転生バドは勝利を夢見る   作:ぶーく・ぶくぶく

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ぜひやろう

/*/ ブラジル支社 ASURA試験格納庫 /*/

 

 

 

 ファビオラ・イグレシアスの動きは、映像で見返すほど腹が立った。

 

 小さい。

 

 低い。

 

 速い。

 

 手をつく。

 

 足を払う。

 

 壁を蹴る。

 

 相手の視界の下へ潜る。

 

 真正面からぶつからない。

 

 床と壁と柱を、自分の身体の一部みたいに使う。

 

 バドはモニターの前に座り、ファビオラがRPG射手の膝を刈った場面を何度も巻き戻していた。

 

「ここ。ここや」

 

 画面の中で、小柄なメイドがコンテナの影から滑り込む。

 

 手をつき、身体を低く回し、蹴りで相手の膝を払う。

 

 RPGが床を滑る。

 

 バドは指で画面を叩いた。

 

「これ、欲しい」

 

 黒崎は壁際で腕を組んでいた。

 

「本人は嫌がっていました」

 

「モーキャプだけでええねん」

 

「それを嫌がっていました」

 

「ケチやなぁ」

 

「当然です。自分の動きを会社の制御OSに組み込まれたい人間は、そう多くありません」

 

 バドは不満そうに頬を膨らませた。

 

 その横で、森川政治は端末に映像を取り込み、関節の軌道をざっくりと線で追っている。

 

 磯口豊は腕を組み、画面と格納庫の奥に置かれたグリフォンのフレーム模型を見比べていた。

 

「カポエイラの動きをそのまま入れるのは無理だ」

 

 森川が言った。

 

「人間の骨格、筋肉、接地感覚をレイバーへ直接変換することはできない。だが、考え方は使える。低姿勢への移行、手をついた旋回、相手の死角へ入る足運び、転倒からの回転復帰」

 

 磯口が続ける。

 

「ハヌマーンには向いているね。手足が長く、足にもマニピュレータがある。元から猿型の機体だ。むしろ、こういう動きをさせるための身体に近い」

 

 バドは目を輝かせた。

 

「せやろ! ハヌマーン改にASURAとアルフォンスの起動ディスク由来の判断入れて、そこにメイドさんの低姿勢回転も足したら、めっちゃ嫌な猿になるやん!」

 

「言い方はともかく、理屈としては分かる」

 

 森川は頷く。

 

「だが、グリフォンに入れる場合は別の問題がある」

 

「問題?」

 

 バドが振り返る。

 

 森川は、モニターにグリフォンの三面図を表示した。

 

 素体。

 

 フライングユニット装着状態。

 

 そして仮案として描かれたアクアユニット装着状態。

 

「素体のグリフォンなら、かなり自由に動ける。前回り受け身、横転、低姿勢旋回、手をついた姿勢復帰。フレーム強度と関節可動域の範囲内なら、ASURAで補正できる」

 

 森川は次に、フライングユニット装着状態を指した。

 

「だが、フライングユニットを背負った状態では、背中と肩が使えない」

 

 バドは画面をじっと見た。

 

 グリフォンの背中に装着された大型ユニット。

 

 翼状の構造。

 

 推進器。

 

 接続フレーム。

 

 補助燃料系。

 

 それらが、背面を大きく占有している。

 

「……あかんやん」

 

 バドが呟いた。

 

「前回り受け身、できへん」

 

「できないわけではないが、壊れる可能性が高い」

 

 磯口が言う。

 

「肩から転がった時、ユニットが接地する。翼状部が引っかかる。接続フレームにねじれが入る。最悪、背面ロックが歪んで、離脱も飛行もできなくなる」

 

 バドの顔が真剣になった。

 

「つまり、羽根つけてたら、地面で猿みたいな動きができへん」

 

「そういうことだ」

 

「飛べる代わりに、転がられへん」

 

「正確には、転がる選択肢が大幅に制限される」

 

 黒崎が静かに言った。

 

「むしろ、転がらないで下さい」

 

「RPG来たらどうするん」

 

「RPGを撃たれる状況にしないで下さい」

 

「毎回それやなぁ」

 

「毎回そうです」

 

 内海課長は、少し離れた机の端に腰かけ、楽しそうに話を聞いていた。

 

「面白いね。装備を増やせば強くなるとは限らない。飛ぶための羽根が、地面での自由を奪う」

 

 バドは頷いた。

 

「つまり、ASURAの動作ライブラリを分けなあかん」

 

 森川が端末を止める。

 

「分ける?」

 

「素体用。フライングユニット用。アクアユニット用」

 

 黒崎の眉が動いた。

 

「アクアユニット?」

 

 バドは黒崎の方を見た。

 

「空だけやと読まれるやろ」

 

「何をです」

 

「逃げ道」

 

 バドはグリフォンの図を指した。

 

「最初に飛んで逃げた。せやから次にアルフォンスとやる時、警察も篠原も空を警戒する。ヘリ、レーダー、上空監視、飛行ユニット狙い。開けた場所に出さへんようにするとか、離陸前に組みつくとか、絶対考える」

 

「考えるでしょうね」

 

「ほな、空だけやとあかん」

 

 バドは、今度は画面の海側地図を表示した。

 

 東京湾岸。

 

 運河。

 

 埋立地。

 

 港湾部。

 

 水路。

 

「東京は水が多い。湾岸も運河もある。空に逃げると思わせて、海に逃げる。アクアユニットで水上か水中へ離脱するパターンも要る」

 

 黒崎は深く息を吐いた。

 

「空中逃走、水上逃走、水中逃走。関係部署がどんどん増えます」

 

「ええことやん」

 

「悪いことです」

 

 内海課長が笑った。

 

「いいねえ。逃げ道は多い方がいい」

 

「課長」

 

 黒崎は即座に言った。

 

「よくありません」

 

「でも、勝った後に捕まったら意味がないだろう?」

 

「そもそも勝負をしないという選択肢があります」

 

 バドと内海課長が同時に黒崎を見た。

 

 どちらも、心底不思議そうな顔だった。

 

 黒崎は頭痛を覚えた。

 

「その顔をやめて下さい」

 

「黒崎さん、勝負せんかったら何のためにグリフォンあるん?」

 

「本来、存在しない方がいい機体です」

 

「ひどいなぁ」

 

「正論です」

 

 磯口が苦笑しながら言った。

 

「まあ、装備別の動作ライブラリという考え方は正しい。素体なら地面を使う。フライングユニット装着時は、転がる代わりに上へ逃げる。アクアユニットなら、地上格闘は捨てて逃亡優先だ」

 

 森川も頷く。

 

「ASURA側で装備状態を認識し、使用可能動作と禁止動作を切り替える必要がある。フライングユニット装着時に前方回転回避を選択しない。アクアユニット装着時は重心と抵抗を再計算する。水中・半水没状態でのセンサー信頼度も別扱いだ」

 

「せや」

 

 バドは、嬉しそうに指を鳴らした。

 

「装備ごとに別キャラや」

 

「その言い方は乱暴だが、概念としては近い」

 

 森川が言う。

 

 バドはさらに身を乗り出した。

 

「あとさ」

 

 その声の調子で、黒崎は嫌な予感を覚えた。

 

「何です」

 

「背面ユニットを、現場で自分で装着するのも検討して」

 

 格納庫が一瞬、静かになった。

 

 黒崎がゆっくりと瞬きする。

 

 森川が手を止める。

 

 磯口が眉を上げる。

 

 内海課長だけが、すぐに笑った。

 

「現場換装か」

 

「せや」

 

 バドはモニターのグリフォン素体図を指差した。

 

「戦闘中は素体がええ。カポエラの動き使える。前回り受け身できる。地面で低く回れる。アルフォンスの予想外せる」

 

 次に、フライングユニット図を叩く。

 

「でも逃げる時は飛びたい。せやから、最初から背負って戦うんやなくて、現場のどっかに置いといたフライングユニットを、戦闘後に自分で背負う」

 

 さらに、アクアユニット案を指す。

 

「水に逃げる時も同じ。港湾とか運河近くにアクアユニット置いといて、必要ならグリフォンが自分で装着する。整備員待ってたら遅いやん」

 

 黒崎の声が低くなった。

 

「無茶です」

 

「まだ言い切るの早いやろ」

 

「無茶です」

 

「二回言うた」

 

「何度でも言います。無茶です」

 

 バドは唇を尖らせた。

 

「でも、できたら強いやん」

 

「できたら、の前に、やるべきではありません」

 

 黒崎は指を折るように言った。

 

「現場での背面ユニット装着には、位置合わせ、機械的ロック、電気系統接続、油圧系統接続、冷却ライン、燃料系、安全確認、重心再計算が必要です。整備環境のない場所で、戦闘後の損傷機体が自力で行うには危険すぎます」

 

「ASURAで補正したら?」

 

「ASURAに何でも押し付けないで下さい」

 

 森川が少し考え込んだ。

 

「いや……理論上は不可能ではない」

 

 黒崎が森川を見る。

 

「森川さん」

 

「もちろん、危険だ。だが、自己装着用のガイドレール、誘導ビーコン、半自動ロック、接続確認シーケンスを作れば、ドッキング自体は可能かもしれない」

 

 磯口も興味を示した。

 

「背面側に三点支持の受け、ユニット側に自立スタンドを持たせる。グリフォンが背中を合わせて後退し、ASURAがミリ単位で位置合わせを行う。ロックピンが入ったら、電気系と制御系を接続。燃料や冷却系はカートリッジ化すれば、流体接続を減らせるかもしれない」

 

 バドの目が輝く。

 

「ほら!」

 

 黒崎は即座に言った。

 

「ほら、ではありません。今のは技術者が危険な可能性に興味を示しただけです」

 

 内海課長は笑っていた。

 

「いいねえ。現場で、黒い機体が自分の羽根を拾って背負う」

 

「絵面かっこええやん!」

 

「実にいい」

 

「課長、煽らないで下さい」

 

「黒崎君は心配性だねえ」

 

「心配しない方が異常です」

 

 森川は端末に簡単な図を描き始めた。

 

「問題は装着姿勢だ。背中をユニットへ正確に合わせる必要がある。戦闘直後でセンサーが損傷していれば失敗する。片側だけロックが入った状態で飛行すれば、機体が捩じ切れる可能性がある」

 

「飛ぶ前にチェック入れればええやん」

 

「チェックは入れる。だが、敵に追われている状況で、数十秒から数分の装着時間を確保できるかどうか」

 

「遮蔽物いるな」

 

 バドは地図を見ながら考える。

 

「港湾倉庫の中、橋脚の下、トレーラーの中、コンテナの裏。フライングユニットなら開けた場所がいる。アクアユニットなら水際がいる」

 

 磯口が頷く。

 

「ユニットを現場に隠しておく必要もある。発見されたら終わりだ。先に押収される可能性もある」

 

「それは嫌やな」

 

「さらに、敵が偽装ユニットを用意する可能性もある」

 

 黒崎が言った。

 

 バドが顔をしかめる。

 

「偽装?」

 

「あなたが現場装着を前提にするなら、敵は装着ポイントを狙います。ユニットに爆薬を仕込む。ロック部を破壊する。接続時に罠を作る。逃走経路を読んで包囲する」

 

 バドは黙った。

 

 黒崎は続ける。

 

「逃げ道を増やすということは、準備する場所も増える。準備する場所が増えれば、漏洩点も増える。支援要員も必要になる。現場で自分で装着できるとしても、そこまでユニットを運び、隠し、維持する人間が必要です」

 

 バドは少し悔しそうにした。

 

「黒崎さん、そういう嫌なとこ見るの上手いな」

 

「実務です」

 

「でも、必要や」

 

 バドは画面のグリフォンを見た。

 

 素体。

 

 フライングユニット。

 

 アクアユニット。

 

 それぞれ、できることとできないことが違う。

 

 素体なら地上で回れる。

 

 フライングユニットなら空へ逃げられる。

 

 アクアユニットなら水へ消えられる。

 

 だが、最初から背負えば動きが制限される。

 

 背負わなければ逃げ道が減る。

 

 なら、現場で背負うしかない。

 

「僕、アルフォンスとやる時、素体で戦いたい」

 

 バドは静かに言った。

 

 会議室の空気が少しだけ変わる。

 

「フライングユニット背負ったままやと、アルフォンスに組みつかれた時に邪魔や。前回り受け身もできへん。低姿勢の回転もできへん。肩から逃げられへん。カポエラの動き、半分死ぬ」

 

 黒崎は黙って聞いた。

 

「でも、勝った後に飛べへんと捕まる。空が読まれてたら水に逃げる。水も読まれてたら、別の逃げ道。だから、装備は戦うためだけやなくて、勝った後に帰るためにいる」

 

 内海課長の笑みが、少し深くなった。

 

「勝利条件に、逃走まで含めるわけだ」

 

「せや」

 

 バドは頷いた。

 

「勝って捕まったら、ゲームオーバーやん」

 

 黒崎は、ゆっくりと息を吐いた。

 

「あなたの言い方は気に入りませんが、考えていることは理解しました」

 

「ほな」

 

「検討はします」

 

 バドの顔が明るくなる。

 

「やった」

 

「実施するとは言っていません」

 

「検討から実施まであと何歩?」

 

「非常に多いです」

 

 内海課長が笑う。

 

「黒崎君の“検討”は、だいたい最初の門番だからね」

 

「課長」

 

「何だい」

 

「あなたは門の横に穴を掘る人です」

 

「ひどいなあ」

 

 磯口が図面を見ながら言った。

 

「現場装着を考えるなら、まず試験用の簡易背面ユニットからだね。飛ばない、泳がない。ただの重りと接続試験装置。グリフォンが自分で位置合わせして、ロックし、解除する練習をする」

 

 森川も頷く。

 

「ASURAには、装着動作専用のサブルーチンが必要だ。後退位置合わせ、背面接触圧、ロックピン確認、左右荷重差、装着後の重心更新。不完全接続時は絶対に高機動を許可しない」

 

「それ、ブロッケンで練習できる?」

 

 バドが聞く。

 

「できるかもしれない。ただし、ブロッケンとグリフォンでは背面構造も重心も違う。完全な代用にはならない」

 

「でも、考え方は取れるやろ」

 

「取れる」

 

 森川は少し笑った。

 

「君は最近、それをよく分かっているな」

 

「豚とメイドと怪獣のおかげや」

 

「怪獣は映像だけでしょう」

 

「ログ欲しいなぁ」

 

「話を戻して下さい」

 

 黒崎が即座に言った。

 

 バドは笑った。

 

 だが、その目は画面から離れない。

 

 グリフォンの背中。

 

 フライングユニット。

 

 アクアユニット。

 

 現場に隠された背面ユニット。

 

 戦闘中は素体で走り、転がり、低く潜る。

 

 勝負が終わったら、隠しておいた羽根を自分で背負い、夜空へ消える。

 

 あるいは、水際でアクアユニットを装着し、東京湾の黒い水へ沈む。

 

 飛ぶだけではない。

 

 泳ぐだけでもない。

 

 戦う身体と、逃げる身体を切り替える。

 

 バドは小さく呟いた。

 

「グリフォン、変身できるやん」

 

 黒崎はすぐに言った。

 

「変身ではありません」

 

「背面ユニット換装」

 

「それならまだ許容します」

 

「かっこよさ減るなぁ」

 

「かっこよさで設計しないで下さい」

 

 内海課長がにこにこしている。

 

「いや、かっこよさは大事だよ。黒い怪鳥が、戦場で羽根を拾う。あるいは海へ潜る鰭を背負う。実にいい」

 

「課長まで」

 

「いいじゃないか、黒崎君。ロマンがある」

 

「ロマンで飛行ユニットのロック不良は防げません」

 

「そこは森川君と磯口君に頑張ってもらおう」

 

 森川は真剣な顔で頷いた。

 

「やります」

 

 黒崎は目を閉じた。

 

「そこで頷かないで下さい」

 

 磯口が苦笑する。

 

「まあ、検討だけだよ。まずは机上検討。それから固定台での装着試験。次に無人操作。有人は最後だ」

 

「有人って僕やんな」

 

「当然のように言わないで下さい」

 

 黒崎の声が低くなる。

 

「有人試験の前に、徳永専務の承認が必要です」

 

 全員が少し黙った。

 

 内海課長が楽しそうに言う。

 

「それが一番難しいね」

 

「分かっているなら、無茶を言わないで下さい」

 

「無茶だから面白いんだよ」

 

「課長」

 

「はいはい、黙るよ」

 

 バドはモニターの中のグリフォンを見つめ続けた。

 

 装備を足すと、強くなる。

 

 そう思っていた。

 

 だが、違う。

 

 羽根を背負えば、地面で転がれなくなる。

 

 水に逃げる装備を付ければ、地上の動きは鈍る。

 

 強い装備には、できなくなる動きがある。

 

 だから、いつ何を背負うかを選ばなければならない。

 

 それは、武器を選ぶことではなく、身体を選ぶことだった。

 

「黒崎さん」

 

「何です」

 

「僕、ちょっと分かったわ」

 

「何をです」

 

「強い装備って、全部つければええわけちゃうんやな」

 

 黒崎は少しだけ目を細めた。

 

「当然です」

 

「でも、今ちゃんと分かった」

 

 バドはグリフォンの素体図を指でなぞる。

 

「アルフォンスと戦う身体。逃げる身体。水に消える身体。空に逃げる身体。全部別や。どれで勝つか、どれで帰るか、先に決めなあかん」

 

 黒崎は黙っていた。

 

 それは、珍しくまともな理解だった。

 

 危険ではある。

 

 だが、操縦者としては正しい。

 

 内海課長は嬉しそうに笑った。

 

「いいねえ、バド。装備を身体として考える。実にいい」

 

「内海さん、現場換装、やろな」

 

「やろう」

 

「課長」

 

 黒崎が低く言う。

 

 内海課長は肩をすくめた。

 

「検討するだけだよ」

 

「その“だけ”が信用できません」

 

「ひどいなあ」

 

 バドは笑った。

 

 森川は端末に新しいフォルダを作った。

 

 名称。

 

 GRIFFON_BACK_UNIT_FIELD_DOCKING_TEST。

 

 磯口は背面ロック構造の簡易図を描き始める。

 

 黒崎は、徳永専務への報告書の文面を考え始めた。

 

 書きたくない。

 

 絶対に書きたくない。

 

 だが、書かないわけにもいかない。

 

 ASURA実証試験の一環として、装備別動作ライブラリおよび背面ユニット現場装着方式の検討を開始。

 

 黒崎は、その一文を想像して胃を押さえた。

 

 ブラジル支社の格納庫では、ASURA搭載ブロッケンの冷却ファンが回っている。

 

 奥のモニターでは、グリフォンの三面図が静かに回転していた。

 

 素体。

 

 羽根。

 

 鰭。

 

 そして、それを現場で背負う黒い機体。

 

 バドはモニターを見上げながら、にっと笑った。

 

「待っときや、アルフォンス」

 

 その声は、小さかった。

 

 だが、黒崎には聞こえた。

 

「今度は、どの身体で行くかまで考えて勝ちに行くで」

 

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