魔法少女リリカルなのはFF〜Midnight Circus〜   作:柳沢紀雪

9 / 29
第九話 再会

 なのは達の到着を知った機動中隊の司令官、南雲白貴は彼らを司令室へ通すように命令した。

 その隣で微笑む八神はやてを見て、南雲は、

「そんなに楽しみなのですか?」

 と聞いた。

 はやてはニコニコして、もちろんと答えた。

「当たり前やんか。なのはちゃんとヴィータと会うのは久しぶりなんやから、楽しみにきまっとるよ」

 京都(みやこ)言葉を思わせる柔らかな口調からは心からの喜びと、いてもたってもいられない嬉しさがわき上がってくるようで、南雲の頬も自然とゆるんでいった。

「僕はむしろ緊張していますよ。幾ら階級が下とはいえ、時空管理局のエース・オブ・エースで名高い高町一等空尉とお会いできるのですから」

 南雲はそういいつつ先程からら落ち着かない様子で、何度もネクタイを直している。直せば直す度にネクタイが曲がっていく様子ははやてにとっては見ていて退屈しないことだったが、一応彼に忠告しておくことにした。

「やっぱり、白貴君でも緊張することあるんやね。うちと初めてあった時はあんなに毅然としてたのが嘘みたいや」

 はやての言葉に南雲は苦笑を浮かべると、その時の自分の内情を正直に告白することとした。

「とんでもない、十分緊張していましたよ。ただ、それを表に出さないように努力しただけです。大変でした」

「そうやったんかー。大変やったんやなぁ」

「ええ、今回もそれが出来るか。とにかく舌がもつれないよう注意しなければなりませんね」

「ほな、お気張りやす」

 はやては扉を叩く音に返事をし、

「空いとるさかいに、入ってんか」

 と行って来客を歓迎した。

「失礼します、南雲三等陸佐並びに八神二等陸佐。高町なのは一等空尉以下三名、出向の事例を拝命し到着いたしました」

 抑揚のある心地の良い声が司令室に響いた。その声に南雲は一気に緊張を高め、はやては久しい友の到着を心より喜んだ。

「ようこそ、高町なのは一等空尉、八神ヴィータ二等陸尉、そしてエルンスト・カーネル一等陸士。我々特務機動中隊はあなた方を歓迎いたします」

 南雲の様子からは緊張を感じられなかった。しかし、実は彼はその内で渦巻く緊張と熾烈な戦いを繰り広げていることを知るはやては笑いを飲み込み、相変わらずニコニコしてそこに座っていた。

 最初は直立不動を保っていたなのは、それでもはやてのその笑顔につられて次第にその頬には笑みが浮かび上がっていく。

「久しぶりやなぁ、なのはちゃん。元気やったか? また痩せたんとちゃう?」

 はやてはおざなり程度に略式敬礼を交わすと、すぐになのはの手を握り最近の近状を報告し合った。

「はやて、あたしもいるぞ。無視すんな」

 はやてがあまりにもなのはばかりに話しかけるので、ヴィータは業を煮やしてはやてにからみついた。

「ごめんな、ヴィータ。そやけど、ヴィータはこないだも会ったやん? そやからなのはちゃんとな、ゆるしてな」

 はやてはヴィータの頭を撫でながらそういって微笑んだ。ヴィータははやての笑顔に弱かった。そしてその手で頭を撫でられると、どうしようもなく口がふさがってしまうのだ。

(女三人集まれば云々というのはこういう事かな)

 南雲はそう思い苦笑いを浮かべると、同じく話しについて行けない仲間である所のエルンストを見つけ、視線のあった彼に対して肩をすくめた。

「君も、なかなか面倒な所に立たされたね。高町一尉とヴィータ二尉が相手では気が休まらないだろう?」

 かくいう彼も、英雄に近い誉れを持つ八神はやての後輩として彼女と共にあることが多いため、そういった気苦労は茶飯事のことだった。南雲は何となく自分と同じ境遇の仲間を見つけた気がして、極気軽にそう話しかけた。

「自分はそうは思いません。自分にとって気を休めるということは即ち死を意味する事柄ですので、気が休まる休まらないは問題視しておりません」

 南雲はその答えに驚きを隠せなかった。彼の予想ではエルンストはおそらく苦笑いか最低でも肩をすくめる程度には自分に同意してくれるものだと考えていた。

 それが、どうだ。彼の答えは南雲の言葉を全く持って否定するものではないか。

「ま、まあ君のいうことはもっともだ。今後もその気概を持って任務に当たってくれると嬉しい」

 故に彼が用意する答えは上官としてそれを推奨することしかなかった。

「了解です、南雲三等陸佐」

 エルンストは直立不動を崩さずそのまま敬礼を彼に送った。

(変わった……というよりは、とらえどころのないといった方が良いか。底が知れない奴だな)

 エルンストのプロフィールを熟読していた南雲は、実際エルンストを見るまでこの人物は多少人格に問題はありつつもごく平凡な陸士なのだろうと推察していた。

 しかし、エルンストの気概、その愕然とも言える潔さにはその評価を改めなければならないと直感した。

 そして、何となくだが彼は思った。今回の人事異動は、高町なのはと八神ヴィータばかりに目をとられがちだったが、本来の所彼という人物を巧妙にカムフラージュするための単なる布石なのではないかと。

(もしもそれが真実なら、そのことを八神二佐は知っているのだろうか)

 南雲はいまだ雑談混じりの近状報告を続けるはやて、なのは、ヴィータをに目を向けそれを思った。

 そんな折、部隊長室のドアが叩かれる音が部屋に響いた。

「入り給え」

 今度は南雲がそれに答え、それに呼応して扉に設えられたモーターの駆動音が響き、その先からは一人の長身の女性が顔を見せた。

「ああ、シグナム。ええ所に来たな。こちら、高町一等空尉とヴィータ二等陸尉、それとエルンスト一等陸士や」

 はやてはその来室者に笑顔を見せると、新たな隊員を一人ずつ紹介していった。

 シグナムと呼ばれた長身の女性は、そのまま背筋を伸ばし油断のない視線で三人を見回すと、とても綺麗な姿勢で敬礼を送った。

「お久しぶりです、高町一等空尉、そしてヴィータ二等陸尉。君とは初めてになるかエルンスト一等陸士。あなたたちと任務を共に出来て嬉しく思います」

 なのはとヴィータはそんなシグナムの相変わらずの堅苦しい口調に懐かしさを感じ、敬礼と共に握手を交わした。

「シグナムは今、武装A分隊(アルファ・チーム)の隊長をしてもらってるんよ。せや、シグナム。早速やけどなのはちゃん達を案内してくれるか。後のことは頼むさかい、あんじょうしたって」

 シグナムは自らの主の言葉に敬礼ではなく面を下げ答えた。

「了承いたしました、主はやて。では、高町と他。私に着いてくるいい」

 エルンストは、彼女がはやてを"主"と呼ぶことに若干の疑問を抱きつつ、なのはとヴィータと共にその紅髪の騎士の後についていくこととした。

「本部施設の構造自体は、かつての機動六課と変わらない。しかし、その中でもかなり近代施設にアップデートされてはいるが」

 シグナムは歩きながらその施設の各所を彼らに紹介しつつ、以前と変わらないところ、オミットされたところ、新たに作り替えられた所を順番に巡っていった。

 ここが機動六課だった頃、確かにその多くの施設は最新鋭の設備システムが提供されていたが、その細部では一世代前の旧式システムや、他部隊のお下がりのシステムなども多く見受けられた。特に医療施設がその最たる霊であり、その施設管理長であったシャマルもその事にいろいろ不満を言っていたほどだ。

 しかし、実働部隊として正式予算が下された現在のこの施設は、そこにあるもののあらゆるものが最新鋭、もしくは準新鋭のシステムに埋め尽くされ、そのどれを見ても訓練所で使用されていた二世代も三世代も古いシステム系統とは一線を画す。

 エルンストはその機能美たるや正に感嘆の念を抱く以外に他がなく、そこの職員の多くが自分と同じ新型プラットホームを搭載したキハイル式デバイスシステムを所持していることに好感を持ったほどだった。

 エルンストの持つ【ストライク・ビューワー】に搭載されているコアシステム、ベースライン4と呼ばれるキハイル式デバイスシステムは、従来型のデバイス、なのはやヴィータが所持しているデバイスシステムと違い、その中心には複数のコアが並列接続されたものだ。

 かつて、時空管理局の技術者で現在はアーマード・ウェポン・デバイス社のデバイス開発主任に抜擢された天才技士、キハイル・メースが開発したそのシステムは、従来のデバイスシステムと異なりその中央演算処理機能が大幅に向上しているため、既存のデバイスシステムに比べ、使用者(術者)に対する負担が大幅に軽減されている。

 それまでも、近代ベルカ式カートリッジシステムなどデバイスに関する新機軸が開発されてきていたが、それはどれも既存のデバイスシステムに対する付属機能の一環である側面が強かった。

 しかし、キハイルはそのデバイスシステムのコアに注目し、それまで彼が問題にしていた魔導師の個人差や才覚に左右される戦闘力を何とか解決したい一心で、より汎用的なシステムの開発に着手した。

 それまで問題となっていたものは、魔術師の魔術行使の大部分は術者のリンカーコアの性能に依存していたことだった。つまり、術者のリンカーコアがより複雑かつ高速に大規模な魔術を運用出来るのならそれで問題はないのだが、それよりも劣る性能しか持ち合わせないリンカーコアではより高性能なリンカーコアを持つ魔術師に対しては何があっても勝利することは難しいという事であった。

 故に、時空管理局は有能な人材をつねに欠いている状態であり、それは大きな問題でもあった。

 キハイルはそれを解決させるため、従来ならリンカーコアに依存していた魔力制御運用のシステムの大部分をデバイスコアに依託する方法を思いついた。

 そうすれば従来の魔術師に対する魔術行使にかかる負担も大幅に軽減でき、かつ高性能なリンカーコアを持たない魔導師であってもその魔力量さえ何とか出来れば十分に上位の魔術師に対抗できるというものだった。

 その研究は長年の成果と、過酷な実証トライアルを勝ち抜き、近年になってようやく時空管理局の制式採用を勝ち取る結果となった。

『兵器、武器とは。あらゆる人間が使用しても全く同じ機能を持たなくてはならず、そうではない武器システムは信頼性や汎用性その他に大きな問題を残すこととなる。故に私は、自身の開発したこのキハイル式デバイスシステムがその問題を解決する唯一の方法であると確信する。』

 それは、キハイルが時空管理局の新兵器トライアルの冒頭で述べた演説だった。しかし、キハイルは自身のデバイスシステムにもまだ重要な課題が残されていることを知っていた。

 それは、先にも触れたように使用者本人の魔力、デバイスにとっての動力とも言える要素だった。しかし、彼は近々それも解決するだろうと予言している。

 エルンストを始め、それを知る人間の多くは彼は現在、魔力供給を外部化するバッテリーのようなものを開発しているのだと予測した。

 しかし、それは管理局の採用トライアルにまだ姿を見せていないことから、まだ開発途中の実験段階なのだろうと考えられる。

 ともかく、この数年でデバイスに纏わる多くのことが大規模な変化を見せているのは確かだった。

 なのははその話を最初に聞いた時、技術の躍進の凄まじさとキハイルに対するある一種の敬意を胸に抱いた。そして、同時に既に遠い過去になりつつあるあのときのこと、自身が撃墜され一時期生死の境をさまよったあの事件を思い出していた。

 キハイルの言葉はもっともだとなのはも思う、彼女もまた魔術の無理な行使によって様々な障害を見に受けてきたものの一人だった。特に、先の聖王の揺りかご事件において彼女が使用した無理矢理な魔力運用はその後の彼女の身体に消えない傷を植え付けたのだ。

 自分のような者達が今後現れないためにも、新しい世代の子達にはこのキハイル式デバイスシステムを早急に配備するべきだと思い、彼女自身教導隊内で率先して新システムの導入に奔走した。

 しかし、彼女は自らのデバイス、【レイジング・ハート】に目を向けた。

 なのはは確かに率先して新型システムの導入に力を注いだ。しかし、彼女の持つデバイスがその新型に取って代わることははたしてなかった。

『Master……』

 そんな彼女を心配するように【レイジング・ハート】は淡く光をともした。

「うん、良いのレイジング・ハート。私はあなたと一緒にいたいから」

 首につり下げられた紐の先端で輝く赤色の宝石を手に取り、なのははゆっくりと笑みを浮かべた。

 現在においては旧式となってしまった【レイジング・ハート】は確かに、キハイル式に比べると魔術運用に負担がかかる。特に彼女のような大規模な魔術を集中運用する魔術師ではその負担も顕著に表れるものだ。

 しかし、それでも、なのはは長年連れ添ってきたパートナーであるそのデバイスと別れを告げることなど出来なかった。

 新型システムは従来のオプション改修とはわけが違う。デバイスのコアシステムそのものを交換する事につながるのだから、なのはの考えも理解できる。

 技術部の話によれば、従来のシステムのOS即ち、人格プログラムの情報を新型システムに移し替えることは十分可能だと言うらしいが、それを行った同僚の話では、やはりそれまでのOSとはなにかどこか違うというのだ。

「高町一尉」

 なのはは、後ろを歩くエルンストの声に気がつき意識を現実へと戻した。

「え、えっと、なに?」

 なのはは完全に狼狽していきなり顔を後ろに向けるものだから、角を曲がってきた男とまともにぶつかってしまった。

「にゃ! ご、ごめんなさい」

 なのはの口から着いて出た幼い頃の口癖にエルンストは小首をかしげた。

「いえ、自分こそ失礼いたしました」

 なのはより随分背が高い、エルンストより幾分か長身で細めのその男性はなのはが士官である事に気がつき、直立り頭を下げた。

「ああ、レイリア・フォート二等空士か。ちょうど良いな紹介しておこう」

 その男、シグナムからレイリアと呼ばれた男は下げていた頭をあげ、その代わりに敬礼をなのはにむけた、

「レイリア・フォート二等空士です。本隊では武装B分隊(ブラボー・チーム)の隊員を務めております」

「レイリア二等空士。こちらは高町なのは一等空尉と八神ヴィータ二等陸尉、そしてエルンスト・カーネル一等陸士だ。三人共戦技教導隊からの出向であるから何かと学ぶべき事も多いだろう」

 シグナムの紹介にレイリアと三人は敬礼と握手を交わした。

 レイリアはエルンストと握手を交わす際、何か探りを入れるように彼の目を覗き込んでいたがエルンストにはその理由が思い当たらなかった。

「そういえば、忘れるところでした」

 その紹介が終わったところで、レイリアは少し慌ててシグナムに言葉を向けた。

「朱鷺守(ときのかみ)隊長がシグナム隊長をお呼びでしたよ。何でも、訓練について話をしておきたいとか。あと、ついでにシグナム隊長の休日の予定も知っておきたいともおっしゃっておられました」

  シグナムは朱鷺守の名前が出たところで、あからさまに困惑した表情を浮かべた。

「朱鷺守一等空尉か。訓練について話があるというのであれば足を向けないわけにはいかないが。どうも私はあの者は苦手だ」

 シグナムは上官でありながら同じ隊長の任務にある彼を一定に評価していたが、その人となりにはどうも困惑するしか他がないということらしい。

 朱鷺守(ときのかみ)棋理(きり)一等空尉。第二武装分隊の隊長を務める彼の名はエルンストは聞いたことはなかったが、歴戦の騎士の様相を見せるシグナムがそこまで苦手とする手合いであればおそらく一筋縄では行かないのだろうと予測し、警戒するべき人物(ブラック)リストに彼の名前を記載することとした。ちなみに、そのリストの筆頭にはベルディナ・アーク・ブルーネスのなが記されていることは言うまでもないことである。

 何となく行きづらそうにしているシグナムだったが、レイリアの「お急ぎください、シグナム隊長」という言葉に後押しされ、

「分かった、では、後はレイリア二士に任せることとする。訓練場や隊員の待機所、デバイスの保管庫などを案内しておけ。終わったら司令室に出頭のこと」

「了解、直ちに行動を開始します」

 シグナムよりなのは達の案内を頼まれたレイリアはそう敬礼をして、隊長であるシグナムを見送った。

 レイリアは上官が角を曲がったことを確認し、少しだけリラックスするとすぐになのはたちに目をやり、さっきまで張り詰めていた表情を緩めた。

「シグナム隊長を前にするとやはり緊張しますね。改めてよろしくお願いします高町一尉、ヴィータ二尉、そしてカーネル一士。ようこそ特務機動中隊へ」

 レイリアは敬礼の代わりに彼ら一人ずつと握手を交わした。

 三人はそれぞれ、エルンストも無愛想に「よろしく」と答え彼の握手に答えた。

「さて、案内を申し付かったわけですが、どこまでご覧になられましたか? 訓練場やデバイス保管庫にはもういかれましたか?」

「それはもう一番に」

 なのはは、シグナムの案内で一番最初に立ち寄った訓練所の様子を思い出していた。訓練所は見た目こそなのは達が使っていたころと変わっていなかったが、そのシステムはかなりバージョンアップされた様子で、簡単に聞かされた概要からもかなり利便性が高くなっている様子だった。少なくとも陸士訓練所で使用していたものとは雲泥の差だろう。

 しかも印象的だったのは、興味深そうにそれを眺めるなのはに対してシグナムが、

「なんなら軽く模擬線でもしていくか」

 といって自身のデバイス【レヴァンティン】を取り出したことだった。

 なのはは魅力的な提案だと思いつつ、「シグナムも相変わらずだな」と肩をすくめるヴィータと、「やるなら早く終わらせてくれ」と言いたげに目を細めるエルンストの手前、丁重に断っていた。

 シグナムは実に残念そうな顔で、しぶしぶと【レヴァンティン】を片付けていたが、あの様子なら近いうちにまたお誘いがありそうだとなのはは予感した。

 ともあれ、施設のほとんどを見終わったといわれたレイリアは少し困った様子を見せた。急なことだったが、案内を仰せつかったからにはきっちりとそれを全うしたい、そう思っているのだろう。

 しばらく、レイリアは考え込み、それならばと提案をした。

「だったら、寮にできたカフェにでも行きましょう。たしか、あそこは。中隊が設立されたときに作られたと聞いていますから」

 確かに、なのはとヴィータはそんなところにカフェがあるなど知らなかった。そして、興味もあった。

「いいな。少し休憩がてら一杯やりたかったところだ」

 ヴィータは大賛成のようだったが、エルンストは正直そんなことはどうでもよかったらしく、特に何の意見も反論もしない。

「だったら決まりですね。早速行きましょう」

 レイリアはそういって彼女達を案内しようとした。

「フォート一士。休憩もいいが、お前は自分の仕事をしなくてもいいのか?」

 エルンストの物言いはもっともなことだった。先ほどは彼の上司、朱鷺守から伝言を仰せつかったというだけで、それまで何かしらの業務をしていたはずだった。

 シグナムから頼まれた手前といっても、それでいいものか。

 しかし、エルンストの危惧に対してレイリアは平然な顔をして、

「大丈夫だよ、エルンスト一士。今の僕の仕事はなにせ、君達を案内することだからね。直属ではないといっても上官の命令には逆らえないさ」

 にっこりと笑ってウィンクをした。

「お前は、なかなかいい性格をしているようだ」

 レイリアのその様子にニコルの様子を思い出し、エルンストはわずかながら破顔して、少しだけほほを緩めた。

「そうだろう、君も見習うといい」

「遠慮しておく」

 なのはとヴィータはそんな二人のやり取りをみて、少し、いや、かなり驚いていた。

「エルンスト君って、あんなふうに笑えるんだ」

「ああ、そうみたいだな」

 いつの間にか肩を並べて二人の前を行くエルンストとレイリアをみて、二人はそう囁き合った。

 将来的にはいい相棒になれるかもしれない。二人のその様子からなのはとヴィータはそんなことを思っていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。