異世界召喚されたのに、最初の試練が"笑ってはいけない"だった件   作:老眼はじまりました

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試練の始まり②

 床に突っ伏していたアリーナが、ぷるぷる震えながらお尻を押さえる。

 

「お、お尻痛い……!」

 

 半泣きだった。

 

「王女なのに、容赦ない……!」

「いやそこ!?」

 

 エステルが思わず吹きそうになる。

 ヨシュアが即座に口を押さえた。

 

「エステル、耐えて」

「む、無理っ……!」

 

 ルルアが何とか立ち上がるが、再び涙目で肩を震わせている。

 ロロナが必死に背中をさする。

 

「だ、大丈夫ルルアちゃん?」

「だってぇ……急にお尻たたきって……!」

 

 一方、マギルゥはまだ床に転がっていた。

 

「ワシの尻が……大魔女の尻が……」

「静かにしなさい。笑う」

「お主も今限界じゃろ?」

 

 ベルベットのこめかみがぴくっと動く。

 その横で、マーニャが真顔でアリーナのお尻を見ながら言った。

 

「でも、あなたの固いお尻なら、蹴った方も痛いんじゃない?」

「えー、ひっどぉい!」

 

「ぶはっ!!」

 会話を聞いてたエステル、陥落。

 

《エステル、アウト》

 ドゴォン!!!

 

「ぎゃああぁぁーー!!?」

 

 謎の黒い人型が突如現れ、完璧な尻キックを炸裂させる。

 エステルが尻を押さえながら、前方へ吹き飛ぶ。

 人型は、何事も無かったように、ふっと消えた。

 

「エステル、少しは我慢しないと……」

 ヨシュアが天を仰ぐ。

 

 だが、そのヨシュアの口元も、完全に緩んでいた。

 ライトニングが静かに言う。

 

「……お前も危ないぞ」

「わ、分かってます。ふふっ……」

 

 ピタリ。

 全員の視線が集まる。

 ヨシュア本人も固まった。

 

「……あ」

 

《ヨシュア、アウト》

 ドゴォン!!!

 

「っっっっ!!!?」

 

 尻キックが炸裂し、ヨシュアが声にならない声を上げながら吹き飛んだ。

 

「ヨシュアまでぇぇぇ!!」

 エステルが涙目で叫ぶ。

 

 その瞬間、セラがとうとう耐えきれず、肩を震わせた。

 ライトニングが嫌な予感を覚える。

 

「セラ」

「ご、ごめ……っ、ふふっ……!」

 

《セラ、アウト》

 ドゴォン!!!

 

「きゃあぁっ!?」

 

「セラ!!」

 

 突如、空間に深いため息のようなノイズが流れる。

 そして機械音声が、明らかに呆れた調子で告げた。

 

《……あの、そろそろ試練始めたいんですけど》

 

「だ、だってぇ……!」

 エステルが床に転がったまま震える。

 

「声が呆れ始めたぞ! ぶふっ!」

 マギルゥが腹を抱える。

 

《マギルゥ、アウト》

 ドゴォン!!!

 

「ぬおおおおっ!?」

 

「学習しなさいよ……」

 ベルベットが額を押さえる。

 

 だがそのベルベット自身も、口元が危険だった。

 ヨシュアが痛むお尻を押さえながら呟く。

 

「というか、まだ試練は始まってなかったんですね……」

 

《……説明する前に笑い始めたので》

 

「だって無理ですから!」

 ロロナが叫ぶ。

 

 アリーナが涙目で立ち上がる。

 

「じゃあ、まだ見逃してよぉ!」

 

《まさか笑うと思わなかったので、先にセットしてました》

 

「ひどい!!」

 

 ロロナとルルアは、完全に寄り添って耐えていた。

 

「ルルアちゃん、も、もう笑っちゃダメ……!」

「う、うん……でもなんだかシュールで……」

 

 セラはまだお尻を押さえながら、ライトニングの後ろに隠れている。

 ライトニングは静かに深呼吸した。

 

「……分かった。つまり、今から始まるんだな」

 

《はい》

 

「なら全員、落ち着け」

 

 リーダーっぽく仕切られ、皆も少し真面目になる。

 ヨシュアが頷きながら、

 

「とにかく、笑わなければいい」

 

「単純な話ね」

 ベルベットも腕を組む。

 

「ええ。精神力の勝負ってわけね」

 マーニャが髪をかき上げる。

 

「だ、大丈夫……! わたし意外と真面目ですから……!」

 ロロナも真顔を作る。

 

「うん、何とかなるなる〜!」

「その口癖、今すごく危ないからね!?」

 

 そんなやり取りをよそに、機械音声が淡々と言った。

 

《ではこれより、第一の試練を開始します》

 

 

 

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