もしも、リゼロキャラがIFルートまたは本編から初期地点に帰ってきたら(スバル主人公) 作:ああ
「ようやく、死にたくなったの? バルス」
突如として背後の闇から現れたラムの存在に驚愕し、スバルは絶叫を噛み殺しながら、地面から弾かれたように飛び起きた。
「ラインハルトはどうした! あいつが見張ってたはずだろうが!」
心臓を激しく脈打たせながら、スバルは一歩、また一歩と濡れた土を踏みしめて後ずさり、彼女との距離を確保しようともがく。
「騙したのよ。ロズワール邸において、外へと繋がる出口なんて無数に存在するわ」
「なんで、邪魔すんだよお前はっ!」
後退を続けたスバルの靴底が、ついに崖の境界線を越えてパラパラと小石を奈落へと落とす。とうとう足場が途切れ、スバルの背後には完全な逃げ場がなくなってしまった。
「戻ってきなさい、バルス」
ラムは自暴自棄になった子供を諭すように、極めて落ち着いた静かな声音でそう言った。
崖下の冷たい風が二人の髪を揺らす。まだ、彼らの間には数歩分の中途半端な距離が横たわっていた。
「おい、待て。いや、まずなんでお前に俺のこの場所が分かったんだよ?」
「『千里眼』よ。くだらない時間稼ぎはやめなさい」
ラムから返されたあまりにも簡潔で、そして絶対的な回答に、スバルはまるで氷水を頭から浴びせられたかのように声を失い、沈黙した。
「生きてさえいれば、そのうち少しは良い事もあるわ。まずは頭を冷やして、少し落ち着きなさい」
ラムはそう告げると、これ以上の問答を拒絶するように、ゆっくりとスバルへ向けて歩みを進めてきた。
「ふ……っ、ふざけんな、近寄るなァ!!」
スバルが喉を引き裂くような大音量で絶叫した瞬間、ラムの細い足がピタリと止まる。
その薄桃色の双眸が鋭く細められ、狂気的なスバルの動向を一挙手一投足も見逃さないよう注視し始めた。
「なんでだよ! 俺はただ、頑張ろうとしただけだ……!」
ラムのその圧迫感に満ちた目に睨まれ、怯んだスバルはさらに一歩、限界ギリギリの崖の端へと後ずさる。
「こんな最悪な事件が起こるなんて、俺はこれっぽっちも知らなかったんだ! 」
スバルは肩を大きく上下させて呼吸を激しく荒くし、涙目のままラムを真っ直ぐに睨みつけて、待ちの体勢を強固に構えていた。
「それ以上下がったら、いよいよ本当に危ないわよ。そんなくだらない無駄な『犬死に』はよしなさい」
「何が……っ、何をふざけたことを……っ!」
ラムはそれ以上、頑なに距離を詰めてはこなかった。
今お互いが全力で手を伸ばしたとしても、爪先すら届かないほどの、そんな絶妙で、冷酷な距離感だった。
「死にたい振りにしても、あまりにも趣味が悪すぎるわ。ラムをそこまでバカにしているの?」
不愉快そうに吐き捨てられたラムのその一言。
それを耳にした瞬間、スバルは喉の奥でヒュッと小さく息を呑み、何か決定的な『違和感』を悟ったようだった。
「お前……。これが、ただお前を止めるためだけの『安っぽい脅し』だと、本気でそう思って言ってるのか?」
「ええ。バルスには、本気でそこから自ら死ぬ度胸なんて、これっぽっちもないでしょう」
ラムの言葉を聞いたスバルの泥塗れの顔から、一切の焦燥と疑問の余地が、ストンと削ぎ落とされた。
「その通りだよ。俺は死にたくねえ。痛いのも、苦しいのも、大嫌いだ」
スバルの諦めとも取れる静かな肯定。
ラムは表情を変えず、その片足をじりっと滑らせて、再びスバルとの距離を潰しにかかろうとする。
「待て……っ! 動くな、お前は決定的に勘違いをしてる! 俺をこのまま屋敷に連れ戻したところで、何一つ意味なんてねえんだよ……!」
「はぁ?」
「俺に、『特別な力』があること、お前も薄々勘づいてるはずだ! そんな俺の決意を邪魔して、お前にこれからの責任が取れるのか!?」
スバルは、一方的に追い詰められる獲物から、隙を突いて喉元を食い破らんとする飢えた獣のそれへとその目にギラギラとした光を取り戻し、ラムに向かって人差し指を鋭く突きつけた。
「お前が今やらかしてるその余計なお節介のせいで、俺たちがこれから積み上げるはずだった未来を、全部丸ごと無駄にするつもりかって、聞いてんだよ!」
スバルがそこまで捲し立てると、ラムは心底呆れたように静かなため息を吐き、自らの細い両手を眺め始めた。
その視線は、完全に目の前のスバルから外れている。
「ラムの身体はね、ロズワール様からのマナ補給がないと、やがて衰弱して死んでしまうの。そんなラムを、バルスはどうやって生きながらえさせたと思う?」
「何言って……っ」
スバルは返す言葉を失い、ただラムの静かな声音に耳を傾けるしかなくなった。
今、ラムが絶対に話さないと頑なに拒んでいたはずの、彼女自身の予知夢を紐解き始めたのだと気付いてしまったからだ。
「何種類かの異なる魔晶石を体内に取り込むことで、ラムは衰弱死を免れたわ。
けれど、その命を繋ぐために必要な『魔晶石の配合の組み合わせ』なんて、ラム自身ですら知り得なかった」
「お前、予知夢の話なんて絶対にしないんじゃなかったのかよ……っ?」
ラムのその不退転の行動に、スバルは彼女の嘘偽りのない本気を感じ取り、先ほどまで握りしめていた怒りの勢いを一瞬で失ってしまった。
スバルの哀れな悪あがきを、ラムはただ静かに無視する。
「バルスはね、一発でその不可能なはずの『魔晶石の組み合わせ』を、ラムの前に用意してみせたわ」
ラムが語る、別世界線でのナツキ・スバルの行動。
けれど、スバルには『死に戻り』というリセットボタンがある以上、そんな芸当が可能であることは直感的に分かってしまっていたため、必要以上に驚くことはできなかった。
「そりゃ、やろうと思えばできるかもしれねえけどよ……。そんなこと、今の俺には関係ねえだろ……っ!」
「魔晶石の組み合わせは毎回変わるの。一度でも間違えればラムは死ぬ。なのにバルスは、ただの一度も間違えず、正確にそれを選び続けてラムの命を繋いだのよ」
語るラムの声が、少しずつ、微かに震えて自らの感情を隠せなくなっていく。
「そんな力は、誰の耳にも絶対に入れられないもので……。さらに、使うたびにバルスの魂そのものを擦り減らすような、悍ましい代償があるはずよ」
「……っ! お前……っ、黙れよ……っ!!」
これ以上自分の本質を暴かれたくなくて、スバルはラムを黙らせようとがむしゃらに一歩詰め寄ろうとした。
だが至近距離でラムの薄桃色の双眸と真っ直ぐ視線が交わった瞬間、スバルの肉体は、恐怖と圧倒的な気圧によってピタリと金縛りのように動きを止めてしまった。
「今ここで、ラムがバルスをこの崖から突き落としてあげればその悍ましい呪いの役割から、ようやく楽にしてあげられるのかもしれないわね」
ラムの右の手のひらが、スバルの泥塗れの胸元へと優しく、そして小さく震えながらそっと添えられた。
「うっ……!」
「けれど……バルスのその目は、まだこれっぽっちも死んでなんかいないわ。
だからそんなくだらない、本気で死ぬ気のない安っぽい脅しはやめなさい」
スバルは、自分の胸の奥で早鐘のように狂ったように打つ心臓の鼓動が、胸に触れられたラムの手のひらを通じて完全に筒抜けになっているという事実に、強烈に顔を引きつらせて強張らせた。
だが、ここで引き下がるわけにはいかない。スバルは、口角を吊り上げて不敵に笑って見せた。
「だったら、教えてくれよ、ラム。俺が一体どうやってその『力』を発動させるのか、お前はその優秀な千里眼とやらで、一度でも直接見たことがあるのか?」
「ないわ。だからこそ、ラムには全てが分かる。その力は、他人の目のない『一人の時』でしか発動できない、呪われた代物なんでしょう。こうしてバルスに追いついて、ラムにすべてを見張られている時点で、もう手遅れよ」
ラムの口から語られたその絶対的な確信。
その言葉を聞いた瞬間、スバルは彼女の致命的な『認識のズレ』にハッキリと気付き、今度は本物の嘲笑をその唇に刻んで、冷酷に口角を釣り上げた。
「お前みたいな奴でも、たまにはそうやって、『間違い』を犯すことがあるんだな。
ハハ……。それを知れて、安心したぜ」
スバルのその不敵な言葉が、負け惜しみでも何でもない本物の『事実』であることに直感的に気付き――ラムの薄桃色の瞳が、驚愕によって初めて大きく見開かれた。
「どうした? ほら、言ってみろよ」
スバルは、優位に立った傲慢な笑顔を張り付かせて強気に言い放った。
「魂を擦り減らすことで……少し先の『未来』をあらかじめ幻視する力。……違う?」
「大外れだよ。用が済んだならとっとと俺の視界から消え失せろ」
ラムは、己の導き出した渾身の解答が間違っていた事実を突きつけられ、動揺のあまり思わずスバルの胸元からその手を離してしまった。
「ち……違う、というの……?」
「お前は何も分かっちゃいねえんだよ。お前なんかに……この俺の背負ってるものの重さが、分かってたまるかってんだよ!」
ラムの完璧に氷の如く保たれていた鉄面の表情が、スバルの容赦のない拒絶の言葉に切り裂かれ、醜く狼狽の形へと崩れていく。
「『失った命は二度と戻らない』、だっけ?ハハ、全然違うよ。俺が諦めない限り、この世界に戻らない命なんて、ない!」
「――――」
「だから……俺に諦めさせるような、知った風な綺麗事を吐くんじゃねえよ!
帰れ!!」
スバルはトドメの一撃を突き刺すかのように、目の前の少女へ向けて言葉を激しく吐き捨てた。
ラムは顔を片手で覆い、隠しきれない精神的動揺にその場で狼狽えている。
その呼吸は、あからさまに荒く、小さく乱れきっていた。
「何してんだよ……。聞こえなかったのか?早く帰れって、言ってるんだよ!」
自らの導き出した前提そのものが崩壊し、精神的に致命的な打撃を受けているはずのラムだったが
それでもなお、その足は頑なにこの崖の上から動こうとはしなかった。
「だったらどうして、あの時…レムのことを、諦めたの……っ」
ラムは力なくそう搾り出すと、その目から一筋の涙をぽろぽろと零し落とした。
今度は、スバルの無防備な胸の奥が、鋭い槍で深く穿たれる番だった。
スバルは、それが彼女の予知夢のなかでの出来事なのだと、一瞬で直感的に理解した。
「その世界の俺が……、弱くて、無力なクズだったからだ……っ」
ラムは涙を流していた目をきつく閉じると、次の瞬間、凄まじい速度で再びスバルの服の胸倉を両手で力任せに掴み取った。
「うっ!…てめえまだ…」
スバルの薄いシャツを掴むラムの細い指先が、怒りと悲しみで震えるほどに強く、強く握りしめられていた。
「時間がない……。迷ってたら取り戻せなくなっちまう……」
「このままだと、俺がエミリアの隣に立つ『騎士』になる資格が完全になくなっちまうんだよ……!」
スバルは、強引に胸倉を掴み上げてくるラムの手首を両手で掴み、力任せに引き剥がそうともがく。
「離せよっ……! 離せって言ってるだろ、ラムっ……!」
「いいや、絶対に離さない……。バルスをこのまま一人にして……もうその魂を壊させるような真似なんて、ラムが絶対にさせない!」
ラムは固く目を瞑ったまま、握りしめたその手の力を一切緩めようとはしなかった。
それは、いくらスバルが男の腕力で抵抗したところで、どうにも抗うことのできない、圧倒的な『鬼』の膂力だった。
「俺は、レムを取りこぼして、お前を一人にさせた、最低最悪のクソ野郎だぞ……っ!
だったら、そんな俺のことなんて、大人しく放っておけよ……っ!」
スバルは死に物狂いでその腕を全力で振りほどきにかかる。
だが、びくともしないその拘束の現実に、ギリ……と奥歯が噛み砕けるほどの悔しさに脳を焦がした。
「その悍ましい力は、使わせない!」
「うっ、あ、!?」
抵抗するために力を込めたスバルの痩せた腕ごと、ラムの容赦のない柔術によって背負うように投げ飛ばされ、スバルはそのまま、崖際の冷たい地面へと激しく組み伏せられた。
馬乗りになり、真上から絶対の必死さを湛えた薄桃色の瞳に真っ直ぐ睨みつけられ。
スバルはもはや自らの肉体の自由すら奪われ、自力で『死ぬ』ことすらも完全に封殺されたのだと悟り、その奈落の夜空を見上げて、心の底から絶望した。
「俺は、お前の弟でも何でもねえんだよ……! 邪魔すんじゃねえ、この、偽善者が!」
スバルはありったけの口汚い暴言をラムの顔面に叩きつけた。
この卑劣な罵声に彼女が一瞬でもひるみ、その拘束の手が緩んだ一瞬の隙を見計らって、そのまま身体を捩って崖下へ飛び降りてやる。その身勝手な魂胆だけを胸に。
「お前に……っ、お前に俺の何が分かるって言うんだよぉっ!!」
だが、スバルが地面から真上に向けてそう絶叫した直後。
彼の目は、あまりにも衝撃的で、不条理な光景を目の当たりにすることとなった。
「ラムが、レムを失ったあの最悪な予知夢の中で。……どれだけ、バルスのことを考えていたか、何も知らないくせに……っ!!」
必死に、震える声を絞り出すようにして言葉を紡いだラム。
その、涙に濡れた彼女の薄桃色のはずの双眸は今、あのエミリアと全く同じ、禍々しくも美しい『紫紺の瞳』へと怪しく発光していたのだ。
スバルは全身の毛穴が収縮するほどの悪寒を覚え、一瞬にして、身体からすべての肉体的な力がストンと抜け落ちていくのを感じた。
傲慢の権能が発動したのだ。ラムが傲慢にスバルの魂に踏み込んだのだ。
「うっ……、よせ……よせよせ……っ! やめろ、頼むから、やめてくれ……っ!」
きつくきつく目をつぶり、スバルは狂ったように脈打つ心臓の鼓動と、胸の奥へとダイレクトに濁流のように流れ込んでくる『ラムの痛切な感情の質量』を、必死に拒絶しようと頭を振る。
「この力は……?」
「今すぐ……やめろ……っ! 俺の頭の中に、俺の魂の中に、勝手に踏み込んでくるんじゃねえよ……っ!」
感情の同調が、二人の精神の境界線を曖昧に融解させていく。
ラムの額から、一本の純白の、狂おしいほどに眩い光を放つ『鬼の角』が、ゆっくりと小さく生み出され、夜の闇を照らしていった。
「なるほど。……そのまま、ラムの言うことを静かに聞きなさい」
ラムは、組み伏せたスバルの唇に向けて自らの人差し指を優しく、しかし抗えない力で押し付け、彼の惨めな叫びを物理的に黙らせた。
「この世界において、『心』より大事なものなんて、何一つ存在しないわ。
だから、自ら進んで心を壊すようなやり方は、絶対にやめなさい」
「――――」
「ラムも……そしてエミリア様もね。
バルスの心が壊れきったのと引き換えに、手に入った未来なんて……これっぽっちも望んでなんか、いないわ」
スバルはもう、自らの四肢に全く力を入れていなかった。
ただ呆然と、奈落の風に吹かれながら、重なるラムの指の温もりを受け入れている。
「でも……、俺には……これしかないんだよ……」
「バルスがその力に頼らなくたって、ラムがいるわ。エミリア様だって、バルスの隣にいる」
スバルは、もう言い返す言葉のすべてを完全に失ってしまった。
傲慢の権能によって、今スバルの胸に流れ込んできている『ラムの抱える感情の深さと重み』がどれほどのものなのか、残酷なほどに理解できてしまったからだ。
「その力を、安易に使うことが『癖』になってしまったら。
バルスはもう二度と、引き返せなくなるわよ」
ラムはそう静かに諭すと、スバルの痩せた身体を地面からそっと引き起こし、普通に座らせてくれた。
「騎士なんていう、くだらないお飾りよりも。たった一つしかない『心』の方が、何万倍も大事よ。その力は、本当にバルスが大切な人を助けなきゃいけない『ここ一番』の時にだけ、使いなさい」
スバルは、もう背後の断崖絶壁の奈落のことなど完全に意識の外へと放り出したまま、ただ目の前のラムの顔を真っ直ぐに見つめていた。
サテラに与えられた『死に戻り』という絶対のやり直しカード。
その使い方に対する致命的な選択と、己の歪んだ覚悟の在り方を、スバルは今、心の底から悔い改める。
「俺が、間違ってた。一度でもやり方を間違えて、心を捨てちまったら。
もう二度と人間として引き返せなくなるところだった……」
死に戻りと、『自殺の肯定』が噛み合ってしまえば、その先にあるのは、心を捨てるだけの地獄しか残されていない。
一度でも、「自殺によって問題を解決する」という最悪な成功体験に手を染めてしまえば、二回目以降の局面において、自死を選択肢から排除することなど、不可能になってしまうからだ。
「ごめん……。……本当に、ごめん、ラム……っ」
スバルは膝を抱え、夜の森の静寂のなかで、自らの弱さと愚かさを悔いるように、ただ子供のように何度も、何度も、静かに謝罪の涙を流し続けた。
他者の魂の領域にまで深く踏み込んでくる、傲慢の権能。それすらも、今の弱りきったスバルの心には、どこか絶対的な安心すら抱かせてくれる温かいものへと変わっていた。
「本当に、バカな男ね」
ラムは吐き捨てるように小さくそう呟くと、それまでスバルに向けていた険しい鬼の相貌をふっと和らげた。
彼女はスバルの目の前へと優しくその細い右手を差し出す。
「ありがとう、ラム。……俺のことを、『人間』のままにしてくれて」
スバルはラムの手をしっかりと掴み、泥を払いながらゆっくりとその場に立ち上がった。
「たとえ、これからエミリアの騎士になることを拒否されたってさ。このたった一つしかない心さえ壊さずに持っていりゃ、俺は大丈夫だ」
「ようやく少しはマシな顔になったわね。……まぁ、これまでのバルスの目つきが、あまりにも凶悪で不審者すぎただけかもしれないけれど」
「おい、立ち直った俺に早速、心の無い痛烈な一言だな!」
スバルはいつものお調子者のトーンでそう激しくツッコミを入れ、喉を鳴らして気持ちよく笑った。
胸を押し潰し続けていたあの狂気的な重圧と、逃れられないと思っていた恐ろしい不条理の呪いから、今ようやく、完全に解放されたかのような清々しい気分だった。
だが。
その最悪を乗り越え、新たな現実の一歩を踏み出そうとした二人の元へ。
それぞれにとって最も重い『魂の相手』が、闇を切り裂いてついに追いついてしまった。
「スバルっ!!」
「姉様っ!!」
背後の闇から同時に飛び出してきた、息を切らしたエミリアとレム。
二人は、崖の上で肩を並べて立ち、どこか憑き物が落ちたように笑い合っているスバルとラムのその異様な状況を目の当たりにし、それぞれが、驚愕と、言い知れぬ不穏に満ちた表情をその顔面に浮かべ、息を呑んだ。
敵だったら怖い人
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アヤマツ記憶持ちスバル
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カサネル記憶持ちロズワール
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本編記憶持ちペテルギウス