▽記録者コメント
新たな青と白の戦士の目撃情報が得られた。
シャドウビジョンの『苦情ネギの独自取材』から数ヶ月経った頃、心霊系グループYouTuber『レッドアロー』がある動画を投稿した。
レッドアローは心霊系と謳っているが、無断で心霊スポットに突撃し、その後、儀式と称して心霊スポットを荒らす行動が問題視されているグループである。
次第に視聴者からの注目度は下がり、今回の動画も当初は普段通りの再生数だった。しかし、内容の一部から大きな話題を呼び、インターネット上で大きな流れを引き起こした。
以下は当動画の書き起こしである。
▼心霊系グループYouTuber『レッドアロー』より
2021-02-28『山形県 最凶心霊スポットに突撃するぞ!!』から
0:00〜
軽快なBGMと共に、赤い画面に弓矢を模したレッドアローと言うロゴが表示される。
場面は切り替わり暗闇の中に立つ20代の男性五人が映し出される。
「赤松!」「ショウゴ!」「三種」「ユッキー」「手羽元!」
「俺たち、レッドアロー!!」
メンバー五人がそれぞれ、名前を名乗る。
メンバーそれぞれの特徴を簡単にまとめる。
赤松は赤髪、ショウゴは長身、三種はメガネ、ユッキーは中性的、手羽元は筋骨隆々。五人それぞれに立場の差があるようで、赤松が中央前列に座り、ショウゴと手羽元がその左右に座り、ユッキーと三種は後列に並んで立っている。
以下ではわかりやすさを重視して、発言の前に名前を明記する。判別不能な場合は不明と記載する。
ショウゴ「ここはどこ!」
赤松「本日は……山形県に来ています!」
ラッパを鳴らしたような効果音と共にクラッカーを鳴らしたような映像効果が加わる。他のメンバーは「山形?」「どこ?」とわざとらしいガヤを入れ始めた。
メンバーのひとり、手羽元は立ち上がりカメラの前に立つと服を脱ぎ捨て、隆起させた上腕二頭筋の力こぶをカメラに映した。
手羽元「山の形! 山形!」
他のメンバーは爆笑している。赤松は「戻れ戻れ」と半笑いで手羽元の体を引っ張った。
ユッキー「なんで山形にきてんの?」
赤松「ここ、山形県国仏村には最凶の心霊スポットがあるというタレコミが来ました!」
赤松「その心霊スポットがこちら! 目の前にございます!」
メンバー達が「え〜」とどよめき、固定されていたカメラが心霊スポットの方を向く。
二階建ての一軒家だが、庭の雑草は伸び切り、家の外壁ボロボロになっている。明らかな廃墟であり、ユッキーは「大丈夫なの?」と不安を漏らした。
赤松「今回は……なんと家主さんから撮影許可が降りています!」
赤松「管理人さんの
画面に長身の男が映し出される。茶色いスーツを着た男は顔がモザイクで隠されている。
落地「よろしくお願いします。撮影に参加できて嬉しいです」
男の声はプライバシー保護のためか甲高く加工されている。
赤松「今回の心霊スポットは落地さんの方から連絡が来ました!」
赤松「何故、自分たちに貸そうと思ったんですか?」
落地「私、レッドアローのファンでして……是非とも私の物件で儀式をして欲しいと思いまして……」
赤松「それでは心置きなく儀式が出来るということで、三種、説明」
シーンが切り替わり、また建物が映し出される。
三種「このお家では、15年前に住民が自殺しており、それから怪奇現象に悩まされています。自殺した二階の居間では首吊りの影が見えたり、自殺したライトの下に椅子が置かれたりと怪奇現象が多発し、住民が頻繁に入れ替わってしまい、困っているそうです」
三種がやや早口で概要を説明している。
落地「本当に困ってます」
三種「なので、儀式をして怪奇現象をなくしてほしいそうです」
カメラが三種を除いた四人の方を向いた。中央の赤松が前に出る。
赤松「それでは、儀式をして、依頼者さんを安心させましょう!」
赤松「心霊スポットへ突撃!!」
各人の「おー!!」という掛け声とともに、全員が門の中に入っていく。
少し間を置いてから矢を射るような効果音とともに、赤い画面とロゴのアイキャッチが挟まった。
以降は心霊スポットの探索パートになっている。
問題箇所まで特筆すべきことはないが、空気感を残すために一部抜粋する。
3:32〜
1階のリビングに集まったメンバーは画角に収まるように並んだ。
ショウゴ「いや、雰囲気あるね」
ユッキー「ねぇ、めっちゃこわいんですけど」
手羽元「暖房つけね」
赤松「暖房はねぇよ!」
メンバーそれぞれが騒がしく話していると、真ん中の赤松が「注目!」と大声を上げ皆は静まり返った。シーンと言う効果音が鳴る。
赤松「中に入りましたが、いやぁ、すっごい寒気」
手羽元「タンクトップで来るんじゃなかったな」
ユッキー「それはどこでもでしょ」
手羽元がおもむろに上着を脱ぎ始めタンクトップ姿になった。ユッキーがそれに突っ込むとビシッと何かを叩く効果音が鳴る。
赤松「今回も二手に分かれて探索します!」
赤松「ユッキーショウゴペア、赤松手羽元三種ペアにわかれます!」
ユッキー「頑張ろうね」
ショウゴ「あぁ、頑張ろう」
二人は目を合わせて拳をコツンと当てた。
手羽元「そういや、落地さんは?」
三種「お、落地さんは外で車で待機しています。入りたくないみたいで」
赤松「いつも通り、俺たちだけで探索ってこと」
赤松「よし、それでは俺たちはここから、ユッキー達はお風呂とトイレを見に行って欲しい。出来るな?」
ユッキー「了解!」
ユッキーは大きな身振りで敬礼をした。
4:35〜
ユッキーとショウゴ側の映像。画面の左端には「カメラ:ショウゴ」とテロップが入っており、画角にはユッキーが映っている。
ユッキー「ふつーの家なのにさ、すっごく怖いよねぇ」
ショウゴ「寒気するよな」
ユッキー「何だろうね。この雰囲気、危ない感じ」
当たり障りない会話を続けていると扉が見えてきた。ユッキーは「お風呂場かな?」と言い扉を開けると脱衣所の中が見えた。脱衣所は生活感が溢れており、前住民が使っていたと思しき洗濯機や歯ブラシなどが放置されている。
ユッキー「そのまま、出てったって感じだね」
ショウゴ「逃げてったとか?」
ユッキー「何があったんだろ」
ショウゴは洗濯機の中に入ったままの衣服を映した。
ユッキー「次はお風呂場だね!」
曇りガラスの折れ戸を開くと、酷く汚れたお風呂場が映し出された。
黒カビで白い壁は薄汚れており、鏡は割られている。二人とも流石に圧倒されたのか、無言の間が続いた。
ユッキー「うっわぁ」
ショウゴ「きったな」
ドン引きする二人の声、カメラに映ったユッキーは目を細めて一歩後ずさった。
ユッキー「入らないほうがいいよね……流石に」
ショウゴ「特に何もなさそうだし」
ユッキー「特に何もなかった! 特に何もなかったでーす!」
無理にテンションを上げて切り上げようとするユッキー。お風呂場の扉を閉めると、上の階からドンドンと誰かが歩いたかのような物音が聞こえた。
ユッキー「何?」
ユッキーは思わず顔を天井に向けた。
ショウゴ「あいつらもう上、行ったんじゃね?」
ユッキー「だよね。誰もいないはずだし……」
無言の間が続き、張り詰めた雰囲気が動画内から伝わる。
ユッキー「一旦、合流しよっか」
7:35〜
赤松「置物とか、そのままだぜ」
赤松、手羽元、三種側の映像。
画面の左端には「カメラ:三種」とテロップが入っており、画角には二人が映っている。赤松は棚の上に乗ったダルマの置物を手に取った。埃を被ったダルマは色が微かに白くなっている。
手羽元「あんま触んなよ。病気になるぞ」
赤松「平気平気、俺、風邪ひいたことねぇし」
ダルマを棚に置いてデコピンをした。
三種「物が残ってるね。思ったよりも……」
手羽元「こことか手紙がそのままになってるな」
赤松「引越しって感じじゃねぇよなぁ」
赤松は手紙を手に取り中身を確認しはじめた。
赤松「後輩から貰った手紙とかだぜ?」
三種「そんなの置いていくかな」
赤松「お前友達から手紙もらったことねぇだろ!」
三種「そうでした」
三種の言葉と共にコテっと転がる効果音が鳴る。
手羽元「これとかレアものだぞ」
テレビの前に飾られていたカードを手に取った。ガラスケースに入ったカードにはゲームのキャラクターが書かれている。
三種「これ5万とかするやつ」
赤松「まじ? 儲け〜」
手羽元「いや、持って帰るなよ」
急に三人の会話が止まる。手羽元は顔を上に向け怪訝な顔をした。
赤松「聞こえた?」
手羽元「小さかったけど、音したな」
一瞬、カメラが天井に向けられる。手羽元は微かに顔が強ばり、赤松は薄ら笑いを浮かべていた。
赤松「ユッキーだろ」
手羽元「……そうだろうな」
三種「音しない?」
トントントントンと部屋の外から足音が聞こえる。
手羽元「こっち来てないか?」
赤松「いやいやいやいや」
音は鳴る度に大きくなっている。明らかに近付いており、一番大きな音とともに扉が開いた。扉の外にはユッキーとカメラを構えたショウゴが立っていた。
ユッキー「……あれ、いる」
赤松「は? どういうこと?」
9:23〜
シーン切り替わり、左端のテロップには固定カメラと書かれている。画角には五人全員が並んでいる。
赤松「一旦、状況整理しよ」
赤松「お前ら、何してたん?」
ユッキー「いやいや、こっちのセリフ!」
ユッキー「あんたら二階行ってたんじゃないの?」
赤松の言葉にユッキーが噛み付く。赤松はぽかんとした顔で「は?」と小さく疑問を口にした。
手羽元「俺たちはずっとここ居たけど、お前らじゃないの?」
ユッキー「ボクらも風呂場に居たけど……」
ユッキー「もしかして、ドッキリ? マジで悪趣味なんだけど!」
ユッキーが三人を指さして糾弾すると、赤松は大きくため息をついた。
赤松「ドッキリじゃねぇから」
三種「あ、あの、カメラを確認しない?」
ユッキー「確かに、それでハッキリするか」
赤松「じゃあ、一旦カメラ止めて」
少し間を置いてから矢を射るような効果音とともに、赤い画面とロゴのアイキャッチが挟まった。
赤松「状況を整理しました」
赤松「カメラを確認した結果、二人とも同時に音に反応してました」
赤松「ユッキーのカメラには音がはっきり入っていて、音の出方的にも足音じゃないかと」
赤松「落地さんに電話したところ、ホームレスが住み着いているという話は聞いたことがないということで……」
赤松「二階に上がって状況確認をした後、儀式の方を執り行っていこうと思います!」
歓声の効果音と共にくす玉が割れたような映像効果が加わる。
13:25〜
音の場所を探すために、五人は再び三手に分散した。赤松と三種、ユッキーとショウゴ、そして手羽元は何かがあった時のために階段付近で待機することになった。
赤松と三種の映像、画面の左端には「カメラ:三種」と書かれたテロップが載っている。
赤松「ここも居た形跡あるな」
二階には五部屋あり、赤松と三種ペアは並んだ二部屋を確認することになった。もう一つの部屋は衣装が散らばっており、明らかに荒らされた形跡が残っている。
三種「なんでこの部屋だけ」
赤松「一階は荒らされてねぇのに」
赤松は洋服を何枚か手に取った。女服が大半を占めている。
三種「お風呂の上はどっちかなんだけど」
赤松「これじゃ歩けねぇだろ」
赤松が服を物色していると色が禿げた赤いダルマがまた見つかった。
三種「あ、また」
赤松「やべぇこと起きるから、縁起物集めたんだろうな」
ダルマを服の中に放り投げて立ち上がった。
赤松「ここじゃねぇだろ。次行くぞ」
部屋の外に出た赤松を追いかけるカメラ。赤松は隣の部屋の扉の前に立つ。ドアノブに手をかけ扉を開けようとするが開かない。ドアノブをガチャガチャと動かすが扉はビクともしない。
三種「鍵?」
赤松「鍵じゃねぇ。固まってる」
何度か扉を動かすと少しずつ扉が動いていく。赤松はドアノブを下げながら、体で扉を押すとようやく大きく扉が開いた。
赤松「うわぁ!」
赤松が声にならない声をあげ、一歩退いた。三種は赤松を追い越して部屋の中をカメラに収めた。
三種「うわ」
部屋の床一面に赤いものがびっしりと並んでいた。カメラをズームして、その赤いものの正体を確認する。
三種「ダルマ?」
赤松「やりすぎだろ。流石に」
床に所狭しと敷き詰められた赤いダルマは全て扉の方向を向いている。赤松は口元を抑えて部屋の中から目を背けた。三種も部屋から赤松の方にカメラを向ける。
赤松「ヤバすぎるだろ……おかしいって」
赤松はダルマを一つ手に取った。ほかの部屋に置いてあったダルマと同じものだった。ダルマを眺めていると、手からダルマが地面に落ちた。
敷き詰められたダルマの上に落ちたその衝撃は、隣のダルマ、隣のダルマと伝わっていき波打つように転がり出した。
不明「さんかいめ」
赤松「なんか言ったか?」
三種「ん? 何も」
不明「三回目」
カメラが部屋の中央を捉える。そこに、何か立っているように見える。
三種の叫び声と共にカメラが大きく揺れ、激しい衝撃音と共に地面に落ちた。この辺りから解像度が落ち、映像がはっきりとしない。
不明「三回目」
赤松「誰ですか? ここに住んでる人?」
目を逸らすように赤松の方にカメラを向けた。
赤松は部屋の中には入らずに、中に声をかけるが返答はない。何度も声をかけるが、カメラが「三回目」という声を拾うだけで、意思の疎通は取れていない。
赤松「ちょっ、なんだよ!」
三種「もうやめよう。逃げよう」
赤松「違う! あれ、あれだって!」
赤松がまた部屋の中を指さしている。カメラを部屋の中に向けると、画角に赤い影が映った。ぼやけていて輪郭は捉えられないが、さっきの人影よりも明らかに丸みを帯びている。
三種「な、なにあれ!」
赤松「なんだよ! あいつらこそ俺たちにドッキリを!!」
手羽元「大丈夫か! でっけぇ声出して」
手羽元が大声を上げて廊下の奥から走ってきた。
ユッキー「大丈夫?」
ショウゴ「何かあった?」
カメラは奥から歩いてくる二人に向いた。
手羽元「なんだお前」
カメラが定まらない。声の方向に次から次へと動いていき、視点が右往左往している。
手羽元「おい、なんか言えや」
赤松「やめろ手羽元! そういうんじゃねぇから!」
ユッキー「何、これ! ほんと、何?」
ショウゴ「わ、わ……」
手羽元が相手に迫る、それを止める赤松。
ユッキーは状況を飲み込めず声が裏返り、ショウゴは言葉を失う。
カメラは天井を映し、床を映し、誰かの背中を映し、ぐるぐると定まらない。カメラが服に当たってガサガサと布擦れ音が響く。
揺れ動いていた画角が急に固定される。
部屋に入ろうとする手羽元を、赤松が抱きつくようにして止めている。三種は画面の外から、手羽元に飛び込み、一緒に体を抑えた。慌てふためくユッキーの後ろでショウゴは一人で立ち尽くしている。
三種は赤松との会話の後、カメラを手に取り、また何もないところを映し始めた。
ドン、ドンと重たい足音。全員の声が一斉に止まる。三種が「なに」と呟き階段の方へカメラを向けた。
その瞬間、強い光が入り込み、フレーム全体が白く焼き付いた。
赤松「なんだこれ」
▽記録者コメント
突如、強い光に包まれ探索パートは終了した。
その後、メンバーは疲弊した顔でエンディングを撮影し、動画自体が終了した。
当動画は投稿後、三日間は普段通りの再生回数だったが、Twitter上に投稿されたあるツイートから風向きが変わる。
『2021-03-03 20:15 カガチーロ@serpente5959
レッドアローの最新動画、やらせすぎてヤバいwwww』
動画中のダルマが大量に置かれた箇所や赤い影が映った箇所のスクショとともに投稿されたこの文章は、瞬く間に3万RT4万いいねに昇る大拡散を引き起こし、レッドアローはやらせ集団のレッテルがつけられることになった。
動画の再生回数はうなぎ登りに増え、コメント欄は批判コメントで埋め尽くされることになる。
レッドアローは以前も度々、やらせを疑われることがあり、その度に小さく炎上していた。迷惑行為によりグループの評判は悪く、燃えやすい性質ではあり、その不信感の蓄積から大きな炎上に至った可能性は高い。
炎上自体は二週間ほど続き、事態が沈静化しつつある3月17日にメンバーの一人であるショウゴが自身のインスタライブで飲酒配信を行った。
配信内容の一部を以下に掲載する。
▼2021-03-17 ショウゴ(syogo.redarrow)のインスタライブより
当初はいつもと同じ低い温度感で配信していたが、配信開始から10分程度経過すると荒らしコメントが増えてきた。
はじめはコメントを無視していたが、飲酒量が増えるにつれて荒らしコメントにも触れるようになっていく。普段の配信よりも飲酒量が多くなり、どんどんと発言が過激になっていった。
以下は青と白の戦士に関わる発言の切り抜きである。
45:32〜
「マジで、嫌がらせが多発してんだよ。めっちゃ迷惑」
「毎日のように事務所にダルマが送られてくるし……センスなさすぎ」
ショウゴは顔を赤らめ、机に伏しながら話を続ける。
『harumu_hao ダルマwww』
『miyu.miy.my しょーごくんはダルマ嫌い?』
「嫌いじゃねぇけど、毎日送られてくるのしんどいって」
「マジでキモすぎ。もっと面白い嫌がらせしろよ」
『foolish.225588 面白いならいいの?』
「まだネタに出来るやん?」
「ダルマはもう遅いって」
『kuuki.airbag ダルマ使ったのはお前らやん』
『uwaaaaa_bamiru やらせが偉そうにすんなw』
コメントを読んだショウゴが机を力強く叩いた。画面が大きく揺れる。
「やらせじゃねぇって!」
大きく頭を掻きむしった後、大きくため息をついた。数秒の沈黙、グラスに入っていた酒を一気に飲み干すと、また大きくため息をついた。
「あの家、マジでやばかったからな」
「入っただけで寒気めっちゃするし、あんなんはじめてだわ」
『huwahuwanominal 前も心霊あっただろ』
「いや、あれ、あれだよ。比じゃないの!」
「もう、お前ら編集編集って言うけどあんなん編集じゃ出来ねぇからな」
「素人にはわかんねぇだろうけど」
コメントのスピードがおおきく加速する。ショウゴはコメント欄を見てニヤニヤと笑みを浮かべた。
「本当にやばかったよ。三種もユッキーもビビってたしさ」
「三種ホントやべぇよ。カメラ持ってあたふたあたふたって」
満面の笑みで話を続けるショウゴに、コメント欄はイラつきのコメントで溢れかえる。
『kuuki.airbag お前も棒立ちで喚いてたろ』
「は? 考えてたんだけど、一緒にするなよ」
『jimu.dollardollar だるまってwww 怖くないだろwww』
「お前ら、ダルマびっしりって見たことないだろ」
「めっちゃ怖いからな。それに、赤いやつ、おかしいから」
コメント欄が『赤いやつ?』と言う疑問で埋め尽くされている。
「赤いやつ。ダルマみたいな化け物が居てさ」
『uwaaaaa_bamiru 化け物てwww漫画かよwww』
『suneniikuyatsu 流石に嘘すぎ』
「嘘じゃねぇよ!」
また、机を大きく叩いた。画面が大きく揺れる。
『yukkuri_yuku.ri 出たー!ショウゴの必殺技ドラミング!』
『kagee_kagee56 流石、猿顔のイケメン笑』
「お前ら! マジで!」
『kuuki.airbag 虚言癖のイケメンチンパジー』
「居たんだよ! まじで居たの!!」
「赤いダルマ見てぇな化け物と青いヤツが!」
『suneniikuyatsu 【速報】ショウゴ氏、追い詰められて新しい嘘吐く』
「うるせぇ! 居たって言ったら居るんだよ!」
「何も知らねぇ素人共が俺に意見するんじゃねぇ!」
ショウゴは今までで一番強く机を何度も殴った。画面が何度も揺れてカメラが机に落ちた。数分の沈黙の後、配信は終了した。
▽記録者コメント
泥酔状態でのライブ配信の後、レッドアローの炎上はさらに加速することとなる。
炎上は倫理的な問題から、ネットのおもちゃにまで発展し、ショウゴの激昂による机の強打はネットミームになってしまった。
最初は静観していたユーザーもミームの利用した結果、炎上が長引く一因となった。
動画投稿から二ヶ月が経過した5月1日、とあるユーザーが『チャンネル登録解除祭り』を開催し、50万人いた視聴者数は30万人まで減少した。
その後、過去動画の大規模なやらせ検証、ユッキーの脱退などの事件が起き、レッドアローの事件は鎮火することはなかった。
メンバーの配信では、事務所への嫌がらせが増えていることを告白している。
6月25日に赤松を中心としたメンバー四人が『嫌がらせを止めないと法的処置を取る』と言う動画を投稿、同動画では国仏村の家にも嫌がらせが来ていることを告発した。
現在も炎上は継続しているが、レッドアローの身に起きたシャドウピープルや青と白の戦士に関する情報は出揃っている。
整理するとこの事件では『赤いダルマのような怪物』と『白く発光した後に青いヤツ』が現れた。
前者は視聴者の現場検証によると、部屋に赤いダルマは発見されておらず、話題作りの演出の可能性は否定できない。だが、後者の白い発光と青い人物については、以前まとめた二件において似たような現象が起きている。
『苦情ネギの独自取材』では発光後に白と青の戦士が現れた。
『怖い夢の内容を語ろうpart7』では発光後に白い鉄の塊が現れた。
そして、今回は白い発光の後に青いヤツが現れた。この証言はかなり一致している。
ただ、やらせが常習化しているグループの映像であり、心霊系ということもあり『シャドウビジョン』から着想を得た可能性も否定できない。
赤いダルマについても、黒い人影からハッキリした色のある姿に変わっており、部分的には一致するもののこれまでの描写とは細部が異なる。
今回の一件をあえて真に受けるとすれば、青と白の戦士は、人と超常が対峙する局面において出現しているように見える。
二件の前例でも怪物とされる対象と対峙しており、今回も赤いだるまの前に現れており、その点では一致している。
青と白の戦士が存在したとして、人を守る意思があるのか、それとも特定の条件下で発生する現象なのかは判別できない。
仮に前者であるならば、むしろ、人間やそれに類する存在が主体にあると考える方が整合性が取れるかもしれない。
もっとも、これらは推測の域を出ない超常的な仮説だが。
どれも確度の低い情報源だが、同一の事象が複数回にわたり確認されている点は看過できない。
存在や目的の判断のためにも、今後も青と白の戦士の情報は継続して集めていく。
追記
2025年7月9日、本ブログは、既に管理者不在のため、私が代筆を行う。レッドアロー、特に赤松の記録としては不完全なため、本文以降の情報について追記する。
8月22日、レッドアローにより『これまでのやらせ疑惑について』と言うタイトルで動画が上がった。10分程度の動画だが、内容としては三種が四人の中心でこれまでの事象を説明し、やらせであることを告白、やらせに踏み込んだ理由と原因を伝えた。
また、これまで行っていた迷惑行為についても正式に謝罪し、今後は健全な活動を続けていくことを宣言した。
関係各所に対する嫌がらせに関しては注意喚起し、特に儀式を行った心霊スポットには嫌がらせをしないようにと頭を下げている。
この動画で、これまでの動画はやらせであることが判明し、投稿後、数ヶ月をかけて炎上は収束した。
元々は毎日更新をしていたYouTube活動は大幅に減少し、企画の精度も低下しており、メンバー全体が無理をしている様子が濃くなり、再生数も激減した。
同年の九月に三種と手羽元が脱退し、『ブルースケール』という名前のコンビで活動を始めた。その後も赤松とショウゴの二人で『レッドアロー』の活動を続けていたが、週一更新、月一更新と更新頻度が減少し、最終的には事実上の解散となった。
以下は更新しなくなってから一年後、赤松が自分のYouTubeチャンネルで配信した際の切り抜きである。
▼YouTubeチャンネル「赤松のシューティングch.」より
2022-8-15『久々に雑談する』から
25:45〜
黒い画面に飼っている亀の写真とコメント欄だけが貼り付けられている。視聴者数は40人程度、コメントはアクティブではなく一分に一回程度書き込まれている。
赤松は動画の時よりも遥かに低い声で淡々と雑談を続けていた。
『五平餅:初見です。レッドアロー見てました』
「あぁ、初見さんいらっしゃい。ありがとうね」
『五平餅:レッドアローの皆さんとは今もお話しますか?』
「あ〜」
『赤松love:それ聞かない方がいいですよ』
「いいよいいよ。ショウゴとはよく話すよ。手羽元もたまに飯行く。そのくらいかな」
「あぁ、マジだったんだけどなぁ。いやほんと、色々ね」
『いちご:大丈夫?』
「大丈夫大丈夫。まぁ、信用ない俺が悪いさ」
「みんなは悪くねぇよ」
「俺が悪い。それだけ」