う仲間達だった。
まだ誰も落とされていない。エルンストはそれを確認すると、腰のポーチから一掴みほどの大きさのものを取り出しその先端を捻った。
「お休み(Good night)」
エルンストはそうつぶやくとそれを通気口の隙間から部屋へと落とし、自身は身を潜めた。
チャリンという音と共にそれは部屋の中央の床にはね、それと共に莫大なエネルギーをはじき出した。
熱と衝撃、四散する破片をまき散らし、そこにいた者達はそれにあおられるように吹き飛び、エルンストはその部屋へと降り立った。
「き、貴様は……」
体を吹き飛ばされ息絶え絶えに身を横たえるそれに、エルンストは小型銃(ハンドガン)を突きつけ、
「あんたには恨みはない。だが、任務のためだ。死んでくれ」
といってその引き金を引いた。
部屋の中に動くものが居なくなったことを確認し、エルンストはその中央のコンソールに向き合うと、【ストライク・ビューワー】とそのシステムを連結させその内部へと侵入する。
「ガジェット停止。基地防衛システム休止。システムパスワードロック」
その瞬間、システムのモニターに映る無数の光点が一気に停止した。
「任務完了。次のステージに移行する」
エルンストはそう呟き、来た道とは違う通気口を通ってその部屋を後にした。
数分後、ガジェットの停止を受けてコントロールルームに駆け込んだ警備兵とシステムエンジニアだったが、そのシステムがきわめて堅固なロックがかけられていることを発見し、基地に何者かの侵入があったことを初めて知ることとなった。
ガジェットの停止を受け、レイリア達はエルンストの任務の成功を確信し、彼らも作戦の第二段階(セカンド・ステージ)への移行を開始した。
そして、ガジェット共に基地の防空システムとその防壁がまとめてダウンしたところになのはがたたき込んだ大規模砲撃に基地に大穴が穿たれることとなる。
レイリアを中心とした陽動班はそのまま基地制圧隊として敵本拠地へと堂々たる凱旋を果たした。
彼らの侵入を許した基地全域は、非常警戒態勢が敷かれ先行した侵入者への対策は後に回されることとなった。
それほど、基地制圧隊の攻撃は熾烈で、既に用済みとなったガジェットの復活が絶望視される中戦場へとかり出された魔道警備隊は彼らの進行を止めることはできず、彼らの進む道の後ろには気を失う彼らの姿が累々と積み上げられるばかりだった。
なのははエルンストとの合流を提案したが、このままの勢いを止めたくない朱鷺守は彼との合流を後回しにしてそのままの進行を提案する。
そしてレイリアは朱鷺守の提案を採用し、ただその中央へと駆け上がる。
後はその首謀者、この要塞の主を追い詰めるだけであった。
レイリアは広い広間の中心に立ち、ようやくこの時がやってきたと、敵魔導師立ちを排除し終えた彼らに目を向けた。
「どうしたの? レイリア」
【レイジング・ハート】をおろしたなのはは、流石に体に襲いかかる疲労に額の汗をぬぐった。
「ようやく排除し終わったか。結構、優秀な奴らを雇ってやがったな」
朱鷺守も同様にその疲労を隠せない様子だった。体の節々に襲いかかる痛覚(ノイズ)を無視しきれず、彼は膝をついた。
「朱鷺守一尉。少し無茶をしすぎです」
エリオンはそんな彼をいたわるように、その背中をなでた。
「だけど、あたしもいい加減疲れたわ。あと少しだって思いたいけど」
アリシアは【ストライクイーグル】を今だけセットオフさせ、その場に崩れ落ちるように座り込んだ。
「あたしはまだまだいけるぞ。さあ、次は何処だ?」
ヴィータはまだまだ猛る戦意を奮い立たせ、【グラーフ・アイゼン】を肩に背負いレイリアに視線を移した。
なのは、朱鷺守、ヴィータ、双子のリーファの視線を受け、レイリアはどこか寂しそうな笑みを浮かべ、そしてその言葉を紡ぎ出した。
「次はありません。これでお終いです」
レイリアはそういって指を鳴らした。それはすべての終局を伝える指鳴りとして広い空間に響き渡った。
エルンストはその一部始終を少し高い場所、彼らの立つ位置では影となりその姿を伺うことのできない位置で見ていた。
レイリアの指鳴りは彼の耳にも届けられ、それと同時にレイリアの眼前にたたずむ彼らはその床から伸びる光の束縛の元にひれ伏すこととなった。
「どういうつもりだ……。レイリア」
朱鷺守の声。怒りを秘めながらもそれをあらわにしない、重く響き渡る声。
「レイリア、あんた何を……」
デバイスをセットオフさせたアリシアはその束縛をもろに受け、何もなす事もできずただ傅くだけだった。その眼に浮かぶ一条の涙は、何もできない自分に対する憤りなのか。
「僕たちを、裏切るのですか?」
体を縛されていてもなお冷静さを崩さないエリオンの視線がレイリアに突き立てられる。
「裏切りではないよ、これが僕の目的だ。ただそれだけのことだ」
レイリアはそういうと再び自らの拳銃型デバイス【トーラス】を構え、それを身動きできない彼らに対して撃ち込んだ。
その弾頭が提供するものは、彼らに対する束縛を強める結界だった。
「その通り。彼はもとよりこちら側の人間だ」
その声と共に、レイリアの側に転移する者があった。それは、突然床に描かれた魔法陣として光に包まれその姿が徐々に明らかになっていく。
そして、その姿が完全に明らかになったとき、彼らは息を飲み込んだ。
「ご苦労だったな、レイリア。君の有能さには脱帽だよ」
そこに立っていた者、それは特務機動中隊の司令官。南雲白貴だった。
「僕の命を人質に取っておきながらよく言うよ。僕は初めから依頼主(クライアント)を裏切ったりはしないのに」
レイリアは両手を掲げ、肩を下ろしそうつぶやいた。
「仕事柄、人を信頼することができなくてね。残念ながらそれを取り去ることはできないが、その分君は多大な力を得ることになった。それに関しては感謝してもらいたいものだな」
南雲はそう鼻で笑い、捕縛された彼らを一瞥した。
「Fの遺産、戦闘機人、聖王のゆりかご。それらを知っている君たちを生かしておくことは私の利益に多大な障害を残す者になるのでね。リカルド・マックフォートが暗殺されたとき、奴の名を使っていたことが公になると拙い。だから君たちには死んでもらうこととした」
なのは達は歯ぎしりをして彼をにらみつけた。
「だが、君たちをみすみす殺してしまうことも利益に反することだというレイリアの提案を受けてね。そこで、君たちには実験体になってもらうこととなるよ。君たちの能力、技術。それらを今後の兵器運用に有効利用させてもらおう。そうすれば私にも莫大な利益が舞い込むこととなる」
「利益、利益……。お前の頭ん中にはそれしかねぇのかよ! そうやってどれだけの命をもてあそんできた」
朱鷺守は口の縁ににじみ出る血をかみしめ、泥を吐くようにそれを言葉にした。
「私の利益は、時空世界の利益につながる。そうして、私は多くの者の命を奪い、そうして多くの命を救う手だてを提供してきた。君たちがかつて設立した機動六課、そして特務機動中隊。ジェイル・スカリエッティ。それらもそういった利益の上に成り立ってきたものだ」
「レイリアも、そんなことに納得したというの? そんなくだらないものにあなたは共感したというの?」
なのはの叫びはレイリアの心に届けられ、レイリアはうなじをかいて頭を垂れた。
「共感なんてしていませんよ。高町一尉。ですが、僕は雇われの兵士ですから、クライアントの正義などには興味ありません。ただし、雇われた以上自分の仕事をするだけです。それが僕の正義ということでどうですか?」
それは完璧な回答だった。そして、なのはも彼の思惑を感じ、その力を解放した。
「わかったよ、レイリア。あなたが自分自身の正義を貫くなら私も私の正義を貫くよ」
なのはの力を受けて、彼らの束縛は軋みをあげ始める。
「あたしも、テメェを赦さねぇ」
ヴィータの雄叫び、朱鷺守の覇気、双子のリーファの底にあふれる力の源流が一つとなり、彼らを束縛する光の綱は鈍い残響を残して消滅した。
「やはり、この程度では動けるか。では、レイリア。彼らを何とかしたまえ」
南雲はそういうと、レイリアから一歩下がり彼を包み込むように光の壁がその周囲を守った。
「了解しましたよ、クライアント殿。金の分は働いて見せましょう」
完全に自由を取り戻したなのは達を前に、レイリアは【トーラス】を構えキハイル式カートリッジをロードした。
レイリアの周りに出現した大量のガジェット。そして、外では使用されることのなかった戦闘機人。レイリアはそれらを自由に操り、彼らと相対する。
「さすがはレイリアだ。こっちの行動を完璧に理解している訳か」
【Illusion Air】と【Extreme Hurricane】を集中運用しつつ、その死角を狙うかのように攻撃を重ねる戦闘機人達を相手に朱鷺守は、レイリアの戦術に舌を巻いた。
「しかも、こっちはさっきまでの戦闘と、先ほどの束縛破壊でかなりの力を失っていますから。かなり不利です」
朱鷺守を援護するように射撃を続けるレイリアも、自身のデバイス【トムキャット】を握る手が震えることを自覚していた。
「だけどあいつだけは許せないのよ! 絶対にぶった押して謝らせてやるんだから」
アリシアは枯渇しつつある魔力を、ベルカのカートリッジで何とか増幅しその側を飛来するガジェットを一体ずつ殲滅していく。
しかし、その状況は圧倒的に不利であるに違いない。それを俯瞰するエルンストの目にも彼らの身の振りには精彩がかけていると感じていた。
そして、エルンストは前日、レイリアと最後に交わした言葉を思い出していた。
『君にお願いがあるといった方がいいかな』
それは誰にも気がつかれてはならない、レイリアの覚悟と真意がいったい何処にあるのかを示す言葉だった。
そして、彼はそれに了承した。
エルンストは【クリミナル・エア】を構え直し、【ストライク・ビューワー】をのぞき込んだ。
その先に移るレイリアの行動は、流石に多くのガジェットと戦闘機人を操るためなのか普段とは違い、自ら積極的に動かずその場に立ち止まり射撃支援を行っているだけだった。
エルンストはついにこの時がきたと自覚し、その照準を彼の額へと会わせた。
(弾道予測)
その言葉を忠実に守り、【ストライク・ビューワー】は目標となる距離と周囲の環境をすぐさま処理し、その正しい弾頭軌跡を彼に与えた。
「レイリア。お前は、間違いなく信頼に値する人間だった」
【ストライク・ビューワー】の先に移る彼の面がエルンストへ向けられた。その表情はどこか、安心したような笑みに包まれているように感じられた。
そして、彼はその引き金を引いた。