リゼロキャラ達がIFルートや本編の記憶を持って初期地点に逆行してきた件(主人公:スバル) 作:駄々我菓子
本能で真実を求める者、それを守ろうとうする者。
誰にも、引けない時がある。
憤怒の極みはエミリアと、ラムはレムと対峙していた。
レムの額から白い角が現れる。
「まだまだ足りません・・・姉様、もっと回復が必要なのではないですか?」
「言うようになったわね・・・・・ラムに妹をいじめる趣味はないわ」
ラムは折れた角を媒介に、1/100の負担をレムに肩代わりする。
衰弱死することはなく、彼女のマナの流出は止まる。本来の1/100ずつ回復していくのだ。
「レムをここから追い出すことはできません。それを証明できたら、真実を教えてくれますか?」
憤怒の極みは、レムの方に顔を向けた。だが、対峙するエミリアを警戒し動き出しはしない。
「それがレムの望みなら、ラムの両足を折るくらいのことはやってみなさい。弱い、あなたにできるならね」
容赦のない一言。それでも、ラムとスバルの気持ちは同じだ。
レムに、スバルの真実は知らせるべきではない。
「レムは姉様の妹です。弱くありません!」
二人は衝突し、戦いが始まった。
片方は、1/100の負担を背負いながらも鬼化の優位性がある。
もう片方は、マナの枯渇と重傷を背負いながらも1/100ずつ回復する。
どちらかに降参させるまでの戦いだ。
「よそ見するなら・・・・後から言い訳させないからね!」
姉妹の戦いを観察する憤怒の極みに、エミリアが攻撃を開始した。
注意の方向が、一瞬で変化する。こちらも戦闘を開始する。
戦いが経過すれば適応されてしまうことは、エミリアもよく知っている。
彼女の勝機は、短期決戦で憤怒の極みを気絶させるしかない。
たとえ気絶させられたとしても、スバルが夢の世界でもう一度憤怒の書を読めばいいだけの話だ。
それでも、嫌な予感がする。もしも、気絶させられたら。
夢の世界で、誰かに心を変えられるかもしれない。
今の段階では、そんな心変わりの余地が今の自分にあるなど想像もできないが。
「・・・・・・・・!」
ドクン!ドクン!ドクン!
速い。エミリアが迫る速度を、憤怒の極みは見切れなかった。
躊躇のない傲慢の権能の行使だ。スバルは、自分から引き出された力に圧倒される。
顔面の伝わる彼女の拳の衝撃は、確かな痛覚となってスバルにも伝わる。
視界が真っ白になり、背後に飛ばされる。まだ、意識だけは手放さない。
「スバルが適応するなら、それよりもっと強くなり続ければいいんだわ!」
「・・・・・・ゴホォッ!!」
ベアトリスの術式で無敵化した金書庫の壁に叩きつけられた憤怒の極みは、口いっぱいの血を吐き出した。
権能とは、自らのイメージ通りに世界を書き換える力だ。
傲慢の権能による強化が、憤怒の極みにも適応可能なのかどうかは不明。
それでも、エミリアへの存在適応さえ始まってしまえばゲームセットになる。
体を動かせないスバルにできることは、痛みに耐え、意識を決して手放さないことだ。
ドクン!ドクン!ドクン!
また、力を引き出される。心臓が二人分の血を送り出しているようだった。
憤怒の極みは、顔を醜く歪めてこの現象を嫌がる。
低い体勢から走りだし、エミリアに迫った。
「私だけが、まだ達せられていない・・・・・だから、すごーくごめんね」
憤怒の極みは異変を察知し、動きを中断する。むしろ、エミリアから距離を取ろうと後退を判断し・・・・・・
赤く輝く瞳が大きく見開かれた。
その時、エミリアは飛んでいた。一瞬で生成された氷の柱を足場に、高く飛びあがったのだ。
ダダダダダダダ!!!
もはや、氷柱でも矢でもない。弾丸でも砲撃でも言い表すには不十分だろう。
それは、氷の塊のビームだった。
無慈悲にグミ打ちされたその攻撃の速度に、憤怒の極みはとても追いつけない。
スバルの全身に、氷が突き刺さった。
刺さったところから固定される。そして、すぐ新しいのが飛んでくる。
痛くて、冷たい。その繰り返しだけが頭を支配していく。
怒りすら凍らされ、戦意喪失を招きかねない大技だった。
「・・・・・・っ!嘘!」
パキッ!!
憤怒の極みは、傲慢の権能により強化された魔法にも適応する。
体を固定する、氷たちを粉々にへし折った。
次の瞬間、スバルの意識は自らの高速移動に飛ばされそうになった。
白い蒸気による回復もままならないままに、一瞬でエミリアの背後、その高所に回り込む。
「させない!」
攻撃を察知したのか、彼女は腕でガードを間に合わせた。
だが、憤怒の極みはさらに上回る。ガードされていない腰部分に攻撃を変更し、重たい蹴りを食らわせた。
バギィィ!
骨にヒビの入る嫌な音が聞こえ、エミリアの体は空中から一瞬で禁書庫の床に叩きつけられた。
もう諦めろ。憤怒の極みは容赦がない。抵抗するだけ痛い目を見るだけだ。
床に叩きつけられたエミリアが体勢を立て直す前に、憤怒の極みは畳みかける。
空中を蹴り、重力落下を加速。そのまま踏みつぶすつもりだ。
その容赦のなさに、スバルは激痛を覚える。
分かっていたはずだ。こうなる覚悟で、これを選んだ。
間違っても憤怒の極みはエミリアを殺しはしないだろう。
この金書庫からレムとエミリアを連れ出すことが導きだからだ。
だが、この勢いでは彼女を半殺しにしかねない。
いや、その勢いでなければ、エミリアを止められないということなのか?
勢いをつけて踏み下ろした右足は、間一髪のところで回避された。
衝撃地点のすぐ横で、エミリアは頭一個分ギリギリ避けたのだ。
もしも当たっていたら、間違いなく意識を失っていただろう。
だが、敗北スレスレの土壇場でありながらも、エミリアは口角を上げた。
この戦いに、この状況に、まるで喜びを感じているように。
理解できない。
「これが、あの時の裁きなら・・・・・なんだか嬉しいわ」
は?
スバルの無理解とは関係なく、憤怒の極みは攻撃を続行する。
彼女を終わらせる右拳を振り下ろした。
エミリアは両腕を交差させて、衝撃を受け止める。
威力を、体全身と床の広い面で逃がしているのだ。
その時、彼女の左手は憤怒の極みの方に向いていた。
スバルはそれを認識したが、すでに遅い。
ダダダダダダダ!!
至近距離で氷のビームが連射された。文字通りに、憤怒の極みはハチの巣にされる。
「でも、ごめん。真実からは逃げたくないの・・・・私は自分の罪から逃げたくない」
傷口から凍結が起こっている。これを何とかしなければ、適応する前にやられてしまう。
憤怒の極みは、まだ凍結していない足を使って力強く後ろに飛んだ。
白い蒸気を上げながら、憤怒の極みの肉体は再生する。
そした、また標的への攻撃を試みる。
「・・・・・・・・!?」
声を出せないまま、スバルは驚愕していた。
「これで、終わらせるから!」
エミリアの周囲から、氷のエミリアたちが出現した。これも傲慢の権能で強化された魔法が成す力だ。
その数が、10体、15体、20体。止まることなく増えていく。
すぐに、憤怒の極みは氷のエミリアたちに包囲された。だが、もっと恐れなければいけないことがある。
ラムがやばい。スバルが、氷の兵隊たちの相手をしている間に、別の氷の兵隊はレムに加勢するだろう。
取り囲まれ、背後と正面、左右からも視線を感じる。
どういう仕組みだ?氷の兵隊たちはどうして意識を持ったように動ける?それぞれが、氷の魔法を扱ってくる。
全方位から、憤怒の極みへ攻撃が始まった。
氷の剣が迫る。氷の槍が迫る。自爆特攻が迫る。
「アアアアアアアアアアア!!!!」
次の瞬間、憤怒の極みは怪物のような咆哮を上げていた。
内側のスバルですら、何が起こったのかすぐには理解できない挙動だ。
この叫びは衝撃波となり、周囲全方向の敵たちを吹き飛ばしたのだ。
適応する。どこまでも最適化する。
そして、余裕のできたスペースを利用し、憤怒の極みは高く飛びあがった。
見下ろした戦場には、床がびっしりと氷のエミリアに埋め尽くされている。
だが、本体のエミリアが見当たらない。どこに行った?
「すごーくごめんね。私って、ちょっと感覚が良いみたい・・・」
「・・・・・・・・!」
空中にいるのにもかかわらず、その銀鈴の声はさらに頭上から聞こえた。
エミリアは、憤怒の極みの挙動を感覚で感じ取り、さらに上に飛んでいたのだ。
グサッ!!
憤怒の極みの胴体に、背後から氷の剣が突き刺さった。
重力に従い落下する。だが、この刹那は時間が止まったかのようだった。
「・・・ゴボォッ!!」
大量の血を吐き出した。剣が肺に刺さっている。全く呼吸できない。
それでも手放すな。意識を手放すな。
今落ちれば、立て直せなければ、下にいる氷たちの餌食だ。
どうして?どうして勝てないんだ。こんなものなのか、憤怒の極みの力は。
あの時、あの王都で、あれだけスバルを苦しめたこの呪いは、この程度だったのか?
「スバルがいれば、私はどこまでも強くなれる!」
憤怒の極みは即座に次の行動を決定した。
背後のエミリアを蹴り飛ばし、勢いをつけて床に落下する。衝撃で氷の兵隊たちを吹き飛ばして再生の時間を稼ぐ。
内臓への負傷は無視できない。畳みかけられたら終わりだ。
だが、憤怒の極みが空中で背後のエミリアを蹴り飛ばす前に、彼女の蹴りがこちらに当たっていた。
胴体に鋭い衝撃が生じ、空中で軌道を変えて金書庫の無敵化した壁に叩きつけられる。
ドォッッ!!
衝撃で、左腕と左足が潰れた。
あっそ・・・・。だったら右足で。
ガッ!!!
金書庫の壁を、右足で蹴って飛ぼうとした憤怒の極みに、氷の兵隊が飛んできた。
馬鹿な。もうここまで飛んでくるなんて、ありえない。
少し遅れて、その事実に気づいた。氷の兵隊が飛んできたのではない。
エミリアが投げつけてきたのだ。
脳筋だが、今時間を稼ぎたい憤怒の極みには、もっともやられたくない行動だ。
「アア・・・・・・ッ!」
叫べない。肺が治っていない。
衝撃波を発生することに失敗しただけでなく、鋭い激痛がスバルを襲った。
ズシンッ!!!
ついに、地面に落下する。見上げれば、頭上から投げ飛ばされた氷のエミリアたちが降って来ていた。
立たないと・・・。
それだけではない。地面を駆ける大量の足音が伝わってくる。左手足もまだ治っていない。
真上から、氷の槍が振り下ろされる。
右手で掴み、逆にその槍を振り回す。2体の氷を吹き飛ばす。
だが、右手が塞がっているうちに、別の氷2体が自爆特攻してきた。
潰れた左半身ごと掴まれて凍結される。氷の槍を奪った右手も奪われて凍結される。
完全に固定された。下手に動けば体がバラバラになる。
激痛の上から、冷酷さが上乗りした。眼球まで凍り付きそうなくらい冷たい。
固まった憤怒の極みの眼球は、自らの終わりを捉えた。
本体のエミリアは、すでに目の前まで来ていたのだ。
右拳を掲げる。輝いた紫紺の瞳と目が合った。
勝利の決め手になる右拳から、何かのオーラが出ているように見えた。
魂の一撃を振り下ろすつもりだ。
「私が、終わらせる!」
憤怒の極みは、唖然としたまま固まった。内側のスバルのそれと同じようになす術もなく終わりを見上げる。
あれ?・・・・俺は、負けるのか・・・・?
「ああああああ!!!」
エミリアは叫んだ。そして、右拳を力の限り振り下ろす。
しかし、それは憤怒の極みの凍り付いた顔面の直前で止まった。
最後に、彼女の弱さが見えた。決定的な弱さが見えた。
やはりスバルは、間違ってなかった。エミリアは弱い。
「・・・・・・馬鹿っ!!」
氷への適応完了。固定されていた憤怒の極みの全身は瞬く間に氷を引き剥がす。
起き上がり、瞳の寸前に彼女はいる。自らが躊躇したことに唖然としている。
攻撃への何の準備もしていない。こちらは、一切の躊躇を見せない怪物だ。
「そんな・・・・・・」
ゴッ・・・・!!
頭蓋を砕く鈍い音がした。スバルは右拳に強い痛みを覚える。
殴り飛ばされたエミリアは金書庫を、自らの氷の兵隊たちをドミノ倒しにしながら吹き飛ばされていった。
氷への適応は、敗北を悟った直後に完了した。
もしもあの時、エミリアが躊躇せず右拳を振り下ろしていれば、確実に負けていた。
憤怒の極みを殺すつもりで右拳を振り下ろすべきだったのだ。
たとえ致命傷になったとしても、スバルは気絶し、傷はレムの力によって癒される。
エミリアには、それができなかった。
彼女には、スバルを殺すことができない。
追撃を続行する。スバルの心の準備も、エミリアの回復も待たない。
傲慢の権能の力でも、あらゆる傷を回復される。それを憤怒の極みが許すわけがない。
「バルス、止まりなさい」
だが、走り出した方向。目の前にラムが現れ、手で憤怒の極みを制した。
憤怒の極みは、意外にもラムを轢き倒さずに指示に従って止まった。
ラムの頁の導きを実行するために行動しているのが理由かもしれないが、彼女に危害は加えないようだ。
どこまで指示に従えるのかは分からないが。
「何・・・・の・・・・つもり」
片目が潰れ、そこから白い蒸気を上げて回復しているエミリアが怨念の籠った声でそう言った。
氷の兵隊たちをクッションにしているものの、まだ起き上がれていない。
その心には、躊躇して決定的な勝機を取りこぼした事への後悔が見えた。
「これ以上、バルスとエミリア様の戦いは見たくありません・・・・」
ラムの姿は満身創痍のままだ。
レムはどうなった!?
憤怒の極みの実行しなければならない導きに、レムは欠かせない。
スバルの意思と同じように、憤怒の極みは彼女の姿を探した。
「・・・・・・・・!」
床にうつ伏せで倒れこむレムの姿が見えた。
彼女の武器のモーニングスターは、鎖が断ち切られ使い物にならないまま床に転がっていた。
ラムに敗れたのだろう。彼女の意思次第で角を再現する負担の強度を調整できる。
それを肩代わりするレムに、勝ち目はなかったのだ。
それ以前にすぐにラムにやられたのかもしれないが。
「レムの事なら心配いらないわ・・・・深手を負わせたから」
ラムの口調は低く重たかった。その理由を、スバルも分かっている。
力づくでも真実は守らなければいけない。もしも、死に戻りがレムにバレたら、より大きなものを失うことになるのだから。
「・・・・・・教えて・・・・・すごーく教えて」
憤怒の極みとラムの意識は、その低い声を聞くとすぐにエミリアに戻された。
とても無視できないほど強大な憎悪の圧力だ。
エミリアは力なくまだ氷の上に倒れたままだったが、上体を傾けると左手をこちらに向けている。
いつでもあの氷のビームを発射可能だ。
まずい。連射されても憤怒の極みがやられる事は無いだろう。
でも、あの速度で発射されるビームからラムを守れるかどうか。
そもそも、憤怒の極みがラムを守るかどうかも不明だ。
これは、まるで銃口を突きつけられた脅しに等しい。
「あの質問の続きと・・・・・今隠してるスバルの真実を、すごーく教えて」
憤怒の極みはまだ動き出さない。まさか、ラムに「待て」と言われた指示をいまだに守っているのか?
いいや違う。そんなに扱いやすい呪いではないはずだ。
動けないのだろう。ラムに銃口がつきつけられ、下手に動けば彼女が殺されるとこの呪いも分かっているのだ。
「貴方への追撃を止めてあげたのに、酷い仕打ちではないですか?・・・・・エミリア様」
満身創痍のラムは、落ち着いたまま左手を構えるエミリアにそう返す。
エミリアは、表情を怒りのままに歪めた。
「ラム・・・・・あの廊下で聞いた時の反応で確信したわ。あなたは私と同じ世界線の予知夢を見たわね・・・・」
スバルが恐れていた事態に陥った。
今までの冷戦が、ここにきて取り返しのつかない開戦を迎えた。
そして、爆発は避けられない。
「えぇ。エミリア様の言うとおりです・・・・」
「あの予知夢の事・・・・後悔してる?」
「後悔しています」
ラムの返答に、エミリアは言葉を詰まらせた。
スバルは張本人でありながらも発言権を持たない。
「私は・・・・ぜっっったいに許さない。けど・・・・・・・」
ビーム発射待ちの左手は震えている。エミリアは言葉を続ける。
「けど・・・・・、後悔していて、やり直したいなら止めないわ」
「ありがとうございます」
エミリアの言葉は依然として冷酷で憎悪が感じられる。ラムは落ち着いたまま感謝で応えた。
上手くいけば、このまま話し合いで終わるかもしれない。
賢いラムなら、なんとか言葉でこの場を収められるかもしれない。
そんな希望がスバルの胸の中に浮かんだ。
「私も、すごーく後悔していてやり直したいの・・・・・悔しいけれど、今のラムはスバルの仲間で、私の仲間でもあると思う・・・・・」
「その通りです・・・・。ラムは、エミリア様の敵ではありません」
それは事実だ。だって、こんなにも強くラムの憤怒が伝わってくる。
憤怒の極みは、頁の主人であるラムの憤怒を共有する。
彼女にとって、エミリアも助けたい大切な仲間の一人だ。そして、彼女に憎まれているラム自身に対して強い憤怒を感じている。
エミリアの表情が崩れ、殺気が弱まっていく。
脅しのように差し向けられていた左手をとうとう下げた。
「ラムは・・・強くなった・・・・。貴方がいなければ、今回の事件を解決できなかったことなんて・・・・分かってるの!」
感情が爆発する。
「ラムだけの力ではありません・・・・。エミリア様がいなくても、解決はできなかったでしょう」
「そんな慰めが聞きたいんじゃないの・・・!私は、まだまだ足りない・・・・全然足りないの!」
憤怒の極みは、脅しとなっていた左手が下げられてもまだ動き出さない。
エミリアとラムの会話をじっと聞いたままだ。
まだ、油断できないと言う事なのか?
「足りない部分があるのは、ラムも同じです・・・・・。私達は同じ方向を向いて、支え合っていけるはずです」
その通りだ。ラムの言葉は全て本心だ。
「私も・・・・・その瞳の輝きが欲しい。ラムも、レムも、ラインハルトもそこに達した・・・。どうして、こんなに強くスバルのことを想っているのに・・・・私には何が足りないの?」
「・・・・・・・・・」
ラムはすぐに言葉を返さなかった。スバルもエミリアの問いに唖然としてしまう。
彼女は、傲慢の極みを強く望んでいる。世界を支配できる、死に戻りに匹敵する力を欲しているのだ。
それは、憎悪の対象となるラムに対して答えを縋ってしまうほどに。
「あなたへの復讐なんて・・・・なんの意味もないことだって分かってる。でも、ラムのその力・・・・・隠している真実・・・・あなただけの物にさせるつもりはないからね!」
萎んだはずの殺気が、また復活してしまった。
「ハッ・・・・。本当にまだまだ躾も教育もなっていないようね」
は?
ラムは、ため息をこぼしながらそう言った。確かにそう言った。
その言葉を聞いたスバルの恐怖は、憤怒の極みの背中に冷たい汗を流すことで体現される。
自ら爆弾に火をつけるとは。何を考えているんだ。
「・・・・・・・・も、も・・・もももももう一度言ってくれない・・・?私、すごーく頭がおかしくなってしまいそうだわ」
か、寛容な精神。爆弾発射ボタンを押してから、「本当に押しますか?」とコマンドが用意された感じだ。
「本当に、手のかかるエミリアね。頭の中まで氷が詰まっているんじゃないかしら?それだと、もうこれ以上冷やしようがないわね」
「・・・・・・・・」
終わりだよ。もうラムの言動は、スバルの低脳では想像することもできない。
なんのために、起爆スイッチを連打したんだ?
「ラム・・・・・あなたにスバルは奪わせない!あなたを、殺す!!!」
エミリアは、強く立ち上がった。全身全霊の殺気をラムに向ける。
憤怒の極みは、鋭い目線で彼女の攻撃に備える。
「ラムを殺して・・・・スバルを取り戻す。・・・・・・レムも殺すわ。私を許すはずがない・・・・・。ベアトリスも殺して、この屋敷から出る・・・・」
すぐには襲いかかってこない。自分に言い聞かせるみたいに、恐ろしい独り言をつぶやいている。
「そうしたら・・・・・・・私も達せられると思う?傲慢の極み・・・・・」
「えぇ・・・・・。正解です。良くできましたね」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・
何を考えている・・・?ラインハルトの時で既に分かっている。
ラムが相手を挑発する時は、すでに数手先が見えている時だ。
彼女は、どんな結末を描いている?
エミリアに、傲慢の極みに達する方法を教えるとは。
「待ってて・・・・スバル・・・そこで待ってて・・・・・」
ラムは、スバルが自分の手で死んだと確信したことで傲慢の極みに達した。
レムは、夢の世界でスバルを殺すことを受け入れることで傲慢の極みに達した。
ラインハルトは、王国のためにスバルを犠牲にする道を選ぶことで傲慢の極みに達した。
なら、エミリアは?
スバル以外を殺すことで、傲慢の極みに達するのか?
もう、引き返せない道を選ぶことで・・・・・
「あなたが、本当に強くなるその日まで・・・・・命をかけて仕えさせていただきます。エミリア様・・・」
ラムは、優しい声音でエミリアに意思を伝える。
その言葉通りなら、ラムがいる限りエミリアが傲慢の極みに達する未来は永遠に訪れないということだ。
ダダダダダダダ!!!!!
ラムの意思表明に返答するように、レーザー弾の如き速度の氷ビームが何発も発射された。