もしも、リゼロキャラがIFルートまたは本編から初期地点に帰ってきたら(スバル主人公) 作:駄々我菓子
薄暗い倉庫から出て、今度こそ自室に戻って眠れる――そう安堵したスバルは、思わず大きなあくびを漏らした。
すぐ後ろから、レムも倉庫の外へと出てくる。
「誰にも、絶対に話さないでください。何か困ったことがあれば、すべてレムに」
「了解だ……」
静まり返った広い屋敷の闇に響かないよう、スバルは極小の声で返事をした。
「何をしているの?」
「姉様っ……!?」
だが、唐突に背後から降ってきたラムの低い声に、スバルは心臓が跳び上がるほど肩を震わせ、レムは驚愕に息を詰まらせた。
恐る恐る振り返れば、薄暗い廊下の先に、腕を組んだナイトドレス姿のラムが佇んでいた。いつからそこに起きてきて、どこから見ていたのか、スバルにはまったく察せられなかった。
「こんな夜中に、二人揃って何の話をしていたの?」
ラムの冷徹な追及の視線が突き刺さり、スバルはたまらずレムの方へと視線を送って助けを求めた。しかし、それを見逃すラムではない。
「バルス。そんな浅はかな隠し事がラムに通じるなんて勘違いは死刑に値するわ」
「えっ……」
完全に標的にされ、逃げ道を塞がれたと気づくがもう遅い。冷や汗が背中を伝う。
「姉様。……レムは、スバル君に倉庫の案内をしていただけです。明日からの仕事で必要になるものもありますから」
一歩前に出たレムの弁明を聞き、スバルは内密に息を呑んだ。
レムは本気だ。本当にラムにすべてを隠し通すつもりなのだと、その頑なな横顔が物語っていた。
「がっかりだわ。レム、ラムにそんな見え透いた嘘をつくようになるなんて……少し見ない間に反抗期かしら?」
ラムの口調に、明らかな不快感と怒りが混じる。
スバルが知る限り、ラムがレムに対してこれほど明確に怒りを向けるのは初めてのことだった。
思わず覗き込んだレムの表情は、見たこともないほど分かりやすく狼狽に激しく揺れていた。
「姉様……レムは、そのような……」
「本当に手のかかる妹ね。今ならまだ怒らないから言い直してみなさい」
ラムは歩を進めてレムに近づくと、その背中にそっと、優しく手を添えた。
促すようなその手の温もりとは裏腹に、レムは小さく身体を震わせ、額から冷や汗を流している。
スバルの目から見ても、彼女の動揺はまったく隠せていなかった。
「レム……」
もうこれ以上は無理だ、諦めて本当のことを話そう――そんなニュアンスを込めて、スバルはレムの名前を呼ぶ。
「……ッ」
「バルスすら諦めているわよ、レム。ラムに隠し事なんて無理だし、何より、してほしくないわ」
ラムの声音に寂しげな色が混じり、それを見ているスバルの胸にも痛みが走る。
「う……嘘なんて……レムは、ついてないです……っ」
それでも、レムは頑なに折れなかった。ラムは深く、呆れたようにため息を吐き出す。
「もういいわ。――バルス、説明しなさい」
ラムの手がレムの背中から離れる。同時に、ラムが完全にスバルの方へと向き直ったせいで、レムは姉に背を向けられた形になり、辛そうに深くうなだれた。
その絶望的な拒絶の構図は、スバルにはとても見ていられるものではなかった。
「あの、ラム……。実は、な――」
「うるさい!! 勝手なことしないでください!!」
真夜中の静寂を引き裂くように、レムの鋭い叫び声が廊下に響き渡った。
あまりの気迫に、スバルは本気で後ろに転びそうになって踏みとどまる。
見れば、レムはこれ以上一言でも喋ったら今すぐ殺してやると言わんばかりの、猛烈な殺意を孕んだ眼差しでスバルを激しく睨みつけていた。
「――喰らうがいいわ」
ラムが冷徹にそう言い放った、次の瞬間だった。
静まり返った廊下に、パァン! と乾いた破裂音が激しく響き渡る。
一瞬の出来事にスバルが目を剥く中、ラムの手がレムの頬を容赦なく打ち据えていた。
「うっ……!」
叩かれた衝撃でレムの顔が横を向く。
彼女は赤くなった左頬を小さな手で押さえたまま、信じられないものを見たかのように目を見開いた。
その大きく見開かれた双眸から、大粒の涙がとめどなく溢れ出していく。
「お……おい、ラム……っ」
あまりの事態にスバルが止めに入ろうと言葉を詰まらせるが、ラムは妹を冷たく見下ろしたまま、毅然とした声で告げた。
「レム。恐怖で他人を圧し付け、脅すような子に、ラムはあなたを育てたつもりはないわ」
その決定的な一言に、レムの細い足からすっと力が抜けた。彼女はそのまま床へ膝から崩れ落ち、両手で顔を覆って、痛切なすすり泣きを上げ始める。
夜の静寂の中で響く妹の泣き声と、凍りついたような姉の佇まい。
その現場に立たされたスバルは、今自分がどう動くべきなのか完全に分からなくなってしまっていた。
「姉様には……レムの気持ちなんて、分かりっこないんです……。お願いです、お願いですから……レムを、捨てないでください……っ」
「――っ!」
懇願するレムの叫びを聞き、スバルは自分の胸を強く抉られるように押さえた。
実の姉に向かって、まるで縋り付くように「捨てないで」などと泣き叫ぶ妹を、スバルは見たことがなかった。
どうして、これほどまでにレムは頑なに折れないのか。引き裂かれそうな胸の痛みの中で、スバルはその歪な理由の正体に、ハッと気づかされた。
――『傲慢の権能』だ。
レムはあの力に魂を侵食され、「自分が姉様の代替品にならなければならない」という傲慢な脅迫観念に、強く囚われてしまっているのだ。
「……今日はもう部屋に戻って、頭を冷やしなさい」
ラムはそれ以上言葉を重ねることなく、もう一度深く重いため息を吐き出すと、踵を返して歩き出した。
すれ違いざま、ラムの射抜くような双眸と一瞬だけ視線が交錯し、スバルは罪悪感と恐怖からたまらず目を逸らしてしまう。
「バルスも何をしているの。早く部屋に戻って寝なさい」
「う、うん……」
てっきり自分も鋭く追及されるものと身構えていたスバルだったが、ラムはただそれだけを言い残し、冷たい衣擦れの音を響かせながら闇の奥へと去っていった。
あとに残されたのは、ただ呆然と立ち尽くすスバルと床に崩れ落ちたまま肩を震わせるレムの二人だけだった。
「……姉様なら、分かってくれます。いつか、レムのしていることの正しさを……」
ぽつりと、自分に言い聞かせるように呟かれたレムの言葉にスバルは何も言い返すことができなかった。
首を横に振ることすら、今のスバルには許されない。
「そうだ……っ、スバル君。明日の朝、一番に憤怒の書の姉様の頁に書かれている内容をレムに教えてください。そうすれば……きっと姉様と仲直りできます!」
涙を拭い、弾かれたように立ち上がったレムはあまりの気迫に怯えるスバルを見つめ、確信に満ちた様子で深く頷いた。
「わ……分かった。分かったから……」
目の前のレムの瞳には、狂気にも似た危うい光が宿っている。
今のスバルには、このレムの選択を、彼女の歩もうとしている道筋を――「間違っている」と突き放す勇気がなかった。
☆☆☆☆
その夜、スバルは夢を見た。
そこは、酷く静かで――それでいて、どうしようもなく懐かしい匂いのする場所だった。
「ね……眠てえ。いや、寝てるんだけどさ……」
意識を引っ張り上げたスバルは、自分が背もたれの高い重厚な木製の椅子に座らされていることに気づいた。
身体を動かそうとすると、ジャラリと金属音が室内に響く。全身が鎖によって椅子へ拘束されていた。
普通ならパニックを起こすシチュエーションだが、今のスバルにとっては違った。
この緊縛こそが、夢の中に現れる人物の正体と彼が自分を現実に繋ぎ止めてくれる『仲間』である証明なのだと理解しむしろ安堵した。
「なんだここ……ホームアローンか?」
鎖に縛られたまま周囲を見渡せば、そこは冬の洋館の一室だった。
日本の建築様式ではない。カナダか、あるいはアメリカの広大な邸宅の一室のようだとスバルは直感する。
見上げるほど高い天井と、艶やかに磨かれた木造りの壁。
大きな格子窓の向こうには、しんしんと音もなく降り積もる純白の雪景色が広がっている。
部屋の片隅にあるレンガ造りの暖炉からは、パチパチと心地よく薪の爆ぜる音と温かな熱気が溢れ室内を優しく満たしていた。
「クリスマスかよ……。そんなのも、あったなぁ」
スバルが思わずぽつりと呟いてしまうほど、部屋の中央には華やかに装飾された大きなモミの木のツリーが鎮座していた。
部屋の隅には色とりどりのリボンで飾られたプレゼントボックスの山が積み上げられている。
それはスバルにとって、かつて過ごした遠い元の世界の記憶を呼び覚ますようなノスタルジックな光景だった。
そして同時に、どうしようもなく胸を締め付ける『寂しいクリスマス』の情景そのものでもあった。
「ラインハルトか。どうだ? 俺の元の世界の風習ってやつは」
スバルは、椅子から少し離れた暖炉の前で炎を見つめて胡坐をかいていた赤髪の背中に向かって声をかけた。
声をかけられた青年――ラインハルトはゆっくりと立ち上がり、スバルの方へと向き直る。
「……うん。僕は、子供の頃に戻りたくなったよ」
振り返ったラインハルトの表情はどこか暗く、酷く悲しげに曇っていた。
「強欲のラインハルトだよ、スバル。君を――ずっと待っていたんだ」
「ここで、独りで……だよな?」
「うん」
窓の外では、終わりのない雪がどこまでも降り続いている。
その景色はどこまでも寒々しく、どこまでも広大に見えた。
窓の向こうにどんな街が広がっているのか、椅子から立ち上がれないスバルには確かめに行くことすらできない。
「悪かったな、待たせて。……いつか、この夢に誰かの魂も連れてきてやるからさ」
「どうだろうね。僕は、一人きりでもここは十分に心地が良いんだ」
『強欲の予知夢』において、ラインハルトにとっての親しい人物は本当にスバル以外に誰もいなかったのだろうか。
心を許せる存在が自分しかいない孤独なセカイ。
ラインハルトのどこか寂しげな微笑みを見ながら、スバルは勝手にそんな切ない想像を巡らせてしまう。
「君だけが僕の、唯一の友人だよ」
「いやぁ……それは、とんでもなく光栄だな。ははは……」
世界の最強から投げかけられた、あまりにも純粋で重すぎる親愛の言葉にスバルはただ苦笑するしかなかった。
「俺の『傲慢の予知夢』の記憶は、お前も知ってるはずだろ。あんな惨劇を引き起こした俺でもまだ友人でいてくれるのか?」
「もちろんだよ。あの世界の彼と、今の君はまったくの別人だ。君こそが、僕にとっての真の英雄なんだから」
ラインハルトは迷いもなく即答した。その揺るぎない肯定が、かえってスバルの胸を苦しくさせる。
「でもさ……俺の『死に戻り』のことも知ってるんだろ? 俺は、あの傲慢の俺とは違って、どうしようもなく死ぬのが怖いんだ」
この夢の世界だからこそ、現実では決して吐き出せない無様な本音が零れ落ちる。
スバルはラインハルトに向けて、堰を切ったようにネガティブな言葉を浴びせてしまった。
「死ぬのが怖いから、俺は『憤怒の書』に頼った。お陰でレムに殺される未来は回避できたけど……今度はそのせいで、ラムを怒らせちまったかもしれないんだ」
わざわざ言葉にして説明しなくとも、この夢の主であるラインハルトはすべてを見届けているはずだった。
それでも、スバルは自身の内側に渦巻く不安を打ち明けずにはいられなかった。
「俺はいつだって権能に頼ってばかりだ。頼らなきゃ何もできない。俺自身は頭も悪いし、まともに戦うことだってできないから……」
「それでも、僕に正しい道を示してくれるのは世界で君だけだ」
スバルの本質を知り尽くしてもなお、ラインハルトは聖者のような微笑みを崩さずにそう言いきった。
その絶対的な信頼の重さに耐えかねるように、スバルは小さく息を吐き出す。
「……弱音吐いてる場合じゃねえよな。ラインハルト、お前に一つ聞きたいことがあるんだ」
「うん。なんだい?」
夢の中にいる強欲のラインハルトが相手なら、どんな問いであっても許されるはずだ。
スバルは覚悟を決めて言葉を紡いだ。
「お前が、怖いんだ。いつも俺を無条件で信じてくれるお前が、俺の手でも止められなくなる時って……一体、どんな時だ?」
ラインハルトは一瞬だけ、その悪魔的な美貌の持ち主らしく目を細めたがすぐに穏やかな表情へと戻した。
「僕は、君の『覚悟』が決まった瞬間をどこまでも尊重するよ。たとえ後から君の気持ちが変わったとしてもね。だから……そうなった僕を止めることは、誰にもできないだろうね」
「……それは、とんでもなく危ねえな」
ラインハルトという最強の爆弾が暴走する時、その引き金を引くのはスバル自身の『覚悟』なのだ。
一度決めた選択を取り消すことだけは、この男は許してくれないらしい。
この先の現実で、そんな取り返しのつかない状況に直面するのではないかとスバルは強烈な不安に襲われた。
「でも、もし君に僕を止められなくなったとしてもまだ道は残されているんだよ」
スバルを救い上げるように、ラインハルトは至極優しげに言葉を繋いだ。
思わず、スバルの沈んでいた瞳に微かな希望の光が宿る。
「その道って……?」
夢に現れる魂は、いつだってスバルに必要な助言を授けてくれる。
これがきっと、今後の未来を切り開く救済の鍵になるはずだった。
「エミリア様だよ。彼女は、いつだって『その瞬間』の君をそのまま尊重してくれるはずだからね」
「エミリアたんか……。確かにマジ天使だからな。けど、暴走したお前をエミリアの手で止めるってのは流石に荷が重すぎねえか?」
戦力差を考えれば無理もない疑問だったが、ラインハルトは静かに首を振った。
「いいや、エミリア様にはそれができる。――スバル、君の歩む道を僕とエミリア様は必ず助けるとここに約束しよう」
身動きの取れない中、その縛られたスバルの手の上にラインハルトはそっと静かにしかし確かな温もりを伴った自身の手を重ねた。
「ありがとう。――俺が必ず、お前の心も救ってやる」
スバルの不意の言葉に、ラインハルトは驚いたように大きく目を見開いた。
「……うん。期待しているよ」
そう微笑んだラインハルトの瞳から、静かに一筋の涙が零れ落ちる。
それは『最強』そのものである彼が、これまで決して誰にも見せることのなかった、透明で、あまりにも綺麗な涙だった。
その一雫を目にした瞬間、スバルの胸の奥からも堰を切ったように熱い感情が込み上げてくる。
「あ、あのさ……あそこにあるプレゼントの山って、本物なのかな? ちょっと見せてくれねえか?」
気恥ずかしさを誤魔化すようにスバルが視線を逸らすと、ラインハルトは少し悪戯っぽく愛おしそうに笑ってみせた。
「それは、君が今目の前にある困難を乗り越えた時の『ご褒美』にしよう」
その言葉を最後に、孤独な冬の洋館もそこにいた友の姿も白い吹雪のように儚く消え去っていった。
☆☆☆☆
ロズワール邸で迎える、初めての『二日目の朝』。
スバルはレムと並び、朝食の片付けを進めていた。
今日もこれから、アーラム村で人助けという名の『英雄になるための稽古』をこなす予定だ。
「問題はメイリィ、だな」
近いうちに彼女が村へ現れるのは間違いないが、もし彼女も予知夢を見ているなら、行動を変えてくる可能性がある。
さらに懸念すべきは魔獣の呪いだ。
レムにかけられる呪いならスバルの『傲慢の権能』で回復できるが、村人が標的になった場合一人ずつ救うことなど不可能だった。
「スバル君。『憤怒の書』で、姉様の頁には何と記されていましたか?」
食器を洗う手を動かしながら、レムが横目でスバルを探るように尋ねてきた。
スバルは一瞬、言葉に詰まる。
「まさか、レムの言ったことを忘れたなんて言いませんよね?」
「……ちゃんと読んださ。『弱音を吐いてラムに頼り、共に歩むこと』。そう書いてあった」
スバルの言葉に、レムの手がピタリと止まった。
「姉様が……どうしてスバル君に、そんなに優しいんですか……」
その声には、明らかな焦燥と嫉妬が滲んでいた。スバルはたまらず声をかける。
「なぁレム。やっぱりラムを頼らないやり方で上手くいくか、俺は不安なんだ。今からでも――」
「――ッ!」
スバルが言いかけた途端、レムは水場を離れて激しく詰め寄ってきた。
そして、濡れたままの手でスバルの腕を強く掴む。
「これは、レムが生まれ変わるためのチャンスなんです。それを邪魔することは……たとえスバル君であっても許しません」
充血した瞳に睨まれ、スバルは息を呑んだ。
もともとはレムの殺意から生き延びるために始めた歪な協力関係だ。
ここで彼女の機嫌を損ねるわけにはいかなかった。
「……悪かったよ。一度決めた道だ。最後までレムを信じて、突き進んでみる」
スバルが諦めたように告げると、レムは満足そうに深く頷いた。
☆☆☆☆
ロズワール邸を発つ直前、自室のベッドを整え終えたスバルが部屋を出ようとドアに手をかけた。
だが、ドアはすでに僅かに開いておりその隙間からラムがじっとこちらを覗き込んでいた。
「あの、ラムさん。どうして俺の部屋を覗いていらっしゃるんでしょうか?」
「いやらしい」
「いや、お前がな!」
思わず自然体で息の合ったツッコミを返してしまう。
しかし、すぐに現状の危うさを思い出しスバルは青ざめて声を潜めた。
「おい、こんなところをレムに見られたら……!」
焦るスバルとは対照的に、ラムはひどく落ち着いた表情でスバルを凝視している。
その冷徹なまでの静けさに気圧され、スバルは小さく項垂れた。
「……ごめん。勝手なことしちまって」
「あんなに、活き活きとしたレムを初めて見たわ」
「えっ?」
ラムは静かに室内に足を踏み入れると、窓の外から差し込む朝光に目を細めながら呟いた。
「色々考えた結果、こうなっているんでしょう?」
「……俺なりには、必死に考えてこうなったんだ」
「本当に心配だわ。これっぽっちも期待できない」
「ぐぬぬ……」
返す言葉もない。スバル自身、自分の選んだやり方に自信など持てていないのだから。
「それでも。レムがあの子なりにやりたいことを見つけたのだとしたら、今はやらせてあげてもいいと思っているわ」
スバルは顔を上げ、ラムの後ろ姿を見つめた。
窓の外を見つめる彼女の表情は窺えない。
それでも、その背中には紛れもなく妹を誰よりも深く想う『姉』の覚悟が宿っていた。
「……ありがとう」
朝からまた目頭が熱くなり、スバルはラムがこちらを向いていなくて命拾いしたと誤魔化すように目を擦った。
「アーラム村には気を付けなさい。脱獄犯の次は、何が出るか分かったものじゃないわ」
その言葉に、スバルはラムの夢を思い出した。
ラムもまた『憤怒の予知夢』から、レムの死因がアーラム村にあると察し警戒しているのだ。
スバルには『メイリィ』という明確な心当たりがある。
レムのためにも、ラムの信頼に応えるためにも今度こそその脅威を乗り越えなければならない。
「分かったぜ。……絶対に、誰も死なせやしない」
スバルは決意を胸に、窓際に佇むラムを残して部屋を後にした。
敵だったら怖い人
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アヤマツ記憶持ちスバル
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カサネル記憶持ちロズワール
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本編記憶持ちペテルギウス