もしも、リゼロキャラがIFルートまたは本編から帰ってきたら(スバル主人公) 作:ああ
スバルとエミリアは、息を合わせてシリウスに向かって地を駆ける。この泥臭い激突も、あと一押しで完全に終わるはずだった。
「――ありがと。ごめんね!」
狂乱し、涙を流していたはずのシリウスが、恐るべき精神力で突如として冷静な落ち着きを取り戻した。
ジャラジャラと不吉な金属音を響かせ、鋼の鎖を凄まじい速度で振り回して二人を迎え撃つ。もはや『憤怒』の権能を民衆という人質ごと無力化された彼女は、大罪司教としての驕りを捨て、純粋な素の戦闘力のみでスバルとエミリアを殺害する立ち回りへとシフトしていた。
「スバル! 気を付けて、無理しちゃダメよ!」
「ああ、分かってるッ!」
スバルはエミリアの鋭い警告に従い、シリウスの凶悪な軌道を描く鎖に、間違っても掠りさえしないよう全神経を尖らせていた。
スバルの持つ『魂の鎖』がもたらす超回復は、あくまで『対象者』であるエミリアにしか適用されない。現に、一度目のループで全身を焼かれた際、スバル自身は何の痛みからも、肉体の損壊からも救われなかったという強烈なトラウマがあるのだ。
だからこそ、無茶を利かせるのは自分の方だと判断したエミリアが、自ら率先して前に出て、シリウスの肉薄を食い止めてくれていた。
「焦るな……焦るなよ、俺……! 俺の一番重要な役目は、この後に待ってんだからな!」
エミリアは本来、シリウスに攻撃を命中させれば、負傷の因果が自分に返ってくることを知っている。それなのに、彼女は一切の躊躇を捨て去り、強固な氷の剣や槍を生成してシリウスの肉体を屠らんと猛攻を仕掛けていた。
対するシリウスがそれを鋼の鎖で弾き返し、火花を散らす壮絶な近接戦闘が繰り広げられる。
エミリアがこれほど肉を切らせる覚悟で挑めるのは、どれほど傷つこうとも、背後に控えるスバルの権能が自分を癒やしてくれると信じ切っているからだ。この力を際限なく使うわけにはいかないが、今はシリウスを限界まで消耗させ、隙を作るのが最優先だった。
「この程度か! 口うるさいクソ半魔がぁッ!」
「うっ……!」
目まぐるしく変化する鎖の軌道にばかり気を取られ、エミリアの意識が一瞬だけ疎かになった。その致命的な隙をシリウスは見逃さず、容赦のない痛烈な蹴りがエミリアの脇腹へ叩き込まれた。
小柄な身体が派手に吹き飛ばされる。シリウスは狂気に満ちた目の色をさらに変え、今度は守り手を失ったスバルの元へと一直線に突進してきた。
「おらぁああッ!!」
スバルは足元の瓦礫から手頃な石を拾い上げ、渾身の力でシリウスへ投げつけた。エミリアとの繋がりによって強化されたその投擲速度は、時速170キロメートルを優に超える剛速球だったが、シリウスは走りながらも上体を不気味に仰け反らせ、あっさりとそれを回避してみせた。
「ガキがぁ! ごめんね!」
シリウスの腕が振られ、横凪に襲い来る鎖の刃を、スバルは決死の跳躍でギリギリ回避する。身体能力がどれだけ上がっていようとも、完全に逃げ場をなくされ、追い込まれてしまえば、一撃で肉体を破壊されてしまう。耐久力に関してはただの一般人なのだから、その状況を作られた時点で、ナツキ・スバルの負けは確定する。
着地と同時に必死に地面を転がり、回り込むことで、スバルは何とか最悪の窮地を脱した。
「やべえ……っ、マジでやばかった……!」
ほんの少しの間、身を交わしただけで骨の髄まで理解させられる、シリウスという怪物の恐ろしさ。その絶対的な実力差の恐怖を、スバルは肌を焦がされるような緊張感とともに痛感していた。
権能の特性に頼り切った敵であれば、その弱点やシステムを突くことで完封できる。だが、シリウスという大罪司教は、権能というハメ技を使わずとも、その素の戦闘技術だけでスバルとエミリアを十分に屠りきれるほどの、本物の強者だったのだ。
ドクン――!!
またしても、エミリアがスバルの魂を引き絞り、その力を行使した。それは、彼女が早々にこの戦いを終わらせると瞬時に判断した明確な証拠だった。
「――ウル・ヒューマ!!」
凍てつく詠唱の直後、シリウスの頭上からは巨大な氷柱の雨が降り注ぎ、エミリアの周囲の空間には無数の鋭利な氷の槍が浮かび上がった。そして、それらすべてが網の目の如き包囲網となって、一斉にシリウスへと撃ち放たれた。
「煩わしいぃいいいいッ!!」
シリウスは絶叫しながら鋼の鎖を縦横無尽に振り回し、迫り来る氷の嵐をすべて叩き落とそうと暴れ狂う。凄まじいのは、彼女がその狂乱のなかでも、確実に自分を仕留めにくる一本一本の氷柱を目で捉え、完璧に打ち払っていることだった。その卓越した武の技術は、紛れもなく強者そのもの。
「よくもまあ、そんな天才的な技術を、こんな最悪な大罪の行いに使えるもんだぜ……っ!」
スバルとエミリアの胸中に、全く同じ憤りとやり切れなさが同時に湧き上がる。
だが、それこそがエミリアの狙いだった。
「――捕まえたわ!!」
シリウスは、背後から響いたエミリアの凛とした声に、驚愕のあまり目を見開いた。
つららの弾幕を自ら潜り抜け、まさかエミリア自身が死角から懐へと肉薄してくるとは、夢にも思っていなかったのだろう。
エミリアはシリウスの背後を完全に捕らえると、その細い腕で彼女の身体をがっちりと拘束した。直後、残されていたおびたたしい数の氷の槍が、エミリアとシリウスの両方の肉体へと等しく突き刺さり、二人の身体に痛々しい鮮血の傷跡を刻んでいく。
「あああああ!!! 触るなぁ!!! 汚らわしい半魔めがぁあああッ!!」
スバルは迷うことなく、石畳を蹴って走り出した。
自分が握りしめている『奥の手』と、最大の『切り札』を解き放つタイミングは、今この瞬間を置いて他にない。
「――勝負はここで決めるぜ、大罪司教!!」
不快感と肉体の苦痛に絶叫を上げるシリウスは、とうとう自分を掴んで離さないエミリアごと、自身の放つ赤紫の豪炎で全てを燃やし尽くそうとマナを爆発させた。
だが、それもすべて想定内の行動だ。エミリアは、シリウスが死なばもろともで炎を出してくることを分かっていたかのように、即座に極大の氷魔法を展開し、自分ごとシリウスの肉体を凍り付かせようと魔法をぶつける。
激しく炸裂する炎と氷が相殺し合い、お互いの決定打を相殺していく。
だが――肉体の負傷の度合いに関しては、エミリアの方が圧倒的に悲惨なのは火を見るより明らかだった。エミリアは自分で受けたつららの傷とは別に、シリウスの『憤怒』の権能によって共有された、シリウス自身の負傷をも同時にその身に受けている。つまり、一つの攻撃で『二倍の傷』をその肉体に刻まれてしまっているのだ。
走る激痛に、エミリアは細い眉をひそめて苦悶の表情を浮かべた。しかし、正面から死に物狂いで走ってくるスバルの姿をその紫紺の瞳に捉えた瞬間、彼女は残された最後の力を振り絞り、シリウスの背後から一歩身を引いた。
「スバル! お願い――ッ!!」
離脱の間際、エミリアの手のひらから作り出されたのは、一本の鋭利な氷の剣。
彼女がそれをスバルへ向けて投擲すると、スバルは限界突破した速度で見事にその柄を キャッチし、力強く肯いてみせた。
そして、一切の迷いなく、民衆の人質を失ってただの剥き出しの怪物となったシリウス・ロマネコンティの胸元へ向かって突進する。
エミリアの拘束から解放されたシリウスもまた、ぎちぎちと首を鳴らしながら、眼前に迫るナツキ・スバルへとその凶悪な殺意のすべてを集中させた。
エミリア、もう少しだけ。いいや、この最後の一撃、その胸を抉る痛みをどうか耐えてくれ。
スバルは心の中で血の涙を流しながら、氷の剣を握りしめてシリウスへと突き進んだ。
この狂った大戦、エミリアが逃げ遅れた民衆をその時間ごと氷に閉ざし、シリウスの『負傷共有』という人質から救い出してくれなければ、この勝利の未来は絶対になかった。さらに今この瞬間も、エミリアが「己の心臓を貫かれる絶望的な痛み」に一瞬だけ耐えるという、過酷な犠牲を呑み込んでくれなければ、ナツキ・スバルに勝ちの目は万に一つも存在しないのだ。
彼女の気高き献身に魂の底から感謝し、それほどまでの大痛撃を彼女に強いてしまう我が身の無力さに激しい申し訳なさを抱きながらも――ここで一瞬でも躊躇すれば、積み上げたすべての覚悟が無駄になる。
「お前に……っ! この無力な羽虫に、何ができる!!!」
もはや、シリウスにふざけたお笑い草の余裕など一欠片も残っていなかった。鋼の鎖に赤紫の豪炎をこれでもかと纏わせ、突撃してくるスバルへ向けて、空間を爆裂させながら猛然と振り回した。
スバルの足が、シリウスの肉体に届くまでにはまだ明確な距離がある。いくら身体能力が上がっていようとも、その白熱する死の鉄鎖をかいくぐり、ただの高校生がトドメを刺すことなど本来は不可能なはずだった。
「――力を貸してくれ、ラインハルトッ!!!」
「な……にっ……!?」
スバルの口から吠えられた、世界最強の『剣聖』の名。
その絶対的な絶望の響きに、シリウスの全身の細胞が、自らの明確な『死』を覚えて強烈に恐怖した。彼女は本能的に鎖の軌道を狂わせ、スバルの接近を妨害することよりも、自らの視界を周囲の路地裏へと必死に走らせてラインハルトの姿を捜索した。
だが、その世界最強の男はこの戦場には存在しない。――完全に、スバルの仕掛けた一世一代のブラフだった。
シリウスの恐怖によって狂った、炎の鎖の軌道。限界まで加速したスバルの視界には、それが信じられないほどスローモーションに見えていた。
エミリアから投げ渡された氷の剣を正確に振るい、迫り来る鎖の芯を叩いて弾く。その反動で方向を変え、死神の鎌のようにスバルの首筋へと巻き付いてくる鎖に対し、スバルは上体を地面すれすれまで深く沈め、その下を滑り込むようにして完全に躱しきってみせた。
エミリアの決死の猛攻のおかげで、シリウスはすでに限界まで消耗している。その鎖の振り方にも隠しきれない疲弊が滲んでいた。今のナツキ・スバルに、その攻撃が当たる道理はどこにもなかった。
「いつの間に……!! これほどの、これほどの不条理な力を、どこで手に入れたのですかぁあッ!!」
シリウスは、ラインハルトがこの場に駆けつけていない事実に安堵したのも束の間、明らかに次元の違う動きを見せるスバルに対して激怒した。
スバルは依然として、彼女が最も憎悪するあの不吉な『紫紺の瞳』をらんらんと輝かせながら、シリウスの懐へと一気に距離を詰め連ねる。
――ナツキ・スバルがこの瞬間に犯した、もう一つの『傲慢』。
それは、懐に飛び込むまさにその刹那、『魂の鎖』の接続対象を、エミリアから――この街でフェルトを探しているはずのラインハルトへと、強制的に変更したことだった。
その傲慢なる切り替えがもたらした恩恵は、エミリアとの繋がりの時とは比較にならないほど、規格外の身体能力強化としてスバルの四肢を爆発的に跳ね上げていた。
世界に祝福された男、ラインハルト・ヴァン・アストレアの無敵の加護の片鱗。その脳が融けるほどの凄まじい全能感が、スバルの無力な背中を強烈に押し上げる。
そして――。思考を完全に置き去りにされたシリウスを終わらせるため、スバルはアヤマツの悪夢から引き継いだ、本物の『切り札』を解き放った。
「――ッ、シャマク!!!!」
ナツキ・スバルは、サテラによって見せられたあの『傲慢の予知夢』のなかで、自らが扱えるはずの陰魔法の真髄を完全にモノにしていた。
パチ、と大気が爆ぜる音と共に、シリウスの周囲の空間に、光のすべてを拒絶する漆黒の霧が立ち込める。
大罪司教の肉体は闇に呑まれ、視界を奪われるだけでなく、音も、肌に触れる空気の感覚すらもすべてを遮断された。当然、眼前に迫っていたはずのナツキ・スバルの存在をも完全に完全に見失う。
「ふふふ……っ!! あははは! ありがと! ここまで、ここまで私を徹底的に追い詰めたその歪んだ愛を認めましょう!! ――でも、ごめんね!!」
「――これで、終わりだ!!!」
黒霧の中で五感を失い、完全にスバルを見失って背中を晒したシリウスの胸元へと、スバルは背後から氷の剣を、その心臓めがけて容赦なく突き刺した。
――グズゥ、と最悪の肉の破壊の感触が、氷の柄を通じてスバルの両手に生々しく伝わる。
シリウスの息の根を完全に止める、渾身の一刺し。鳥肌の立つような嫌悪感が全身を駆け巡るが、躊躇している時間は一秒たりともない。今この瞬間、因果の鎖で繋がったエミリアの心臓もまた、シリウスと全く同じように鋭利な刃で貫かれた致命的な大ダメージを受けているのだから。
スバルはすぐにでも権能の対象をエミリアに戻し、超回復で彼女を救おうとした――まさに、その刹那だった。
「ぐあああああああああああッ!!!!」
「ハハハハハハハ!!! あははははははははははッ!!!」
黒霧の奥から、シリウスの狂気的な絶叫と、勝ち誇ったような哄笑が同時に木霊した。
死に体のシリウスは、自らの胸を貫いたスバルごと、身体に隠し持っていた残りの全ての力を爆発させ、二人まとめて赤紫の豪炎で包み込んだのだ。
大罪司教はもう、自分が生き残ることを完全に諦め、スバルを奈落の道連れにするつもりなのだ。スバルがここで燃え尽きれば、エミリアも同じように焼き死ぬ。エミリアが死ねば、大通りで氷漬けになった大勢の民衆たちは一生仮死状態のまま、物言わぬ氷像として朽ち果てる。どこまでも悪辣で性悪なシリウスは、自分が敗北してもなお、ただでは終わらせてくれない。
「死ねえええ! 一緒に灰になって、私たちの愛の礎になれぇえええッ!!!」
凄まじい業火に全身を直撃され、肉体を焼かれる絶望的な熱量。
だが――激痛に意識を奪われ、手足が動かなくなるまでの間、スバルの肉体には奇跡的な『時間』が残されていた。それこそが、世界最強の男と『魂の鎖』で繋がっているおかげでもたらされた、規格外の生存能力だった。
「おおお、らぁああああああッ!!!」
スバルは炎に包まれながらも奥歯を噛み砕き、シリウスの胸から氷の剣を力任せに引き抜いた。
ドバシャァアアッと、シリウスの肉体からおびただしい量の鮮血が石畳へぶちまけられる。
その、世界の誰もが無視できない致命的な『命の完全な崩壊』に至って、スバルを包んでいたシリウスの豪炎は、嘘のように一瞬で完全消失した。
ドサリ、とシリウスとスバルの二人の身体が、同時に血の海と化した地面へ倒れ伏す。
だが、ナツキ・スバルのボロボロになった心と体は、まだ、絶対に折れてなどいなかった。
「……エ、ミリア……っ」
スバルは薄れゆく意識のなかで、傲慢の権能の対象者を、ラインハルトから――大好きなエミリアへと再び書き換えた。
頼む。 間に合ってくれ、頼むから。
自分の不手際のせいで、想定以上の地獄の苦痛を彼女に追わせてしまった。けれど、この権能の鎖さえカチリと繋がってしまえば、その激痛は一瞬で消え去り、あとは急速に治癒していくだけ。
スバルはボロボロになり、黒く焦げた肉体の痛みに耐えながら、必死に首を巡らせてエミリアの姿を確認した。
「はぁ……っ、はぁ、はぁ……」
スバルの唇から、安堵の息が漏れた。
視線の先、崩れ落ちていたエミリアの全身から――特に、刃に貫かれたはずのその胸元から、激しい白い蒸気がシュウシュウと立ち上り、見る見るうちに傷口を塞いで超回復していくのが見えた。
口元からたらりと鮮血を流してはいるものの、彼女はスバルと視線が合うと、この理不尽な勝利を分かち合うように、弱々しく、けれど愛おしそうに小さく笑ってみせたのだ。
満身創痍で、血に汚れ、髪を乱していても――なお、あまりにも美しすぎる。
生還の喜びの中で、思わずそんなことすら考えてしまうほどに。
事前に完璧な作戦を打ち合わせ、アヤマツの記憶から引き継いだ初見殺しの陰魔法、シャマクを解き放ち、世界最強であるラインハルトまで都合よく利用し尽くして――。
ナツキ・スバルは今、ただの一度も死ぬことなく、あの絶望的な怪物を相手に、文字通り『ギリギリの完全勝利』を掴み取ってみせたのだった。
「マジで……最初に出てきていい敵じゃねーな……」
世界そのものを呪うように、スバルは血まみれで仰向けのまま、眩しい青空を見上げてそう吐き捨てた。
「スバルッ! ――っ、う、あ……っ!?」
だが、安堵という名の奇跡は、一瞬にしてその手から滑り落ちた。
エミリアが悲痛な声を上げてスバルの名を叫び、その直後、何かに心根を激しく引き裂かれたかのような悍ましい呻き声を漏らしたのだ。
「ふふ、あは……っ」
スバルのすぐ横に倒れ伏し、心臓を貫かれて死んでいるはずの恐ろしい女の、最期の不敵な笑みがスバルの鼓膜へ届いた。
「待て、待て待て待て……ッ!! 嘘だろおいッ!!」
スバルは悪寒に総毛立ち、ボロボロに焼け焦げた肉体の悲鳴を無視して、無理やり地面を引きずるように上体を引き起こした。
「さぁ……っ! ここから、生き延びてみろ……ナツキ・スバル……ッ!!」
シリウス・ロマネコンティは、全身を自らの炎で焼き焦がし、口からどす黒い血泡を吹きながら、今度こそ完全に絶命した。
だが、その執念深い大罪の命が果てる最後の刹那、彼女がこの場に『最悪の呪い』を遺していったのはスバルの目にも明らかだった。
どこへ呪いを遺したのか――スバルは嫌な汗を流しながら、恐る恐る視線をエミリアの方へと向けた。
心臓の致命傷からはすでに超回復を遂げ、肉体的な命は完全に安泰のはずのエミリア。
だが、先ほどまでスバルと繋がっていた、あの気高くも儚い『紫紺の瞳』は、彼女の双眸から完全に消失していた。
代わりにその瞳を支配していたのは、すべてを呪う怪物の色。
エミリアは、死に際のシリウスが全存在を賭けて解き放った『憤怒』の精神汚染の濁流に真っ向から呑み込まれ、その両目をドロドロとした不吉な赤色に、妖しく光らせていたのだった。
どっち派?
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レム
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