▽記録者コメント
今回は、青と白の戦士を直接映像で捉えた事例を発見した。
今回の件で青と白の戦士、並びにシャドウピープルの存在は実質的に確定した。
私としてもここまで明瞭な証拠が出るとは想定していなかったが、それ自体が問題ではない。むしろ、重要なことは、青と白の戦士に名前がつけられてしまったことにある。
後述するが、今回の件で青と白の戦士には耳障りのいい安易な名前が付けられ、その安易な名前のせいで広く流通することになってしまった。
青と白の戦士の存在を追っていた私としては不本意極まりない状況である。
まずは、その映像の概要や流れにについてまとめよう。
今回の映像は女性Tiktoker『ゆるぴよ』のTikTok LIVEのアーカイブである。
『ゆるぴよ』は主に大食いのショート動画を投稿する活動者だ。週に三回程度、TikTok LIVE上で生配信をしており、その内容は大食いや雑談が主になっている。
金色の長髪が特徴的で顔立ちはつり目でキツい、化粧も派手なことから所謂ギャルと括られる人間だ。
視聴者数は多くなく、辛うじて収益が出ている程度。視聴者層はほとんどが女性であるが、彼女が着る服は露出度が高いものが多く、特に生配信ではセクハラコメントが横行している。
事の始まりは2021年6月7日、彼女の公式Twitterにて投稿された一枚の画像にある。
『2021-06-07 20:45 ゆるぴよ@yuruyuru_piyopiyo15
最近、誰かに見られている気がする』
その文章に一枚の写真が添えられている。
夜中の駐輪場を写した写真であり、どこを見ても違和感はない。大きな拡散こそされなかったものの、この投稿を境に雑談配信ではストーキングについて取り上げられるようになった。
該当箇所を以下に記載する。
▼切り抜きYouTubeチャンネル『ゆるぴよの欠片』より
2021-06-09 『ゆるぴよ、誰かにストーカーされる』から
横型の画面中央に縦型の動画が配置されている。動画の左右にはピンクメインにキラキラと加工されたゆるぴよの顔が張り付けられている。
01:25〜
「あのさぁ、最近さ、誰かに見られてるってポストしたじゃん?」
『アムクンメ:あったね。マジなの?』
「大マジ! 帰り道とか誰かに見られてる感じしてて、今日、めっちゃ怖いことあったの」
「帰ってる途中さ、誰かが後ろにいる気がして振り向いたら、自販機に隠れた人影がいてさ」
「そいつがずっとついてくんの、どうにか走って巻いたけどさ」
『かんな:大丈夫なのそれ、家バレてない?』
『幸大:そりゃ、そんな露出してたら追われるだろ』
「大丈夫大丈夫。30分くらい走って、色んなところ行って巻いたから」
▽記録者コメント
ゆるぴよは当初、このストーキング被害を軽く捉えているような発言が多かった。しかし、配信の度にストーキング被害を話すようになり、その度に危機感が増していく。
6月28日、彼女はTwitterにて動画付きのツイートを投稿した。
『2021-06-28 21:25 ゆるぴよ@yuruyuru_piyopiyo15
絶対にあそこにいる。見えるし』
ツイートに添付された35秒の動画には自販機の映像が映し出されていた。自販機の裏には人影があり、カメラの方をチラチラと確認している。
この投稿をきっかけに、当初は疑惑を感じていた視聴者も、ゆるぴよのストーキング被害は単なる思いすごしとは言い難くなっていた。
この動画を受けて、視聴者の多くが心配の声を寄せており、本人も雑談配信が増え、ストーキング被害の不安を漏らすことが多くなっていた。
しかし、7月19日。この人影がストーキング被害ではないことを本人の口により説明された。
▼切り抜きYouTubeチャンネル『ゆるぴよの欠片』より
2021-07-19 『ストーカーの正体が判明!』から
横型の画面の中央に縦型の動画が配置されており、両サイドには各種SNSのIDが記載されている。
03:45〜
「ストーカーされてるって言ったじゃん」
「あれ、おかしくてさ……自販機の動画あるでしょ」
「あの自販機、出先だから家からすごく遠いの……どこから尾けられてんの?って感じでさ、気味悪くて」
「この前、バイト先の後輩に頼んで一緒に帰ってもらったの」
『はるはる:バ先ってコンビニだっけ』
「そうそう、男の後輩なんだけど、結構長い付き合いだからさ。一緒についてきてもらって、でさ、その日もストーキングされて」
「物陰に隠れてたし、人影もあったから、後輩が物陰を見に行ってくれたのよ」
「……居なかったんだ。動画あるんだけど、ちょっとXにあげるわ」
動画が切り替わり、Twitter上であげられた動画に切り替わった。スーパーの前、ポストの後ろに黒い影がしゃがんでいる。ポストよりも大柄な人影であり、体が少し見えている。
じっとしている影を映していると「見てきます」と男の声が聞こえると、画面外から白いダウンを着た男がポストの後ろへと向かっていった。
男の体がポストに被ると同時に黒い影は消え、男も「あれ?」と言いながら、ポストの後ろを何度も確認した。
「これ、おかしくない?」
『雄大:動画編集?』
『ゆうま:まじ怖、企画?』
「違う違う、全然事実なの!」
「あたしさ、昔っから霊感があってさ、やばいものとかわかるのよ」
「だから、なんか、やばいやつなんじゃって思っちゃってさ」
『饅頭釈迦:絶対やばいやつでしょ!』
『ナツメグ:ストーカーの時点でヤバい定期』
「いや、ストーカーの時点でやばいんだけどさぁ……人は警察に頼ればどうにかなるけど、ねぇ」
▽記録者コメント
この辺りからゆるぴよは自分に付きまとう影が超常的な存在なのではないかと考えるようになる。
彼女は、次第にオカルトに傾倒するようになり、自分に付きまとう影が悪霊の類いなのではないかと考えるようになる。
お祓いを受けてきた報告や、御札などにも凝るようになり、彼女の表情からは明らかな疲弊が見えていた。
ある日、彼女は再びTwitter上で一枚の写真を投稿した。
『2021-07-25 12:21 ゆるぴよ@yuruyuru_piyopiyo15
この人誰?』
添付された画像は明るい時間帯に撮られた写真であり、誰もいない道を撮影している。この画像には以前の二件の画像にいた黒い影はなく、ただ普通の風景が映されていた。
視聴者達は異変を探そうとしたが見つからず、ファンの間でも昨今のゆるぴよの発言や顔色から心配の声が相次いだ。
ゆるぴよはその投稿以降、一ヶ月程度活動を休止した。
8月25日、ゆるぴよはTwitter上で再びツイートをした。
『2021-08-25 14:16 ゆるぴよ@yuruyuru_piyopiyo15
ご心配おかけして申し訳ございません。今日、配信します。』
同日、22時よりTikTokLIVEにて生配信を始めた。以下にアーカイブの要所をまとめた文章を記載する。
▼大食い系TikToker『ゆるぴよちゃんねる』のTiktokLIVEより
2021-08-25『近況報告』から
05:45〜
縦型の画面の中央でエフェクトをかけず、ゆるぴよが座っている。ゆるぴよはいつもよりも露出度が低い姿をしており、髪も後ろで一つに結んでいた。
「この度は、視聴者の皆さんにご心配をかけて申し訳ございませんでした」
「本当に全てが怖くなってしまい、しばらく配信をお休みしてました」
『饅頭釈迦:ストーカーは大丈夫だったの?』
「ストーカーについては、外に出る時は誰かと一緒に居たこともあり、ここ数日は見ていません」
「以前の投稿についても、友人やバイト先の後輩に見せたところ人影は見えないということで、私も今では人影は見えてません」
「正直、今でも私に何が見えていたのか精査できておらず、ストーカーの真相とかはお話できません」
『アムクンメ:後輩って動画の?』
「仲がいい後輩が二人いて、二人にも話を聞いてもらっていて」
「もう一人の後輩からは、目の前から消えた動画に関しては『映像が荒いからそう見えてるだけでは?』とのことでした」
「ストーカーについてはまだ完全に解決したわけではありませんが、取り乱した姿を見せたことには謝罪をしたくて配信しました」
「この度は申し訳ございませんでした」
そう言って頭を下げるゆるぴよ。コメント欄には『大丈夫』『謝らないで〜』と言ったコメントが寄せられていた。
その後、ゆるぴよはいつも通りの雑談配信に移った。
01:08:25〜
激辛カップラーメンを食べながら、いつも通りの雑談を続けていた。最初はぎこちなかったゆるぴよも一時間が経過するといつも通りの様子に戻り、雑談も盛り上がるようになってきた。
しかし、その配信もあるコメントを境に一変する。
『アムクンメ:後ろに誰かいない?』
常連のそのコメントにゆるぴよの顔は大きく引き攣った。
「後ろ? ちょっと待ってね……誰も居ないけど」
『アムクンメ:あれ?』
『はるはる:待って、そのまま止まってて』
「え、うん」
ゆるぴよが静止すると、後ろにある冷蔵庫の後ろから黒い影が顔を出していた。ゆらゆらと揺らめく黒い影はハッキリと見えており、コメント欄もそれを指摘するコメントで溢れ返っていた。
『雄大:何これ演出?』
『鵜塚弘:ゆるぴよちゃんの魅力に引き寄せられたんだネ 』
『ゆんぼ:本当に大丈夫?』
ゆるぴよは画面越しに後ろにいる黒い影を確認し、ゆっくりと振り向いた。
「ちょっ、何……っ、やだ、や」
画面の外に後退りをするゆるぴよ。黒い影は冷蔵庫の陰からゆっくりと這い出てくる。立ち上がった黒い影はゆらゆらとボヤけており、その輪郭は歪んでいる。
「やだ、やだ! 何……なに」
ぴんぽん。
インターホンの音が鳴った。ガチャガチャと扉を強引に開けようとする音が室内に響く。ゆっくりと歩き始めた黒い影は突如、動きを止めて扉の方を向いた。
「ごめんください」
外から声が聞こえる。若い男性の声だった。
激しく扉を強打する音ともに重いものが地面に倒れ音が鳴り響く。大きな衝撃でカメラの画面が揺れた。
画面の外から一人の男が現れた。上下の黒いスウェットを着た男であり、腰から下しか映っていないが体型は標準体型だ。
男の体の中から黒い影が染み出た。その影は男の全身を覆うと、影の中心から光が漏れ出てきた。
その光は次第に大きくなり、画面は光量過多によりホワイトアウトした。
カメラが復旧すると、男がいた所には青と白の鎧を纏った存在が立っていた。彼は頭部こそ見えないが、腰より下には布ともゴムともつかない質感の肌の上に、白地に青が入った鎧を身にまとっていた。
「……これ、何?」
「何が起きてるの?」
激しい衝撃音とともにカメラは倒れ、画面は床を映したまま固定されている。その後、数分間にわたり、画面外で荒い呼吸と、何かを引きずる音、何かを殴打する音が鳴り続けている。
視聴者のコメント欄には混乱と憶測が溢れていた。
その映像は次第にSNS上でも拡散され、視聴者数は爆発的に増加した。
配信は、最終的に通報を受けた運営により強制終了された。
▽記録者コメント
今回の映像は極めて確定的な情報が多い。
まず、黒い影についてだ。この黒い影については、生放送と言う場で不可解な動きを繰り返しており、人物を仕込んだやらせとは断定できない。
最も現実的なのは動画を編集し生放送として流した説だ。
黒い影と青と白の戦士のエンタメ的対立関係、彼女がオカルトに傾倒していたことからも、シャドウビジョンに辿り着いている可能性は否定できない。
しかし、この説について私でも無視できない反証がある。
女先輩が身に付けている衣服や雑貨などは安価なものが多く、手の込んだやらせが出来るような資金力があるとは到底思えない。
それに、当該配信までの疲弊は明らかに本物であり、演出ならば何も写っていない写真を投稿するはずがない。
ゆるぴよ本人はこの一件から数日間活動休止をした後、大食い動画の投稿や雑談配信を続けている。
活動開始後、数日はコメント欄もそのコメントで埋め尽くされていたが徹底的に無視をしていた。次第にその事について触れるコメントは減少し、視聴者も普段通りのコメントをするようになった。
戦略としては、金をかけているのなら話題に触れるべきだが、徹底的に無視をしているとなると矛盾が生じる。
真偽についてはどうでもいい。
今回の一件で青と白の戦士に俗名が付いてしまった。
青と白の鎧のようなものを着た、布ともゴムともつかない肌を持った人型の存在。
この動画を取り上げたシャドウピープル情報局『シャドウビジョン』管理人・苦情ネギは、再び『仮面ライダー』と形容した。
この耳障りのいい言葉はSNS上で瞬く間に流通し、青と白の戦士を表す言葉は仮面ライダーで確定してしまった。
本当に嘆かわしい現状だ。安易な命名は思考停止と同義である。
行動する理由の深堀りをせず、ただ守護者として名前をつける行為は愚行だ。この存在が自分に牙を剥く可能性は否定できない。姿が確認できたとしても、それが味方と確認出来たわけではない。
今回、そういう構図になっただけで、守護者と判断して安直に『仮面ライダー』と名付ける行為は、到底看過できない。
何よりも呼称を与えられたことで、事例は容易に接続されるようになってしまった。断片的であった目撃情報は一括りにされてしまったのだ。
何度も言うが、今回の事例では人間に味方をするような動きをしていたが、今後、他の事例では同じ動きをするとは限らない。
その『仮面ライダー』という呼称が人を傷つける可能性にだってなり得る。
何よりも眉唾の事例すらも『仮面ライダー』と括られることで情報の精度が著しく落ちるだろう。
観測の観点で見ても好ましい状況とは言えない。
青と白の戦士の情報は今後も集めていくつもりだが、この広まりようを見る限り、情報の整理に多くの時間がかかるだろう。
より信頼性が高く、より興味深い目撃情報のみ記録にまとめることにしていく。