異世界召喚されたのに、最初の試練が"笑ってはいけない"だった件 作:老眼はじまりました
『続いては、こちらの映像をご覧くださいクポ!』
流れを変えるように、モーグリが言った。
画面が切り替わる。
――場所は草原フィールド。
王宮を背に、誠実そうな鎧姿の騎士が映った。
威厳があり、とても強そうだ。
「えっ? 誰?」
「この中には、いないよね?」
みんなが不思議がる中、
「あっ!」
「……ライアン?」
アリーナとマーニャの二人だけが反応する。
険しく真剣な表情のライアンと呼ばれた戦士。
カメラが彼にゆっくりと近づいて行く。
王宮らしき場所を背にしながら……
そして、はっきりと……
ライアンが言った。
『よし、反乱起こすか』
「ぶっ!! あははははっ!」
「ちょ! な、なによこれっ…! ふふっ!」
「「二人だけ爆笑してるっ!?」」
《アリーナ、マーニャ、アウト》
ドゴォン!!
「ぎゃあぁぁー!!」
「痛ったっぁぁーー!!」
二人に尻キックが決まる。
それでも、二人の笑いは、まだ収まらない。
「ライアンさん、そんな人じゃないよぉ!」
「忠誠心はどこに行ったのよ…! ふふっ!」
「ついに、マーニャさんまで蹴られたぁ!」
ルルアが驚く。
「だ、だって……!」
「やっぱり、あの人って、こういうことは言わないんですか?」
ロロナがアリーナ達に聞く。
「言わない言わないっ!」
「ライアンは、『わが忠誠はバトランドにある!』って言い切るような人なのよ……!」
まだ二人が笑っている。
「完全に身内特攻ネタなんだ」
「うぅ……狙われたら、まずいかも…」
ロロナとルルアが不安がる。
だが、その不安は的中してしまった。
『続いては、次の映像クポ』
ブィンと映像が切り替わる。
――そこは、またしても王宮。
だが、先ほどよりも少しだけ明るく、ふんわりとした空気を感じる。
アーランド王国と書かれていた。
「あれ? ここは……」
ロロナが反応する。
入り口付近に、王宮受付と書かれた場所があった。
そこに、一人の綺麗な受付嬢がいた。
画面が彼女にクローズアップする。
「あっ、エスティさん?」
「だね。相変わらず綺麗だなぁ」
ロロナとルルアが反応する。
そして、エスティと呼ばれた女性は、聞かれた質問に返すように……
カメラ目線で言った。
『年齢? 46歳よ』
「ぶふうぅぅー!!」
「あっははははっ!!」
二人が爆笑していた。
「また二人だけ笑ってる!?」
セラが驚く。
「エスティさん、ついに年齢言っちゃったぁ!!」
「本人が絶対教えてくれないやつだよ!」
《ルルア、ロロナ、アウト》
ドゴォン!
「いったあぁいいー!!」
「きゃあぁぁー!!」
「ロロナさんも、ついに笑った!」
「意外にも、初なのね」
「うぅ……これは、無理です……」
「……っていうか、こんなの作ったら、怒られますからっ!」
尻を押さえながら、涙目で立ち上がる。
「なんとなく想像はつくけど、やっぱりこういうことは言わないの?」
「絶対言いません。今までずっと、トップシークレットだったし……」
「……もし事実なら、聞かなかったことにします」
「いや、それでいいの?」
そんなやり取りを無視しながら……
『続いて、次の映像クポ』
「「ペース早くない!?」」
モーグリがリモコンを操作し、ブィンと映像が切り替わる。
――そこは、草原。
画面には、刀を肩に担いだ剣士が映る。
背中には大太刀を背負い、両手にはそれぞれ小太刀を持っていた。
「あっ……」
「おおっと!? ロクロウ・ランゲツではないか」
ベルベットとマギルゥが反応する。
ロクロウ・ランゲツ。
いかにも刀大好きそうな男。
背中に背負った刀を抜き、それをじっと見ながら彼は言った。
『刀ダサい……』
「ぶっ……!」
「ぶははははは!!」
やはり二人だけが爆笑していた。
「えぇ!? そんなにおかしいの!?」
エステルが不思議がる。
「アイツ……絶対言わない……!」
「刀しか頭にないような男がぁ!! 刀ダサいはダメじゃろぉ!!」
ベルベットが、肩を震わせながら笑い、マギルゥはもう床を転げ回っていた。
《ベルベット、マギルゥ、アウト》
ドゴォン!!
「……っっ!!」
「うっぎゃああぁぁーー!!」
二人同時に尻を蹴られ、吹っ飛ばされる。
「綺麗に吹っ飛んだ! あっははは!!」
アリーナが爆笑する。
《アリーナ、アウト》
「えっ!? あっ、笑っちゃっ…」
ドゴォン!!
「ぎゃああぁぁーー!!!」
「ぶっはあぁ!!!」
「何やってるのぉ!!」
《エステル、セラ、アウト》
ドゴォン!!
「あれえぇー!!」
「きゃあーー!!」
ドサァ!と前に突っ込む。
「何してるの……」
ヨシュアが額を押さえる。
「ちょっと! 巻き添えは勘弁してよ!?」
マーニャが噴き出しそうになるのを堪えて非難する。
「……一回落ち着け」
ライトニングが呆れながら言う。
『続いては、次の映像クポ』
「「「少しは休ませろぉ!!」」」
画面には、ものすごいアフロヘアーをした人物が映っていた。
「あっ! サッズさん?」
「……」
セラとライトニングが反応する。
サッズと呼ばれた男は、理容室へ入っていく。
そして、席に座り、切り方を聞かれて……
彼は答えた。
『あっ、スポーツ刈りで頼むわ』
「ふふっ!! はははっ…!」
《セラ、アウト》
ドゴォン!!
「またぁーー!?」
そして……。
「ライトニングさん……?」
「……」
肩が震えている。
ヨシュアが静かに目を閉じた。
「まさか……ライトニングさんまで……?」
すると、モーグリがピッとリモコンを操作する。
スクリーンには、再び同じ場面が流れた。
『あっ、スポーツ刈りで頼むわ』
「ふっ……!」
「あっ…」
《ライトニング、アウト》
ドゴォン!!!
「…っ!!」
ついにライトニングが尻を蹴られ、吹き飛んだ。
「ライトニングさんまでぇーー!?」
エステルが驚愕する。
「お、お姉ちゃん大丈夫!?」
セラが慌てて駆け寄る。
ライトニングは無言でゆっくりと立ち上がる。
「……油断した」
「いやぁ、見事に吹っ飛んだのぉ……」
マギルゥが吹き出しかける。
「『……油断した』」
更には、ライトニングの真似をする。
「黙って。巻き込まれる」
ベルベットが即座に口を塞いだ。
「ていうか、モーグリ……だっけ? 油断したら、笑わせに来るんだ……」
ヨシュアが不安そうに言う。
「いや! 最初から全力で笑わせに来てるよ!?」
エステルが叫ぶ。
「でも、ライトニングさんが笑うなんて……」
ルルアがぷるぷる震える。
「すごく我慢してたのに……」
ロロナも驚いていた。
「『ふっ……』だけでも駄目なんだね!」
アリーナは感心している。
「そこ感心するとこじゃないから!」
エステルがまた突っ込む。
すると、モーグリがゆっくりライトニングへ近付いた。
全員が警戒する。
ライトニングも真顔で睨む。
モーグリは何も言わず、そっと一枚の札を掲げた。
そこには……
『初笑いおめでとうございますクポ』
「っ、ふふっ……!」
セラが吹き出す。
《セラ、アウト》
ドゴォン!!!
「きゃあぁっ!?」
「セラ!!」
ライトニングが思わず叫ぶ。
その必死な声に、今度はロロナとマーニャが崩壊した。
「あははっ……!」
「も、もう駄目……! ぶっ!」
《ロロナ、マーニャ、アウト》
ドゴォン!! ドゴォン!!!
「きゃぁっ!!?」
「いやあぁっ!?」
一人の人型が、忙しい動きで次々と連続キック。
「すごい! 連続コンボだ!」
アリーナは感心していた。
「この空間、精神削る方向に特化しすぎでしょ……」
マーニャが額を押さえる。
その時、モーグリが新たなボタンを押す。
すると、スクリーンに文字が浮かんだ。
『次の映像:秘蔵の過去映像』
全員、察した。
(あ、これヤバいやつだ)