リゼロキャラ達がIFルートや本編の記憶を持って初期地点に逆行してきた件(主人公:スバル) 作:駄々我菓子
スバルはようやく、ラムとレムがいる森に辿り着いた。
大熊を仕留め切れておらず、2人で力を合わせて戦っている真っ最中だった。
「レム!ラム!」
スバルが大声でそう叫ぶと、姉妹はすぐに振り返って目を見開いた。
「スバル君っ!どうしてっ!」
「悪いな、レム!やらなきゃいけねえことが分かったんだ!」
大熊はスバルに気づくと、踵を返してこちらに迫って来る。
一番の獲物が目の前に現れたからだ。
「ガルルルル!」
大熊が2本足で大きく立ち上がると、その4メートルくらいの巨体が露になった。
生身の人間では到底、抵抗などできない圧倒的な力の差がある。
でも、スバルには権能がある。
「森の木の実でも、齧ってろッ」
スバルは高く飛びあがった。
大熊の身長を遥かに超えて空からクマを見下ろす。
そして、急落下の勢いを利用して大熊を地面に踏みつける。
ドォオオン!!
空気と、地面、クマが一斉に踏みつけられ粉砕した爆音が響き渡った。
大熊は白目を剥いて、スバルの足の下で動かなくなった。
「ふぅ…」
「バルス、これはどういうつもり?」
「スバル君ッ!!」
ラムは鋭い目つきでスバルを睨みつけ、レムは一目散に駆け寄ってきた。
「分かったんだ。これは夢だ。現実に戻らないと」
「え…?ええっ」
スバルの発言に、レムは明らかに動揺を示し、ラムは目を細めた。
「姉様……どうしましょう?」
「やっぱり、2人は知ってたんだな」
ラムに振り返ったレムに、スバルはそう呟いた。
「バルス、どうやって気づいたの?」
レムとは違い、ラムに焦りは見えなかった。冷徹にスバルにそう言い返してくる。
「違和感がたくさんあったから、それをまとめて考えてみたんだよ。じゃあ、真実を教えてくれよ。俺に隠し事をしていたことも含めてさ」
「時間の問題だと思っていたけれど……、ここまで頭を回す男だなんて思わなかった。なんて男なの……」
ここにきて、ようやくラムはその表情を醜くしかめて、不快感を示した。
「酷い言い草だな…。ラム、これは夢で。この夢の世界に俺を閉じ込めた敵が現実にいるかもしれない。もしかして、夢の中のラムとレムが俺を現実に戻さないように敵に仕向けられてるのか?」
そうだとすれば、この世界が夢であることをスバルに教えてくれなかったことも説明がつく。
「バルス、良く気づいたわね。ここは夢の世界よ。でも、それでおしまい。深入りするのはやめておきなさい」
「それは無理だ。現実に戻らないといけねえ」
スバルがそう返した瞬間、ラムに鋭く睨まれた。
冷静さを保っていたラムの仮面がはがれ、呼吸まで乱れていくのが分かった。
「本当に……馬鹿ね」
ズサァアアアッ!
「ううっ…!!」
突然、風の刃がスバルを襲った。
いち早くそれを察知し、何とか腕で防いだものの、スバルの胴体は斜めに引き裂かれた。
「姉様っ!!」
スバルは切り裂かれた自身の胴体を手で押さえて、数歩後ずさる。
そして、ようやくラムの方を見上げた。
「なっ……何を……」
ラムの右手には木の杖が握られていた。魔法を発動するための道具だろう。
ラムが魔法を使えるということが分かり、またスバルの違和感が一つ減った。
レムとラムは魔法を使えるという漠然としたイメージがあったのだ。
ラムの表情は唖然としていた。顔面蒼白になり呼吸は荒い。杖を握る手が震えていた。
スバルを切り裂いた本人なのに、自分自身がショックを受けているようだった。
「痛い目に会いたくなかったら、言うことを聞きなさい…」
「ぐっ…痛えな。そんな落ち着かない表情で言われても、信じられないぜ」
「姉様っ!早まりすぎです!」
血迷ったラムを背後からレムが抱きしめてなだめている。
スバルは、傷を抑えていた血まみれの手を舐めた。
ドクンッ!ドクン!と脳内で快楽物質が生成されるのが分かった。
「バルス……」
「痛えよ!鋭いよ!冷たいよ!辛い!悲しい!焦ってる!焦っているから!焦っているからこそ!脳が震えるっ!!どうにかしないと……!」
スバルは、そう叫ぶと明らかに正気を失った。
それでも、脳内ではすさまじい速度で思考を巡らせる。
「スバル君!落ち着いてくださいっ。姉様もレムもスバル君の敵じゃありませんから!」
どうしようもなく、切り裂かれたという痛みと怒りがスバルの心の中で増大していた。
攻撃的に、傲慢に感情が染まっていく自覚がある。
「現実世界の、レムとラムは多分仲間だ。でも、夢のお前達は敵の異能に操られてるんじゃねーのか?俺のことを切り裂いて、隠し事もしてただろ?」
「現実には戻らせない!バルス、これ以上手を煩わせないで!」
ラムはまたスバルを鋭く睨みつけ、杖を構えた。
「バルスじゃねえ!俺はナツキ・スバルだ!菜月賢一と菜月菜穂子からもらった名前だ!馬鹿にすんじゃねえ!」
どうしようもなく、怒りが込み上げる。何に対して怒っているのかもスバルには分からなくなっていた。
脳のブレーキが壊れ、恐怖を感じるセンサーが暴走している。
何よりもスバルを支配しているのは、餌食として全世界から食われるということに対しての正当防衛による被害妄想だった。
「スバル君落ち着いてください!隠し事をしていたことは謝りますから!」
「じゃあ、隠していたことを全て教えてくれ!」
「それは……できません」
「はっ?」
スバルはひらがな一文字で不満を表明した。
レムはあまりにも痛々しい、気まずい表情をする。
「バルス……。傷が痛むわ。黙って座りなさい」
「ちょっと待て待て」
スバルは後ずさってラムとレムから距離を取った。
傷は痛いが、その傷をつけたくせに、まるで仲間みたいに寄り添ってくるラムに鳥肌が立ったのだ。
「お前が魔法でやったんだろ?なんでそんな……」
言葉に詰まり、血液摂取ドーピングの酔いが冷めていくようだった。
スバルは、恐怖を感じている。
「もう諦めなさい」
「えっ?」
低い声で紡がれたラムのその声は一番の本音に聞こえてしまった。
「やり直したいと思っても、次は失敗しないって後悔しても、無駄よ。後一歩、後一秒だけ長く生きたいってやり直しても、何度も繰り返して、行き場を失う」
「な、何の話だ……」
快楽物質のおかげで恐怖を感じないはずなのに、スバルの心臓は激しく恐怖を主張していた。
「諦められないの。もう手遅れって分かっていても、諦められない。後一歩頑張れば取り戻せるように見えてしまうから。だから続けて、また苦しむんだわ。そんなことをしたって、バルスの努力は誰にも見えない。誰も認めてはくれない。勝手に期待されて、失敗すれば、ただの期待外れの無能な男って決めつけられるだけよ」
「……ラム」
スバルはラムの言葉の意味を何一つ理解できない。
それでも、なぜか胸が凄く苦しくてたまらない。吐き出したくてたまらない。
「お、お前が訳わかんねえこと言って俺を夢の世界に縛り付けようと、敵に操られてるんだ!」
スバルはラムに向かってそう叫び、右拳を突き出して威嚇した。
もし、レムとラムが敵に操られているのなら、この夢の世界で実力行使をしなければいけなくなるだろう。
血液摂取で脳がめちゃくちゃになっていても、それだけはスバルの心が強く拒んでいた。
ザンッ!
「あああああっ!!」
「姉様っ!何を考えているんですかッ!」
「うるさいっ!」
ラムがまた風の魔法を放ったのだ。それは、スバルの目をめがけて放たれたものだった。
恐ろしい速度であり、ドーピング状態ではないスバルなら間違いなく両目を切り裂かれていただろう。
スバルはなんとか顔をずらしたが、頬が風の刃に切り裂かれてしまった。
「目つぶしかよっ……バルスってそう言うことか…?くだらねえ」
でも、これでスバルの心は決まった。震える右拳を左手で掴んで静めようと試みる。
「仲間に魔法を放って切り裂くなんて、ありえねえ!お前は敵だ!邪魔すんならぶっとばす!」
スバルは、少し体勢を低くして、いつでも飛び出せる臨戦態勢に入った。
ラムの薄桃色の瞳がさらに小さくなり、その表情はスバルを八つ裂きにすると言わんばかりに険しくなった。
「厄介だわ……ただでさえ頭が悪いのに、反抗できる力を持つなんて……」
「操られてる奴が何言ってんだよ!俺だってやりたくねえ、誰が仲間に暴力を振るえるんだッ!」
「本気だからよ」
ラムのその返しに、スバルは思わず固まった。
敵に操られているからスバルを切り裂いてきたのだと思っていた。だが、今のラムの言葉はとても操られている人が発するものとは思えないほど意思が籠っているように感じられたのだ。
「まさか、俺の勘違い?いいや、そんなはずがねえ、夢の世界にいていいわけがないんだ。その理由も、教えてくれないって……ふざけんなよ」
「もう、失うものなど何もない……あの現実の贖罪を」
「よせ!来るんじゃねえ!」
また、風の刃が飛んでくるはずだ。スバルは迎え撃つために身構えた。
何があったらラムがこんな風になるんだ。現実で何があった?
スバルの中に重たい迷いが生まれてしまっている。
「やめて!お姉ちゃん!」
「……っ!」
その時、レムが杖を持つラムの手を強く掴んで魔法の発動を妨害した。
「レム……自分が何をしているのか、分かっているの?」
ラムは驚きを通り越してレムのこの行動を恐れているような表情になっていた。
スバルも、レムの行動に驚いた。
敵が操るとしたらラムだけでなく、レムも操るはずだ。
つまり、ラムとレムの意思が反発することなどありえない。この二人は自分たちの意思で行動しているのだ。
「姉様、スバル君はレムとの約束を破ってまでここに来たんですよ」
「何が言いたいの?レム……貴方は何がしたいの?」
グイッと、レムに捕まれた腕を強引にラムは引き払った。
「スバル君の魂が、忘れていても現実を諦めていないってことです!」
「レム……」
スバルは、レムの言葉に拳を握りしめた。
本当に、そんな気がしたからだ。
だが、ラムは容赦なくレムの胸倉を強引に掴んだ。
「何をふざけたことを!まだバルスに戦えっていうの?死者に鞭打つつもりなの!?……こんな男に何ができるって言うの?」
「し…死者に鞭打つって?」
スバルがそう言うと、ラムに鋭く睨まれて黙らされた。
ここは、レムとラムの会話の行く末を見守るべきだろう。
「そうです!やっぱり、レムは諦められません!スバル君にならできるはずです!」
「おぞましい……お願いだからやめて頂戴…」
「レムは、姉様の知らないスバル君を知っています。この夢の世界でだけ思い出せた予知夢で、スバル君はレムの止まっていた時間を動かしてくれました」
ラムは、掴んでいたレムの胸倉を離し、鋭く突き飛ばした。
「バルスが……?信じられない…」
「スバル君には力がある、まだ死んでません!」
レムの強い言葉に、ラムは数歩後ずさった。
あれだけ圧力の強かったラムが今は、レムの圧力に押されてしまっている。
スバルも、レムの言葉に力が奮い立つのを感じた。
記憶も実感もないが、自分にはなんとかできる力がある気がしたのだ。
「ここは、ラムの夢よ…。せっかくレムを連れてきたのに、私を、貴方の姉を裏切るつもり?」
「姉様とスバル君と3人で暮らせるなら、夢の世界でもレムは幸せです。それでも、諦められないスバル君の魂を感じてしまったら、また信じたくなってしまいました」
そういって、レムは表情を緩めた。ラムは表情を強張らせ、レムのその態度に怯えているようだ。
「なんで、そこまで苦しめるの?せっかくバルスは、忘れられたのに、また思い出せようとするつもり?レム、貴方をそんな風に育てた覚えはないわ……」
ラムはそう言うと、震える手でレムに向かって杖を向けた。
その光景に、スバルは唖然とした。
「おいっ!ラム、お前達だけは傷つけ合ったらダメだ!話し合いで……」
スバルが止めようと声をかけたが、レムに手で制されてしまった。
レムは、ラムに杖を向けられても一切動じていない。
「そうです。姉様が育ててくださったレムですよ」
レムの意思の強さに、ラムはため息を吐いた後、また険しい表情を作り直した。
「……なんの根拠が合って、バルスがどうにかできると思っているの?」
「レムには分かりません。でも、背中を押すことはできます」
「傲慢だわ……こんな弱い男を何度苦しめれば気が済むの?それに…また、ラムの手を汚させるつもり!」
「スバル君は弱くありません!」
「なっ!」
突然鬼のような表情で、姉に反論したレムにスバルは思わずそう声を出した。
レムは、強い表情でスバルの方に視線を移してくる。
「スバル君!行ってください!姉様はレムが止めます!」
「あ、あぁ!行ってくる!」
急に行動を迫られた。だが、確かにその強い意志をスバルは受け取って走り出す。
だが、背後で起こった戦闘音に思わず振り返ってしまった。
「ぐっ……っ!」
スバルが振り返ると、顔を抑えて倒れこむレムと、呆然と立ち尽くすラムがいた。
ラムがレムの顔を強く打ちぬいたのは一目両全だった。
「はぁ……はぁ…」
実の妹に手を上げたという事実に、重たいショックを受けているようで、ラムは呼吸を荒くしたまま動かない。
それでも、重たい体を動かしてまたスバルの方に振り返ると、杖を向けてきた。
「お前……」
「違うの、バルス……そんな目で見ないで、間違っているのはレムの方よ」
動揺に、ラムの瞳は激しく揺れていた。
とても正気じゃない。スバルは、ラムから目を逸らさないまま、後ろ歩きで距離を取り続けた。
「俺が、現実のお前達を救って見せる……。だから、ここでは争うなよ」
「行けば、必ず後悔するわ……。行っても、バルスじゃどうにもできない」
ラムがそう言った途端、彼女の背後のレムが立ち上がった。
そして、レムは突然何もない所からモーニングスターを具現化させた。
これが、なんでもありの夢の世界で許されることなのだろう。
「スバル君は、弱くありません!」
同時に、スバルも後ずさるのをやめて、ラムに向かって強く踏み出していた。
「俺を、見くびるんじゃねえ!」
前と後ろ、同時に二人から飛び掛かられ、さらに精神的にショックを受けていたラムは反応できなかった。
スバルとレムは同時にラムに飛び掛かり、モーニングスターの鎖で強く縛り上げた。
「ぐっ……っ!」
ラムは、抵抗できずに鎖に拘束されて、地面に倒されてしまった。
その表情が崩れ、涙を流している。
「信じてください。姉様も、現実に戻りたいはずです」
「もし、上手く行ったらこの荒行は見逃してくれよ。姉様」
レムとスバルにそう言われても、ラムは涙で地面を濡らしたまま反応しない。
「見抜けなかった……レムも、この男に狂わされていたなんて……」
「はい、狂わされました。狂おしいほど幸せな方向に」
「現実で何があったのか、知らないままじゃ終われねーな。なんでレムがそこまで信じてくれるのか、知りたいし、期待にも応えたい」
スバルとレムは真っすぐ向かい合う。
「スバル君は、レムの英雄なんです」
「ありがとう。ラムを頼んだぜ」
スバルはレムにそう返すと、分からない行き先に向かって走り出す。
その背後で、鎖をガチガチと震わせながら、ラムがまだ抵抗していた。
「ダメ……!行かないで!……殺してやるっ!」
悲鳴や苦鳴のような声から、突然ラムがスバルに向かって殺意の籠った声で叫んだ。
スバルは、もう振り返らない。走り続ける。
「姉様っ!」
レムのその声が聞こえた途端。スバルを包囲するように、動物たちが突然現れた。
☆☆☆☆☆
スバルは駆ける。死地に駆ける。分からない目的地に向かって走り続ける。
すでに、ラムが見えなくなるくらい離れてからかなりの時間が経っていた。
あれから、スバルは動物たちに襲われ続け、それらを返り討ちにしながら走り続けていたのだ。
どこから動物たちが湧いて出てくるのか分からない。これも夢の世界だから許されることなのだろう。
「追いつきましたっ!スバル君!」
レムがモーニングスターを振り回して、スバルの背後を追いかけていた野犬の群れを打ち払った。
「レム!ラムは……!?」
追いついてきたのはレムだけであり、ラムの姿はない。
この森をスバルが走り続けて、もうラムがどこにいるかなんて分かるはずもなかった。
「姉様は少々無理をして気絶させました。まだ眠っているはずです!」
「この畜生共はどうするんだ!放置したら危険だろ!?」
夢の世界とはいえ、ラムを獰猛な動物たちがいる森で放置しておくのは耐えられない。
だが、そんな事はレムも分かっているはずだ。
「この動物たちを生み出して、スバル君を襲わせているのは姉様です!」
「え?」
「ここは、姉様の夢ですから!」
それを聞いて、スバルは納得した。
スバルが現実世界に戻らないように、ラムが動物たちに襲わせていたのだ。
ここがラムの夢の世界なら何でもありのはずだ。
「レムは……?お前は、ラムが作り出した夢の存在じゃないんだろ!」
「はい!レムの魂は本物です!」
もしも、ラムがレムの魂を自分の夢に連れて行かなかったら、スバルが現実に戻るチャンスなど全くなかっただろう。
どうして、ラムがスバルを現実に戻らせたくないのか、それも含めて知らなければならない。ラムが望まなくてもだ。
ラムはスバルは弱く、現実をどうにかすることはできないと思っている。レムはスバルを信じ、現実をどうにかできると思っている。
その考えの違いによって起こってしまった反発だ。
「いい結果を持ち帰って!必ずラムと仲直りしよう!」
スバルがそういうと、横を走っているレムが満面の笑みになったのが分かった。
「姉様にここまで反抗したのは生まれて初めてなんです……。もう、引き返せませんね!」
「おう!成長した姿を見せないとな!」
そう前向きに励まし合う2人を真っ向から妨害するように、クマの大軍が押し寄せてきた。
スバルは指を噛んで血を舐め、レムは額から角を生やした。
ラムが夢の力で差し向けた妨害を真っ向から乗り越える。
☆☆☆☆☆
動物たち、畜生共を全て返り討ちにして、しばらく走り抜けた先にようやく2人はたどり着いた。
「森の終わりか」
「この先が、目的地のようですね」
あれだけ深かった森の最奥までたどり着き、その先は白い光の壁になっていた。
森の境にある、この白い壁はいかにもすり抜けられそうに見えるが、踏み込むのを躊躇させるほどの圧力が感じられた。
「この先に、答えがある」
スバルは、白い壁に手を突き出すと、手は壁をすり抜けることができた。
「どうやら、レムは入れないようです……」
スバルの横で、レムも手を突き出したが、白い壁に阻まれてすり抜けられないようだった。
「ここまでありがとな。ここからは、俺が行ってくる」
「はい……。この魂で、信じています」
スバルがレムに手を差し出すと、力を込めるように両手で包みこまれた。
何をすればいいのか、この先に何があるのか、レムにも分からないはずだ。
ただ、レムにあるのはスバルに対する無条件の、考えなしの信頼だ。
「さぁ、行ってください」
「おう!」
スバルは一人で、白い壁の奥へと足を踏み出した。
☆☆☆☆☆
スバルが進んだ白い壁の先は、何もない真っ白な空間だった。
その異空間に、見逃せない人物が一人だけスバルを待っていた。
「お前は、誰だ?」
その人物は、スバルと瓜二つの顔で、黒い外套を身にまとっている。
「魔女教大罪司教、傲慢担当、ナツキスバルだよ」
自信気に、傲慢にそう自己紹介をするのは、狂気に満ちた歪んな表情をする自分だったのだ。
「その、魔女教とか大罪司教とか忘れちまったんだけど、いかにも悪役っぽいよな。お前って本当にレムが信じてくれる俺なのか?」
この白い世界の異空間で、現実の自分と会話して現実に戻れる的な展開かとスバルは思っていたのだが、予想外にも目の前の自分、自称大罪司教様は悪人面だった。
「レムねえ……。う~ん、コメントが思いつかないからスルーで」
「は?お前、それはねえだろ?冗談でも、レムを軽んじるような発言は……」
スバルがそこまで言ったところで、傲慢のスバルに手で制されてしまった。
冗談でも、レムに対して興味を示さないこの男の姿勢は気にくわない。
「ゲームクリアおめでとう。答えを教えてやるよ」
だが、この傲慢のスバルの発言に、スバルの胸のわだかまりは吹き飛んだ。
「答えは知りたいけど、ゲームクリアってどういうことだ?俺の戦いはこれからだろ?」
「終わりだよ」
傲慢のスバルはシンプルに否定した。その表情から軽薄さが消えている。
「この夢の世界で、偽の楽園を受け入れずに俺に会いに来たことだけは認めてやる。それだけで、お前は引きこもり時代から変われたと思うぜ」
「は?何を言って……俺はレムに信じてもらって」
「レムも、ラムも関係ない。この先には何もない」
傲慢のスバルが手を差し出した。スバルは直感で、その手に触れれば答えが分かると察した。
「これが結末だ。お前は敗者。エミリア以外に目がくらみ、一番大切なものを残して、先に進めなくなった敗者だ。そんな奴が、都合よく全て忘れて幸せに暮らすなんて……。俺達の傲慢がそれを許さないよな?」
「エミリアって誰だ……?俺が敗者だと……?」
「答えを知ればすべてが分かり、諦めもつくはずだ。そして、認めろ。俺が正しかったってな」
そう言った後の傲慢のスバルはその視線でスバルの魂ごと強く射抜いてきた。
傲慢のスバルはスバルを否定し、自分が正しかったと言いたいらしい。
今まで、現実の世界でどんな人生を歩んできたのか。知らなければならない。
これが、ラムがどうしても、スバルを殺しててでも知らせたくなかった真実なのだろう。
「運命様、上等だ」
スバルは、傲慢のスバルの手を握った。
その直後に、現実世界で起こった全てを思い出した。
敵だったら怖い人
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アヤマツ記憶持ちスバル
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カサネル記憶持ちロズワール
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本編記憶持ちペテルギウス