異世界召喚されたのに、最初の試練が"笑ってはいけない"だった件   作:老眼はじまりました

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秘蔵映像②

『それじゃあ、次の映像を流すクポ!』

 

 モーグリが再びリモコンを操作し、スクリーンの画面が切り替わる。

 映ったのは、幼いころのエステル。

 

「あっ、エステルさんだ! 可愛いー!」

「うわぁ……嫌な予感しかしない!!」

 

 目を輝かせるルルア。不安そうに画面を見つめるエステル。

 映像のエステルは、ちょっとしたスペースで、一人で棒術の練習をしていた。

 

『せいっ! はっ!』

 

 ブンッ! ブンッ!

 格好いいフォームで棒を使いこなし、かなりノリノリ。

 

「おぉー! すごい! 格好いい!」

 アリーナが感心する。

 

 だが、張り切りすぎたのか、勢い余ってバランスを崩す。

 

『おっと……!』

 

 そして、持っていた棒が、そのまま……。

 

 ガツン。

 

 近くにあった高そうな芸術品へ直撃。

 パリーン!!

 ……。

 

『…………』

 

「「「あっ……」」」

 全員、笑いを堪える。

 

『や、やばっ……』

 

 映像内のエステルが、青ざめていた。

 周囲をキョロキョロし、周りを確認。

 

「駄目だ……」

 ヨシュアがもう顔を覆っている。

 

 エステルは、割れた芸術品を必死に集め始めた。

 

『だ、大丈夫っ! 直せばバレない!』

 

 必死に修理を試みる。

 ぐちゃぐちゃに接着。

 上下の向きが変。

 左右が逆。

 謎の部分が増えている。

 どう見ても、完全に別物。

 

『よし!』

 

 だがエステルは、満足そうな表情で立ち去った。

 そして……。

 

「「「ぶっ……はぁぁぁ!!」」」

 

 全員、ついに吹き出す。

 

「『よし!』じゃないよぉぉ!!」

「なんでそれでイケると思ってるんですかぁー!!」

 

 ルルアとロロナが、腹を抱えて笑っていた。

 

「隠ぺいするっていう発想が、もう危険なのよ!」

「あはははっ! 右と左が逆になってる!!」

 

 マーニャとアリーナが笑いながら突っ込む。

 

「やめてえぇぇーー!! 恥ずかしぃーー!」

 

 エステルの絶叫が響く中、映像はまだ続いている。

 エステルが逃走(?)してしばらくしてから、芸術家らしき老人がやってきた。

 そして、作品を見る。

 

『……』

 

 一瞬固まる。

 そして……。

 

『なんじゃこりゃーーー!!!』

 

 老人が、頭を抱えて叫んでいた。

 

「うわっはははっ!! げ、芸術家殿の絶望顔ぉぉぉ!!」

「ふっ…あはっ……!! あのおじいさん、可哀想……!」

「エステル、何やってるの……ふっ…くくくっ」

 

 マギルゥが爆笑。セラが涙目で笑い、ヨシュアが頭を抱えながらも吹き出す。

 

「むしろよくあそこまで別物にできたわね……!」

「っ……ふ……!」

 

 ベルベットとライトニングですら、笑いを堪えきれない。

 

「むしろ何でバレないと思ったの!?」

「だって、子供だったんだもん!」

「でも直そうとしたのは偉い!」

「全然偉くないわよっ!!」

 

 ルルアやアリーナ、マーニャがまだ爆笑している。

 そしてついに、例の機械声が響いた。

 

《全員、アウト》

 

「「「やっぱり!」」」

 

ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!!――

 

「ぶへらあぁぁー!!」

「ぎゃああぁぁー!!」

「っっ!!」

「いったあぁいいぃーー!!」

「…ぐっ!」

「あーれえぇぇーー!」

 

 次々と蹴られていく中……

 

『続いて、次の映像を流すクポ!』

 

「「鬼かっ!!」」

 

 全員のツッコミを無視して、映像が流れ始めた。

 画面には……アリーナが映っていた。

 

「ぶふっ!!」

 何故か、マーニャが吹き出す。

 

「早い早いっ!」

「まだ何も起きてないのに!?」

 

 エステルとセラが突っ込む中……

 

《マーニャ、アウト》

ドゴォ!!

 

「あぁん!!」

 マーニャがいきなり尻キックを受ける。

 

「なんで笑うのっ!?」

 アリーナが怒る。

 

「だって、なんかつい……ぶっ…」

「……また蹴られるわよ」

「だってこの子、絶対なんかやるんでしょ?」

「むっ」

 

 映像が切り替わり、映されたのは――大勢の観客で盛り上がる格闘大会。

 そこに、一人のマスクマンが出場していた。

 青い帽子。

 黄色い武道着。

 オレンジ色のグローブ。

 そして、明らかに浮いているかぼちゃマスク。

 覆面以外は、先ほどのアリーナと同じ格好だった。

 

「ちょっ!! ふっ……はははっ!!」

「か、完全にアリーナさんだ!!」

 

 ……正体はバレバレだった。

 

「かぼちゃマスクが常に笑ってるのがシュールすぎるわよっ!」

「むぅ……!」

「ていうか、なんで覆面なんか被ってるの?」

「だって、王女様は出場したらダメだって言うから……」

「いや、これならOKとか、ガバガバすぎるじゃろっ!」

 

 実況が叫んでいる。

『さあ、本日の決勝戦! トンヌラ vs  かぼっちゃん!!』

 

「ぶっはあぁぁー!! か、かぼっちゃんって!!」

「何よ、そのネーミングセンス!」

「だ、だって、バレなきゃいいじゃん!」

「バレバレなのよ!!」

 

 映像では、実況が喋り続けていた。

 

『さあ、果たしてどちらが勝つのか!? 苦戦を強いられてきたトンヌラ。

 対して、圧勝続きのアリーナ……か、かぼっちゃん!』

 

「ア、ア、アリーナって言っちゃったぁーー!!」

「実況ーー!!」

 

 ルルアとマギルゥがもう呼吸困難になっている。

 

『やはり、かぼっちゃんが圧倒的有利かぁー!?』

 

 実況が響く中、映像の現在のアリーナは得意げ。(顔は見えない)

 

『よーし! すぐ終わらせちゃうよ!』

 

 試合が開始する。

 『せいっ! やぁー!』

 『くっ…!』

 

 試合は、やはりアリーナが有利に進める。

 決着は近いと、誰もが思っていた。

 ……だが、マスクでの視界不良のせいか、バランスを崩す。

 ちょうどそこに、トンヌラの蹴りがジャストタイミングで合わさる。 

 そして、次の瞬間……。

 

 ゴッ!

 

『……』

 

 相手の蹴りが、アリーナの急所にクリーンヒットしていた。

 

『ひぎゃあああぁぁぁっ!?』

 

 会場中に響く絶叫。

 アリーナがその場に崩れ落ちる。

 かぼちゃマスクをしたまま、両手で急所を押さえて大悶絶。

 

『いっ、いだぁぁぁぁぁ……!!』

 

「うわぁ……い、痛そう……!」

 エステルが震え声で言う。

 

「これは笑う前に同情が……」

 ヨシュアも顔をしかめる。

 

 だが映像は止まらない。

 

『ア、アリーナ選手…じゃなかった! かぼっちゃん選手、立てません!!』

 

 実況が心配そうに話す。

 観客ざわざわ。

 映像内のアリーナは、覆面姿でぷるぷる震えていた。

 

『む、むりぃ……』

 

 そして、レフェリーが聞く。

 

『ギブアップですか!?』

 

 アリーナは、かぼちゃマスクのまま、こくこく頷く。

 

『……まけたぁ……』

 

「「「ぶっふうぅぅー!!」」」

 

 再び、一同が吹き出していた。

 

「こ、こ、これは……いかんっ!! ふっはは!」

「笑顔のかぼちゃマスクがギブアップした……!」

 

 マギルゥが涙を流し、エステルも崩壊。

 

「あの姿で『まけたぁ……』ってぇぇ!!」

「アリーナさん可哀想ぉぉ!!」

 

 ルルアとロロナは笑いながらも、アリーナを心配していた。

 

「……っ、ふ……!」

 ベルベットですら、我慢できずに肩を震わせる。

 

「……っ」

 ライトニングが静かに顔を逸らす。

 

「お姉ちゃん今笑った!」

「違う」

 

 アリーナ本人は真っ赤だった。

 

「し、仕方なかったんだもん!! すっごく痛かったんだもん!!」

 

「うんうん、分かったから落ち着きなさい……!」

 マーニャが笑いを堪えながら肩を叩く。

 

 その時、モーグリが札を掲げる。

 

『アリーナの急所に、会心の一撃』

 

「やめろおぉぉー!!」

 

 アリーナの絶叫が響く中……

 

《全員、アウト》

 

 相変わらず、次々と蹴られていった。

 

 

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