異世界召喚されたのに、最初の試練が"笑ってはいけない"だった件 作:老眼はじまりました
《次の召喚を実行します》
「いやもう、“召喚”が軽いんだって!」
「分かる」
突っこむエステルに、ライトニングが珍しく同意した
キィィィン…ヴゥゥン。
魔法陣が起動。
バチバチバチッ!!
空間に金の火花が走る。
《マジギギカ・ミルディン・ド・ディン・ノルルン・ドゥの召喚に成功しました》
「長っ!」
思わずエステルが突っ込む。
「おおっとぉ!? これはこれはぁ! また妙ちくりんな場所に来たもんじゃのう!」
派手な声と共に、派手なポーズで現れたのは……
「じゃじゃーん! あらゆる世界を股にかけ、魔王をも笑う大魔法使い、華麗に参上~!」
……。
沈黙。
ベルベットが即座に顔をしかめた。
「……最悪」
「おやぁ? ベルベットではないかぁ!」
マギルゥはにやにや笑いながら近付く。
「なんじゃなんじゃ? 今度は異世界観光ツアーかな? お土産あるぅ?」
「ない。帰れ」
「うぅ……つれないのう」
エステルが小声でロロナに聞く。
「知り合い?」
「た、多分すごく騒がしいタイプです……」
「多分じゃない」
ベルベットが断言した。
ロロナが名前を思い出すように、
「ええと……マジギギカ・ミルディナス・フォン・ドワーフ…」
「ちっがーうう!! 誰がドワーフ族じゃ!」
ゴホンと咳ばらいをして、
「マジギギカ・ミルディン・ド・ディン・ノルルン・ドゥ…略して、マギルゥじゃ!」
エステルが「マギルゥ?」と聞き返すと、すかさず、
「ちっがーう! 隣の柿は、よく客食う柿だ、のアクセントで、マギルウじゃ」
「柿こわっ!!」
マギルゥは周囲を見回し、ぱちぱち瞬きをする。
「ほほーう? いろんな輩がおるのぅ。こりゃまた面白い」
そしてロロナとルルアを見て。
「おお、親子丼」
「違いますからぁ!!」
ロロナが即ツッコミ。
「いや親子ではあるよ?」
ルルアが素で言う。
「そういう意味じゃないのー!」
エステルが吹き出した。
「?」
アリーナは意味が分かっていない。
「親子丼っていうのはねぇ…」
説明しようとするマーニャに、ライトニングが「説明しなくていい」と即座に遮った。
そんな盛り上がり(?)を見せる一同を無視して……
《次の召喚を実行します》
「「「またぁ!?」」」
大勢が突っ込む中、相変わらずの、キィィィン…ヴゥゥン。
いつものように魔法陣が起動。
今度は優しい光が弓のように飛んでいく。
その先から、淡い桃色の光が広がった。
《セラ・ファロンの召喚に成功しました》
声が響く中、そこから現れたセラ・ファロンと呼ばれた女性は、着地するより先に不安そうに辺りを見回す。
優しい顔立ち。
柔らかな雰囲気。
そして、どこかライトニングによく似た面影。
「ここ……どこ……?」
ライトニングの目が、わずかに見開かれる。
「……セラ」
「えっ? お姉ちゃん!?」
セラの表情がぱっと明るくなる。
次の瞬間には、駆け寄っていた。
「よかった……! 急に光って……どうなるかと思って……!」
「無事ならいい」
声は相変わらず淡々としている。
だが、周囲全員が察した。
(めちゃくちゃ安心してる)
「今ちょっと表情柔らかくなったよね」
「はい。嬉しそうでした」
エステルが小声でロロナに囁く。
「……家族か」
ベルベットは腕を組む。
「こういう再会は嫌いじゃないわ」
マーニャはふっと笑った。
そんな言葉を置き去りにして、また光が集まり始める。
《次の召喚を実行します》
「いや待って!? ペースおかしくない!?」
「わっはっは! まるで召喚ガチャじゃのう!」
エステルが頭を抱え、マギルゥが愉快そうに笑う。
「ハズレが混ざってるわね」
「失礼な。ワシはURじゃぞ?」
そんなやり取りをよそに、今度は静かな青白い光が現れる。
そこから、一人の少年が滑るように着地した。
《ヨシュア・ブライトの召喚に成功しました》
黒髪。
整った顔立ち。
静かな目。
着地した瞬間、ヨシュアは即座に周囲を観察する。
そして……
「……エステル?」
「ヨシュア!!」
エステルの顔がぱぁっと明るくなる。
「うわー! 知り合い率高い!」
ルルアが感心する。
ヨシュアは軽くため息をついた。
「……また君は面倒事に巻き込まれてるね」
「いや、今回は私悪くないからっ!」
ライトニングがヨシュアを見る。
(この少年……)
一見穏やか。だが隙がない。
ベルベットも同じことを感じ取っていた。
(…この子も只者じゃないわね)
《以上、全ての召喚に成功しました》
「えっ? 全て?」
「これで終わったってことなのかしら?」
声だけが響く異様な光景の中で、ルルアがふと首を傾げた。
「……あれ?」
「ルルアちゃん、どうしたの?」
ロロナが聞き返す。
ルルアは指を折りながら数え始めた。
「えぇと……ライトニングさんとセラさんは同じ世界。エステルさんとヨシュアさんもそうだよね?」
頷く。
「ベルベットさんとマギルゥさん。アリーナさんとマーニャさん。わたしとお母さんも同じ世界」
「……確かに」
マーニャが目を細める。
そしてルルアは、核心を口にした。
「全員、同じ世界から二人来た?」
その場が静まる。
ライトニングが即座に周囲を見回した。
「偶然じゃないな」
ベルベットも頷く。
「意図的に選ばれてる」
ヨシュアが静かに分析する。
「しかも、ただ同じ世界ってだけじゃない」
エステルを見る。
「僕とエステルみたいに、強い繋がりがある組み合わせ」
ライトニングとセラ。
ベルベットとマギルゥ。
アリーナとマーニャ。
ロロナとルルア。
エステルとヨシュア。
どれも、関係性が深い。
マギルゥがにやりと笑う。
「ほほーう? つまり、ぼっち禁止空間というわけじゃな?」
「な、何のために?」
セラが不安そうに呟く。
「支え合うため……とか?」
ルルアのその言葉に、わずかな沈黙。
ベルベットがぼそりと呟く。
「……試されてるのかもね」
マーニャが目を細める。
「絆……とかですか?」
「うわ、急にテーマ性出てきた!」
「みんなで強い敵を倒そうよっ!」
「……普通にありそうで突っ込めない」
ロロナ、エステル、アリーナの会話をよそに、機械声が淡々と告げる。
《それでは只今より、第一の試練を開始します》
その声とともに、10人に緊張が走った。