異世界召喚されたのに、最初の試練が"笑ってはいけない"だった件   作:老眼はじまりました

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選ばれし者の召喚②

《続いて、次の召喚を開始します》

 

 キィィィン……ヴゥゥン。

 また魔法陣が起動。

 巨大な影が形を成しかけた、その瞬間。

 

「てやあああぁぁっ!!」

 

 白い空間に、やたら元気な声が響いた。

 次の瞬間、空中から誰かが猛烈な勢いで落下してくる。

 

「うわっ!?」

 

 エステルが反射的に避ける。

 

 ドゴォン!!

 

 床に見事なクレーターができた。

 

「なっ……!?」

 

 土煙の中心から、ぴょこん、と飛び出したのは、元気いっぱいのおてんば娘。

 

《アリーナの召喚に成功しました》

 

 機械声が白い世界に響く中、

 

「うーん! 知らない場所!」

 

 アリーナと呼ばれた少女の第一声がそれだった。

 エステルが目を丸くする。

 

「えぇ!? 今の高さから落ちて無傷!?」

 

 アリーナはキラキラした目で周囲を見回した。

 

「わぁ! 強そうな人がいる! ここ闘技場!?」

「えっ? えっと、違うと思う……」

「そうなの?」

「……」

 

 ライトニングは答えない。

 しかしアリーナはまるで気にしない。

 

「でも二人とも強そう! 戦えるの!? 楽しみ!」

 

 拳をぶんぶん振る。

 その風圧だけでエステルの髪が揺れた。

 

「わっ!? すごい圧!」

 

 そんなやり取りを置き去りにして、また機械的な声が響く。

 

《続いて、次の召喚を開始します》

 

 キィィィン……ヴゥゥン。

 魔法陣が起動。

 今度は優しい光が魔法陣を包み込む。

 今度は、ぽわん、と柔らかい光。

 そして、光が弾けた。

 

「ひゃあああぁぁぁぁ!?」

 

 完全に悲鳴だった。

 ばたばた手足を振り回しながら、一人の女性が空中から現れ、そのまま落下する。

 

「あっ、危ない!」

 

 エステルが思わず駆け出す。

 だが、その前に……アリーナが軽々とジャンプして、

 

「はいっと!」

 

 見事に空中キャッチした。

 

「へ?」

 

 抱えられた女性が、ぱちぱち瞬きする。

 栗色の髪。

 愛らしい帽子。

 どこか素朴な雰囲気。

 

《ロロライナ・フリクセルの召喚に成功しました》

 

 ロロライナ・フリクセルと呼ばれた女性……ロロナは、アリーナに抱えられたまま、少しだけ涙目でぷるぷると震えていた。

 

「た、助かりましたぁ……」

「大丈夫大丈夫!」

 

 アリーナはにかっと笑い、そのままロロナを下ろす。

 ロロナは周囲を見回し、徐々に顔が青ざめていく。

 

「えっ、えっ、ここどこですか!? なんで真っ白なんですかっ!?」

「……っていうか、なんで皆さん、そんな戦えそうな感じなんですか!?」

 

 ライトニングを見る。

 

「軍人っぽい……」

 

 アリーナを見る。

 

「なんか壁とか壊しそう!」

 

 エステルを見る。

 

「元気!」

「私だけ評価、雑っ!」

 

 エステルが思わず突っ込む。

 それぞれが軽く自己紹介をした後、ロロナは混乱したまま帽子を押さえる。

 

「うぅ……わたし、パイ作ってたはずなのに……」

 

 ライトニングが眉をひそめる。

 

「……パイ?」

「はい。あと一歩で賢者パイが完成するところで……」

 

 その時、再びあの声。

 

《続いて、次の召喚を開始します》

 

「またぁ!?」

 

 グォンと空間がゆがむ。

 今度は先ほどまでとは明らかに違う。

 重い。

 鋭い。

 獣の咆哮のような圧力。

 赤黒い裂け目が空間に走った。

 そこから、ゆっくりと一人の女性が現れる。

 

「……」

 

 長い黒髪。

 片腕を覆う包帯。

 そして、肌を刺すような殺気。

 

《ベルベット・クラウの召喚に成功しました》

 

 着地と同時に、ベルベットと呼ばれた女性は、周囲を睨みつける。

 

「……ここは?」

 

 低い声だった。

 空気が一気に張り詰める。

 

「な、なんかすっごい怖そうな人来た……」

 

 エステルが思わず小声でつぶやく。

 

「聞こえてる」

 

 ベルベットが即座に返した。

 

「うわあっ! ご、ごめんなさい!」

 

 エステルがあわあわしている横で、ライトニングは静かにベルベットを観察していた。

 

(戦士か……しかも相当場数を踏んでいる)

 

 ベルベットもまた、ライトニングの視線に気付く。

 

「……」

「……」

 

 視線だけが交わる。

 だが、それだけで互いに“只者ではない”と理解していた。

 ロロナはその空気についていけない。

 

「えぇ!? なんですかぁ、この達人同士みたいな空気!? 怖い怖い!」

 

 エステルがこそこそ耳打ちする。

 

「でも、悪い人じゃなさそうだよ」

「ほ、本当ですか?」

「うわー! すっごい強そう! ねえねえ、私と戦おうよ!」

「わあぁ! アリーナさん、ダメですってぇ!」

 

 そのやり取りを見て、ベルベットは深くため息をついた。

 

「騒がしい連中ね……」

 

 その瞬間。

 再び、あの声が響く。

 

《続いて、同一世界より召喚を試みます》

 

 その声の直後、再び魔法陣が浮かび上がった。

 

 

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