異世界召喚されたのに、最初の試練が"笑ってはいけない"だった件   作:老眼はじまりました

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白い世界
選ばれし者の召喚①


――眩しいほど白い空間だった。

 

 上も下も、左も右も……果てすら分からない。

 地面は確かに存在している。だが、空も壁も境界もない。

 突如、そこへ機械的な声が響く。

 

《選ばれし者……召喚を実行します》

 

 声とともに、辺り一面が光り輝く。

 地面と思われる場所に、魔法陣が起動。

 

 キィィィン……ヴゥゥン。

 バチィ! バチバチィ!

 

 青い稲妻のような火花が空中を走る。

 そこへ、閃光のように一人の女性が現れた。

 

「……ここはどこだ」

 

《エクレール・ファロン……ライトニングの召喚に成功しました》

 

 ライトニングと呼ばれた女性は、即座に身構える。

 軍人のような鋭い動きで周囲を確認し、腰の武器へ手を伸ばした。

 

「誰だ!?」

 

 ……。

 返事はない。

 風も音もない。

 ただ、異様な静寂だけが広がっていた。

 ライトニングは眉をひそめる。

 

「コクーンじゃない。パルスでもない……敵の幻術か?」

 

 床を軽く蹴る。感触はある。

 だが、現実感が薄い。まるで世界そのものが仮設で作られているような感覚だった。

 

「またファルシ絡みか……?」

 

 小さく呟いた瞬間、

 

《続いて、次の召喚を開始します》

 

「……っ!?」

 

 キィィィン…ヴゥゥン

 またしても、魔法陣が起動。

 グォォンという轟音とともに、ふわりと光が弾けた。

 そこから……

 

「うわあああああっ!?」

 

 赤茶色の髪の少女が勢いよく飛び出してきた。

 どたぁっ!!と、盛大に転がる。

 

「いったぁ……って、えっ?」

 

 少女は顔を上げた。

 元気そうな瞳。

 活発そうな雰囲気。

 そして腰には棒術用の武器。

 

《エステル・ブライトの召喚に成功しました》

 

 エステルと呼ばれた少女は、涙目のまま立ち上がり、周囲を見回す。

 当然、白しかない。

 上も下も分からず、地面のみが存在する。

 

「えっ!? な、なにここ!? 空!? 白!? 夢!?」

 

 一人騒がしく慌てる。

 

「まさか、転移系のトラップでもふんじゃった!?」

 

 きょろきょろと辺りを見回した後、エステルはライトニングを発見する。

 

「あっ、人いた!」

 

 ライトニングは警戒を解かない。

 

「止まれ。まず質問に答えろ。ここへ来る直前、お前は何をしていた」

「えっ!? ちょ、まって! 私は別に……!」

 

 近寄ろうとするが、ライトニングが止める。

 

「質問に答えろ」

「え、えっと、確か魔獣を追いかけてて……」

 

 焦り始めるエステルに対し、ライトニングは冷静だった。

 

「……その様子だと、お前も恐らく強制的にここへ飛ばされたんだろう」

「そ、そうだけど…なんでわかるの!? やっぱりトラップ!?」

 

 エステルは頭を抱えた。

 ライトニングはじっとエステルを見る。

 騒がしい。

 隙も多い。

 ……だが、恐怖で固まってはいない。

 普通の民間人ではないと判断する。

 

「名前は」

「え?」

「名前だ」

「あ、エステル・ブライト! 遊撃士やってます!」

「……ゆうげきし?」

「困ってる人を助けたり、魔獣退治したりする仕事!」

「傭兵に近いな」

「えぇ……そんな感じ?」

 

 エステルは逆に聞き返した。

 

「そっちは?」

「ライトニング」

 

 短い返答。

 

「ライトニング?」

 

 エステルが目を丸くする。

 

「コードネーム?」

「本名みたいなものだ」

「へぇ~、カッコいい名前!」

 

 ライトニングは少し眉を動かした。

 こういう反応には慣れていない。

 だがエステルは気まずそうにしない。

 むしろ白い空間を歩き回り始めた。

 

「出口ないかなー」

「不用意に動くな」

「でも、じっとしてても始まらないじゃん?」

「罠の可能性がある」

「うーん……でも、なんかそういう嫌な感じしないんだよね」

 

 ライトニングは少しだけ目を細める。

 感覚で動くタイプか。

 だが、その直感力は悪くないのかもしれない。

 その時だった。

 またしても白い空間に、機械的な声が響いていた。

 

《続いて、次の召喚を開始します》

 

 

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