もしも、リゼロキャラがIFルートまたは本編から初期地点に帰ってきたら(スバル主人公) 作:駄々我菓子
スバルは死んだ。
そして、次の再挑戦の間までに夢の世界で目覚めることになった。
この夢は、傲慢の権能によって生じた魂のバグであり、スバルに次の再挑戦のための助言をしてくれる救済措置でもある。
スバルが目を覚ましたのは、薄暗い密室の中だった。
窓はなく、出入り口になりそうなドアがポツリと一つあるだけ。
部屋の中央には二つの椅子が向かい合わせに置かれており、スバルはその片方に腰掛けさせられていた。
前回の夢と同じように鎖で身体を拘束されている。
対面の椅子には、黒い外套を着た傲慢のスバルが座っていた。
「今回の夢は、お前なのか」
「んなことはどーだっていいんだよ!お前これからどうするつもりだ!」
目の前の傲慢のスバルは明らかに憤慨していた。
「俺の・・リスタート地点はいつだ?」
単刀直入に、スバルは不安がりながらもそう尋ねた。
「お前の、喉が食いちぎられた直後って言ったら信じるか?」
スバルはそれを聞いて青ざめる。
だが、同じように傲慢のスバルも冷汗を流して焦りを隠せていなかった。
その様子は、とても冗談には思えない。
「そ、そんなことってあるかよ!なんでそんなに短いんだ!」
「黙れ!死に戻りさせてもらってる奴が、文句言ってんじゃねえ!」
死に戻りの考え方がスバルと、傲慢のスバルでは違うのは確かだ。
だが、このリスタート地点は絶望的に受け入れられない。
「全部お前のせいだ・・・お前のせいで詰んだんだぞ!」
「・・・え?」
スバルは言葉を失う。あれだけ憎たらしかった傲慢のスバルでも目が充血するほどスバルを睨みつけ、必死になっている。
そして、傲慢のスバルでさえ詰んだという言葉を口にしたのだ。
「ま・・・まだ・・」
「まだなんてねえんだよ!打つ手があると思ってんのか?お前の傷は、もう助からねえんだよ!」
スバルは椅子から転げ落ちそうになったが、しっかり鎖で拘束されているせいで椅子から離れることはできなかった。
傲慢のスバルはさらに畳みかける。
「なんでエミリアのいないところで詰んでんだよ!ふざけんじゃねえ!」
「・・・・うそだ・・・」
「レムもラムも要らねえんだよ!あんな奴らに構ってるせいでこうなった!お前はなんて無能なんだ!?」
「なんだと!」
傲慢のスバルのレムとラムに対する発言に、スバルも黙っていられなくなり、奴を睨みつけた。
「ここまで俺のおかげで、どうにかなってきただろうが!!!」
そう叫んだ傲慢のスバルは鎖で拘束されていない。
椅子から勢いよく立ち上がると、スバルを充血した目で見下ろした。
「俺がいなかったら、お前はまだ王都で死に続けてるぞ!それなのに、勝手な事ばっかりしやがって!何様のつもりだ!」
「・・・・・」
「お前の命はエミリアだけのものだろうが!?意味のねえところで詰んでんじゃねーよ!」
「・・・・・」
「俺は、お前が大っ嫌いだよ!お前なんか、生きてる価値すらないんだよ!!」
「・・・・・」
まくし立てる傲慢のスバルに、スバルは何一つ言い返すことができない。
脳内にあるのは、ただの詰みセーブに入ってしまったという絶望だけだった。
「何黙ってんだよ・・・もう終わりにするのか?」
傲慢のスバルは、スバルの方に歩み寄ると、驚くほど簡単に鎖の拘束を外してきた。
「・・・この椅子から立って、俺がこの部屋から出て行ったらどうなる?」
「お前は一生この夢の世界から抜け出せなくなって、現実のお前は死ぬ。それで全部終わりだ。」
驚くほど冷酷に突きつけられた事実。
だが、それは死に戻りからの解放を意味していた。
「そんなことはできるわけがねえ!……お前でも、打つ手がないってのか?」
「ない!」
はっきりと傲慢のスバルはそう断言してしまった。
「いいか?ナツキ・スバルは決して死んではいけないんだよ。たとえ、何があっても潰れてはいけないんだ!」
「・・・・・・」
「お前は、ナツキ・スバル失格だ」
何も言えないスバルに、冷酷に傲慢のスバルはそう言った。
「俺だって……やっと誰かの為に生きていけるって思ってたのに……クソ!」
スバルは大声で叫び、椅子の肘掛けを強く叩いた。
「ありがとな。大っ嫌いなお前を見てて、俺のやってきたことが正しいって再確認できたよ」
「てめえ………!」
傲慢のスバルはそう吐き捨てると、睨みつけるスバルを無視して部屋から出ていってしまった。
このまま、スバルも椅子から立ち上がって部屋から出て行けば全て終わりだ。
「ダメだ……諦められない!」
スバルは椅子から立ち上がる事が出来なかった。
詰みセーブまでの時間を体を恐怖に震わせながら待つことしかできなかったのだ。
☆☆☆☆☆☆
死に戻ってすぐに、スバルは現実を痛感した。
「あがあっ!!……あああああああ!」
喉に穴が開いている。
命が、血が零れ出ていくのが分かる。
「スバル君!スバル君!」
激痛の海に溺れながら、レムの叫び声が聞こえた。
やっぱりここからなのかと、スバルはリスタート地点の絶望を思い知った。
この傷ではもう助からない。
「あ………あが…」
大量の血を飲み込み、暴食の権能である餌食としての効果が出てしまっていた。
ドーピングにより、全身に恐ろしい力が入っていた。
指の一本も動かせない。
「あ…?」
だが、前回のループとは違い、スバルは痛みに少しだけ適応し眼球を動かすことができるようになっていた。
痛みに慣れたとは思いたくないが、痛みに強くはなったのだろう。
「いやああああああ!!!」
スバルが眼球を動かすと、絶望に叫ぶラムの姿が目に入った。
再生できていなかった両腕の回復が始まっていた。
おぞましいが、これがスバルの餌食の効果だと理解できる。
「あっ………あああ!!」
上手く呼吸ができないのに、死ねない苦痛に溺れているスバルと、ラムの目が合った。
「お………」
ラムは再生した手で口を押さえて、嘔吐感に苦しんでいる。
今、彼女のなかにどんな精神的ショックがあるのか、想像もできない。
見ていられなくて、スバルは目をつぶってしまう。
レムもショックで動けなくなっている。
スバルに治癒魔法をかけてはくれない。
たとえ、かけたとしてもこれだけの傷だ。間に合う訳がない。
「あああ……あああ!」
痛い。痛すぎる。本当に打つ手がない。
「こうなるって…分かっていたはずなのに…」
ラムがそう呟くのが聞こえた。
そして、直後にスバルの首は風の刃で斬り落とされ、痛みから解放された。
☆☆☆☆
スバルは夢の世界で目を覚ますと、そこには一面の白銀が広がっていた。
真っ白な氷の世界だ。
だが、空には暗雲が立ち込めていている。
スケートリンクのような氷の地面に、雪でできた椅子があり、スバルは座っている。
恐ろしいことに、この椅子にはスバルを現実に縛り付ける鎖がなかった。
氷の地面の地平線の先には何も見えないのに、その氷の下にはスバルの現実世界のコンビニや公園などの風景が氷漬けになっている。
「やっぱり、これは夢だ……」
スバルは一人でそう呟いた。
夢だと認識しても、頭の中には無力感しかなかった。
あと、傲慢のスバルですら打つ手がないと言ったのだ。
その通りに、スバルのリスタート地点はすでに打つ手がなくなった後だった。
「でも、あきらめられ__」
「スバルっ!!」
スバルが諦められないと呟くのを遮り、スバルの背後からその人物は強く抱きしめてきた。
「えッ、エミリア!」
白い腕は椅子ごとスバルを強く抱きしめる。
スバルは、この夢の人物が憤怒のエミリアだと確信すると真っ青になった。
こんな詰んでしまった今、憤怒のエミリアに会わせる顔がない。
「スバルっ!もういいの!もういいのよ!」
「えっ?」
スバルは憤怒のエミリアの発した言葉の意味が理解できなかった。
憤怒のエミリアは背後からスバルの正面に移動してしゃがみ込んだ。
そして、下の目線からスバルの両腕を強く掴んでいる。
「なぁ、なんで今回の夢では俺を縛っている鎖がないんだ?」
スバルは恐る恐るそう尋ねると、憤怒のエミリアは強く首を振った。
「もう、現実になんて絶対戻らせないからね!」
掴まれたスバルの両腕を憤怒のエミリアは強く引っ張って、椅子から引き剥がそうとしてきた。
「ちょっ!!待て待て待て!エミリア!」
スバルは奥歯を噛み締めて、全身から汗が噴き出した。
この夢の世界では氷の世界でありとても寒いはずなのに、それ以上に全身が焦りを体現していた。
「何してるのっ!この!」
憤怒のエミリアの紫紺の瞳は充血するほど血走っていた。
何が何でもスバルを夢の世界に引きずりこもうと必死になっているのだ。
だが、スバルも必死に耐える。
「待てって言ってるだろ!」
「スバルのバカっ!早く諦めて!」
両腕が千切れてしまいそうだった。
夢の世界なのに痛覚は現実のようにはっきりとある。
でも、憤怒のエミリアの力に本来スバルは太刀打ちできないはずだ。
こんなやり合いなど、本来成立するはずがなかった。
「力を抜いてっ!いい子だからっ!」
「そうか…分かったぞ!」
スバルがそう叫ぶと、一度憤怒のエミリアは力を緩めた。
「どうしたの?」
「俺が諦めない限り、この椅子から俺を離すのは無理だよ」
憤怒のエミリアはそれを聞いた途端にスバルの両頬をくしゃっと掴んだ。
「もうやめて!もうどうしようもなく打つ手がないの!このままスバルが死に続けるなんて耐えられない!」
スバルは固まった。
夢の世界でスバルに助言してくれるはずの憤怒のエミリアの魂も打つ手がないと言ったのだ。
「スバルは悪くないわ」
固まるスバルを憤怒のエミリアは、優しく抱きしめた。
「無理なものは無理なのよ。この世界だったら誰もスバルを傷つけないし、私が傷つけさせない。」
スバルは肘掛けを掴んでいた手をさらに強く握りしめた。
憤怒のエミリアはもうスバルに期待していないのだ。
「ごめん。俺は諦められない。」
「なんですって!」
スバルがそう言うと、憤怒のエミリアはスバルを睨みつけながら両肩を強く揺さぶった。
「それは傲慢よ。もっと自分の命を大切にして!」
憤怒のエミリアは涙を流しながら俯いた。
それでもスバルは首を振る。
「今の俺には傲慢さが必要だ」
「違う!スバルのオタンコナス!」
憤怒のエミリアがそういった途端に、夢の世界の崩壊が始まった。
スバルは氷の世界から死に戻りのリスタート地点へと飛ばされる。
「傷つくのは俺の責任なんだ」
「待って!置いて行かないで!」
憤怒のエミリアの悲痛な叫びも虚しく、スバルは夢の世界から完全に消失した。
敵だったら怖い人
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