異世界召喚されたのに、最初の試練が"笑ってはいけない"だった件   作:老眼はじまりました

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ないない②

『続いては、こちらの映像をご覧くださいクポ!』

 

 流れを変えるように、モーグリが言った。

 画面が切り替わる。

 

――場所は草原フィールド。

 王宮を背に、誠実そうな鎧姿の騎士が映った。

 威厳があり、とても強そうだ。

 

「えっ? 誰?」

「この中には、いないよね?」

 

 みんなが不思議がる中、

 

「あっ!」

「……ライアン?」

 

 アリーナとマーニャの二人だけが反応する。

 

 険しく真剣な表情のライアンと呼ばれた戦士。

 カメラが彼にゆっくりと近づいて行く。

 王宮らしき場所を背にしながら……

 そして、はっきりと……

 ライアンが言った。

 

 

『よし、反乱起こすか』

 

「ぶっ!! あははははっ!」

「ちょ! な、なによこれっ…! ふふっ!」

 

「「二人だけ爆笑してるっ!?」」

 

《アリーナ、マーニャ、アウト》

 

ドゴォン!!

 

「ぎゃあぁぁー!!」

「痛ったっぁぁーー!!」

 

 二人に尻キックが決まる。

 それでも、二人の笑いは、まだ収まらない。

 

「ライアンさん、そんな人じゃないよぉ!」

「忠誠心はどこに行ったのよ…! ふふっ!」

 

「ついに、マーニャさんまで蹴られたぁ!」

 ルルアが驚く。

 

「だ、だって……!」

 

「やっぱり、あの人って、こういうことは言わないんですか?」

 ロロナがアリーナ達に聞く。

 

「言わない言わないっ!」

「ライアンは、『わが忠誠はバトランドにある!』って言い切るような人なのよ……!」

 

 まだ二人が笑っている。

 

「完全に身内特攻ネタなんだ」

「うぅ……狙われたら、まずいかも…」

 

 ロロナとルルアが不安がる。

 だが、その不安は的中してしまった。

 

『続いては、次の映像クポ』

 

 ブィンと映像が切り替わる。

 

――そこは、またしても王宮。

 だが、先ほどよりも少しだけ明るく、ふんわりとした空気を感じる。

 アーランド王国と書かれていた。

 

「あれ? ここは……」

 ロロナが反応する。

 

 入り口付近に、王宮受付と書かれた場所があった。

 そこに、一人の綺麗な受付嬢がいた。

 画面が彼女にクローズアップする。

 

「あっ、エスティさん?」

「だね。相変わらず綺麗だなぁ」

 

 ロロナとルルアが反応する。

 

 そして、エスティと呼ばれた女性は、聞かれた質問に返すように……

 カメラ目線で言った。

 

 

『年齢? 46歳よ』

 

「ぶふうぅぅー!!」

「あっははははっ!!」

 

 二人が爆笑していた。

 

「また二人だけ笑ってる!?」

 セラが驚く。

 

「エスティさん、ついに年齢言っちゃったぁ!!」

「本人が絶対教えてくれないやつだよ!」

 

《ルルア、ロロナ、アウト》

 

ドゴォン!

 

「いったあぁいいー!!」

「きゃあぁぁー!!」

 

「ロロナさんも、ついに笑った!」

「意外にも、初なのね」

 

「うぅ……これは、無理です……」

「……っていうか、こんなの作ったら、怒られますからっ!」

 

 尻を押さえながら、涙目で立ち上がる。

 

「なんとなく想像はつくけど、やっぱりこういうことは言わないの?」

 

「絶対言いません。今までずっと、トップシークレットだったし……」

「……もし事実なら、聞かなかったことにします」

 

「いや、それでいいの?」

 

 そんなやり取りを無視しながら……

 

『続いて、次の映像クポ』

 

「「ペース早くない!?」」

 

 モーグリがリモコンを操作し、ブィンと映像が切り替わる。

 

――そこは、草原。

 画面には、刀を肩に担いだ剣士が映る。

 背中には大太刀を背負い、両手にはそれぞれ小太刀を持っていた。

 

「あっ……」

「おおっと!? ロクロウ・ランゲツではないか」

 

 ベルベットとマギルゥが反応する。

 

 ロクロウ・ランゲツ。

 いかにも刀大好きそうな男。

 背中に背負った刀を抜き、それをじっと見ながら彼は言った。

 

 

『刀ダサい……』

 

「ぶっ……!」

「ぶははははは!!」

 

 やはり二人だけが爆笑していた。

 

「えぇ!? そんなにおかしいの!?」

 エステルが不思議がる。

 

「アイツ……絶対言わない……!」

「刀しか頭にないような男がぁ!! 刀ダサいはダメじゃろぉ!!」

 

 ベルベットが、肩を震わせながら笑い、マギルゥはもう床を転げ回っていた。

 

《ベルベット、マギルゥ、アウト》

 

ドゴォン!!

 

「……っっ!!」

「うっぎゃああぁぁーー!!」

 

 二人同時に尻を蹴られ、吹っ飛ばされる。

 

「綺麗に吹っ飛んだ! あっははは!!」

 アリーナが爆笑する。

 

《アリーナ、アウト》

 

「えっ!? あっ、笑っちゃっ…」

 

ドゴォン!!

 

「ぎゃああぁぁーー!!!」

 

「ぶっはあぁ!!!」

「何やってるのぉ!!」

 

《エステル、セラ、アウト》

 

ドゴォン!!

 

「あれえぇー!!」

「きゃあーー!!」

 

 ドサァ!と前に突っ込む。

 

「何してるの……」

 ヨシュアが額を押さえる。

 

「ちょっと! 巻き添えは勘弁してよ!?」

 マーニャが噴き出しそうになるのを堪えて非難する。

 

「……一回落ち着け」

 ライトニングが呆れながら言う。

 

『続いては、次の映像クポ』

 

「「「少しは休ませろぉ!!」」」

 

 画面には、ものすごいアフロヘアーをした人物が映っていた。

 

「あっ! サッズさん?」

「……」

 

 セラとライトニングが反応する。

 サッズと呼ばれた男は、理容室へ入っていく。

 そして、席に座り、切り方を聞かれて……

 彼は答えた。

 

『あっ、スポーツ刈りで頼むわ』

 

「ふふっ!! はははっ…!」

 

《セラ、アウト》

 

 ドゴォン!!

 

「またぁーー!?」

 

 そして……。

 

「ライトニングさん……?」

「……」

 

 肩が震えている。

 ヨシュアが静かに目を閉じた。

 

「まさか……ライトニングさんまで……?」

 

 すると、モーグリがピッとリモコンを操作する。

 スクリーンには、再び同じ場面が流れた。

 

『あっ、スポーツ刈りで頼むわ』

 

「ふっ……!」

 

「あっ…」

 

《ライトニング、アウト》

 

ドゴォン!!!

 

「…っ!!」

 

 ついにライトニングが尻を蹴られ、吹き飛んだ。

 

「ライトニングさんまでぇーー!?」

 エステルが驚愕する。

 

「お、お姉ちゃん大丈夫!?」

 セラが慌てて駆け寄る。

 

 ライトニングは無言でゆっくりと立ち上がる。

 

「……油断した」

 

「いやぁ、見事に吹っ飛んだのぉ……」

 マギルゥが吹き出しかける。

 

「『……油断した』」

 更には、ライトニングの真似をする。

 

「黙って。巻き込まれる」

 ベルベットが即座に口を塞いだ。

 

「ていうか、モーグリ……だっけ? 油断したら、笑わせに来るんだ……」

 ヨシュアが不安そうに言う。

 

「いや! 最初から全力で笑わせに来てるよ!?」

 エステルが叫ぶ。

 

「でも、ライトニングさんが笑うなんて……」

 ルルアがぷるぷる震える。

 

「すごく我慢してたのに……」

 ロロナも驚いていた。

 

「『ふっ……』だけでも駄目なんだね!」

 アリーナは感心している。

 

「そこ感心するとこじゃないから!」

 エステルがまた突っ込む。

 

 すると、モーグリがゆっくりライトニングへ近付いた。

 全員が警戒する。

 ライトニングも真顔で睨む。

 モーグリは何も言わず、そっと一枚の札を掲げた。

 

 そこには……

 

 

『初笑いおめでとうございますクポ』

 

「っ、ふふっ……!」

 セラが吹き出す。

 

《セラ、アウト》

 

ドゴォン!!!

 

「きゃあぁっ!?」

「セラ!!」

 

 ライトニングが思わず叫ぶ。

 その必死な声に、今度はロロナとマーニャが崩壊した。

 

「あははっ……!」

「も、もう駄目……! ぶっ!」

 

《ロロナ、マーニャ、アウト》

 

ドゴォン!! ドゴォン!!!

 

「きゃぁっ!!?」

「いやあぁっ!?」

 

 一人の人型が、忙しい動きで次々と連続キック。

 

「すごい! 連続コンボだ!」

 アリーナは感心していた。

 

「この空間、精神削る方向に特化しすぎでしょ……」

 マーニャが額を押さえる。

 

 その時、モーグリが新たなボタンを押す。

 すると、スクリーンに文字が浮かんだ。

 

『次の映像:秘蔵の過去映像』

 

 全員、察した。

 

(あ、これヤバいやつだ)

 

 

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