もしも、リゼロキャラがIFルートまたは本編から初期地点に帰ってきたら(スバル主人公)   作:駄々我菓子

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夢の中に飲みこまれて

 スバルは、引き戸に耳をピタリとつけて、ラムとレムの会話を盗み聞く。

 すでに、姉妹が酒を飲み始めてからかなりの時間が経っていた。

 

「姉様は、この楽園で幸せになれますか?」

 

「ラムの居場所はここしかないわ。この楽園が許されたのも、運命の導きのようなものよ。」

 

「どういうことです?」

 

 レムと同じように、引き戸越しにスバルも疑問を抱いた。

 酔っ払っているせいで支離滅裂なことを言い出したようには聞こえない。

 これは、この世界の重要な秘密かもしれないと感じたのだ。

 

「分かるでしょう?世界は止まり、私達の魂は他人の夢で蔑ろにされる可能性も全然あった」

 

「そうですね……。」

 

「もう、心から受け入れてしまいなさい」

 

 レムは納得したようだったが、スバルは納得できなかった。

 ラムの話が全く理解できなかったのだ。

 

「でも、姉様もあの世界のことを忘れていないですよね?」

 

「ええ。心から愛するあの方を忘れるわけがないわ」

 

 その時、バギッ!と激しい音が家中に響いた。

 スバルは思わず頭を引き戸にぶつけそうになってしまう。

 どうやらレムがテーブルを叩き割ったようだ。

 

「レム、何のつもり?」

 

「あの男だけは、許しません!ロズワール様が何をしたのか姉様も分かっているはずです……!」

 

 レムの口調には抑えきれない怒りが表れていた。

 スバルはロズワールという人物が誰なのか分からない。

 

「そうね。ロズワール様は私達から全てを奪ったわ。それでもラムの愛はあの時のままよ」

 

「どうして……!!」

 

 ラムは沈黙した。

 スバルが忘れてしまった過去に何があったのか、スバルもロズワールという人物と無関係ではないはずだ。

 

「たとえ、ロズワール様が人を殺しても、人を騙しても、あの方の人生にラムの席があればそれでも良かった」

 

 ラムはしんみりと胸中を語りだした。

 レムとスバルは静かにそれを聞く。

 

「まさか、駒みたいに扱われるなんて、本当にあんまりだわ。本当にラムを見てくれたことなんて一度もなかった。」

 

「そうです……あの男は許せません。まだ姉様があの男を愛しているなんて、レムはどうにかなってしまいそうです…!」

 

「この愛を、捨てられれば、忘れられたら良かったのに。それができないのは、ロズワール様も苦しんだいたと分かっているからよ」

 

「何を言ってるんですか!?全ての元凶はあの男です!何度、姉様を……スバル君を……」

 

「叡智の書のせいよ。ロズワール様はあの忌々しい本のせいで苦しんでいるのよ」

 

「そんな本があってもまともな人ならあんなことはできません!…あの男は、スバル君に、姉様に、殺人鬼を魔獣を魔女教までを仕向けました……。こんなの、大罪司教の手口です……!」

 

 レムがロズワールという男に対して、ものすごい怒りを感じているのは分かる。

 それでも、スバルは話の内容が半分も理解できなかった。

 

「レムと姉様を騙して、スバル君をいじめ抜いた……!あの男は裏切り者なんです!!」

 

 レムはそう怒鳴ると、息を切らしているのが引き戸越しのスバルにも分かった。

 

「……取り乱してすみません。それでも、ロズワール様を愛してるなんてもう言わないでください」 

 

「レム。ラムが誰を愛するかは、ラムにしか決められないわ」

 

「だったら、姉様はこれから一生幸せになれないのではないですか?」

 

 スバルもそう思った。

 レムとラムを裏切ったらしいロズワールという男。

 でも、彼をラムがまだ愛しているなら、この先会えないことに心を痛め続けるはずだ。

 

「いいえ、ラムはこの楽園でずっと幸せよ」

 

「えっ?」

 

「ロズワール様に全て奪われた。でも、結果どうなった?ロズワール様の計画は完全に潰え、ラムがあの方の全てを奪ったのよ」

 

「どういうことですか?」

 

「ロズワール様は過ち、失敗して、負けたのよ。バルスはロズワール様の思い通りにはならずに、ラムが取り上げたわ」

 

 ラムの口調にはいつもの冷静さがなかった。その声には重い憎しみが籠もっているように、スバルには聞こえてしまった。

 

「叡智の書を盲信し、身近にいるラム達を見なかった。バルスの権能に目がくらみ、その本質に気づかなかった。ラムの予知夢でも、あの世界でも、ロズワール様は2回ラムを裏切って破滅したのよ」

 

「姉様………」

 

「憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い…」

 

「姉様!」

 

ガタガタガタガタガタガタガタガタ!

 

 ラムが憎悪の声を上げるたびに、家中が揺れだした。

 スバルは思わず引き戸にしがみついてしまった。

 ラムの感情に伴って家が揺れているようだ。

 これは、あまりにも不自然で違和感しかない現象だ。

 

「レム、貴方よりもラムの方がロズワール様を憎んでいるわ」

 

「だったら、どうして愛してるんですか?」

 

「もし会えるなら直接この憎悪を刻み込んで、もし話せるなら呪いの言葉を吐きかけて、この愛の呪いを伝えたかった。でも、それすらも許されなかったから、あの方から全てを奪ったわ」

 

 重い、重すぎる。ラムのロズワールという人物への愛憎はあまりにも重すぎるとスバルは感じた。

 これは絶対スバルが盗み聞きしていい思いではないはずだ。

 それでも、過去にラムたちに何があったのか、スバルは知らなければいけないと思っている。

 

「ロズワール様がどうにかしたかったバルスを、ラムが取り上げて永遠にその夢を奪ったのよ。貴方の望む未来を永遠に潰してあげたわ」

 

 それを聞いて、スバルはロズワールという人物が自分に執着していた事実を知った。

 間違いなくスバルはこの過去の重要人物だ。

 

「姉様……すみません。レムが図々しく口を挟むことではありませんでした」

 

「良いのよ。レムの気持ちも痛いほどに分かるわ……………ところで、さっきから盗み聞きとは言い度胸ね」

 

 スバルはそれが引き戸越しの自分に対する言葉だと理解すると、心臓が止まりそうになった。

 いつから聞いていたのがバレていたのか、想像しただけで顔面蒼白になってしまった。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

「悪かったよ。でも、出ていくタイミングが無かったんだよ」

 

 スバルは引き戸から気まずそうに顔を出し、ラムとレムの二人にそう言った。

 2人の顔は涙を流した跡があり、さらに酔ったせいか少し赤くなっていた。

 

「聞きたいことがあるなら言ってみなさい」

 

 ラムのその言葉に、スバルはどう聞くかを少しだけ考えた。

 

「過去に俺と君たちに何があったのか教えてほしい。俺は忘れてしまったことを思い出して、過去に向き合いたいんだ」

 

「スバル君……」

 

 スバルの発言に、レムは少し驚いたあと俯いてしまった。一方ラムは深いため息を吐き出した。

 

「バルス、私たちは過去に心を預けていた人に裏切られ、命を狙われたわ」

 

「うん」

 

「ただ、命を狙われただけじゃない。レムを失い、バルスを疑って殺したいほど憎んだこともあった。……殺したこともあるわね…」

 

「こ、殺しただと…?じゃあ、なんで俺は生きてるんだ?」

 

 なんでおぞましい過去なのだろう。こうして3人全員が今ここに存在していることが奇跡に思え、スバルは息をのんでしまった。

 

「あの方を心から愛しても見向きもされず、命を捧げた居場所を奪われ、レムの命も狙われた。ラムにとって、偶然ここに3人で逃げてこられたのは、本当の希望よ」

 

 ラムはそう言うと、両目に涙を溜めていた。

 そして、その目ではっきりとスバルを見あげた。

 

「分かるわ。バルスは忘れてしまった過去を思い出したいのね。そして、やり直せるならやり直したいと思うかもしれない」

 

「いや、俺はそこまでは……」

 

「バルスはそういう男よ。あの過去を知って、黙っていられるような人間じゃないのは分かっているわ」

 

 スバルは目を伏せて黙り込んだ。

 この違和感や疑問を知ったら自分がどうするのか、想像できなかったからだ。

 

「でも、ラムはまたあんな過去のように、2人の命が危なくなったらと思うと……」

 

 そこでラムは言葉に詰まり、とうとう涙を零した。

 レムがラムの背中をさすっているが、せき止めていたものが決壊したようにラムは涙を流している。

 

「お、俺は………」

 

「私はこの家で、レムとバルスを守りたい……」

 

 スバルはその言葉に胸を打たれてしまった。

 思わず言葉を失い、共鳴するように胸の奥底から熱い物が込み上げてきたのだ。

 

「スバル君……どうか、ここでの生活を受け入れてくれませんか?レムたちには、辛い過去よりも幸せな未来が必要です」

 

「あぁ。俺は感謝してここで生きていくよ。この事は、絶対忘れない」

 

 スバルがそう言うと、両手をラムとレムにそれぞれ強く掴まれた。

 その力強さと感情の重さが体全体にのしかかる。

 

「本当に?」

 

 ラムが鋭い視線でスバルにそう問いかける。

 スバルははっきりと頷いた。

 

「こんな俺でも、ここに居ていいなら、それはきっと凄く幸せな事なんだ」

 

 それを聞いたラムとレムは表情を苦しげに、それでも穏やかなものへと変えていった。

 

「ありがとうございます…」

 

 レムが重くスバルにそう言った。

 

「信じてるから、分かっているわね」

 

 ラムが重くスバルにそう言った。

 

「あぁ…。」

 

 スバルはそう返事をした。

 今のこの気持ちが今後変わらないように、変な気を起こさないようにと自分の胸に願って。

 

 それでも吸い込まれるように、無意識に家の扉の方を見てしまった。

 レムが叩き割ったはずのテーブルは一切壊れていなかった。いいや、勝手に修復したのかもしれない。

 この世界はどこかおかしいと、違和感が強くスバルに残っていた。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 翌朝、3人は朝から食料を探すために外に出ていた。

 今は、深い森の入り口周辺の雑木林を探索中だ。

 

「こ、これは!」

 

 スバルは、小さな木の枝にぶら下がるように実っているイチゴを見つけた。

 みずみずしい赤色の実が数個ずつ生っている。

 

「スロベリですね!」

 

「ええ。美味しそうね」

 

「スロベリっていうのかよ…。ストロベリーに似てるな」

 

 この世界でのイチゴの呼ばれ方を理解させられたスバルだったが、1つ目の食料を発見することに成功したようだ。

 

「甘酸っぱい!みずみずしい!」

 

 スバルはスロベリの実を一つ口に放り込むと、そう言った。

 それは、空腹と渇きを訴えている肉体に染み渡る味であり、スバルの知るイチゴと同じような味だった。

 

「美味しいです!」

 

 レムとラムもスロベリを食べていた。

 スロベリは美味しいが、目の前にあるのを全て食い尽くす勢いだったので、スバルは思わず声をかけた。

 

「ちょっとは持って帰ろうぜ?せっかく見つけたんだし」

 

「スロベリは痛みやすいから、ここで食べるだけにしなさい。持ち帰れるのは、木の実や山菜の類よ」

 

 食料を運べる布袋を持っているラムが、スバルにそう教えた。

 

「なるほどな…。勉強になるぜ」

 

 野イチゴなら現代人のスバルの口にも合ったが、山菜や木の実はあまり食べたことがない。

 偏食家の自覚があるため、スバルは少し不安になった。

 だが、好き嫌いをしているところをラムとレムに見られる姿を想像すると、そんな情けない姿は絶対に見せられないなと心に誓った。

 

「スバル君、姉様。森に入りましょう」

 

 レムに催促されて、スバルとラムも森に深く入っていった。

 

 森を深く入っていくと、ざわざわと風で木々が揺れる音や、キョロン、キョロンという鳥の声、コンコンと鳥がクチバシを木に打ち付ける音が聞こえた。

 スバルは自然に溶け込み、飲まれていく感覚に陥っていた。それはどこまでも心地が良い。

 

「お?お前も木の実を探してるのか?」

 

 木の枝からこちらを覗くリスを発見したスバルはフレンドリーにそう声をかけた。

 可愛い奴めと、スバルは自ら触れるためにリスに手を近づけた。

 

「ダメです!スバル君!」

 

 レムが慌ててそう叫んだ次の瞬間だった。

 

「アアアアアアアアアアっ!」

 

 近づけたスバルの指は、急に襲いかかってきたリスに無残に食いちぎられた。

 その衝撃と、激痛にスバルは思わず叫んだ。

 

 おかしい。人間に噛みつくリスなど聞いたことがない。

 それも、ただ攻撃の為に噛み付いたのではなく、スバルの指を食らう為に食い千切ったように見えた。

 おかしい。この世界はあまりにもおかしすぎる。

 

 スバルは血を撒き散らして、激痛に涙を流しながら叫び狂った。

 

 

 

敵だったら怖い人

  • アヤマツ記憶持ちスバル
  • カサネル記憶持ちロズワール
  • 本編記憶持ちペテルギウス
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